あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

80年代のスマッシュヒット映画 10番勝負!「へヴィメタル」(1981)の巻

ヘヴィメタル [DVD]

S原:今回は、ちょっと変わったアニメです。

Y木:あーこの映画、DVD持ってるで。というか、これスマッシュヒットしたんか…?

 (あらすじ)

あらゆる時間、空間、次元を蝕んでいく悪の化身“ロック・ナー”。そのロック・ナーをめぐる、[グリマルディ]、[ハリー・キャニオン]、[デン]、[キャプテン・スターン]、[B-17]、[美人は危険]、[ターナ]の7つの物語。アイバン・ライトマンをプロデューサーとして、コミック界を代表するアーティストたちが集結。
そのアニメーションと見事に融合しているのが、スティーヴィー・ニックスらを始めとする80年代を代表するロック・ミュージシャンたち。

 

S原:あなたにしては、DVDを持ってるねんて珍しい。

Y木:まあな。当時はSFファンの間で話題になったんやで。スターログとか読んでたしな。

S原:映画はどうやった?

Y木:忘れたなー。でも、面白くなかったことは覚えてる(笑)

S原:たしかに、今観るとあんまり面白くないんよなあ。それはそうとして、ぼくはアメコミとか洋物の漫画が結構好きやねん。

Y木:へえ。

S原:アメコミはええで。寝る前にパラパラ読むと、すぐに寝れる(笑)たまに、アメリカ以外の洋書も古本で買うんやけど、すごい絵もあるやろ。

Y木:あー凝った絵というか、そういうやつな。

S原:そうそう。あれが、そのまま映像で映画になったらどうなるんやろってワクワクしてたんやけどな。この映画は、あの洋物コミックの世界がそのままアニメで映像化されてるやろ。あーそういえば、あなたの好きなダン・オバノンも参加しているで。

Y木:あんな奴、好きちゃうわ。「ダークスター」(1974)を観て以来、こいつの映画だけは絶対に期待しない、と誓ったからな。

S原:どんな誓いやねん。

Y木:確か、これはオムニバスやろ。。

S原:うん。全7話。プロローグで、緑色の球体(ロック・ナー)がふわふわと浮いています。緑色の球体がでてきます。時間も空間を越えて、いろいろなエピソードが展開されるという映画やな。では、順番にいきましょう。

 

第一話  グリマルディ

S原:お父さんが家に帰ります。娘は「お土産はなーに?」と言います。「これだよ」と父親があけると緑色の球体です。ピカーと光って、ドロドロと父親は溶けます。怖がる娘の顔が、強烈に怖いねん(笑)緑の球体は、娘にいろいろな嫌味を言います。わかりにくいけど、この娘にいろんな世界をみせるというのが、2話目以降のエピソード…やと思うんやけど、違ってたらごめん。

Y木:覚えてないなあ…というか、おもえも初っ端からついていってないやん。

S原:だって、よくわからんねんもん(苦笑)

 

第2話 ハリーキャニオン

S原:近未来の大都市・ニューヨーク。タクシー運転手が訳ありの娘を助けたことで、トラブルに巻き込まれる。展開といい、気の利いたセリフと言い、ハードボイルドの雰囲気で、アクの強い絵でヌードやベッドシーンまで描いています。

Y木:これ、覚えてるわ。ハードボイルドタッチで「ブレードランナー」(1982)っぽいやろ。

S原:というか「フィフス・エレメント」(1997)そのままやったわ。ぼくは「フィフス・エレメント」よりも好きやな。それはええねんけど、主人公が、ひげそりの跡が残っているような頭髪の薄い中年男性。感情移入でけへんっちゅーねん。

Y木:当時のリアルさなんやろうな。

 

第3話 デン

S原:田舎の少年が、森の中で緑色の球体をみつけて家に持って帰ります。実験していると、亜空間(?)に飛ばされます。エジプト風の宮殿に着くと、がりがりだった少年はマッチョな男に変身しています。そこで、悪人相手に大暴れする、というエピソードやな。

Y木:これも忘れた。どうやった?

S原:大した事なかった。でも、変な色合いの自然の風景や宮殿はユニークやった。あー、あと、自分の顔より大きい胸の女性がでてきます。

Y木:知らんがな。

 

第4話 キャプテンスターン

S原:昔「スーパースリー」って、アメリカのアニメあったやろ?

Y木:あー「ラリホーラリホー、ラリルレロ♪」やな。

S原:そうそう。あの絵の感じと一緒。裁判で殺人罪だと訴えられたキャプテンスターンが、仲間の手助けで逃げる話。でも話はこれが一番つまらん。これは全然ダメ。あかんわー。

 

第5話 B-17

S原:第二次世界大戦であったような大型爆撃機が墜落しそうな場面からスタート。飛行機とか煙の絵が、なかなか味があります。たぶん、人の動きはロトスコープ(実写のあとアニメに描きなおす手法)とちゃうかな。緑色の球体が爆撃機に近づいて、機内に入ってきます。すでに死んだ仲間たちをガイコツ風ゾンビに変えてしまいます。

Y木:これはなんとなく覚えてるけど、みんな、ゾンビが好きやなー。

S原:操縦士はあわててパラシュートで脱出。でも、不時着した森の中にもすでに、ガイコツ風ゾンビがいて、襲われます。おしまい。

Y木:それで終わりやったっけ?ひねりがないなあ。

 

第6話 美人は危険

S原:えらい博士が、緑色の球体を研究しています。世界中で突然変異がおこり、人間が(ゾンビみたいに?)変身しているらしい。マスコミは博士を追い掛けまわしています。軍人や政府高官たちが、緑色の球体のなぞについて対策を協議しますが、そのとき大きな宇宙船がやってきます。掃除機で、博士と女性をすいこみます。宇宙船の宇宙人はトカゲ風です。これも大したことなかった。

Y木:トカゲの宇宙人っていうところが、いかにも80年代で楽しそうやけどな。

S原:そういえばトカゲ宇宙人は、床一面にドラッグを置いて、鼻から気持ちよさそうに吸い込んでたわ。

Y木:おいおい…

 

第7話 ターナ

S原:これがラスト。一番長くて、パッケージの絵もこのエピソードやな。あなた、メビウス(ジャン・ジャック・ジロー)のこと好きやろ?

Y木:好きやで。

S原:あれをアニメで実写風にした感じやねん。

Y木:それって、A・ホドロフスキーが「デューン砂の惑星)」(企画段階で潰れた幻の超大作映画)でやりたかったことやろ。

S原:ぼくも、このエピソードで「デューン」を思い出した。ああ、ホドロフスキー版を観たかったなあ。そういえば「リアリティのダンス」(2014)を一緒に観に行ったよな。

Y木:ホドロフスキーのドキュメント映画か。そういえば一緒に観たな。

S原:あの中で、デビット・リンチの「デューン 砂の惑星」(1984)を観て、ホドロフスキーが「あーこれは失敗作だあ!」「やったー!」って喜ぶ場面があるやろ?

Y木:あのシーンは最高やったな。すっごく嬉しそうで(笑)

S原:ホドロフスキーは、この「ターナ」をかなり参考にしたと思う。

Y木:これは印象に残ってる。けど、ストーリーは完全に忘れた。

S原:ストーリーはたしかに大したことないけど、これが一番おもしろかった。絵も一番力が入っているように思う。でも、やっぱりメビウス風の絵は、動くとチープに感じる。1枚の絵画、マンガのコマでみると圧倒的やけど……お金がかけられへんからかな?

Y木:どうなんやろ。確かに、ホドロフスキーみたいな奇才が、潤沢な予算で作ったメビウス風SFは観てみたいよな。

S原:話は、単純やねん。緑色の球体の力で生み出された集団(兵士軍団)が支配している世界。そのなかで、ただ一人女戦士・ターナだけが、たったひとりで戦いに挑む…という感じやな。これは観た人が、たぶんみんな言うと思うけど、ターナが着替える場面があるねん。裸になって、黒い革の服を着る。すっごいエロい(笑)

Y木:ノリは「コブラ」やな。

S原:そうそう。これも、ロトスコープやと思う。風景もところどころ実写からアニメに描き起こしてるんとちゃうかな。独特のデザインの都市や建物のなかに、ゆっくりとターナが飛んでいく姿をスーッとカメラが追っていく場面は、感心したわ。

Y木:アートってこと?

S原:うん。ストーリーよりも、この世界観を楽しめる人はええと思うで。それにしても、これは80年代テイストというか、洋物コミックテイストたっぷりで、日本のアニメに慣れたヤングたちは「うわー濃いなー」と突っ込むやろな。

Y木:BGMは、やっぱりへヴィメタル?

S原:そうやな。でも、あんまりメタルは好きじゃないから、聞き流してしまった。メタルファンには賛否あるアーティストと曲のラインナップらしい。

 

Y木:大体わかった。で、映画全体としてはイマイチやったのね?

S原:悪くないねんけど……やっぱり日本人は、ハンバーガーやホットドッグやピザを7つ食べるのはキツイです。

Y木:なるほどな。どれも味付けが濃いと?

S原:うん。あとは、7話ともほんまにバラバラやねん。バラエティに富んでるとも言えるし、散漫ともいえる。この辺が評価が割れている原因ちゃうかな。

Y木:分かる気もする。でも、評価が分かれるのが前提で作られている映画ちゃう?だから、いまでも一部にカルトなファンがおるんやろ。

S原:さー、みなさま。かなり変わったアニメですが、アメコミテイストと80年代カルチャーに興味がある人は楽しめると思います。ジブリ映画と「へヴィメタル」がどちらが好きか?と言われれば、答えに窮しますが、中古店にジブリ映画と「へヴィメタル」が同じ値段で並んでいたら、ぼくがこっちを選びます。もちろん、このブログを読んでいるあなたも、同じはず(笑)さあ、今日も元気で中古DVDコーナーへ、レッツラ・ゴー!