あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

1960年代の邦画を観てみる!「怪談」(1964)の巻

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S原:今回は怪談!

Y木:小泉八雲か。へえ。

(あらすじ・解説)

人間の條件」「切腹」の小林正樹監督が、小泉八雲の「怪談」に収録された4編をオムニバス形式で映像化し、1965年・第18回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した作品。生活苦から妻を捨て良家の娘と再婚した武士が思わぬ形で元妻と再会する「黒髪」、吹雪の中で雪女に遭遇した男の運命を描く「雪女」、平家物語を弾き語る盲目の琵琶法師・芳一が平家の怨霊に取り憑かれる「耳無芳一の話」、茶碗の中に映った見知らぬ男の顔をそのまま飲み干した男の末路を描く「茶碗の中」の4話で構成。キャストには三國連太郎仲代達矢岸惠子ら豪華俳優陣が集結。カンヌ国際映画祭では161分の短縮版が上映された。

 

S原:これは3時間(181分)あるねん。さすがに長かった。

Y木:やろうな。で、どうやったん?

S原:まずセット、美術がすごい。お金をかけすぎて(しかもヒットしなくて)製作会社が倒産したらしい(笑)

Y木:あー大作映画、あるあるやなー。

S原:この映画の不憫なところは、よほどのマニアでないと知られていないことやな。さっきも言ったけど、セットや美術は豪華やから、もっと歴史に残ってもええと思うんやけどな。

Y木:いや、映画史には残ってるでしょ。こうやって50年以上たってにDVDで観れるわけやし。

S原:ああ、そうやな。同じ1965年製作の映画は、ほとんどDVDになってないもんな。

Y木:これ、オムニバスなんやな。

S原:4つの話があります。「黒髪」「雪女」「耳なし芳一」「茶碗の中」やな。

Y木:「黒髪」は?

S原:三國連太郎が主演です。すごく若くて違和感があります(笑)三國連太郎は、京都に住んでるけど生活に困窮している武士です。で、三國は貧乏に疲れて、立身出世を夢見て妻を捨てて、遠い任地へ向う。そこで2人目の妻をめとる。その妻(新珠三千代)は、家柄も高貴で財産もあるけど、わがままで冷たいのよ。三國連太郎はそれも嫌になって、今更のように別れた妻を思い出す。

Y木:しょぼい奴やなあ。自分が捨てたくせに。

S原:で、最初の妻と住んでいた家を訪ねると、もう荒廃している。それでも中に入ると、昔とまったく変わらない姿の妻がいて……という話。

Y木:なるほど。まさに怪談やな。

S原:これは、まあまあやった。最初の妻の黒髪が長くて印象的やねん。前半は面白いねんけど、後半の三國が家に帰ってからが冴えない。

Y木:結局、どうなるの?

S原:妻は以前の姿のままで、三國が帰ってきたことを喜ぶ。昔のように一夜をともにした次の日、三國が眼が覚めると横には、骸骨姿になった女性がいる。でも髪の毛だけは黒々としている。

Y木:わ、気持ち悪い。

S原:観客も、気持ち悪い!と思えればええねんけど…どうもイマイチやった。骸とか黒髪を三國が怖がって、急に白い顔になっていくんやけど、反対に三國はなにもしないほうがよかったと思う。妻の怨念を感じて、自分の悔いを静かにかみしめる…そういうラストのほうが印象に残ったと思うけどな。

Y木:なるほど。それでは怖くないんとちゃう?

S原:そうなんやけどな。どうも惜しいです。

Y木:次の「雪女」は?

S原:仲代達也主演です。ストーリーは昔話のそのまま。子供の頃、よく絵本を読んだわ。

Y木:絵本と比べてどうやった?

S原:絵本のほうが怖かった(笑)

Y木:あかんやん。

S原:いや美術はすごいよ。背景が、わざといかにも「絵」って感じやねん。奇妙な感じがするし凝ってるで。でも、肝心の話がな。もう、みんな知っている話やん?

Y木:まあそうやな。

S原:雪の場面とか、ええ感じやねんけどな。どうも盛り上がりがない。平坦やねんな。

Y木:ふーん。「耳なし芳一」は?

S原:最初に源氏と平家の海上の合戦があるねんけど、ここはすごいお金がかかっている。でも、とくにダイナミックではないという。

Y木:あかんがな。

S原:でも、合戦のあとの寺の場面は良いよ。この寺は、平家一門の供養のために建てられたのよ。で、そこに芳一という琵琶の名人がいて……まあ、この話もみんな知ってるよな。

Y木:そうやな。体中にお経を書くやつやろ。

S原:うん。耳だけ書き忘れて、やな。これは、すごくしっかり作られてるねん。奥行きのあるセット、凝った照明、演技も自然で上手い。ただなあ……話が面白くないやん?

Y木:ハッキリ言うなあ(笑)

S原:小学生やったら怖がるかもしれんけど。でもなあ、小学生はこの映画は楽しめないんちゃうかな。

Y木:最後の「茶碗」は?

S原:これが一番不思議、というか変やった。主人公は、ある家の家臣です。あるとき、年始廻りの途中で茶店にはいる。そこで、出された茶碗の中に、若い男の不気味な笑い顔を見るねん。茶碗を何度とりかえても、同じ顔が現れるのよ。

Y木:ほう。

S原:主人公は、気味悪く思ったが一気に飲みほす。ある日、宿直をしている主人公を、見知らぬ若い侍が訪ねて来る。主人公はその顔をみて驚く。それは、茶碗の底の不気味な顔だったから。

Y木:おお、ミステリー風やん。

S原:で、主人公とその男は問答の末、主人公は男を斬るが、男は音もなく消えてしまう。翌日の夜、家に帰った主人公の元に平内の家臣を名乗る三人の侍が訪れてきます。なんと、主人は、主人公に斬られて療養中であり、来月16日に必ず恨みを果たしに来る、と告げる。主人公はカッとなって槍を手に取り、三人に斬りかかるけど、彼らは消えては現れ、また消えては現れと主人公を翻弄し続けます。

Y木:それで?

S原:ここで話が変わるねん。1899年、この「茶碗の中」を執筆中の作家の話になります。その作家の自宅を版元が訪ねてくる。応対したおかみさんは、ついさっきまでいたはずの作家を探しますがどこにもいません。そのあと、おかみさんの絶叫を聞き付けた版元は慌てて駆け寄ると、おかみさんは水瓶を指差しています。その水瓶の中を見てみると、水の中には何と作家が映っており、2人に対して手招きをしていました。作者の机には「人の魂を飲んだ者の末路は…」と記された、書きかけの原稿が置かれている…おしまい。

Y木:ふーん。変な話やな。

S原:個人的には、これが一番面白かった。まあ、豪華なセットや時代劇風の怪奇話を楽しむタイプの映画やけど、どうかなあ、ちょっと凡庸なような……こういうことを言うと、日本映画マニア・研究家から、いろいろと突っ込まれるんかいな。

Y木:それは仕方がないで、人それぞれやから(苦笑)

S原:さあ、みなさん。美術やセットは豪華でテレビの時代劇とは比べ物になりません。でも、テレビの時代劇のような良い意味でのケレン味がないような気がしますねえ。当時ヒットしなかったのもよく分かります。映画としての完成度は高いので、あとは好き好きでしょう。というわけで、古い映画云々は関係なく、人を選ぶ作品だと思います。興味のある方のみ、どうぞ~!