あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

舞台のDVDを観てみる!「天国への会談」(2012)の巻

演劇ユニット イレブン☆ナイン Vol.9 「天国への会談」

S原:今回はこちら。「天国への階段」ではなくって「会談」です。

Y木:ほう。

(あらすじ)
ある日曜日の夕方、喫茶「楽園」では、常連客である草野球チーム「柴又タイガース」の幼馴染み5人組が、今日も試合に負け、責任の擦り合いをしている。そんな中、突然の事故によって、5人全員がこの世を去ることになり、天国でも地獄でもない、天界の分岐点に行ってしまう。そこには得体の知れない天界の使者ルカと手下のデブ君とヤセ君がいて、5人に、天国と地獄を話し合いで決めさせようとする。しかも、天国に行けるのは4人、残る1人だけが地獄。お互いをよく知る幼馴染の5人は、戸惑い、混乱し、極限状態に追い込まれ、究極の選択をすることに…。果たして5人の運命はいかに!?

 

S原:これは、演劇ユニットイレブン☆ナインが主宰。作・演出:納谷真大。ストーリーは結構面白い。

Y木:へえ。

S原:コメディリリーフもあるし、クライマックスにむけての展開も上手く出来てます。

Y木:よかったやん。

S原:でもなあ……

Y木:なんやねん。

S原:これは僕だけが違和感を感じてるんかもしれんけど……役者たちが、すごい大きな声で演技するねん。とにかく怒鳴り声や金切声が疲れたわ…

Y木:そういう演出やろって。

S原:もちろんそうなんやけど。なんと言えばいいのか、怒鳴らなく良いような普通の会話でもやたらと声を張って、気張るねん。とにかくセリフが聞き取りにくい。ストーリーが呑み込めなくて、何度か巻き戻して会話を聞き直したわ。これでは、ちょっと内容に集中できないです。

Y木:生の舞台では大丈夫やったんとちゃう?DVD映像になったから、音声が良くないとか。

S原:だとすると、やっぱり生で観るほうがええんやろうな。ただ、セリフが理解できないと、次々と登場してくるキャラクターかどんな性格なのかどんな人間関係がきちんと理解できないのよ。そのまま、どんどん話が進んでいく……なんか自分だけ置いていかれるような気がして、ちょっと寂しかった。マラソン大会で周回遅れしてるみたいな(苦笑)

Y木:それで、話は?

S原:上のあらすじの通りです。草野球チーム「柴又タイガース」のメンバー5人が、試合後になじみの喫茶店「楽園」に来るところからスタートします。喫茶のママは旧知の仲で、優しく歓迎してくれます。いろんな会話をしているうちに、爆発(ガス爆発)が起こり、5人は不思議な空間(ただし舞台は喫茶店のまま)にいることに気付きます。そこに、お笑い芸人のような衣装や振る舞いをする「天界の使者」が登場します。喫茶のママそっくりな女性ルカと、ツナギ姿の3人衆 大・中・小です。ここのやりとりがコメディ風のやり取りになるねんけど、彼らは5人に対してあっさりと「皆さんは死にました」と伝えます。

Y木:それで?

S原:ルカは、死んだ人を天国か地獄か振り分る係やねん。でも、振り分け結果を書いた用紙(生前の5人の行動を記録した書類)を紛失してしまい、誰を天国と地獄に送ればいいのかわからない。部下の1人が「たしか、天国が4人地獄が1人だった」と言い出す。ルカは、紛失したことが自分の上司にバレると、バイトに格下げになることを危惧する。死んだ5人に対しても、紛失したとは言いにくいから、「話し合いで、天国と地獄に行く人を決めてくれ」と5人に無茶な提案をします。

Y木:まさに「天国への会談」やな。

S原:そうそう。『5人のうち、1人が地獄に行かなければいけない』という現実に、5人は困惑する。やがて、5人の間で自己弁護と相手へのあらさがしが始まります。「自分こそが天国にふさわしい」「おまえは、こういうところがダメだ」と言い合います。

Y木:あーそういうやりとりが、この芝居の面白いところなんやろうな。

S原:ただ、やっぱりこの会話も、怒鳴りあいというか大きな声で話し合いが続いていく。ここは観客に笑ってもらうセリフも多いし、そんなに怒鳴るような場面でもないように思うんねんけど…

Y木:おまえ、普段B級映画ばっかり観てるから、感覚が狂ってるんとちゃうの?

S原:そうかもなあ。で、後半になると、前半のドタバタ風からテイストが変わるねん。喫茶店「楽園」のママ(アヤ)のお母さんが、20年以上前にバイク事故で亡くなっているのよ。5人は実はそのバイク事故に関わっていたことを告白する。

Y木:交通事故の真犯人ってこと?

S原:じゃなくて、「ブレーキが壊れたことを知っていたのに、言えなかった」とかそういう類やな。それで、5人全員が「おれたちは天国に行く資格はない」「昔から、ずっと一緒の仲間だったから、5人そろって地獄に行く」「5人とも天国に行かなくて結構」と言い出す。ところが、ルカはあくまでも「天国4人、地獄1人で決めてくれ」と言って…というドタバタが繰り広げられます。

Y木:なんか舞台っぽくて、面白そうやん。

S原:ここで、1人が「おれが地獄に行く!だから、おまえらが天国に行ってくれ!おれはそれで十分だ!」と言い出す展開があるねんけど、ここもまた大声で叫ぶ。また、この場面が長い…(苦笑)

Y木:最後はどうなるの?

S原:失くしていた書類がみつかる。そこには「全員地獄」と書かれている。

Y木:あー、なるほど。

S原:いろいろあって、結局5人は地獄に行くことにする。ひとりずつ「階段」を登って地獄に行く、というか舞台から消える……

Y木:それで、おしまい?

S原:じつは、ここから見どころ。いままでのバイク事故や、ルカという存在が伏線になって、どんでん返しになる。ここから先を言うのは、いまから舞台に観る人に失礼やと思うから言いません。でも、伏線を回収していく手法は上手いと思ったで。

Y木:今回は、面白かった部分とイマイチな部分がわりと混在している感じやな。

S原:そうやなあ。もう究極的には好き嫌いになってしまうんやろうけど。役者は大量のセリフをすごいスピードで話すから、大変やったと思う。演技もみんな上手い。でも、肝心の話がスッキリと理解できないから、すごく歯がゆいまま劇が終わってしまった。

Y木:結論としては、おすすめしないってこと?

S原:そんなことないよ。機会があれば実際に観ても良いと思うで。これネットで検索してて知ったんやけど、当時、会場で配布したチラシには作・演出の納谷真大が「古かろうが、ベタであろうが、これが、イレブン☆ナインの原点です、僕の原点です。」と書いてあったらしい。

Y木:なるほどな。

S原:確かにベタでも古くても全然OKやねん。ただ、今回は演出が肌に合わなかったかなー。何度も言うけど、これは僕だけの感じ方かもしれん。さあ、みなさん。おそらくDVDで観るのと生で観るのとでは、感じ方がかなり違うような気がしますが、なかなか興味深い作品なのは間違いないです。ぜひ、トライを~!