あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「生き人形マリア」(2014)の巻

生き人形マリア [DVD]

S原:さあお待ちかね!今回はみんなが大好き人形ホラー!

Y木:別に好きじゃありませんが……

(あらすじ)

バス事故によって愛する娘を失ったフェイス、フリオ、ステラ――悲しみに暮れる3人の前に精神科医ノロ博士が現れた。彼は、時間をかけずに耐え難い悲しみを癒すためだと言って、それぞれの娘の姿に似せた等身大の人形を置いていくのだった。亡き娘マリアそっくりの、まるで生きているかのような姿に、始めは強い抵抗感をぬぐえなかったフェイスも、やがてその人形に我が子同然の愛情を注ぐようになっていく。次第に心の傷も癒え、マノロ博士の実験は成功したかに思えた。しかし、時を同じくして、3人の身の回りでは不吉な事件が起き始め…。

 

Y木:これはパッケージが怖いな。昔、梅田の映画館の前にあった「ゆりかごを揺らす手」(1992)の看板絵くらいにキモイわ。(S原注:当時は筆で描いた大きい看板もあった)

S原:あーあれはトラウマになるレベルやった。『映画よりも看板の絵のほうが怖い』という(笑)それはええとして、この映画はですねえ、久々に当たりと言っていいと思う。

Y木:へえそうなんや。

S原:野球で言うと、止めたバットでファーストの頭を越えてヒット、さらに送球が打者にあたって2塁打になるみたいな感じ。

Y木:わからんわ。偶然面白くなったってことかいな?

S原:そうやな。この映画はyoutubeで予告編も観れるし、映画ブログでも結構取り上げられてるから、イメージはつきやすいと思うんやけどな。音楽で言うとミクスチャーロックとかプログレをやろうとしているけど、演奏技術がともなっていないバンドのミニアルバムみたいな感じやねん。

Y木:それもわからんわ。というか、今回は例えが多いな。もっと映画の感想をズバリ言ってくれ。

S原:単純に言えば、出来の悪い人形ホラーです。

Y木:やっぱりな。

S原:なんやけど、もう突っ込みどころが多すぎて、これはこれで一つの完璧な宇宙を形成してるかも、と思ってしまうだけのパワーがあるねん。

Y木:全然わからん。

S原:なんというのか……いろんな要素があるのよ。まずは人形ホラー。それから親子の愛、あとは子を失った悲しみ。このへんまでは分かるやろ?ほかにもあるで。不倫相手への憎しみ、同性愛者としての苦悩、霊媒師の病的な異常性、幼くした死んでしまった男児の無念さ、しかも男児にはサイキックパワーがあったかも、という裏設定、キリスト教の教え(神の救いと禁忌)、これらがもつ鍋みたいにグツグツと煮込まれた上に、フィリンピン特有の湿気ムンムンで展開されます。

Y木:なんかようわからん。伏線ってこと?

S原:いや伏線はほとんど回収されません。投げっぱなしジャーマンです。たぶんそういう上手い演出には興味がないんとちゃうかな。

Y木:で、結局は怖いの?

S原:怖いよ。いや映画が、じゃなくて人形の出来の悪さが。

Y木:バカにしてるがな。

S原:ちゃうねんって。ほんまに観たらわかるって。ストーリーは上の通りなんやけど、頭のおかしい博士が「あなたの娘の代わりに持ってきました」という場面があるねんけどな。その人形が全く娘に似ていない、というかこの世の誰にも似ていない子供の人形やねんで!

Y木:出来が悪いのは低予算なんやからしゃーないがな。

S原:ちゃうねんって!この人形の目の周りにまつげがブワーと生えてるねん。目の下にもブワーって(笑)そのでっかい人形が箱からぬ~ッと登場する場面は一度見たらほとんどの人は忘れへんと思う。

Y木:怖がらせたいんか、笑わせたいんかどっちやねん。

S原:そうやねん!どっちか全く判断つかへんのよ。そこが不気味でな。観ている間ずっと「これはコメディ?ホラー?それとも人間ドラマ?」とクエスチョンマークが頭の中をぐるぐると回るという。

Y木:観てないからわからん。で、肝心の人形のシーンはどうなん?動くんやろ?

S原:動きます。でも、そこは子供が演じています。通常人形ホラーは、カクカク動くのが怖いねんけどな。もう臆面もなく子供が走り回ります(笑)あのですねえ、「チャイルドプレイ」(1988)でも「ドールズ」(1986)もそうなんやけど、映画の前半は「人形が動いてるかも(生きているかも)?」と主人公たちが気づいていく過程が丁寧なほうがええねん。劇中では人形自体はあまり動かない(人形のまま写す)ほうが、逆に気味悪いのよ。ところが、この映画では登場したとたんの「ニヤリ」と不敵に笑います。この演出は逆に怖くないのよなー。

Y木:でも面白いんやな。

S原:面白い…というか印象に残ります。それだけでも観る価値はあるんとちゃうかな。だって、しょーもない映画って次の日は忘れてるやん?

Y木:まあな。

S原:さあ、みなさま。この映画だけは観てもらうしかありませんが、ぼくは嫌いになれません。もうアジア特有のバタ臭さ全開の部分と特に必要と思えない設定(不妊、不倫、同性愛など)が混ざり合った独特の世界が展開されます。どこにでもあるようなハリウッド映画に食傷気味のあなたにおススメです。たぶん、10年後に販売はされていない可能性が高いので、ワゴンコーナーで見つけたらマストバイですよ!