S原:さあ、今回のアイデア勝負映画はこれ!
Y木:族議員…ゾク議員…?ダジャレやん。
(あらすじ)
古沢優の人気コミックを、高木淳也主演で実写ドラマ化。元暴走族の総長・蜂谷省吾は、可愛い後輩たちが走りやすい街作りのために役所へ怒鳴り込みに行く。しかし、市会議員のドン・菊池に門前払いを食らい、怒りに満ちた省吾は市会議員に立候補する。
S原:これは、「元暴走族の総長が市会議員に立候補したら」というアイデアですな。
Y木:「市会議員に立候補したら」って、後ろにそびえたっているのは、国会議事堂ですけど(ため息)
S原:こういう映画を製作する人たちにとっては、国会も市議会も一緒なんちゃう?
Y木:適当やなあ。それで、これはどうやったの?
S原:意外と面白かったで。
Y木:えー!
S原:いや、観る前のハードルが低いから(笑)それに漫画原作やから、元がしっかりしているというか。でも、この映画ではちゃんと面白さのコンセプトをハッキリさせていて、そこは良かったで。
Y木:面白さって、元暴走族の総長が市会議員に立候補する、ということ?
S原:イエース。
Y木:「老いた政治家に物申す、若い力で勝負!」ってやつやな。
S原:いや、40すぎのおじさん(高木淳也)やったで。
Y木:おいおい、40すぎて元総長とか、やめてくれよ。
S原:まだ仲間を引き連れてたけどな(笑)ぼくらが、昔の仲間と集まって昔と同じ映画・漫画ネタで盛り上がるようなもんやろうな。
Y木:そんなノリで選挙にでるんかいな。
S原:そこが面白さになるんやと思う。要するに、オツムの弱い奴(主人公)たちが、悪い奴ら(地元の利権で甘い汁を吸っている議員)に挑むっていう構図は、マンガ的で面白くなる要素がいっぱいあるやろ。本宮ひろしの「やぶれかぶれ」みたいな。
Y木:あーあれはメチャクチャやったな(笑)でも、あれは作品自体が実験的というか野心的やったやん。あんな感じじゃないやろ?
S原:違います。フォーマットは、いつものVシネマ系です。チープなんやけど、とにかく、勢いだけで押し切ろうとする主人公が楽しいねん。
Y木:まあ選挙のやりかたなんか知らんやろうしな。
S原:うん。だから知人のスナックを勝手に選挙事務所にして迷惑がられたり、街頭演説で矢沢永吉みたいな白いマイクで街頭ライブをして、失笑されたりします。でも主人公は、元総長らしく熱い男で勢いよく突き進んでいく…というわけ。ただ、ちょっと残念なのが、その勢いが意外とこじんまりしてるのよ。票にならない田舎のほうに行って、畑仕事を手伝うとか、面白いエピソードが上手く生かされていない。いまはSNSがあるやろ?票にならないはずの田舎での活動が、主人公の意に反してネットで拡散されて主人公の知名度が上がるとか、もっと工夫すれば荒唐無稽さとリアリティの融合ができたと思うんやけど。
Y木:毎度毎度、こんな映画に対して「こうすれば面白くなるのに」と真剣に考えるおまえって……偉いと言うか頭がおかしいというか。
S原:でも、ほんまに惜しいねんって。どうせやったら、面白くしてほしいやん。
Y木:大丈夫やって。大半の人はこの映画を観ないから。それで、結局は当選するの?
S原:落選します。
Y木:へー、そこはリアルなんやな。
S原:でも、他の候補が心筋梗塞(脳梗塞?)で倒れて、あっさりと繰り上げ当選します。
Y木:あー、そこはリアルじゃないんや(笑)
Y木:そのあと、議員になって大暴れ!っていうわけやな。
S原:そこまで話はいかんかった。「さあ、議会に乗り込むぜ!」ってところでおしまい。
Y木:それ、少年ジャンプの打ち切りやがな。
S原:パート2があるみたい。
Y木:あーそういうことね。買わへんの?
S原:買わへん。だって……ええ年してこんな映画を観てもしゃあないやろ?
Y木:お・ま・え・が・言・う・な!