あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

70年代のややカルト映画特集!「呪われたジェシカ」(1971)の巻

The Cursed Jessica DVD

Y木:この映画は知らん。

S原:ぼくも、タイトルしか知らんかったけど、これはなかなかの佳作やった。

(あらすじ)

神経障害に苦しむ女性の周囲で起こる様々な怪異を描いたホラー。神経障害の療養のため、ジェシカは夫とその友人らと田舎町へやって来た。そこでエミリーという少女と出会い、それ以降、彼女の周囲で奇怪な出来事が起こり始める。

 

S原:これは思いっきり時代を感じる映画やけど、なかなか楽しめたわ。

Y木:そうなんや。ホラー?

S原:一応、そうやな。出だしがすごくスローでな。主人公(ジェシカ)は心労で、ちょっと気が滅入っている状態です。療養のために、夫と友人(男性)と3人で田舎の一軒家に来るわけ。しかも霊柩車で(笑)

Y木:なんで霊柩車?

S原:よくわからんけど自家用車らしい。しかも主人公は墓石に紙を貼って墨でデザインをなぞる拓本(墓石拓?)が趣味みたい。

Y木:変な趣味やな。

S原:主人公は嬉しそうにながめてたけどな。さて、引っ越し先の一軒家に着きます。ここの外観とかムードが、本当に不穏で怪しいのよ。幽霊屋敷というか。おいおい、こんなところに住んでもリフレッシュにならんって!と突っ込みたくなります(笑)

Y木:まあホラーはムードが大切やから。良いロケ地やん。

S原:そうそう。この映画の魅力はロケ地やねん。一軒家もそうやけど、湖とか街もよいねん。普通のどこにでもある場所なのに、なんとなく不穏な感じがするのよ。ここは感心したわ。

Y木:ほう。

S原:さて、家に着くとじつは先客がいます。ヒッピー風の若い娘で、無人だと思って勝手に屋敷にあがりこんでたわけ。謝って出ていこうとする若い女性を主人公は引きとめて一緒にご飯を食べたりする。結局、主人公夫婦+男1+女1という4人組で暮らし始めます。

Y木:それはええねんけど、お金は?どうやって生活するの?

S原:この一軒家を買ったので、ほとんどお金がありません。なので、屋敷にある骨とう品を売りに行きます。そのなかに古い写真があって、ヒッピー娘に似た女性が写っています。リンゴ農園(?)も屋敷にあって、男性はトラクターで農作業をはじめます。なんとか軌道にのりはじめた共同生活ですが、主人公の精神はなかなか安定しない。

Y木:幽霊屋敷のせいってこと?

S原:主人公は、家にも町にも気味の悪い雰囲気を感じたり、湖の底に人(死体?)がいて足を引っ張られたりする。でも心の病を患っているから、本当に起こったことなのか、主人公の幻聴・幻覚なのかは観客にはわからない。この辺は上手い演出やな。

Y木:へえ、結構面白そうやん。

S原:でも、面白いのはこのへんまでやった(笑)結局、映画はこういう雰囲気のまま進むんやけど、単調すぎて面白くなくなっていく。主人公が怖がるのはええねんけど、もうちょっと謎解きというかミステリーの要素がないと、一本調子で退屈やわ。

Y木:いわゆる「謎解き」はないの?

S原:一応、住民全員の首にキズがあることに気づく。どうも、ここは吸血鬼(?)の町ではないかと疑い始める。ここで、いままでの伏線が回収となればええねんけど、あまり上手くなかったわ。そうこうしているうちに、同居人の男性が死んだりして、主人公は1人になってしまう。

Y木:ラストは?

S原:主人公は逃げ出します。湖を渡る船に乗ろうとして冷たく断られる。その船員にも首にキズがあります。主人公はひとりでボートに乗ってこぎだそうとしますが、もう逃げることはできないと気付き、絶望を感じる。それをジッと無表情でみている住民たち。ここで、おしまいです。

Y木:なるほど。たしかにひねりがないかもな。

S原:さっきも言ったけど前半のムードは捨てがたい。でも、後半になるにつれて失速していく。演出も悪くないねんで。例えば、主人公が人影をみて、もう一度見ると誰もいないという典型的なカットバックがあるねんけど、このへんも安定しているしな。主人公たちをみつめる住民の顔をアップでポンポンと挟む演出も良かったし。

Y木:要するに、雰囲気を味わう映画やな。

S原:そうそう。小説で言えば、ラブクラフトとか、あんな感じやな。あそこまでホラーテイストではないけど、ピーンと神経が張り詰めているような雰囲気は、かなり良いねん。けど、やっぱり最初からクライマックスまで、ムードだけの映画っていうのはキツイなあ。

Y木:ストーリー展開を楽しむ映画じゃないから、しばらくしたら、もう一度見たくなる映画かもよ?カルト映画とかは、そういう感じやん。

S原:かもな。昔少し観たけど気になって再見したというレビューもあるから。でも個人的にはもう一回は観ないような気がする。

Y木:結局、おまえとしてはおススメなの?

S原:うーん、薄味とわかって観る人にはおススメします。「知られざる名作」とか「カルトホラー」と期待しすぎると、肩透かしかも。でも、こういう映画も最近は珍しいから、楽しかったのは間違いないです。みなさん、興味のある方は、人を不安にさせる効果音(音楽)や、怖そうな雰囲気だけで押しまくる映画ですが、機会があればぜひ味わってくださいませ~!