あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「シャッターリフレクション」(2008)の巻

シャッター リフレクション LBX-060 [DVD]

S原:今回はこの映画ですよ。

Y木:B級サスペンスものやな。

(あらすじ)

脚本家のアリスは誰にも干渉されずに執筆活動をするため、郊外にあるヴィクトリアン調の邸宅に身を寄せる。アリスは、部屋から前の住人ルーシーのホームビデオを見つける。ビデオには新婚のルーシーの幸せな光景が映し出されていた。独占欲の強い夫のデイビットは、徐々に執拗にルーシーを追い詰めていく。衝撃的な映像を観てしまったアリスは、幻想を見るようになり精神的に不安定になっていく…。

 

S原:これは、たしかにB級やねんけどな。かなり真面目に丁寧に作られていて、驚いたわ。

Y木:いかにもB級っぽい「雑な作り」じゃないのね。

S原:違います。大真面目です。ただしあまりにも丁寧なので、地味すぎて面白くありませんねん(笑)

Y木:そうなんか。なかなか映画作りは難しいな。

S原:いやー出だしはええ感じやねん。スローテンポで、これから起こるであろう不吉な雰囲気がじわじわと迫っています。ところが、そのスローなまま、とくに予想を裏切ることもなく最後までいくので、ちょっと眠たくなるのよ。

Y木:丁寧なのも善し悪しってことか。

S原:そうやな。話も予想通りに展開するねん。主人公のアリスが、親友とともにかなり田舎にある大きな一軒家に向かうところがオープニングです。アリスはそこに住むことになります。友人はアリスを心配しつつも帰ります。実は、ストーカーっぽいDV元恋人(刑務所から出所予定)に住所を知られたくないので、誰もいない山中の一軒家に住むことにしたのです。アリスは、脚本家で仕事に集中するという目的もあります。さっきも言ったけど、このへんの雰囲気はすごく丁寧でゆったりムードです。自然の中にポツンとある屋敷も良いです。

Y木:ほう。

S原:ところが、アリスが一人で暮らし始めた途端、誰もいないはずなのに浴槽にお湯がたまっていたり、パソコンに気味の悪い文字がでてきたりします。アリスはひょんなことから、ここに住んでた人が残したと思われるホームビデオのテープを見つけます。なんとなく観始めると、幸せそうな夫婦が映ります。夫がビデオマニアらしく、片っ端から映像(とくに妻の様子)を撮っています。はじめは、笑っている妻(妊娠中)ですが、夫があまりに粘着質なためだんだんと疲れてきます。そのうちに「他の男と浮気してるんだろう」「俺の子供じゃないんだろう」と常軌を逸した行動になります。しかも、自分が妻を責め立てている場面も、自撮りしています。

Y木:気持ち悪いなー。

S原:主人公は、この夫婦がどうなったのか気になるから、どんどん見続けます。恐怖新聞を読んでしまうようなもんやろな。

Y木:それはちゃうような気がするけど。

S原:要するに、ビデオを見て「気の狂った夫が、妻を殺したらしい」「庭に埋めたらしい」「夫は生きているみたいだ」と分かる。と同時に「もしかして、その夫はこの屋敷に隠れているんじゃないか?」と主人公は疑うわけ。

Y木:なるほど。それで、ほんまにその夫がおるの?

S原:いました。隠れていました。そいつが、今度は主人公を殺そうとします。前の妻を浴槽で殺したと同じよう浴槽で殺そうとします。プッツン野郎なので、話は通じません。

Y木:それで?

S原:ここからが、わかりにくい。結局、親友が助けに来て、水のない浴槽に主人公が一人で倒れているところを見つけられる。いままでの恐怖場面が、現実だったのか、主人公の幻想だったのか、ただの勘違いだったのか、主人公の書いた脚本が映像化(妄想化)されていただけなのか、いろいろな暗示の場面があるけど、結局はハッキリしないまま終わる。

Y木:そういうラストか。

S原:おそらく、多重構造というか複雑で何通りにも伏線が生きるような演出を狙ったんやろうと推測できるねんけど、ただ単に分かりにくいだけやったわ(苦笑)でも、全体のムードは良いです。ムード以外は、うーん……って感じやな。

Y木:なるほどな。

S原:ただ、この映画は、ちょっと「噂」というか「訳あり」やったみたい。

Y木:なに?

S原:主演のブリタニー・マーフィが、この映画が遺作で32歳にして亡くなったんやけど、この作品の風呂場のシーンが彼女が亡くなった状況とそっくりなんだとか。

Y木:へえ。

S原:もちろん偶然やろうけど、ポスターを差し替えする影響があったらしい。でも、下世話な配給会社やったら、逆に宣伝に利用したやろな。副タイトルに「ブリタニーの霊に捧ぐ…」とか。

Y木:そりゃ、「ポルターガイスト3 少女の霊に捧ぐ…」(1988)やろ。

S原:あれは、とんでもない映画やったなあ…(遠い目)まあ、そういうゲスな売り方をしないだけ良心的ともいえる。けど、おかげでほとんど誰も知られないまま、ひっそりとワゴンコーナーで売られる運命になるという(笑)

Y木:どっちがええかは、おれには判断つかん…

S原:さあ、みなさん。丁寧な作りで雰囲気は良いです。ぼくには理解不能でしたが、たぶん多様な解釈(正解?)があるんだろうと思います。ストーリーは後回しでOKなので、雰囲気重視の映画を観たい人はぜひどうぞ~。