あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

70年代のややカルト映画特集!「マッドストーン」(1974)の巻

マッドストーン

S原:さあ、今回からしばらく70年代のややカルトというか、マイナーな映画をまとめて紹介します。トップバッターは、あの「マッドマックス」(1979)に影響を与えたというこちら!

Y木:へえー、そうなんや。

(あらすじ)

オーストラリアのシドニー市の中央にある公園で、公害に反対する演説をしていた環境保全運動の推進者が何者かに狙撃された。犯人は、現場近くにいた男に犯行を見られたと思い込み、その男が所属する暴走族グループのメンバーを次々と殺し始めた。殺された“倉庫屋”の葬式では“死神”による感動的スピーチが披露され、亡骸は立ったまま埋葬された。警察は、若手刑事ストーンを暴走族メンバーに加え捜査させることにし、彼はグループのリーダーである"葬式屋"の命を救った見返りにグループ入りを許され、徐々に暴走族の生活になじんでいった。一見堕落に見えながら社会の虚像を憎み、本音で生きる暴走族たちにストーンは親しみを覚えていく。ある日、グレーブは対立する暴走族グルーブと衝突をおこし大乱闘を展開する。

 

Y木:「マッドマックス」に影響を与えた……ほんまか?

S原:いやーどうやろ?かなりテイストはちゃうと思うんやけどな。

Y木:これ、映画としてどうなん?おもろいの?

S原:うーん……映画の作り自体は、ハッキリ言って下手やと思う。無駄な場面は多いし、テンポも悪い。ストーリも盛り上がらない。キャラに感情移入もしにくい。

Y木:あかんやん。

S原:でも、妙に印象に残るのも確かやねん。

Y木:そのへんがカルト的な人気がある所以やろうな。

S原:確かに、この時代のカルチャーが凝縮されたような空気は感じるで。あとは、みんなでオートバイをぶっとばすカッコよさかな。気分はブランキージェットシティ!

Y木:おれ、苦手やわー。

S原:ぼくもバイクをぶっ飛ばすとかは好きじゃない。あ、ブランキーは最高やで。

Y木:昔に、おまえから何回も聞かされたから知ってるわ。

Y木:劇中にでてくるのはカワサキ製のバイクらしくて、バイクマニアにはたまらんらしい。

Y木:要するに暴走族の映画ってこと?

S原:一応、サスペンス風かな。高度の汚染で海は釣りも泳ぐことも出来ないという世界で、オーストラリアが舞台です。政治家(?)が公園で公害反対の演説をしています。暴走族「墓掘り軍団」のメンバーがバイクに乗ってやってきます。政治家をからかったりします。ところが突然、政治家が何者かに狙撃されます。現場のすぐ近く(狙撃犯のみえる位置)に、暴走族のメンバーの1人「ガマ蛙」がいましたが、こいつはラリッてて何が起きたのか理解していません。現場がパニックになったすきに、暴走族メンバーは、ガマ蛙を拾って逃げます。暗殺犯人は、どうも暗殺のプロみたいやねんけど、ガマ蛙に犯行を見られたと思います。そして「墓掘り軍団」のメンバーを次々と殺し始めて、、、という話やな。

Y木:ほう。

S原:結局、仲間が殺されたので「墓掘り軍団」たちは犯人に復讐しようとします。そこに、若い刑事(ストーン)がやってきます。自分が刑事だと白状したうえで、自分を「墓掘り軍団」メンバーに加えてくれと頼みます。要するに、自分の手で犯人を逮捕するためやな。なんだかんだあって、ストーンと「墓掘り軍団」はタッグを組みます。ストーンは、「墓掘り軍団」メンバーと一緒にいるうちに、彼らにシンパシーを覚えます。自堕落なところはあるが、社会の不正義を憎んでいるのは、刑事も一緒じゃないのか?と考え始めます。

Y木:なるほど。

S原:一方、暗殺者は敵対する暴走族「黒鷹軍団」の名を使って、彼らをおびき寄せます。いろいろあって、「墓掘り軍団」が犯人(黒幕)を追いつめて殺そうとします。間一髪で、ストーン刑事がやってきて「これは警察の仕事だ」と主張して、逮捕します。「墓掘り軍団」たちは、仲間の復讐が出来なかったのです。

Y木:暴走族たちは、納得いかんやろ。

S原:いきません。そしてラストシーン。主人公は、妻(恋人?)に「暴走族たちにも流儀はあり、仁義がある。おれはそれに共感している」みたいなことを言っていると、「墓掘り軍団」たちがやってきます。そして、問答無用で主人公を痛めつけます。瀕死の主人公を抱き、泣きながら妻は警察に電話をしようとします。ところが主人公は「サツには電話でするな…」と言って、電話を切ります。そのまま死にます。おしまい。

Y木:えー、そんなラスト?暴走族の逆恨みやん。

S原:アウトローと警察は分かり合えないってことなんかもしれんけど、なんか変な映画やったわ。肝心のバイクの場面も変なBGMが流れたりするし、爽快さというよりも、迷走気味かもしれん。あーそうそう、暴走族メンバーの名前がユニークやねん。例えば、「葬儀屋」「スケこまし」「穴ほり」「ガマ蛙」「極道」「死神」「ウシミツ」「倉庫屋」「すっ飛び」「ラリ公」という名前やで。ここまでもスゴイけど、「ゴミ箱」や「お通夜」…どういう意味やねん。

Y木:いやー、70年代丸出しのネーミングセンス、ええ感じやん。

S原:メンバーの女性にいたっては「やらせ」(笑)

Y木:それはあかんやろ……

S原:あとこの映画の面白いところは、この時代特有のサイケな映像や音楽やろうな。もう好きな人にはたまらないと思うけど、普通の人がみたら「なんか変な画面やね」って突っ込まれておしまいやろな。みんなで裸になって海に入る場面は、モザイクなしで丸見えやし。これまた、みんな汚らしい裸やねん。

Y木:見たくないなあ。

S原:あー思い出した。面白い場面があるねん。ガマ蛙やったかな?暴走族のメンバーの1人が、相手に向かって一言。「バイちゃ」(笑)

Y木:ええ感じやんか(笑)

S原:思わず噴き出したわ。あんまりおもしろいから、次の日に仕事場で帰るときに「みんな、お疲れさん。バイちゃ」って言ったけど、シーンとしたままやった。ユーモアの欠片もない職場やで、ほんま。

Y木:正しい反応やと思うで。

S原:あと感心したのは、DVD特別版が出たときのバージョンは、「墓掘りエディション」。いやー販売会社の宣伝部のプライドをみたで。

Y木:何も考えてないだけやろ。

S原:さあ、みなさん。これが「マッドマックス」の原型かどうかは分かりませんが、「バトルトラック」(1982)の原型が「マッドマックス」なのは間違いないでしょうね。映画としては失敗作のような出来ですが、妙に惹かれる不思議な映画ですよ。では、これからもこのブログをよろしく!バイちゃ!