あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」(2015)の巻

Everyone Calls This, Steel Zeeg, Blu-ray, Japanese Edition

S原:今回は、意外と観ていない人が多いこの映画!

Y木:鋼鉄ジーグか。

(あらすじ)

舞台は、テロの脅威に晒される現代のローマ郊外。裏街道を歩く孤独なチンピラ エンツォはふとしたきっかけで超人的なパワーを得てしまう。始めは私利私欲のためにその力を使っていたエンツォだったが、世話になっていた“オヤジ"を闇取引の最中に殺され、遺された娘アレッシアの面倒を見る羽目になったことから、彼女を守るために正義に目覚めていくことになる。アレッシアはアニメ「鋼鉄ジーグ」のDVDを片時も離さない熱狂的なファン。怪力を得たエンツォを、アニメの主人公 司馬宙(シバヒロシ)と同一視して慕う。そんな二人の前に、悪の組織のリーダー ジンガロが立ち塞がる…

S原:さあ、みなさんご一緒に!チェンジ・サイボーーーーグ!!

Y木:かましいわ。

S原:いやー21世紀になって鋼鉄ジーグの映画が観れるとは感慨深いで。で、結論から言うと、これは面白いよ。

Y木:えーほんまかいな。

S原:期待せずに観たかもしれんけど、すっごい楽しめた。これアメリカでなくイタリア映画やねん。なので、男優陣がみんな濃い人ばっかり(笑)あと、タイトルが超かっこいいよなー。あなた、鋼鉄ジーグって覚えてる?

Y木:おぼえてない。

S原:はあー(ため息)ガンダムも観ない、イデオンには興味がない、ザンボット3のラストも知らない、おまけに鋼鉄ジーグも覚えてないって……なんて空しい人生なんや。

Y木:ほっとけ。べつにアニメ好きでなくもええやろ。というか、鋼鉄ジーグなんかマイナーやがな。

S原:まあヤングたちは知らんやろうな。関節が磁石の超合金が欲しかったなあ……(遠い目)鋼鉄ジーグのデザイン自体は、なんかゲッターロボの悪役メカみたいで、とても正義の味方にみえないところがバッチグーやな。しかも、主人公は社会人なのに、勝手にお父さんにサイボーグに改造されるという(笑)

Y木:なんやねん、その変な設定は。

S原:まあ、当時のアニメとしては異色というかユニークやと思う。

Y木:で、イタリアでリメイクしたと?

S原:ちゃうねん。リメイクじゃないねん。それに、なんというか全編に湿気が充満していてカラッとしていません。別に「変身」せえへんしな。

Y木:え?変身せえへんの?

S原:しません。主人公はチンピラで小汚いオッサンなんやけどな。警察に追われているときに、偶然すごいパワー(おもに怪力)を手に入れます。チンピラ仲間が殺されて、一人娘が残されるねんけど、その娘が鋼鉄ジーグの大ファンやねん。で、「あなたは鋼鉄ジーグになったのよ!」って喜ぶ。この娘が、純真無垢というかちょっとオツムがたりない感じでな。主人公ははじめは放置してたけど、だんだんと情が移って娘のために、マフィア(というかチンピラ)たちと戦うことになる…話はこれだけやねん。

Y木:へえ、そんな話なんや。ウィル・スミスがそんな映画でてなかった?何でもできるスーパーマンみたいな男の話。

S原:「ハンコック」(2008)やな。ぼくは、あれよりも断然こっちのほうが好きです。まあウィル・スミスは、アカデミー賞授賞式で鋼鉄ジーグに変身して、司会者にパンチしてたけどな。

Y木:こらこら。

S原:最近のアメコミ映画もいろいろあるけど、スケールも大きいしアクションもVFXもやたら派手やろ?テーマとか主人公の心意気も「全世界の期待を背負って!」とか「人類の未来のために!」とかジャンプみたいな感じやん。

Y木:まあな。でもそういうもんやろ。

S原:同じヒーローものでも、この映画では一味違います。ほとんどは汚らしい部屋とか汚れた街角が舞台でな。ドラッグの取り引きで金儲けを企んでいる私利私欲にまみれたチンピラばっかりがでてくるのよ。主人公もそういう類やったけど、怪力パワーを得てすこしずつ人間っぽくなっていく。そして愛する人を守るために立ち上がる。ベタと言えばベタなんやけどな。話のスケールが小さいのが、逆に面白く感じたわ。

Y木:観てないからわからんけど、そうなんか。あんまりスカッとしない感じか?

S原:人によるやろうな。単純に「ヒーロー映画」を観たい人にはおススメできません。チョメチョメの場面もあるし。あーそうそう。映画の中盤に印象的な場面があるねん。主人公とオツムのたりない娘が、2人で遊園地にいくねん。そこは定休日なのか無人でな。娘は誰もいない観覧車に乗るねん。それをみた主人公が、怪力パワーで観覧車をゆっくりとまわす。娘は高い場所まで運ばれて、嬉しそうに風景をながめる……この場面はすごいいいのよなあ。

Y木:へえ。

S原:アメリカンな部分もあるけど、やっぱりどこか変化球やねん。レビューをみたら、前半がダルいと書いてる人が多かったけど、そうかなあ。わりと前半からイケたけどな。

Y木:それは好みもあるでしょ。

S原:たしかにな。小汚い小太りのおっさんのヒーロー映画やからな。それに、ぼくは感動した観覧車の場面も貶している人もおるから。

Y木:ラストは?

S原:ちゃんとバトルがあります。でもさっきも言ったけど、派手さで言うとハリウッドとは比べもんにならない。ラストのショットは賛否あるやろうけど、ぼくは感心したわ。続編を意識しているかもしれんけど。よく出来ていると思うで。この映画は、ぜひ観てほしいので詳しくは言いません。

Y木:今回はおススメってことやな。

S原:イエース。さあみなさん。おそらく製作費も少なかったと思いますが、作り手の熱いハートは感じます。誰でも偶然に怪力パワーを持つかもしれませんからね。そういう日のために、ぜひこの映画を観てください。さあ、みなさんご一緒に!鋼鉄ゥゥゥゥ!ジィィィィィィィグ!!