S原:今回はコメディ!
Y木:いかにもハリウッド製コメディやな。
(あらすじ)
いつもドジばかりのキャムは、ある日歯科医のチャーリーと出会い恋に落ちる。しかし彼は“彼とHをすると次の男と結婚できる”という噂のアゲマンならぬ、アゲメンだった! 女性たちはそのジンクスを信じて、夜毎彼に猛烈アプローチ。セックス三昧のチャーリーと、一方で本気の恋がしたいキャム。二人は無事結ばれるのか!?
Y木:これ、軽い気持ちでみれるポップコーンムービーやな。
S原:そうそう、典型的やったわ。久々にこういう映画観たんやけど、ちょっと言いたいこともある。
Y木:なにを言いたい?
S原:それは後で言うわ。さっきも言ったけど、映画としては既視感たっぷりで、キャラクターはテンプレートばかり。この映画では、主な登場人物は3人。デイン・クック⇒女性に言い寄られる主人公、ジェシカ・アルバ⇒ドジっ娘(ヒロイン)、ダン・フォグラー⇒下ネタ担当の脇役。こういう図式なんやけど、これって、俳優を取り換えても成り立つで。たとえば、ベン・スティラー⇒女性に言い寄られる主人公、メグ・ライアン⇒ドジっ娘(ヒロイン)、ジャック・ブラック⇒下ネタ担当の脇役。どう?
Y木:あーなるほどな。
S原:まだ変更可能やで。ヒュー・グラント、キャメロン・ディアス、ジム・キャリーの3人でもOKやろ。
Y木:たしかに。
Y木:なんか1人だけ、違うような気がするけど(苦笑)
S原:個人的には、マイケル・パレ、ダイアン・レイン、リック・モラリスがベターやな。
Y木:そりゃ、「ストリート・オブ・ファイアー」(1984)やがな。
S原:まあ、キャラクターはそんな感じやったわ。ただし、上の内容紹介は、ちょっとニュアンスが違うねん。女性(ジェシカ・アルバ)が主人公になってるけど、反対やねん。男性(デイン・クック)が主人公。映画が始まると小学生(男女10人くらい)たちが遊んでいます。ちょっとエッチな遊びをしているときに、主人公は、ませた女子(ゴスロリ風)を怒らせてしまって、「呪い」をかけられる。
Y木:呪い?
S原:「一生幸せになれない呪い」やな。「あなたは幸せになれない」「あなたとつきあった女性は、あなたの『次に付き合う男性』と幸せになれる。あなたとは幸せになれない」という呪い。
Y木:えらい具体的な呪いやな。
S原:さて現在。主人公(チャーリー)は大人になっていて歯科医です。友人でエロなことばかり考えている(趣味は果物を使った自慰!)スチュという男は、となりで形成外科医をしている。ある日、チャーリーは元恋人の結婚式に出席する。そこでキャムというやたらとドジをする女性(ジェシカ・アルバ)と出会う。チャーリーはキャムにひとめぼれをして運命の人だと確信する。と同時に変な噂が(女性の間で)流れ出す。曰く『チャーリーと別れた女性は皆、直後に自分の運命の相手に出会い幸せな結婚をしている』という噂やな。それが次第に『チャーリーとチョメチョメすると次に運命の相手に出会う』とSNSで拡散されて、チャーリーの歯科医院に女性が大勢押し寄せる。「わたしを抱いて~♡」って。
Y木:いかにもなコメディやな。
S原:自分の事を愛しているわけでなく、ただ単に、次の男性と幸せになるために女性たちがチャーリーに対して肉体関係を迫っていく。でもチャーリーは、本気でチャムを愛したくて…というのがメインストーリーです。
Y木:それで、チャーリーは真実の愛をつらぬくために、女性からの誘惑をことごとく断ち切る、と。
S原:いーえ、チャーリーは、片っ端から女生徒チョメチョメします。
Y木:……なにそれ。
S原:友人のスチュから「女性の助けになるため、ヤリまくれ」「それが女性たちの幸せになるんだ」と説得されて、チャーリーもその気になる。たしか数十人くらいとしてたと思う。ベッドシーンもそのままでてくるねん。ヌードもたっぷりの画面分割で、何十人とチョメチョメしているねんで。
Y木:ほー。
S原:でも、僕は、全く笑えんかった……というか、むちゃくちゃ違和感がある。だって『多数の女性と関係を持つ』ことを表現するにしても、べつに直接に写さんでもええやん。
Y木:まあな。
S原:それに、自分の特異体質(次の男性と幸福になる)を証明するために、ものすごく太った女性をわざと誘って、チョメチョメする。興味がない女性とわざと肉体関係を結ぶねんで。その場面も露骨やし、ユーモアもない。これって女性をバカにしてないか?自分勝手もええとこやん。しかも容姿を蔑んだり、太った女性は男がいないという偏見を前提に話はすすんでいくし。
Y木:女性をバカにするとかじゃないやろ。ただのコメディやん。
S原:そうなんやけど、裸をやたらと写す演出といい、まるで女性全員が「幸福のためなら、興味のない男とチョメチョメしてもいい」と思っているような設定といい、ぼくは好きになれない。ハッキリと言うと気持ち悪い。
Y木:そうかな。観てないからおまえの言う雰囲気がわからんけど、軽く観れればOKってことやろ?
S原:この映画での、ジェシカ・アルバは本当にチャーミングに撮れています。だから、ロマンチックコメディとしてはOKやねん。でも、女性への目線、これはちょっとヒドイって。
Y木:ちゃうねんって。単純に観てて「あーおもしろかった」と笑って、「このあとランチはどこにする?スパゲッティはどう?」と恋人を誘う、それでええねんって(笑)
S原:いや、愛がなければチョメチョメしてはいけませぬ!
Y木:昔の学校の先生か。
S原:なんか砂糖菓子みたいな映画やから、何も考えずにスルーしそうになるねんけど、やっぱり変やで。
Y木:最後は、ハッピーエンドやろ?
S原:もちろん。飛行機の中まで追いかけて、ちゃんと告白しておしまい。ラストはベタでもええねんけど、何度も言うけど、女性に対する敬意がなさすぎる。マンガ的でもOKやし、ぶっとんだ設定もアリやねんで。でも、ちゃんとキャラクターというか「人」を考えてほしい。本当に、世の中のすべての女性が「次の幸せ」のために、知らない男の肉体関係を望むわけないやろ?
Y木:それはそうやけど…そういうマンガ的な設定やからこそ楽しい映画なんでしょ。何度も言うけど、コメディなんやから。
S原:ぼくが、気にしすぎかなあ…でも、ダメなものはダメ。今回の「性」映画特集は、かなりいろんな角度から取り上げたつもりやけど、女性に対する視線はこれが最低ランクです。
Y木:ハッキリ言うなあ。
S原:語弊があるかもしれんけど、官能というか濡れ場を売りにした映画ってあるやん。ある意味、そっちのほうが潔いわ。エロさをみせるんなら、それもOKやで。でも、この映画は違う。「ほらカップルでも楽しめるでしょ」「チョコレートが食べれればええんやろ」「ほら、甘いやろ」という製作者側の意図も見えて余計に萎える。
Y木:なんか、今回のお前はマジメやな。
S原:これは、ぼくがマジメとか関係ないと思うねんけどなあ。さあみなさん、話はコメディで面白いから、サラッと観れます。でも、観終わった後にザラッとした妙な感覚が残ります(たぶん)。さあ、コメディのようなそうでもないような、変な映画が見たい人はチェック、プリーズ!