あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

あなたはどっち?賛否両論映画特集!「ストリングス ~愛と絆の旅路~」(2007年)の巻

ストリングス~愛と絆の旅路~〈ジャパン・バージョン〉 [DVD]

 

S原:今回からしばらく、賛否がでた映画を取り上げますよ。

Y木:これは人形の映画か。確かに賛否がでそうな題材やな。

(あらすじ)

そこはマリオネットが生きる世界。すべての生き物は遥か上空へと伸びる糸で天と繋がっており、頭の糸が切れると死んでしまうのだった。栄華を誇るヘバロン王国では、数百年に渡って激しい争いが繰り返されてきた。ある時、年老いた国王カーロはこれまでの所業を悔い自ら糸を切って自死すると同時に、心清き若き王子ハルに国の平和を託す旨の遺書を遺す。ところが王位を狙う弟ニゾは遺書を破り捨て、その死を敵対する一族ゼリスの長サーロの仕業と見せかける。そうとは知らないハル王子は父の仇を討つため、家臣のエリトを伴い復讐の旅へと出るのだったが…。

 

S原:これはデンマーク映画やねん。凝った映像美をみせる映画と言っていいと思うけど、なによりも製作者側が「勝負」に出て、賛否が起きた映画やと思う。

Y木:勝負って?

S原:この映画では、あやつり人形であることを最大限に生かしてるねん。あやつり人形って糸で動かすやろ?

Y木:そりゃな。

S原:CGで糸を消すことも出来たと思うけど、この映画ではわざと糸を残しているねん。実は、この世界ではキャラクター(あやつり人形)たちは、空から糸でつなっがているという設定やねん。だから、映画としては糸を隠すのではなく、生命の一部として堂々と糸をみせる。しかも糸はかなり重要やねん。とくに頭部の糸は大事で、これを切られると死んでしまう。

Y木:文字通り生命線ってことか。

S原:たぶん、その隠喩もあると思う。登場人物たちは、常に糸を意識しているから。人間関係(人形関係)が糸でつながるというニュアンスもあるんとちゃうかな。

Y木:自分たちが「あやつり人形」だとわかってるってこと?メタフィクションのような感じ?

S原:そうではなくて、ちゃんと生きてるねんけど、「糸がある世界」にすんでいる、という感じかな。「あやつり人形ならではの設定」が生かされているっていえばええのかな。

Y木:なるほどな。

S原:昔「ダーククリスタル」(1982)ってあったやん。

Y木:あー、あったなあ。

S原:あれを観たときに「うわ、すごい動きやな。どうやって撮ったんやろ?」と感心したのよ。その感覚を久しぶりに思い出したわ。でも、今回は「どうやって撮ったんやろ?」という疑問は湧かんかったな。だって人形を糸で操っているのは分かるから(笑)

Y木:糸がみえてるしな(笑)

S原:でも、その人形の動きには、ほんまに感心するで。単純に糸を動かしてるだけやのに、こうも複雑で人間的な動きになるのか、と驚いた。もちろんCGじゃなくて糸で動かす人形やからカクカクした変な動きなんやけど、観ているうちにそれが自然に感じる。「味がある」っていうんかな。顔の向きを変えるだけで、表情が変わる(ように感じる)のは、こういう映画の醍醐味やと思う。

Y木:えらい褒めるな。

S原:期待せずにみたからかもしれんけど、というかワゴンコーナーにこんなちゃんとした作品を置いたらあかんやろ(笑)

Y木:ええやん、安くゲットできたんやから。

S原:まあな。ジャケットは色落ちしてたけどな(笑)

Y木:よくそんなDVDを買うなあ…まあええわ。ほかに印象に残ってるところはある?

S原:一番すごいのは戦争の場面。遠い場所から軍隊が迫ってくるねんけど、高い空から無数の糸が伸びているショットを写すだけ。これだけで、軍隊を写さなくても敵が迫ってくるのが分かる。ここは誰でも感心するんとちゃうかな。

Y木:おお、ええ感じやん。

S原:ただ、よく分からんのがこのDVDには「ジャパンバージョン」って書いてるねん。監督は、エヴァで有名な庵野秀明。でも、どれくらい庵野ならではの演出があるのかは分からんかった。とくにオリジナルと内容を変えてるとも思えんけどな。

Y木:なんでジャパンバージョンって、銘打つの?

S原:わからんねん。各国独自で演出を少し変えることが出来る契約なんかもな。有名俳優たち(草彅剛、中谷美紀香取慎吾など)が声をあててるから、そのへんも影響してるんかもしれん。

Y木:結論としては、この映画は面白かったんやな?賛否で言うと?

S原:ぼくは「賛」です。単純に面白かった。けど、ちょっと不満もある。

Y木:どこ?

S原:なんというかな、人形の出来具合、それを生かした設定、場面構成は素晴らしいけど、肝心のストーリーはわりと平坦でありがちやねん。たとえば主人公が危機に陥っても、「この人形の動きがすげえな」と思ってしまって、ハラハラドキドキしない(笑)物語としては小学生とかが喜ぶような感じかな。

Y木:でも、設定も映像も凝ってて、ストーリーまで凝りだしたら、観客は何が何だかわからなくなって、ついていけないんとちゃう?

S原:たしかにそうかも…そのへんの加減は難しいな。

Y木:でも、こういうタイプの映画も珍しいし、このブログでは、珍しく「普通に観て面白い映画」の紹介ちゃうの?

S原:うん。そうはいっても、あやつり人形の映画やけどな(笑)それだけで敬遠する人もおると思う。

Y木:なるほどな。

S原:これ観て思ったんやけど、邦画ではなかなかこういう映画は作られへんのとちゃうやろか。企画段階で「人形が主人公です。あやつり糸が見えています。どうですか?」と言うだけで「そんな映画がヒットするわけねえだろ!そんなんじゃなくて、キムタクがかっこよくみえる企画とか、綾瀬はるかがヌードになる企画を持って来いよ、バカ!」と怒られるねんで。

Y木:なんか、昔のフジテレビっぽいなあ(苦笑)

S原:いや、フジテレビは今でも同じやで。フジテレビが製作に関わった映画って、そんなんばっかりやもん(苦笑)

Y木:そりゃ、おもろい映画が出来るわけがないわ。

S原:さあみなさん、人形の映画なんて、と敬遠する人もおると思うけど、ちょっと変わった映像美を体験したい人はぜひマストバイですよ!