S原:今回は都市伝説についての映画ですよ。
Y木:スレンダーマン?
(あらすじ)
インターネット発の都市伝説「スレンダーマン」を題材に描いたサスペンススリラー。アメリカ、マサチューセッツ州の小さな町。レン、ハリー、クロエ、ケイティの4人の高校生は、巷で囁かれる都市伝説「スレンダーマン」を呼び寄せる動画を見てしまう。それは「3度のベルとともに長身の怪人スレンダーマンが現れ、連れ去られてしまう」という内容だった。半信半疑の4人だったが、1週間後、課外活動中にケイティがこつ然と姿を消してしまう。
S原:実は、いまみたいに皆がネットを使うようになったら、ホラーというか「怪談」みたいなものがなくなるんとちゃうかな、と思ってたのよ。
Y木:怪談?
S原:むかしは、まことしやかな噂が流布して真相がわからへんから怖いってことがあったやろ?子供のころ、口裂け女の話をきいて『そんなバカな話、あるわけないやろー』と友達の前では平気なそぶりをしてたけど、夜一人で寝るときは死ぬほど怖い、みたいな(笑)
Y木:えーおれ、子供心にも「なんで、みんな怖がるんやろ?ウソにきまってるやん」って思ってたで。
S原:あなた、ほんまに冷めてるなー。でも、いまはそんな怖い話があっても、ネットですぐに事実確認をしたり真相がUPされたりするやろ。素人でもスマホ片手に現場に行ってyoutubeにUPしたりな。だから、そういう「意味不明の怖さ」は、すごく減ったと思う。ところが…
Y木:ところが?
S原:いや、この映画の題材のスレンダーマンは、ネット上で怪談・都市伝説として拡散されたケースらしい。もちろん、我々おじさんはスレンダーマンなんか知らんけどな(苦笑)まあ、若い人では有名な話らしい。
Y木:それを映画にした、と?
S原:そうそう。着眼点はおもろいやろ。昔、コロコロコミックで「口裂け女」が漫画化された手法と一緒やな。
Y木:そんなしょうもないことをよく覚えてるなあ。まあ口裂け女はともかく、スレンダーマンの都市伝説ってどんなの?
S原:ネットで検索したら、ものすごい数がでてくる(笑)曰く「細く背が高い」「異様に腕と足が長い」「黒のスーツ姿」「目も鼻も口も髪も何もない不気味な顔」「背中には触手のようなものが複数生えている」「スレンダーマンに出会うと、妄想や悪夢を見せる」「ストーカーをする」「スレンダーマンを見ただけで精神がおかしくなる・体調不良になる」「人をさらう」「とくに子供が狙われる」「ロリコンかもしれない」…など。イラストやそれっぽい写真も無数にあるし、なかには大人でも「気味が悪い」と思うようなレベルのものもあるで。
Y木:ネット上で盛り上がってたんやろうな。
S原:どうも「フィクション」を前提として、みんなが盛り上がってたみたい。わかってて、楽しんで怖がってるって感じなんかな。
Y木:へえ。ネット時代ならではの現象やな。まあ、それでもほんまに怖がっている子供も少しはいたやろな。いくらウソと聞いてもやっぱり気持ち悪い…みたいな。
S原:うん。だから、怖い話って時代を超えて盛り上がるんやろうな。事実が判明したからといって、怖くなくなるわけじゃないと。
Y木:なるほどな。それで、この映画はどうやった?
S原:いやー全然怖くなかった。全体的に演出に、切れ味がないねんなー。
Y木:切れ味か。
S原:直接的なショッキングなシーンはなくてもええねんけど、なんかこう心に引っ掛かるような描写が欲しかった。
Y木:普通ってこと?
S原:うん。スレンダーマン自体があんまり怖くないっというのもあるけど、うーん、やっぱり演出かなー。友人(女子)グループが、ふざけてネットでスレンダーマンを呼び出して、気味が悪くなって途中でやめる。このあたりは雰囲気は良いねんけど、そのあとがイマイチやねん。
Y木:どうイマイチなん?
S原:グループのひとりのケイティという娘の様子がだんだんおかしくなる。森の中に行って行方不明になる。友人が心配してケイティの周辺をいろいろと調べると、どうもケイティは、スレンダーマンと会ったのではないか?とわかる。その友人たちが、スレンダーマンに関わることで怖い思いをする…ほんとにコレだけやねん。
Y木:単純やな。
S原:うん。ストレートでテンポが良いともいえるし、単調で飽きるともいえる。やっぱり映画製作は難しいわ。
Y木:とくにホラーはそうかもな。一番大事なスレンダーマンが襲ってくる場面はどうなん?
S原:それもイマイチやった。ひたすら怖い場面を作ろうと努力しているのはよく分かる。けど、主人公たちは都市伝説や友人が失踪したことを結び付けて、やたらと怖がる。ただひたすら怖がる。観客は、「え?ちょとビビりすぎちゃうの?」とつっこむという(笑)
Y木:警察に行けばええのに。
S原:警察は相手にしてくれない、という理由で自分たちでなんとか失踪した友人を探そうとするわけやな。それはええねんけど、主人公たちがスレンダーマンを知ることで幻覚をみるねん。
Y木:幻覚?
S原:突然、友達の顔がゆがんでみえたり、まわりの風景がおかしくなったり…でも、ハッと気づくと何も起こっていない。このパターンばっかり(苦笑)
Y木:なんとなくわかってきた。
S原:まあ大したことないですよ、みなさん。ワゴンコーナーにあっても、ぼくはおススメしませんねえ。都市伝説大好きな人は良いかもしれませんが……そんなわけでネットの有名なネタを使ったからと言って怖くならないというアイデア倒れの見本のような映画でした。おしまい!