S原:ライブドア制作の映画を語るシリーズ、最後はこれ!
Y木:またこんな映画か…
(あらすじ)
横浜の港のベンチに捨てられたように倒れていた青年。彼は街の住人に拾われて、カメラ屋・ザジの店で目を覚ます。そして間もなく、彼は自分が完全に記憶を失っていることに気付き…。
S原:主人公は「電話の恋人」で主人公の彼氏役をした高田宏太郎。ヒロインは若槻千夏。主人公を助けるのが鈴木一真。今回は、それぞれ良い味やった。
Y木:そうなんや。
S原:横浜の公園で主人公は目を覚ます。ところが記憶がない。親切に鈴木一真たちが、助けてくれるねんけどな。主人公は「うるせえんだよ」とか「ほっとけよ」とか、ちょっと性格悪いねん。
Y木:なんで?
S原:わからん。記憶がなくなった苛立ちなんかもしれんけど、感情移入できへんわー。やがて、主人公を追う2人組がやってきます。追手は、なぜかカラフルな服を着てるねん。志茂田景樹みたい(笑)
Y木:なんかセンスが古いな。
S原:やがて主人公たちは、フラフラしているうちに、NTTの店に入ります。
Y木:……その展開、変やろ。
S原:大人の事情ですよ!大人の!
Y木:あーそういうことねえ。
S原:主人公たちは、なぜか NTTのBフレッツの説明を聞きます。これがまた長い。たぶん5分くらいあったんとちゃうかな。体感時間では30分以上です。あの「ゼイリブ」(1988)のプロレスごっこと同じです。
Y木:うわー…
S原:主人公は記憶喪失なのに、なぜか NTTのBフレッツに興味を持ちます。「すげえ、ええプランですよね」「おれ、すぐに契約しますよ」「友達にも教えてあげなくちゃ」とか言いたそうな顔をします。(実際は言わない)
Y木:露骨なCMやなー…
S原:あと、この映画ではBGMがおかしいねん。
Y木:BGM?
S原:80年代の緊張感のないディスコ音楽のベースパターンみたいなBGMやねん。
Y木:よくわからんけど、ダサいんやろうなと想像は出来る。
S原:主人公が唯一、持っていたロッカーのカギを元に探していくと、なんとロッカーには大金が入っています。
Y木:やっとミステリーらしくなってきたな。それで?
S原:大金を持ったまま、ウロウロします。そこにまた変なBGMが流れて、観客はイライラします。
Y木:なんやねん。
S原:主人公は手元にあった中国系の美女の写真をもとに、自分の記憶を探る。と同時に記憶があったころの彼女(若槻千夏)も登場して、観客に説明しないまま「別れることなんてできない!」と泣いたりします。
Y木:…意味が分からんねんけど。
S原:その直後に「ねえ、空を飛べば全部思い出すかもよ!」とニッコリ笑います。
Y木:……頭がおかしいの?
S原:この女性の知能に関する疑問は、放置されたまま話は進みます。そのあと、ヘリコプターにのって、2人は空から夜景を眺めます。本当にヘリコプターに乗って撮影しています。ちなみに、この場面には全く意味はありません。意味不明すぎて、ひょっとしたらこれは傑作なのかも?と勘違いするくらいのパワーがあります。
Y木:さすがライブドア、というべきなんか?(苦笑)
S原:しかも、この場面のBGMは、お坊さんが使うチーンチーンという仏具の音(笑)
Y木:うそつけ。
S原:信じられへんやろうけど、ほんまやねんって!なんだかんだあって、夜の街を主人公はさまよいます。このへんは、ゲリラ撮影まるだしなんやけど、ライブドアなんやからもうちょっとロケ代とか出してあげて欲しかったですな。
Y木:ヘリコプターにはちゃんと乗せるのに、街ではゲリラ撮影…なんかお金のかけ方を間違ってるぞ。
S原:主人公は「おれは誰なんだ!」「何者なんだ、おれは!」と焦りながら歩くシーンにも、チーンチーンと仏具の音がします。もう笑っていいのかどうしたらええのか、混乱するだけという。
Y木:仏具の音…
S原:そうこうしているうちに、主人公は、ところどころ記憶が断片的によみがえる。街で会った怪しげな男(ポン引き?)に連れられた店で、記憶を探ろうとします。ここでは演出のつもりやろうけど、相手の声にエフェクターがかかっていて、何を言ってるかわかりません。さらにまたBGMで、仏具のチーンチーンと80年代のディスコ音楽が流れて、もうカオス!(苦笑)ここは、謎解きを一歩すすめる大事な場面のはずなんやけどな…
Y木:謎解き場面のセリフが、きこえないって…やる気がないんとちゃう?
S原:そうかもな。街をふらつきながら、自分が記憶喪失になっている原因を探っていくのは定番やけど、撮り方によっては、いくらでも面白くなるはずの題材やのになあ。最後は、横浜中華街を一人でさまよっていたら、派手な2人組につかまってしまう。2人組には「マリアがお待ちです」と言われて、変なホテルに一人で行きます。
Y木:マリア?
S原:変な店の奥に行くと、ジャーン!そこには、なぜか主人公が持っていてた写真の女性(マリア)がいました。そしてマリアは説明します。なんと!主人公は、どこかの国の皇帝の息子だったのです!
Y木:皇帝?いま皇帝なんかおらんんやろ。
S原:説明はないけど、そうみたい。でも中国語を話してたけどな。
Y木:なんか政治的に微妙やから、つっこまんとくわ。習近平に暗殺されても嫌やしな。
S原:そこへ若槻千夏が入ってきます。じつは若槻千夏は、反政府軍(革命軍)のメンバーで、皇帝の息子が本土に帰ることを防ぐために、動いていたのでした。
Y木:そうなんや。
S原:最後に、なんの脈絡もなく急に山下真司が登場します!
Y木:え?
S原:日本政府の秘密警察みたいです。そして話の文脈を無視して言います。「人の命は尊いのです!」
Y木:頭が痛い…
S原:そして、ラストシーン。これでもかといういうくらい、仏具の音が鳴り響きます!チーンチーン!チーンチーン!チーンチーン!
Y木:うるさいわ!
S原:最後は、キャストが蛍の光を歌っておしまい。これ、ほんまです。
Y木:…なんか今回はすごいな。前衛芸術みたいやん。
S原:いやー、この映画はぶっ飛んでた。でも結局はイマイチ面白くないという(笑)とにかく全編にわたって変なBGMが流れて、映画のストーリーに集中できない。だから、地味にイラッとする。変な映画やった。
Y木:結局、ライブドア製の映画はどうやったの?
S原:一番良かったのは「スタジアムで会いましょう」つぎは、この「NO NAME」。論外なのは「電話の恋人」かな。
Y木:完成度ってこと?
S原:作った人たちには申し訳ないけど、完成度はどれも低いとしか言いようがない…(苦笑)完成度じゃなくて、やっぱりその映画の中でキャスト(役者)が魅力的かどうか、かな。役者自身の個性とか実力もあるけど、やっぱりそれを引き出すのは監督の務めやと思うけどなあ。
Y木:まあ言いたいことはわからんでもないけどな。結局、ホリエモンだから、とかライブドアだから、という映画ではなかったってことね?
S原:そうそう。でもホリエモンさん、これに懲りずにまた映画製作してくださーい!ワゴンコーナーで待ってまーす!
Y木:おまえ、ホリエモンのこと、バカにしてるやろ。