あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

酷評されている映画を観てみる!「ソラリス」(2002)の巻

ソラリス 特別編 [レンタル落ち]

Y木:あ!ソラリスのリメイク!

S原:そうです。あの映画ファンには有名な「惑星ソラリス」(1973)のリメイクですよ。 

(あらすじ)

ある日、心理学者クリス・ケルヴィンのもとに、惑星ソラリスを探査中の宇宙ステーション“プロメテウス”の調査依頼が舞い込んだ。ステーション内で不思議な現象が頻発し、地球との交信も途絶えてしまったというのだ。さっそくプロメテウスに向かったクリスは、そこで友人ジバリアンの死体を発見する。ステーション内には2人の科学者スノーとゴードンが生存するのみで、他の者は皆ジバリアン同様自らその命を絶ってしまっていた。生き残った2人に事情を聞くクリスだったが、それはまるで要領を得ない。しかし、やがてクリス自身にもある異変が起きるのだった……

 

S原:この映画は、ほんまに評判が悪い。当時、結構映画雑誌とか読んでたんやけど、サンドバック状態やったもんな。「あしたのジョー」に出てくる金竜飛の必殺技(舞々・チョムチョム)を食らったみたいやったで。

Y木:あー相手が倒れないように延々と撃ちまくる必殺技な(笑)そんなに酷評やったんや。

S原:たしかあまりの酷評に、関係のない他の映画監督が「あのリメイクにチャレンジしただけでも評価をしてあげてほしい」とフォローしてたもんな(苦笑)

Y木:どんなフォローや。それで、どうやったの?

S原:ぼくは今回、初めて観たんやけどな……そんなにひどくないと思う。ただ、やっぱりオリジナルとは違うわな。

Y木:それは覚悟の上のリメイクでしょ。

S原:実はオリジナルの「惑星ソラリス」は、中学生の頃に雑誌で「難解だがすごい名作だ」と紹介されてて、ずっと観たかったのよ。やっと大学時代に観たけど、初めて観たときはなんとも言えない映画やと思ったな。当時は映画評論家のレビューを信じてたから、余計に「え?」って感じで(笑)

Y木:だるかったんやろ?

S原:そうやな。あそこまでスローテンポな映画は初体験やったし、ソ連の映画も初体験。映像もどことなくザラついてるし、SFなのに特撮部分にお金がかかってなくて少ない。やっぱり驚いたわ。とくに前半、宇宙ステーションへ出発する前のダラダラ感と自然の描写がなんとも言いようのないムードやろ。ときどき退屈に感じる一方で、なんか不思議な感覚を味わったのを今でも覚えている。

Y木:ちょっと難解やもんな。

S原:うん。意味はよくわからないけど、なにかしら惹きつけられる。今思えばアンドレイ・タルコフスキーという強烈な個性に圧倒されたんやろうな。

Y木:たしかに強烈な個性やな。唯一無二というか。

S原:他の映画に比べるとまだ「惑星ソラリス」は、わかりやすいけどな。この後に撮った「鏡」(1975)とか「ストーカー」(1979)も、なんか映像とか雰囲気はスゲエって思うけど、物語はよくわからんかった。

Y木:さすがにもうちょっと説明しろよ、とか思うけどな(苦笑)今回のリメイクは、その点かなりわかりやすくなってるんとちゃうの?

S原:たしかに、わかりやすくなっている。静謐なトーンで淡々と進むし、演技の演出もかなり抑えてる。その点はオリジナルの良いところを踏襲したんやろうな。

Y木:ストーリーはほぼ一緒?

S原:一緒です。一番の違いはすぐに主人公(ジョージ・クルーニー)が宇宙ステーションに行くところかな。ダラダラしない(笑)

Y木:宇宙ステーションに行ってからは?

S原:ステーション内部のセットとかお金をかけて作ってるし悪くないで。でも、宇宙ステーションに着いて主人公が謎を探っていく場面が意外に面白くない。ミステリアスな部分が、淡々としすぎてるというか。どんな謎があるんだろう?というドキドキはないな。

Y木:えー、そういう映画とちゃうやん。

S原:そやけど、謎が解明されるまでは、ちょっとは緊張感を出してほしかったな。謎がわかってからは、どうしても主人公の心の葛藤とか、妻への思慕とかがテーマになるやろ。

Y木:いやいや、あの物語には、ソラリスの海の概念とか知性体とか、ソラリスの力で生き返った妻とか、いろいろ複雑な設定があったやろ。そのへんはどうなん?

S原:あるねんけどな。なんというかすごくハリウッド的に理路整然としてるねん。「なぜ、死んだ妻が生きて目の前に出現するのか?」「それはソラリスが起こしている現象だろう」「どうすれば、この現象を止めることが出来るのか」「いや、でも愛した人を消すことはできない」……こういう感じで、サクサクと進む。

Y木:それは、かなりオリジナルと違うな。

S原:わかりやすいとは思う。でもその分、重厚感というか深みはなくなったような気がする。ゆったりとした恋愛ドラマになってしまうというか。

Y木:そうなんや。

S原:オリジナルではほとんど説明しないから、逆にいろいろと「解釈」してしまうやん。考える空白がある映画といえばええかな。

Y木:それは原作(『ソラリスの陽のもとに』スタニスワフ・レム)の力もあるんやろうな。読んでないけど、すごい深いらしいから。

S原:さっきも言ったけど、今回の映画はすごくわかりやすい。たぶん、オリジナルが好きな人にはそういう点が耐えられないんやろうな。ちょっとバタ臭い田舎の娘を可愛がっていたのに、親戚のおじさんに預けたら、いつのまにかどこにでいるような都会の娘になってしまった、みたいな。

Y木:全然ちゃうやろ。

S原:VFXとかはかなり良いんやけどな。画面もキレイ。ジョージ・クルーニーも抑えた演技で、よい感じ。なんやけど「ジョージよ、頑張ってるのはわかった。でもなー、なんか違うねんなー。ごめんね」これがみんなの本音とちゃうかな。

Y木:友達か。いやーそう考えると難しいな。オリジナルを尊重しすぎたら「同じことをしやがって!」と言われるし、改変したら「すきな作品をレイプしやがって!」と言われる(笑)

S原:リメイク自体に罪はないんやけどな。今回は、まったく「別物」と割り切れれば、それなりに楽めるのではないか、と思う。ただその「別物」がソラリスかと言われると…ってところやな。

Y木:結局、おまえ的には、これはアリ?ナシ?

S原:ぎりぎりアリかな。とくに前半は良い雰囲気やったしな。ただもう一回観る?と言われるとたぶん観ないと思う。

Y木:そうなんや。

S原:さあ、みなさん。オリジナルを観たかどうか・好きかどうかで、180度評価が変わりそうな映画ですが、少し頭を使うタイプの変わった映画が好きな人は観て損はないと思います。でもゆったりすぎるので、家事とかしながら観てくださーい!