Y木:あ。これケータイ小説やろ?
S原:そうです。今回はこれを語ります。
(あらすじ)
女子高生を中心に話題となり、アクセス数2,000万件を突破した携帯連載小説を、著者であるYoshi自らが映画化。援助交際を繰り返す17歳の女子高生・アユが、ひとつの出会いをきっかけに真実の愛に目覚め、次第に心のよりどころを取り戻していく。
S原:これは、原作者はYoShi。自らが映画化してます。
Y木:あー原作者自らが監督…あー…
S原:いまのヤングたちは「ダメ映画フラグがたつ」と言うんかな(笑)
Y木:もう言わへんのとちゃう?それにしても、いままで原作者が映画監督をして、ほとんど上手くいったことはないやろ?
S原:そうやなー。パッとでないけど…あーそうそう、一時期ちょっとだけ話題になった椎名桜子って小説家がおったやん?
Y木:あー!「家族輪舞曲(ロンド)」(1989)!覚えてるで~(笑)あれは椎名桜子が脚本・監督やったなー。
S原:あれも珍作らしいけど、まだ観てないねん。いつか、ワゴンで出会えるかなあ。ワクワク!
Y木:ワクワクするなって。確か他にもあるやろ?
S原:「さよならジュピター」(1984)(小松左京自身が製作・監督)が有名かな。ほかでは、「地獄のデビルトラック」(1986)(スティーブン・キング自身が監督)とか、「BE-BOP-HIGHSCHOOL ビバップハイスクール」(1994)(きうちかずひろ自身が監督)とかかな。たぶん、ほかにも色々とあるんやろうけどな。
Y木:たしか村上龍も何本か監督してるやろ?
S原:「限りなく透明に近いブルー」(1979)「だいじょうぶマイ・フレンド」(1983)「トパーズ」とかたくさん監督してる。ぼくはどれも観てないけど、小説に比べると評価はされていない。というか、全然相手にされていない(笑)
Y木:まあ村上龍やからな。そうでしょ。
S原:あと、このブログの愛読者は、なんといっても「ふぞろいな秘密」の石原真理子監督やろうな。
Y木:愛読者なんかおらんけどな。たしかに、あの回の評判はよかった。友人たちからの評価やけど(笑)
S原:でもなー、フォローするわけじゃないねんけど、小説家とか漫画家が、映画監督をして成功するのは難しいと思うわ。全然違う表現方法やからなー。
Y木:そうやろうな。自分の小説や漫画を映像化するのは、自分の「世界観」だけではダメなんやろうな。それで、この映画は?
S原:じつは、そんなに悪くなかった…
Y木:うそつけー!
S原:いやいや出来はメチャクチャ悪いで。しかも演技もなにもあったもんじゃないねん。完成度としては最低ランクといっていいと思う。
Y木:じゃあ、あかんやん。
S原:でもなー、香取慎吾の「座頭市 The Last」を観た後では、すごくしっかりと作っているように感じたわ(笑)
Y木:こらこら。
S原:これは、さっき話が出た「ふぞろいな秘密」にちょっと似てるねん。
Y木:どういうところが?
S原:そっくりなのが、演技とセリフの言い方。無表情&棒読みやな。
Y木:ひどいな、おまえ。
S原:ほんまに、そうなんやから仕方がない(笑)でも、貶してるわけちゃうねん。「ふぞろいな秘密」のときもそうやったんやけど、観ていると途中で違和感がなくなるねん。自分でも不思議やわ~。棒立ち・棒読み・無表情の3点セットが、一種の快感になるねん。
Y木:ほんまいかいな。
S原:主演の重泉充香は、モデルらしい。他にも無名の俳優たちがでるけど、揃って3点セットやった。ちょっと有名な俳優もでるけど、まあ大したことはないです。この原作本は携帯小説というんかな、そういう小説で当時のヤングたちにバカ受けしたらしい。たまに古本屋の100円コーナーでみかける。勇気がなくて買えないけど(笑)
Y木:どんな話?結構、ハードな物語とちゃうの?
S原:いやーそうでもなかったで。これは要するに、援助交際とかをしている女子高生が主人公やねん。
Y木:うわー、性描写とか激しそうやな。
S原:反対にセクシャルな場面もできるだけ直接的な描写を避けてた。そこは監督のこだわりやと思う。
Y木:ふーん。間接的に描いてるんや。
S原:レイプのシーンとかあるけど、そんなにエグくない。主人公は、ヤク中の男と同棲してるけど、ひょんなことから老女と出会う。老女らしい素直な対応(大人な対応)に、心惹かれて老女の家で一緒に住むことになるねん。そして、援助交際もやめようと決心するねん。
Y木:え?実家は?親は?
S原:まったく描写がないからわからん。原作には書いてあったんかなー。
Y木:老女と住む……知らん人と一緒に住むってこと?
S原:うん。とくに説明なかったけどな(笑)そのうちに公園で子犬を拾ったり、老女が死んでしまったりする。
Y木:えー老女が死んだら、家をでていかなあかんやん。
S原:いや、老女が死んだ後も一人で住んでた。
Y木:なんやそれ。
S原:要するに、そういう違和感に対する説明的な描写は一切省いているねん。そういう演出なのか、下手なだけなのか、それは判断がつかん(笑)
Y木:なるほど。
S原:でもって、公園である少年(15歳)と出会う。少年は心臓病で心臓移植が必要らしい。費用は1000万円。主人公は、この少年のために援助交際を再開して、小銭を稼ぐ。やがて、主人公はHIV(エイズ)に感染してしまい死亡する…おしまい。
Y木:あー心臓病の少年も死んでしまうんやな。
S原:いや、生きてたで。3年後に主人公の墓参りしてた(笑)
Y木:なんやねん、それ。
S原:まあ、心臓病が治った理由の説明はなかったけどな。
Y木:よくわからん。ほんまにおもろいの?
S原:いや、おもしろくないで(笑)でも、この独特の世界にどっぷり浸かったら、なんともいえない気持ちになるねん。
Y木:ほんまかいな。
S原:こればっかりは体験しないとわからんやろうな~。
Y木:体験したくないけどな(笑)
S原:これもネット上では酷評だらけやけど、自分でもわからんけどこの映画を責める気にならんな。
Y木:なんで?
S原:たぶん、監督が素直に撮ってるからやと思う。下手やし違和感あるし棒読みやし盛り上がらへんけど、これでいいような気がする。主人公たちが沖縄に行く場面も結構、キレイしな。でも惜しいところ、というか変なところはやっぱり多いで。たとえば、この手の映画にありがちやけど、肝心な説明描写はないのに、説明セリフが多いねん。主人公は、老女のお金を(ヤク中の男のために)盗むねん。老女は、それに気付いてるねんけど主人公を責めない。「あのお金は、盗った人が必要だったのよ」とつぶやくねん。このあとに、主人公が「わたし、おばあちゃんのお金を盗んだの!」と改めて告白するねんけど、こういう場面は黙って主人公がうつむくだけで、十分観客には伝わると思うねん。
Y木:なるほどな。
S原:主人公の友達でピント外れな同級生がおるねん。すごく変な子やねんけど、主人公を心配してるのは事実やねん。こういう脇役とのやりとりを上手に描けてれば面白くなったと思う。
Y木:うーん、でもこのストーリーではちょっと観る気がしないなー。
S原:普通はそうやろうな(笑)まあ、でも、こういう映画を観るのもレアやから、なかなか面白い体験やったわ。さあみなさん!映画の出来は良くないです。主人公の哀しい心情はイマイチ伝わってきませんが、ちゃんと監督の言いたいことはわかりますよ!
Y木:ん?なんで?
S原:だって映画の最後には、ちゃんと文字で「アユは、現代に生きる人々の鏡なのかもしれない」とわかりやすくメッセージがでるから(笑)さあ、普通の映画に飽きたあなた、ぜひチャレンジしてみてください!
Y木:最後の監督からのメッセージがあるんやったら、そこだけ読めばええやん。べつに映画観なくてもええんとちゃうの?
S原:……え?