あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「プレッシャー」(2015)の巻

 

PRESSURE/プレッシャー [DVD]

 

S原:今回はこちらです。

Y木:おー深海映画か。

 

(あらすじ)

石油のパイプラインが故障し、ソマリア沖の深海で作業をすることになった作業員4人。順調に進んでいたはずが、いきなりの嵐で母船が沈没してしまい4人を乗せた作業タンクが水深200メートルで孤立してしまう…

 

Y木:ストーリーは、結構面白そうやん。

S原:この映画はですねえ…地道にまじめに作っているねん。ちゃんと深海のシーンもあるし、潜水作業タンク(セット)もきちんと作ってるねん。

Y木:深海ホラー系?

S原:ホラーじゃないな。サスペンスかな。映画自体は、演出が雑でもなく俳優の演技が変でもなく、無難な作りなんやけど……単純に面白いというわけでもなく、ツッコミポイントがたくさんあるわけでもなく……あーもー、コメントしにくい映画やなー(笑)まず、このタイプの映画は、困難な状況になってしまう展開に説得力がいるやろ?段取りと言うか。

Y木:まあな。

S原:なんか中型の嵐がきただけで、大きな船が転覆するねんけど、まずそれが不自然やろ?どんなしょぼい船やねんって。それで潜水作業員たちが帰れなくなって、酸素もどんどん無くなっていく。閉じ込められた状況で、さあどうやってこの危機を乗り越えるっていうストーリーは結構単純で面白いと思う。けど、そんな絶望的な困難に対峙したときの登場人物の行動や反応がなあ……ふつうは焦るやろ?

Y木:そりゃそうやろ。登場人物たちも焦るんやろ?

S原:焦るよ、一応。でもなあ…焦りが(観客に)伝わらないというか。作業員同士の人間関係で揉めるとか、脱出方法で意見が分かれる、とかあるねんけど、それも上手くいかされてない。やっぱり焦燥感や恐怖みたいなものが、ポイントやと思うんやけどもなー。救援の要請をする無線なんか命綱やのに、なんか扱いも軽いしな。昔の映画で「Uボート」(1981)とかすごかったやろ?

Y木:あーあの映画はすごかった…(遠い眼)

S原:「Uボート」は、潜水艦の模型(特撮)はイマイチやったけど、良い意味で俳優も暑苦しくてドラマ部分でグイグイ引っ張ってたし、観ていて息苦しくなるような圧迫感があったやろ?

Y木:ラストも切ないしな。

S原:そうそう。この映画でも、舞台は閉鎖空間やし、いろいろな感情とか深海の怖さと隣り合わせのはずなんやけど、そんなんがすごく少ない。演出にメリハリがないんかなあ…

Y木:サスペンスやのにドキドキしない、と。

S原:例えば、作業員のひとりが、危機を脱するために潜水服を着て海底で作業するねん。その作業中に(低酸素脳症で)意識が混濁していく…それを潜水艦にいるメンバーが聞くというシーンがあるんやけど、仲間が死んでいくのに何もできないっていう悔しさや悲しみがある。ここなんか観客も辛くなるはずなんやけど、あんまり感情移入できない。みんな無表情で無線を聞いているだけ(笑)

Y木:良いシーンもあるんやろ?

S原:あるよ。作業員のひとりが、深海で溺れて死ぬ間際に幻想をみるねん。会いたかった妻(恋人?)と再会できて、裸で抱き合いながら死んでいくという凝ったシーン。ここは俳優も撮影も大変やったはずやし、なかなか印象深い。でも、こういう場面は少ない。

Y木:要するに下手なんとちゃうの?

S原:いや、それこそ他のB級ワゴン映画よりは断然ちゃんと製作してるねんで。そうやなあ、高校時代で例えると、よくクラスで学園祭の準備を一所懸命に取り組んでるけど、全体から見るとそんなに大事な仕事はしていないって奴がおったやろ?「あいつ悪いヤツじゃないんやけど、他の作業をしてくれれば助かるんやけどな…でも本人には言い出しにくいなあ…真面目にやってるからなあ…」とか。そんな感じかな。

Y木:相変わらず、おまえの例えはよくわからん。それで作業員たちは助かるの?

S原:何人かは死ぬけど、最後は助かる。ギリギリまで酸素チューブをつけて海面に近づいて、イチかバチかそこからは素潜りで上がっていく作戦やな。

Y木:結構、普通の作戦やな。

S原:そうやねん。べつに変則な作戦が良いわけじゃないけど、延々と同じ画面(潜水タンクの中)を見せられた後にしては、普通に地味な脱出方法やった。たぶん、製作するときにちゃんと調べたんやと思う。映画の面白さよりも、リアルさを前提にしたんかもな。

Y木:リアルさを重視して面白くなくなったってこと?

S原:今回はそう感じたわ。もっと酸素がなくなる時間が迫ってきていて、もっとキャラクター達が混乱して、次から次へと困難が起きて、ちいさな伏線があって、それが自分たちの救命につながっていく、とかそんな感じのほうが単純に面白かったはず。

Y木:なんか、それってハリウッド的やな。まー、観ている側は、〇〇したほうが良かった、とか好き勝手に言えるから。おまえみたいに(笑)

S原:そうそう。製作した人はごめんね。でもなー、狭い潜水艦の中でぼんやりと苦悩しているシーンとか、静かに会話している(身の上話も含む)シーンが多いのはやっぱりや変やで。そのくせ「もう時間がないんだ」とか言うしな。観ている人は「おいおい。焦ってるなら、もっと脱出の方法を考えたほうがええって!」ってつっこむしな。ワンシチェーション(ワンアイデア)やから、もっとスピーディーに展開したほうが良かったと思う。

Y木:なんとなく、わかった。

S原:「ゼイリブ」(1988)でも、さっさと話をすすめたらええのに、途中で延々と男2人が殴り合いっこしてて、観客はイライラしたやろ?

Y木:あんな映画のことなんか、覚えてないわ。

S原:何度も言うけど、ちゃんと作ってるねんで。ただイマイチ面白くない。そして、相手がマジメな分、突っ込みにくい…

Y木:まあ、おまえに突っ込まれなくてもええと思うけどな。

S原:さあ、みなさん!深海が好きだけど、そんなに深海シーンがなくてもいいよという人、深海サスペンス映画が好きだけどドキドキしたくない人、そして真面目に作られてるんだけど、なんか微妙な感じの映画が好きな人、そんなあなたの映画です!ワゴンで見つけたらマストバイ…かな…?