S原:今回はこれですよ。
Y木:これ劇場公開してるんや…
(あらすじ)
“世界一ツキのないボクサー”修二と“日本一運の悪いOL”千夏。ボクシングへの情熱を失っていた修二が情熱を取り戻し復帰戦に臨む中、千夏は自分が会場に行けば修二が負けると思い、身を引こうとする…。
Y木:この映画は知らんなー。
S原:あなたは最近の映画、ほとんど知らんやん。
Y木:まあな。
S原:なんで、あなた映画のブログしてるの?
Y木:おまえが勝手に巻き込んだんやろ!
S原:そっかー、ナハハ♡
Y木:ナハハ♡じゃねえ。「すくらっぷぶっく」かよ。
S原:この映画DVDのパッケージには、「日本一ツイてないOL」「世界一ツイてないボクサー」「ツイてないと思うすべての人へ」と書いてます。
Y木:ついてない男女のラブコメってことね。
S原:その通り。でもこの映画はなー、ちょっとなー。
Y木:なんやねん、はっきりせえへん感想やな。
S原:いやはっきりしてるで。この映画は失敗作。要するに面白くないねん。
Y木:ハッキリ言う(笑)
S原:この映画は霞(かすみ)が、かかったような映画やねん。
Y木:霞?わけがわからんってこと?
S原:どう言えばええんかな。キャラ設定はわかりやすいねん。主要人物は4人。主人公は、日本一ツイてないOLと世界一ツイてないボクサーの2人。反対に、めちゃくちゃ運のいい男女2人組。これだけやねん。
Y木:ふーん。どんな話なん?
S原:さっきも言ったけど、主人公は、日本一ツイてないOLの千夏(桜井裕美)。彼氏の実家を訪ねたら、鍋を彼氏の父親にぶっかけてしまうし、仕事上のミスで1億円相当のヴァイオリン(ストラディバリウス)が行方不明になってしまって弁償を責められたするところから始まります。
Y木:仕事上やのに、なんで個人が弁償するの?
S原:わからん(笑)一方の世界一ツイてないボクサーは、修二(萩野崇)は、今日の試合でもアンラッキーパンチをもらってTKOされる。修二は実力があるみたいなんやけど、いつもこうなるらしい。
Y木:もうやめろよ、ボクシング。
S原:あるとき、偶然に2人が出会う。2人とも運がない日々を送っていると共感してなんとなく一緒にいるようになる。
Y木:恋に落ちるんじゃないの?
S原:ここが一番わからんねん。普通、こういう出だしなら、2人が恋に落ちるとか、片方が好きになっていくとか、2人で逆転を狙う(運をつかみ取りに行く)とか、どう考えてもそういう展開やろ?
Y木:そうやろな。
S原:ところが、この映画では一緒におるだけやねん。
Y木:どういうこと?
S原:一緒に遊びに行ってるから、デートなんかな?と思ってたら、ちゃうみたいやしな。千夏は「自分より運のない男」と出会って喜ぶ…そこまではええねんけど、そのあとに一緒にいる意味が分からん。
Y木:「自分より運のない男」と一緒にいると、自分に幸運が舞い込んでくるって思ってるとちゃうの?
S原:そうなんかな。一応「私たちは運命共同体だね」とか言うんやけどな。
Y木:それやったら、カップルやないか。
S原:でも、そんな感じでもないねん(苦笑)べつにキスシーンがなくてもええやん。手をつないで歩くショットをいれるだけで、二人の関係は分かるやん。そんなんも皆無やから、観ている間ずっと「あんたら、どういうつもりで一緒におるの?」と突っ込みまくりやねん。
Y木:だんだん、好きになっていく…ってことじゃないの?王道でしょ。
S原:いやー……こればっかりは観てもらわんと、分かってもらえんと思う。でも、世の中のほとんどの人はこの映画の存在自体を知らんから、確認をする術もない(笑)
Y木:それで、どうなるの?
S原:とにかく、お互いに好意を抱いているのか、友達のままなのか、観客が一番知りたい根幹部分を放置して映画はすすんでいきます。やがて、修二は、ヤクザから持ち掛けられた八百長試合をすることになるねん。
Y木:なんで?
S原:修二は「どうせ運がなくて負けるなら、八百長のほうがマシ」と考えるねん。
Y木:金目的か。
S原:ところが、ちゃうねん。そのお金を借金で困っている千夏に渡すのが目的やねん。それが好意なのか善意なのかわからん。話を聞いた千夏も戸惑うばかりやしな。
Y木:なんやねん、それ。
S原:意味が分からんまま、ストーリーはすすみます。結局、修二の試合中に千夏が「これは八百長なの!」と叫んでしまって、2人ともヤクザに追われます。逃げているときに、こんどは不思議な2人組に出会います。かれらは、修二と千夏とは反対の「運のいい男女」やねん。変にノリの軽いアキラ(虎牙光揮)と、ちょっとバブル風味のエミリ(橋本麗香)に巻き込まれて、長野県松本の山中にいくことになる。アキラは運がいいので、たまたま鍵の掛かっていない別荘をみつけて、入ってしまう。すぐに別荘の持ち主人(藤村俊二)が帰宅するねんけど、じつはこの老人、かつてエミリに命を助けられたがある人物で、しばらく住んでも良いことになるねん。
Y木:運がいい…というか行き当たりばったりやがな。
S原:ほかにもいろいろあるんやけど、何もしなくても次々と幸運に恵まれるアキラとエミリと一緒に住みはじめて、ちょっとずつ幸運が舞い込んでくるねん。
Y木:おお、やるやん。どんな幸運?
S原:アイスを食べたら、当たりがでるねん。
Y木:……それが幸運?
S原:面倒やから話を飛ばすと、修二はもう一度ボクシングに賭けてみようと思うねん。それで東京に戻る。そのときに、千夏ではなくエミリと一緒に東京に戻るねん。千夏(とアキラ)は長野に放置したままです。
Y木:えーなにそれ?4人で一緒に東京に帰ったらええやん。修二は、運の悪い女から運のいい女へと乗り換えたってこと?浮気?
S原:ここがまたわからん。
Y木:じゃあ、反対にエミリが修二を気に入ってるじゃないの?誘惑したとか?
S原:それもわからん。
Y木:なんやねん!登場人物の気持ちが全然わからんやないか。
S原:信じられないかもしれんけど、ほんまにこんな映画やねんて!
Y木:いくらなんでも、もうちょっとわかるやろ。
S原:いや、分からんねんって。話の続きをすると、いろいろあって東京でもう一度ボクシングをはじめる修二。なぜか修二のとなりにいるエミリ。そして、アキラと千夏も遅れて東京に戻ってくる。
S原:なんか、ほんまにしょうもないストーリーやな。もうラストを教えて。
S原:ラストは、修二の復帰戦です。エミリは「運のない自分が試合会場に入ったら、修二が負けるかも」と不安に思います。ここが最大の見せ場です!
Y木:どうでもええわ!
S原:いっぽう、アキラとエミリは八百長の集金をしているヤクザを襲って大金を奪います。いろいろあって、結局修二と千夏が大金を手にします。
Y木:あー、そのお金で人生をやり直すと?
S原:いーえ、「このお金は、ちゃんとヤクザに返そうよ♡」と2人で話し合って、おしまい。
Y木:そんなんで、おしまい…?
S原:ほんまに、こんなに登場人物がなにを考えてるんかわからん映画は珍しい(笑)まあ、ストーリー構成も変やし、キャラクターもおかしいねんけど、もっと可哀そうなんは俳優たちやねん。これ、全員ミスキャストやと思う。まず千夏役の桜井裕美が合っていない。キツめの顔立ちで、どうみても「日本一ツイてないOL」に見えへんねん。この女性なら自分でなんあとかできるやろ、と思うくらいしっかりしてる(笑)
Y木:それはあかんな。
S原:相手の修二役は、萩野崇。ボクシングのシーンはかなり良いし、雰囲気のある役者やと思うけど、どっちかというと個性的な脇役で光るタイプやと思う。おなじボクシングで言うと「あしたのジョー」の力石徹みたいな顔立ちやしな。
Y木:運のいい男女は?
S原:アキラ役の虎牙光揮は個性的で面白いと思うけど、完全に浮いてしまっている。エミリ役の橋本麗香もミスキャストで合っていない。4人のファンの人には申し訳ないけど…いっそのこと、千夏とエミリを入れ替えてほうが面白かったかも…いや一緒かな(笑)
Y木:つまるところ、役柄と俳優のタイプが合っていないってことやな。
S原:キャスティングした人の神経を疑います。
Y木:そこまで言うか。
S原:でも、合ってない役をやらさる俳優たちも可哀そうやで。
Y木:まあーあれちゃうの?映画自体がちゃんと面白く作られてたら、俳優たちも魅力的に映るんじゃないの?
S原:そうかもな。何度も言うけど一番ダメなのは主人公の男女が「どんな気持ちなのか?」が分からないことやねん。日本一ツイてないという設定なら、そこをもっと膨らませないとな。漫画チックにいくのか?ラブストーリーで行くのか?ちょっと不思議な話をみせるのか?
Y木:ハリウッドなら、ジェットコースターみたいなラブコメにするやろうな。
S原:そうそう。しかもこの映画では少し演出も凝ってるねん。時系列をところどころ入れ替えてるけど、あまり効果が出ていない。ストップモーションアニメになって驚く主人公たちの顔の演出も、滑っている。セリフにいちいち「ピンポーン」とか「ブー!」とかの効果音をいれるのは、うっとおしいだけ。セリフも独特で珍妙。なんかすべての点で演出も微妙に外れていて、そのくせ薄味やから印象にも残らん。こんな映画なら、ほとんどレビューもないよな、と納得したわ。だって、この映画について話したいと思わへんもん。
Y木:おまえは喋り倒しているがな。
S原:あーそうやな(苦笑)ま、そういう映画やったわ。さーみなさま。ぼんやりとした映画を観たいときはありませんか?主人公たちが何を考えてどう行動しているかわからない、そんな不思議な映画を観たいときは、これです!あと10年したら、視聴することも難しいと思えるようなレベルの映画ですが、ぜひワゴンコーナーで見つけてください!でもゲットしなくてもよいと思います!