あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

ほぼ誰も知らない邦画 20連発!「月のあかり」(2004年)の巻

 

S原:今回はこれですよ。

Y木:お。ちょっと変わった映画っぽいな。

 

(あらすじ) 

 舞台は沖縄の山羊料理屋「月子」。静かな海辺に、人目を忍ぶようにひっそりと建つその店の主“おっさん”には、ある事情があった。だが、東京からやってきた若者や、それを追って来た女、謎の男などが店に現れて、「月子」の平穏な日々は終わりを告げる…。

 

S原:うーん、これはなあ……

Y木:あかんかったの?

S原:そうやなあ、これは失敗作といっていいと思う。スタッフやキャストには申し訳ないけど…

Y木:沖縄を舞台にした映画なんやろ。

S原:そうやねんけどな。まず海岸に大きな岩があって、そこに柱とかを建てて簡単な居酒屋にしてるねん。ほとんど電灯もないから、月の明かりの下で呑む…そんな居酒屋やな。このDVDのジャケットにもなってるけどな。

Y木:あー、ええ感じやん。おれ、そこに行ってみたいわ。

S原:ぼくもそう思った。でも残念ながら、この映画の良いところはそこまでやねん。

Y木:そうなんや。

S原:あくまでぼくの想像やけど……たぶん、監督脚本(倉持健一)は、この居酒屋のアイデアを思い付いた段階で「イケる!」と判断してしまったんとちゃうかな。肝心のドラマ部分がものすごく弱い。

Y木:ワンアイデアで勝負ってことか。「巨岩の上の呑み屋」というアイデア。たしかに絵になりそうやん。

S原:でも、そんなん画面では5分も見れば十分やん(笑)やっぱり観客は、映画というかドラマをみようとしてるわけやから。

Y木:そりゃな。

S原:もうすこし想像を続けると……そのあと実際に沖縄に行ってセットを組んだ段階で、監督はじめスタッフはさらに満足してしまったやと思う。たぶんスタッフはこんな会話をしてたと思うねん。「すげえセットじゃん」「いい感じやん」「沖縄の空と海が、キレイだよな」「これ、そのまま撮るだけで充分じゃね?」「それに、声優でファンがたくさんいる椎名へきるが出演してくれるんやろ」「アニメファンも観に来てくれるやろうな」「こりゃヒットするかもよ」おいおい、そんなんでヒットなんかせーへんわ!

Y木:自分の妄想に、自分で突っ込むんはやめてくれ。きもいから。

S原:よく撮影場所の自然がキレイで延々と映す映画があるやろ。

Y木:あーあるな。

S原:たぶん現場では盛り上がっていると思うねんな。でも、スタッフが自分たちで勝手に盛り上がっているのが分かると、観客は一気に冷めると思うねんけどな。

Y木:自己満足ってことか?

S原:それに近いかな。もちろん商業映画やから、制約はあるやろうし、いろんなプロの目を通って完成させている…はずなんやけどな。なんで、こんな変な映画になるんやろ?

Y木:おれに聞かれても知らん(笑)どういうところがダメなん?

S原:まず、大きな岩の上にある居酒屋「月子」にいろんな人物が出入りする。店主はオッサンとよばれる初老の男性(本郷功次郎)。そこでバイトで働いている葛山信吾。ほぼ無一文でふらりと店に住み着く笠原紳司。笠原を追いかけてきた女性、これが椎名へきる。それらが織りなす人間模様……のはずなんやけどな。

Y木:人間模様でないんや?

S原:そこを目指したのかどうなのか、ちょっとわからんけど。簡単に言ってしまうと、どのキャラクターにも感情移入できないねん。というか、彼らが何を考えているのか全く伝わってこない(苦笑)

Y木:それはキツイな。

S原:結局、いくら沖縄の風景でバイクを走らせるショットとか、椎名へきるが海岸で座っているショットを綺麗にとっても、映画としての現実感がないねんな。

Y木:そういう非現実的というか浮遊感を狙ったんやないの?ましてや舞台は沖縄やろ。

S原:そうかもしれん。でも、この映画は112分あるねんで。プロモーションビデオみたいな、よくわからん内容を112分みせられても辛いわー(笑)

Y木:要するに、キャラクターが現実に生きているように感じないってことやな。

S原:あ、そうそう!あなた上手く言うなあ。観てないのに。

Y木:おまえの語彙力がないだけや。

S原:そうやねん。あなたの言う通り、キャラクターが生きてないねん。生身に感じなくて紙芝居みたいに感じるといえばいいんかな…こういうストーリー(上のあらすじ参照)なら、絶対にちゃんと「人物」を描かなあかんねんって。

Y木:おまえの言いたいことや、この映画への不満はわかったけど、具体的にはどういう点があかんの?

S原:まず、「月子」を経営しているオッサン、まずこのオッサンが何を考えているかわからない。どうも、奥さんを失くしたり、ワケありの大金を持っていたり、名物の山羊料理にこだわりがあるみたいやけど、どうにもわからん。ふらりとバイクでやってくる笠原もよくわからん。金はないみたいやけど、都会が嫌で逃げ出してきたのか、単純に旅を続けていきたいだけなのか、それもよくわからん。椎名へきるも、恋人が好きでたまらなくて追いかけてきた風に見えないし、何しに来たのかわからん。

Y木:それこそ、説明的なセリフはないの?

S原:あるで。でも、登場人物がいくら説明しても全然心に入ってこない(苦笑)

Y木:それじゃ、映画が面白くなるわけがないよなー。

S原:おまけに、近くで殺人鬼がおるらしい。

Y木:なにそれ?

S原:女子高生が襲われたりする場面もあるけど、ハッキリ言ってそんなものは要りません!というか、この映画にまったく合っていない(笑)ほかにも拳銃を置いていく男(殺し屋?)とか、「月子」のバイトが釣銭の勘定が出来ないとか、それがあとで伏線になるのかと思ってたらそうでもないし、ただ不自然なだけやった。なんかよく意味が分からんわ。

Y木:今回は手厳しいな。

S原:ただただ戸惑うばかり。映画を見た後、ほんまに疲れたで(笑)

Y木:まあ沖縄の風景を見るだけの映画ってことか。

S原:といっても、そこまで綺麗に撮れてるわけじゃないねんな。

Y木:もうええところ、ないがな。

S原:さあ、みなさん。沖縄の海が大好きな人は良いと思いますが、沖縄の海を紹介する映像とどう違うのか?と言われれば、ぼくには返す言葉はありません。この映画で出てくる「山羊料理」もあまり美味しそうにみえませんが、実際に食べたら本当に美味しくないそうです(笑)そんな映画ですが、椎名へきるファンだけは、ワゴンコーナーで見つけたらちょっとだけ手に取ってくださいませ!