あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

ほぼ誰も知らない邦画 20連発!「ベリースタートっ!」(2003年)「油揚げの儀式」(2006年)の巻

ベリースタートっ! [DVD]

油揚げの儀式 [DVD]

 

 

Y木:なにこれ?

S原:今回からしばらく、ほとんど誰も知らないような日本映画をとりあげます。

Y木:えー、20本も取り上げるんかいな。しんどいなあ…

 

(ベリースタートっのあらすじ)

現代社会を生きる若者たちの姿を瑞々しい感性で捉えた青春ロードムービー。田舎の工場で働く佑樹は突然の休暇を取り、同級生・彰雄に誘われドライブへ出掛ける。道中、ヒッチハイクをしていた宏也と意気投合した佑樹は、彼と無計画な旅を始めるが…。

 

(油揚げの儀式のあらすじ)

ある儀式を通して子供の頃に抱いていた夢に再チャレンジする若者たちの姿を描いた異色ドラマ。保険営業マン・広瀬は、久しぶりに再会した幼馴染みの由香からいわくつきの仕事を依頼される。それはUFOの真相を検証する文書“MJ-12”を巡るものだった。

 

Y木:知られていない映画特集はええねんけど、マイナーと言うか低予算の日本映画が多くなるんやろ?なんか、低予算や知名度がないのを馬鹿にしてないか?

S原:ちゃうねん、ちゃうねん。誤解ないように言っとくけど、チープな映画やと馬鹿にしているわけじゃないねん。マイナーだけどこんな映画もあるよというスタンスで紹介したいねん。世の中にはいろいろな人がいて、低予算でも映画を作っている人たちがいるやろ?そういうことを知ってほしいという気持ちもあるかな。

Y木:じゃあ、作品を褒めるのが基本スタンス?

S原:いや作品自体の感想は素直に話します(笑)面白くないのに「隠れた傑作だ」みたいに、やたらと持ちあげても仕方がないしな。

Y木:まあな。今回の2本はなんで選んだんや?

S原:すこしテーマが似てるから、組み合わせたんやけどな。

Y木:テーマって?

S原:どっちの作品の主人公も、いまの生活への焦燥というか不安みたいなものがあるねん。なんとなく生きているところに、偶然に新しい出来事が起こる、という物語やな。「油揚げの儀式」では、(子供のころに信じていた)UFOを探しに行くことになるし、「ベリースタートっ!」では、偶然出会ったヒッチハイカーと一緒に旅に出てしまう。なんというか、居心地の悪い日々をすこし変えてみたい、という感じかな。

Y木:ふーん。どっちも「非日常」に触れる映画やな。

S原:そうそう。あなた観てないのに上手く言うなあ(笑)「油揚げの儀式」のほうから話そうか。主人公は、昔、幼馴染の友人と一緒にUFO雑誌を作って出版社をしてたんやけど、いまは倒産して保険のセールスをしてるねん。営業成績もパッとしなくてリストラ寸前のところ、昔の女友達に無理やりUFOを探すテレビ番組制作の手伝いをさせられる…というわけやな。

Y木:UFOを探すって?どこに?

S原:なんか清水川って言ってたかな。機密文書に載ってるらしい(笑)だから、映画のメインは河原で円盤を探すシーンです。

Y木:変な映画やなー。

S原:たしかにそうやな。もうネタバレになるけど、河原で探していると、ほんまにUFOがやってくるねん(笑)

Y木:UFOを探しに行って、ほんまにUFOに遭遇するんか。なんかすごいな(笑)

S原:こどものころに「会いに来てくださーい」と願ったメッセージが20年後に届いた…という設定やねん。いかにもなデザインの空飛ぶ円盤から、いかにもな銀色のタイツの宇宙人が降りてきて、主人公たちと大阪弁で会話するねん。

Y木:うわー…自主映画でありそうな展開…(苦笑)

S原:それで、宇宙人と話し合って、結局主人公と幼馴染の男2人がUFOに乗って違う惑星にいってしまうねん。そこでおしまい(笑)

Y木:なかなかぶっとんだ映画やな。

S原:たしか「花嫁はエイリアン」(1988)も、そんなラストやったやろ?

Y木:知らんわ、そんなしょーもなそうな映画。

S原:そうかー、結構面白いのに(笑)「油揚げの儀式」はUFOの特撮もチープやし、宇宙人が登場したら、なんか学際の仮装大会みたいで失笑してしまうけど、不思議と悪い気はしなかったわ。紙芝居風のアニメなんかも効果的に使っていて、ここも面白かった。俳優陣は、知っている人は誰もいないけど、まずまずやったかな。ちょっと演技がお笑いのコントみたいでわざとらしかったけど、あれは監督の狙いやろうな。

Y木:それで結局、映画としてはおもろいの?

S原:いやー、「おもろいか?」と言われると返事が困るけど、「おもろないんか?」と言われると「おもろないというわけでないで」と答えるかな。

Y木:なんやねん、まわりくどいな。それで、もう1本の「ベリースタートっ!」のほうも同じ感じ?

S原:うーん、これはなあ…感想が言いにくいけど「油揚げの儀式」とは違って印象に残らない映画やったなあ。あとで調べたけど、SNS上でレビューしている人は、ほとんどゼロみたいやし。こんだけレビューがないのは、「ボクシングベイビー」以来やわ(苦笑)

Y木:まー、それこそ低予算やしそれは仕方ないんとちゃうの?出来不出来と言う前に、そもそもこういう映画を観る機会がないでしょ?

S原:そうやねんなー。そういう意味では「ベリースタートっ!」とか「油揚げの儀式」みたいなマイナーな映画は、気の毒かもな。まずは観てもらわないと始まらないから。

Y木:賞賛も酷評もなにもない、ってことやろ。そりゃ(作った人たちには)辛いかもな。

S原:うん。「ベリースタートっ!」の感想を言うとほとんど製作費がないのは、観たらわかるねん。俳優も、全然知らない人ばかり。でも、この映画をわざわざ観る人はそんなのは百も承知やろ?だから、こういう映画では、なにか軸というのかフックというのか、観ている人に引っかかるようなものがあるほうがええと思うねん。

Y木:どういうこと?

S原:たとえば、この映画では静岡の田舎町でなんとなく暮らしている主人公が、ひょんなことからヒッチハイカーと出会う。ちょっと変人なヒッチハイカーと一緒に、旅にでることになるというストーリーやねん。

Y木:まあ、ありがちやけど面白そうやん。おれはそういう話は嫌いとちゃうで。

S原:うん。ストーリーは単純でええねんけど、意外とわかりにくい点もあるねん。まず、ヒッチハイカーの俳優の口調が独特で、かなりセリフが聞きとりにくい。演出/演技で個性を出そうとするのはわかるねんけど、ちょっとわざとらしかったかな。

Y木:そのまま演技しても面白くない、という計算でしょ?

S原:そう思う。けどなー、結果的にはあんまり上手くいかなかったかな。演技といえば、主人公を気にしている女性もでてくるねんけど、こっちも(主人公を)叱ったり、突っかかる演技が多くて、不自然な感じがしたかな。女優はなかなかの存在感(とくに表情)やったから、惜しいと感じたわ。

Y木:主人公は、普通の人?

S原:そうそう。どこにでもいるような人間が、ヒッチハイカーと出会ってちょっとした冒険に出る…というわけやけど、主人公が、どこか焦燥を感じているという描写が少なくて、「思い切って旅に出る!」という感じがしなかったのが、一番惜しいと思う。

Y木:理由なんかなくてもええやん。

S原:そうやねんけどな、この映画の主人公は「なんとなく旅に出てしまう」のか「日頃の焦燥から逃げ出すために旅に出る」のか「ヒッチハイカーの旅路に影響されて一緒についていく」のか、どっちつかずに感じてしまうねん。とくに前半は、旅に出そうで出ないから、本当にダラダラしているだけのように感じてしまう…

Y木:それが狙いじゃないの?

S原:うーん、どっちにせよこの映画では、主人公に感情移入するほうが楽しめたと思うねんけど、ぼくはあんまり主人公の気持ちはわからんかったなあ。

Y木:なんで旅に出るの?目的のない旅?

S原:一応、ヒッチハイカーが姉に会いにいくという目的があるねんけど、これもどうでもええ感じやねん。

Y木:風景がきれいに撮れてるんじゃないの?ロードムービー風というか。

S原:実はそれを期待したけど、イマイチやったな。静岡の田舎の風景は結構よかったけど、途中の東京の場面は全然良くなかった。ゲリラ撮影の苦労はわかるけど、東京に行くシーン自体に必要性も感じなかったしな。

Y木:良いところもあったんやろ?

S原:2人がトボトボと歩いている場面は良かった。あとは全体的に空がキレイに撮れているかな。女優が車の屋根の上にのってビールを飲むショットとかは、なかなか良い。でもやっぱり全体的になにか物足りないねん。ぼくが求めすぎなんかな?

Y木:観てないからわからんけど…それだけ、おまえはこの映画を観ていて、いろいろと考えたってことでしょ?

S原:そうやなあ。本当に2作品とも手作り感満載やねん。俳優たちも自分の出番がない問いは絶対撮影の手伝いをしてると思うしな。好みはあるけど、毒にも薬にもならないハリウッドのC級作品を見るよりも良いと思うわ。

Y木:でもなー、こういう映画を観るのは、やっぱりハードルが高いんとちゃうかな。

S原:そうかもな。さあみなさん、映画自体に思い入れがない人、というか映画ファン(マニア)以外は、ちょっと厳しいかもしれませんが、どうせこの世の中に生まれてきたのですから、メジャー作ばかり観る人生はもったいないですよ(笑)音質が悪いとか、車内と車外で画質が変わるとか、それはスルーしてあげてください(笑)今回は本当に知られていない2本の映画ですが、嫌味でなくメジャー作にはない味わいがあるのは確かですよ。ワゴンコーナー、中古屋さん、レンタル店でみかけたら、一度手に取ってくださいませ!