S原:今回はこちらですよ。
Y木:うわ、いかにもワゴンセールで売ってそうな映画…
(あらすじ)
ホラーの枠組みを越えたサスペンス・ホラー作品。ドライブを楽しんでいたジョンとジェニファーは、街外れの森の中でパンクして動けなくなってしまう。そこで死体のような物を発見し、ジョンが何者なのかを確認しようとすると突然首を噛まれてしまう。振り切って必死に逃げ惑う二人は、隠れ家を見つけ避難するのだが、やがて彼の体に異変が起き始め…。
S原:タイトルといい、ストーリーといい、ありがちなゾンビ映画にみえるやろ?
Y木:おれ、これをレンタル店でみつけてもスルーするなー。
S原:実は、この映画は一味違うねん。たぶん監督は、ありがちなゾンビ映画を撮るのが嫌やったんとちゃうかな。なんと、この映画は「ゾンビ」+「ラブストーリー」+「ゾンビになった葛藤・苦悩」がブレンドされてるねん。
Y木:ほー。
S原:そのチャレンジ精神は買いたい。ただ、あまり成功しているとは言い難いかなー。
Y木:まあ、難しいやろな。
S原:映画全体は83分と短めやねん。まず、はじめがスローすぎる。山中でゾンビらしき死体に噛まれてから、主人公・男が調子が悪いと言い出すまで30分くらい経過してるから。
Y木:たしかに、ゆっくりやなあ。
S原:たぶん、映画の前半にキャラクターやドラマ部分をしっかりとみせたかったんやろうけど、結果的にはこれは監督のミスやと思う。演出全体も良く言えば素直、悪く言えばメリハリがなく一本調子やねん。ゾンビになってしまったあとも、本人たちは延々と悩むから、なんか『風邪になってる他人の様子』をみせられてるみたいでな…(苦笑)ゾンビになった男は、恋人に噛みついて2人ともゾンビになってしまう。そのあとは、2人の会話が延々と続くねん。「調子が悪いわ」「あなたのせいよ」「知るか」「だんだん死んでいくのよ」「それが嫌ならでていけ」「勝手すぎるわ」「どうなるんだろう…」
Y木:なんか痴話げんかみたいやな(苦笑)
S原:これはラブストーリーですよ、あなた(笑)その女性はメイクでゾンビ顔になるんやけど、ちょっと雑でなあ。「汚れた歌舞伎役者」みたいやねん…(苦笑)さて、ゾンビになった2人は、生肉が食べたくなって仕方がない。でも「殺人なんてできない」「そこまでして(ゾンビとして)生きるのか?」と悩む。でトボトボ山中を歩く。急になぜか元気いっぱいに腕立て伏せをしたりする。たぶん、ゾンビが腕立て伏せをする史上初の映画ちゃうかな。
Y木:そのシーン要るか?なんやようわからんな。
S原:そのあと。恋人(ゾンビ)は死ぬ。それで主人公はまた苦悩する。ここで(主人公が)独りぼっちになってしまった悲しみが伝われば、良い映画になったと思うけど。ちょっと残念やったな。主人公の最後のモノローグは『すべてに終わりがある、という事実に救われる…ある日、俺は永遠の眠りにつく…この肉体ともおさらばだ…最高の愛の物語は、いつも悲劇で終わる…そして物語は幕を閉じる…』
Y木:80年代の中学生のポエムみたいやな。
S原:あの「ふぞろいな秘密」のモノローグを思い出す(笑)最後は、警察がきてバーンと撃たれて、主人公目線のカメラがバタンと横倒しになって、おしまい。
Y木:うわ、「食人族」みたい(笑)
S原:せめて「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」と言ってやれよ…まあそんな映画やったな。さっき言った通り、この監督は、いろいろと新しい要素の入った映画を目指したんやと思うけど、出来上がったら中途半端になってしまった。とにかく「今までのお決まりのシーンの羅列で映画を作りたくない」「新しい要素をいれたゾンビドラマを作りたい」という監督のこだわりは、分かった。ただ映画としては、うーん。
Y木:今回は評価が難しそうやな。
S原:さあみなさん、ゾンビ映画と恋愛と人間ドラマを取り入れた野心的な映画です。決して良い出来ではありませんが、単純なゾンビ映画を観たくない人は、マストバイ…かな?