あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

観た後に、誰かに話したくなる映画 10選!「ゾンビ・ドッグ」(2002)の巻

ゾンビ・ドッグ [DVD]

S原:今回は犬!ゾンビ!その名も「ゾンビ・ドック」!

Y木:ええ年した大人が観るもんではないよな……

(あらすじ)

数々の米国ホラー映画祭でグランプリを獲得した、アメリカで実際に起きた「連続女殺人魔事件」をモチーフに描いた“ゾンビ犬”映画。巨漢でアル中の売れない劇画作家のマッドは、ある日飛び出してきた小犬“ラッキー”を車で撥ねてしまい…

 

S原:みんな、犬が好きやん?

Y木:まあ好きな人は多いわな。

S原:ゾンビも好きやん?

Y木:まあ人によるけど、ゾンビが好きな人は多いわな。

S原:犬!そしてゾンビ!もうみんなが大好きな2大テーマで映画を作っちゃったゾ、テヘッ♡

Y木:テヘッ♡、じゃねえ。あのなあ、こういう映画はもう飽きたわ。いや観てないけどな。観てないけど話を聞かされる身にもなってくれ。犬がゾンビになる映画なんか観たくないねんって。

S原:いま、あなた何て言った?

Y木:は?

S原:あなた、何て言ったのさ?犬がゾンビになる映画?犬がゾンビになる映画だってえええ?

Y木:なんやねん。

S原:アリアリアリアリアリ!アリーヴェデルチ!(さよならだ!)

Y木:うるさいわ!さよならでええわ!

S原:あーんもう。ちょっとふざけただけじゃないの、つれないお方!えーとですねえ、この映画はですねえ…なんと!犬はゾンビになりません!!ビックリしたでしょう!?

Y木:………(無言)

S原:……ねえ、モナミ?

Y木:………(無視)

S原:聞こえなかったかな?よーしワンスアゲイン!犬はゾンビになりません!!

Y木:ど・う・で・も・え・え・わ!

S原:いやー、どうでもよくないよ。だって、この映画を観る人は100%ゾンビ犬がでてくる話やと思うやん?猿の惑星シリーズでは猿がでるやん?コンバトラーVでは合体シーンがあるやん?合体ロボアニメではニヒルな奴がいるやん?(S原注:コンバトラーVでは、浪花十三)そういうお約束がないなんてあり得へんやろ?いやー久しぶりに驚いたわ。

Y木:はあ(ため息)それで、ゾンビにならない犬がどうなるの?

S原:ちょっとストーリーを話すと、主人公はメタボでアル中なアニメ脚本家です。仕事がなくて貧乏です。食べるものがないのに、お酒だけは飲むどうしようもないダメ人間です。ある日、飲酒運転で小型犬をひいてしまいます。犬の名前はラッキーです。家へ連れ帰って介抱します。その後、原稿を取りにきた女性を追い返したり、電気メーター点検の女性や教会への寄付を募る女性も追い返します。

Y木:え?よくわからんけど。

S原:どうもこの主人公は偏屈でな。自分以外の人間を心の底から憎んでいるみたいやねん。心の声で悪態をつきまくります。想像の中では、チェーンソーで首を斬ります。そういう主人公だから当然モテません。だから、余計にネガティブな妄想ばかりをするのよ。しかも、そのモノローグが超ダサい。底の浅い哲学風の愚痴というか、押井守好きの中学生が書いた小説というか。

Y木:全然分からん。

S原:たぶん誰もわからんよ。それで、脳内でミスティという女性を「創造」して自分を慰めています。一方で、とにかくお金がないから自分の血を売ってお酒を飲みます。

Y木:かなりヤバいな。そんな奴が主人公か。

S原:で、最初に轢いた犬(ラッキー)が危篤やったんやけど死にます。主人公はラッキーをお墓に埋めようとしていたのですが、なぜかラッキーは復活します。もちろん、この展開に説明はありません。

Y木:あーそう……

S原:主人公とラッキーは仲良くなります。ラッキーはテレパシーで話し掛けてきます。生肉を要求したり、「お前は息が臭いから歯を磨け」と主人公をディスります。なんだかんだあって、一緒に脚本を書くことになります。主人公はラッキーの言う通り脚本を書きます。主人公が少しでも自分のアイディアを入れたりするとラッキーは怒ります。スペルも間違っていると指摘します。

Y木:あの-、どういう映画……これ?

S原:結局、ラッキーの言う通り書いた脚本が売れます。そのあと仕事がもらえてハッピーなんやけど、ラッキーの言う通り脚本を作るだけの人間になります(犬はタイプできないから)。ある日、主人公が妄想していた女性(ミスティ)と出会います。主人公は大喜び。ラッキーと協力して仲良くなりますが、「犬とテレパシーで話している」とバレてドン引きされます。

Y木:そうやろうな。

S原:この辺から主人公は頭が、さらにおかしくなります。ついに仕事で訪ねてきた女性を殺してしまいます。庭に埋めますが、また掘り起こして死体をレイプします。

Y木:おいおい……

S原:ラッキーも調子にのって主人公をあおります。おまけにラッキーは死体を食べます。

Y木:気持ちわる……もうメチャクチャな映画やん。

S原:メチャクチャやったよ。主人公に嫌悪感しか抱かない狂った映画です。出来が悪いのはええねんけどな、とにかく理解が出来ないねん。ザラザラの映像で、わけのわからないことを延々と呟くメタボのオッサンと可愛げのない犬がでてきて、頭の悪いミュージックビデオみたいな映像が延々と続く。サイケのような演出でもなく、ただ気分が悪くなるだけ。字幕の誤字があるし、吹替は俳優の口の動きに合っていない。あと、普通は口語と字幕って違うやん?

Y木:ん?字幕と言葉の違いってこと?

S原:そうそう。例えば「きみのことが好きだ」と字幕がでても、現実にはそうは言わないから「好きなんだよ、きみが」とか変えるやん。この映画では、ただ棒読みで字幕を読んでいるだけ。そんな映画、初めて観たわ(苦笑)これ、ほんまやで。

Y木:というか、単純に犬がゾンビになる映画を作ればよかったんちゃうの?

S原:そういう映画を作りたくなかったんやろうな。驚いたのは、ネットでこの映画をちゃんと考察というか深読みしている人がおることやな。

Y木:ほんまいかいな。

S原:その人によると「はじめから主人公は狂っていて、犬の会話などはすべて主人公の幻想」らしい。「殺人や死姦をした現実を受け止められず自ら命を絶った」と。

Y木:なるほど。

S原:たしかにそう言われれば、筋は通るのよ。

Y木:もう1回観たら?意外と映画の評価が変わるかもよ?

S原:もう勘弁して。1回で十分です。さあみなさん。犬好きにもゾンビ好きにも無視されるような映画になってしまいましたが、「頭のおかしい奴の脳内映画」と考えれば、これはこれでアリ……いやぼくはナシですねえ(笑)というわけで、今回は、きっと誰かに話したくなるような珍作中の珍作、ほんとうに変な映画でした。おしまい!