あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

ヤクザ映画10本ノック!「最後の神農(テキヤ)」(2004年)「実録闇のシンジケート」(2008年)の巻

最後の神農 [DVD]

 

実録 闇のシンジケート 豊田登 [DVD]

 

 

S原:ヤクザ映画特集。今回はこの2本!

Y木:なんか、こんなパッケージばっかりやなあ…

S原:今回は「実録もの」2本をまとめて紹介します。

 

(最後の神農(テキヤ)のあらすじ)

哀川翔主演の“東北の雄”と呼ばれた男たちの熾烈な抗争を描いたドラマ。テキヤとしての厳しい修行に耐えて田畑組2代目を継ぐことを許された佐藤儀一は、敢えて自らの組を立ち上げることを決意。東北の頂点を目指し、佐藤組の戦いが今始まる…。

 

(実録闇のシンジゲート豊田登のあらすじ)

平成12年12月、一人の男が覚せい剤取り締法違反で、懲役十八年実刑に処された。男の名は豊田登(永澤俊矢)。東シナの海を幾度となく渡り、共産圏から日本へ、シャブとトカレフを持ち込んだ死の商人である・・・。警察の追跡をかわし、大金を生み出す闇のルートを作り上げた一人の男と、それを追う一人の刑事。侠たちの命を懸けた駆け引きが、今始まる―――!

 

Y木:実録ものって、実話がベースってこと?

S原:そうみたい。でも、どこまで事実を忠実に再現しているかはわからん。たぶん、かなり改変してるんとちゃうかな?

Y木:そりゃそうでしょ。

S原:まず「最後の神農(テキヤ)」の方から紹介すると、はじめのナレーションが大仰やねん。延々と続くから、途中でちょっと眠たくなるねん(笑)

Y木:いきなり眠いってあかんやろ。

S原:この映画はなあ、なんというかとにかく喧嘩シーンが多くてなあ。

Y木:だって、そういう映画やん。

S原:そうなんやけど、哀川翔は組長になっても、喧嘩するねん。

Y木:威厳もなんもないがな(笑)

S原:喧嘩の場面のたびに、バキッとかドスッとか呻き声とか入って、なんかコントみたいやねん。

Y木:怒られるぞ。まあでもあれやろ?哀川翔がどんどんのし上がっていくのを楽しむ映画とちゃうの?

S原:確かにそういうストーリなんやけどな。組長の引継の場面や組同士の手打ちの場面とか、丁寧に撮ってるからそれが売りなんかなあ、とは思う。好きな人にはたまらんねやろうけどなあ、でもやっぱりちょっと工夫が足りないよなあ。

Y木:工夫って?

S原:舞台は東北。キャラクターが東北弁とか使ったら面白いと思うねんけど、それはなかった。もう少し地域密着というか、この地域は〇〇組のもの、この地域は××組のものという感じで、陣地を取り合う合戦にするとか、東北独自のルールがあるという設定やと面白かったと思うんやけどな。

Y木:地方ならではの映画ってこと?

S原:そうそう。せっかく珍しく東京・大阪が舞台でないんやから、もっと『地域ならではの守るべき掟』がないとな。地図がよく映るから、製作者も意識はしていると思うんやけど、位置関係が把握できなくて、そこが一番惜しいと思ったな。そもそも地図で説明されても、主人公がどこにおるのかイマイチわからんし(笑)

Y木:なるほど。

S原:ベタな演歌をバックに、哀川翔扮するチンピラがのしあがって、東北で組長になって、いままで通り暴れておしまい…では、ちょっとな。

Y木:まあ観てないからなんともいえんけどな。もう一本はどんな感じ?

S原:「実録闇のシンジゲート豊田登」のほうは、かなりクールでな。主人公は、冷徹というか本当に「非合法の商売」を淡々としているっていう感じやねん。チンピラとかケンカの場面も少なくして、ストーリーのテンポもすごく早い。日本映画独特のジメっとした湿気の多い感じではなくて、どこか乾いた雰囲気でな。

Y木:フィルムノワールみたいな感じ?

S原:そこまではスタイリッシュじゃないけど、主役の永澤俊矢はかなり抑えた演技で存在感があったな。それにこの人は声がすごく良いねん。この映画の雰囲気は、この声がかなり影響していると思う。映画自体のメインストーリーは「主人公がいかに金儲けをしようとしているか?」「警察はいかに主人公を捕まえるか?」が中心やねん。ほとんどサブストーリもなく、どんどん話がすすんでいくから結構面白いで。

Y木:非合法の商売って、覚せい剤とか?

S原:種類はわからんけど、ドラッグと拳銃の密輸やな。大事な密輸品(トカレフ)が台風で濡れてしまったから、ヤクザたちみんなで銃の水気を拭いていく場面とか、面白かったわ。銃は大事な商品やから、必死やねん(笑)

Y木:なんかサラリーマンみたい。

S原:一緒やで、ほんま(笑)あと、なかなか良い味の場面もあるねん。この主人公は妻子がおるねんけどな。非合法の商売で家にはほとんど帰らない。あるとき、娘とバッタリ家で会うねん。娘は「わたしの制服姿、見るの初めてじゃない?」と言われて、言葉に詰まる…一見なんでもないような、こういう短い場面も丁寧に描いているところも良かった。

Y木:じゃあ、「実録闇のシンジケート」はおススメってこと?

S原:うーん、おススメかと言われるとなあ…

Y木:なんで?

S原:だって話が終わってないもん(笑)大きな商売がうまくいくかどうか?主人公は捕まるのか?中途半端で終わってしまうねん。

Y木:えー、そうなんや。

S原:完結編があるらしいけど、ほんまに話の途中で話が終わるから評価が出来ない。

Y木:じゃあ、続きを観たらええやん。

S原:いやーもうええわ(笑)

Y木:なんやねん。

S原:でも永澤俊矢哀川翔も、結構良かった。なかなか役にハマってるしな。こういう役ばっかりやってるからかもしれんけど(笑)

Y木:でも話を聞いてると、なんかおまえは、この手のジャンルムービーに期待以上のものを求めているよな。

S原:だって、どうせ観るなら面白いほうがええやん。

Y木:そうやけど…こういう映画は、『こういう映画が好きな人』にむけて作ってるんとちゃう?一見さんお断りってことはないやろうけど、常連さん相手の商売っていうか。

S原:そうなんやろか。作り手側に、少しでも作品を多く観てほしいっていう気持ちはないんやろか?

Y木:わからんけどな。

S原:作り手側も観る側もそれで良いんなら、まあとやかく言わんけども…でもなー、地下アイドルだって、インディーのプロレス団体だって、なんとか自分たちに興味をむけてもらおうと努力するやん。キモイおたく相手でもグッズを売るために愛想をふりまくやん。そういう努力を見習ってほしいなあ。

Y木:地下アイドルとプロレス団体とヤクザ映画製作をまとめて語ったのは、おまえだけやと思うで(笑)

S原:さあ、みなさん。哀川翔がケンカする場面が大好きな人は前者、密輸ルートの駆け引きを楽しみたい人は後者がおススメです。ただし、どっちもやや消化不良気味なので、のんびりと肩に力を入れずに楽しんでくださいませ。

Y木:ヤクザ映画やのに、のんびりって…