あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「フィア・ストーム 」(2003年)の巻

フィア・ストーム [DVD]

 

S原:さーみなさん、おまちかね。今回はこれ!

Y木:だれも待ってないと思うけどな。

 

(あらすじ)

危険が迫ると警告して注意を促すという画期的なブレスレットが発明される。商品開発部のミッシェルは、実験台として恐怖症の弟・ローリーにブレスレットを与えるが…。誤作動を始めたブレスレットがエレベーター、地下鉄など、街中をパニックに陥れる。

 

S原:これは、場外ホームラン級のダメ映画やった(笑)

Y木:というか、こういうのを観ようとしている時点で、ダメ映画ってわかってるんやろ?

S原:そうなんやけどな。なんというか上にある紹介文を読むと、結構好みのストーリで期待してしまったのよ。

Y木:いや、パッケージでわかるやろ。めちゃダサいやん。ビルからビームがでてるやん。

S原:もちろん、こんな場面はないねんでー(笑)このパッケージを観ると、主人公の男女がイマイチでショボい感じやろ?実際に観ると、もっとイマイチでショボい感じやったわ…例えて言うと、コンビニの前で菓子パンを食べながら、つまらなさそうに携帯をいじっている早朝のカップルみたいな。

Y木:具体的やのにわかりにくい例えはやめてくれ。要するに、ショボいパニックものなんやろ?

S原:あー…パニックと言っていいのかどうか…ある警備保障会社で、危険予知が出来るブレスレットが開発されるねん。それを主人公がはめるねんけど、この男はもともと毎日毎日不安感を感じながら生きているヤツやねん。

Y木:えーそんな男に、危険予知できるブレスレットを渡したらあかんやろ。

S原:まあ危険が予知できるから(主人公の)不安も解消されるはず、という理由なのか、不安を感じ続けているから危険をすぐに察知できるはずという理由なのか、映画が下手すぎて全くわからん(苦笑)主人公には恋人がおるねんけど、どうにも珍妙な女性でな。主人公ともかみ合わないし、ストーリーに関係しないし、なんのために出てきたのかわからん。

Y木:主人公の恋人が危険な目に合う…というお約束ちゃうの?

S原:いや、そんなことはなかったな。喫茶店で、主人公に対してブツブツ文句を言うだけやった。しかも、なんか観客に不安感を与える容姿/化粧やねん(笑)

Y木:映画の本筋と関係のないところで、観客に不安感を与えたらあかんやろ。

S原:ほんまやねんって。映画の本筋としては、ふつうならブレスレットをもらった主人公が、危険を予知できるようになる → 未然に危険を防ごうとする → だけど上手くいかない(もしくは、上手く防ぐ) という展開やろ?

Y木:まあな。

S原:でも、この主人公は ブレスレットをもらう → あいかわらず不安感を抱えながら生活 → たまに恋人とケンカ という展開やから。

Y木:えー、ブレスレットをもらった意味ないやん。

S原:ないよ、まったく(キッパリ)。やがて、主人公はエスカレーターとかエレベーターとか、自分の身の回りの起きた事故がどうも自分に関係しているんじゃないか、とまた不安にあおられるねん。

Y木:ん?どういうこと?

S原:えーとですねえ、主人公は「自分が(不安で)いろいろと想像してしまう事故が、現実化しているんじゃないか?」と考えるねん。

Y木:ふーん、それで実際はその通りなん?

S原:いや、よくわからん。

Y木:なんやねん。

S原:だから映画の出来が悪すぎて、ストーリー展開とか主人公が何を考えてるかわからんねんて!

Y木:だから、そういうわけのわからん映画をみるなよ!

S原:テヘッ!(ペロリ)

Y木:ごまかすんじゃねえ。

S原:主人公はすぐ悪いこと(地下鉄事故とか)を想像してしまうから、自分で出来るだけ事故とは関係にない楽しいこと(カフェのメニューとか)を考えるように毎日努力するねん。

Y木:よくわからん上に、地味な映画やな。

S原:いっぽう、警備補償会社では「やっぱり主人公の恐怖が、街にトラブルを引き起こしているのでは?」と考えて慌てるねん(なぜそう考えたかは説明なし)けど、システムを改良してOKになったり(なぜOKになったかは説明なし)、しょっちゅう株式市場の場面が挿入したり(主人公の想像/行動で株価が乱高下しているという意味?)、社内アナウンスが何度も流れたり(コメディの要素なのか意味不明)、もう映画として破綻しているねん。結局、街はだんだんと恐怖感(不安感)に包まれて、パニックになる…という展開(らしい)けど、上手く演出できてなくて街の様子は普段通りやねん(笑)。好意的に解釈したら、『主人公は勝手に恐怖を感じているだけで、実は街の人々は普段のまま』という設定かもしれんけど、それにしては警備会社も主人公も事故に関与しているらしいから、やっぱりわけがわからん。

Y木:聞いてる俺もわからんぞ。

S原:そのくせエレベーターに挟まれた手がちぎれるスプラッターの場面があったり、どうにもチグハグやねん。はっきり言って、完全な失敗作です。さっきも言ったけど、予算がないからとか、監督が意図した面白さでないとか、そういうレベルじゃないと思う。ぼくの推測としては、この映画を製作するときにコンセプトを決めなかったんやと思う。どんな映画にするのか?サスペンスなのか、パニックなのか、ドラマなのか、コメディなのか、主人公が1人でビクビクする映画なのか。予算がなくても才能がなくてもホラーはホラーとして製作するやろ。出演者も製作したスタッフもどんな映画にするのかわからんまま作ったんとちゃうかな?

Y木:えー、なにそれ。そんなことある?

S原:絶対にそうやと思う。そうでないとここまで迷走しないはず。「ウォータームーン」(1989)という長渕剛主演の映画があったんやけどな。長渕が独走状態で、ゴタゴタが続いて、撮影中にスタッフがみんな長渕にそっぽをむいたらしい(笑)でも、すくなくとも長渕剛の頭には理想(映画の完成形)はあったはずやから、一応はそれに向かって進めばええと思うねんけど、この映画ではだれも完成形を想像しなかったというとんでもな事態が起きてるねん。

Y木:しかし、世の中にはいろんな映画があるねんな…

S原:それを再認識したで、ほんまに。それにしても、ぼくは、なぜこんな映画を一瞬でも「意外とおもろいかも?」と選んだんやろ?

Y木:こんな映画ばかり選んでるのに、いまさら反省…?

S原:まだまだ修行の身でござるよ。

Y木:いや、もう解脱してもええんとちゃうか。だれも止めへんやろうし。

S原:さーみなさん。いままであなたが観た映画は、出来不出来はともかくどんな映画か?と言われれば、〇〇な映画やで、と返事ができたでしょう。でも、この映画は違います。どんな映画かと言われても説明できません。そもそもなにをしたいのか、なにを観せたいのかがわからないまま映像を見せられます。そんな不思議な体験をしたいかたは、マストバイ!あ、いやお金を使うのはもったいないから、友達にDVDを借りてくださーい!

Y木:こんな映画、友達が持ってるわけないって。