あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「アンシーン/見えざる者」(2016年)の巻

アンシーン/見えざる者 [DVD]

 

S原:今回は、これを取り上げますよ。

Y木:おお、透明人間!

 

(あらすじ)

家族の前から姿を消したボブ(エイデン・ヤング)は、娘のエバ(ジュリア・セーラ・ストーン)との関係を修復しようと以前暮らしていた町に帰ってくる。ところが、エバの行方はわからなくなっていた。ボブは、体が少しずつ透明になっていくという秘密を抱えながら、危険を顧みずに娘の捜索に乗りだす。やがてボブは衝撃の事実に直面し……。

 

 

S原:この映画は、カナダ産。ちょっと変わり種やねん。普通は「透明人間」というと実験とかの設定やけど、この映画では一応、「病気」やねん。

Y木:へー病気なんや。

S原:だから主人公は誰にも言えずに、工場で働きながら一人でひっそりと暮らしている。それはええねんけど、この映画は……とにかくだるい!

Y木:テンポが遅いの?

S原:それもあるけど、映画全体の雰囲気がどんよりしてるねん。主人公もマジメと言えば聞こえはええけど、暗くてジメジメしてるだけ、おまけに汚らしいヒゲ面(笑)おまけに、カナダの空までどんよりしている。

Y木:SFXは?透明になる場面はあるんやろ?

S原:悪くないけど、ほとんど出てこない。

Y木:なんやねん、それ。大半のお客さんはそれを観たいと思うところやのに。

S原:これは、透明になっていく恐怖とかサスペンスではなく、暗い表情をした汚いおっさんが、娘を救い出すという人間ドラマやねん。

Y木:えー、じゃあ透明人間の設定は要らんやん。

S原:べつに要らんで。

Y木:あかんがな。ん?ちょっと待って。さっき「病気」って言ってたけど、パッケージには「呪い」って書いてるけど?

S原:実は、なんかよくわからんかった…(苦笑)とにかく主人公が家族想いで、いいヤツやねん。でも、こういう映画にそういうのを求めてないやろ?

Y木:まあな。

S原:この映画の監督は、たぶんこう言うと思うねん『お客さん、透明になる場面も少しは見せますわ。でも、ちゃいますねん。透明になる話はまあよろしいがな。それよりも、この主人をしっかりと見てくださいよ。地味やけど、ええヤツでっせ。どうでっか?』

Y木:そんな知らんがな。

S原:そうやねん。そんなこと言われても『あー、うん。そうやな、ええヤツやな…」』としか返答でけへんやろ。

Y木:ちょっと分かってきた。ピントがずれてるんやな。

S原:そうやな。まあ、家族ドラマを観たい人はええかもしれんけど……いやいや家族ドラマを観たい人は、そもそもこんな映画を選ばへんっちゅーねん!

Y木:誰に突っ込んでるねん。

S原:ちょっとストーリーを話すわ。主人公は、製材所で働いているんやけどな、最初から顔色悪くて、しんどそうやねん。ある日、元妻から電話がかかってくる。娘の様子が最近おかしいから(反抗期?)会って話をしてほしい、と言われるけど、8年も会ってないしあんまり気乗りはしないねん。実はこの時点ですでに「体が透明になっていく」という病気になってるねん。それもあって、あんまり娘と会いたくないねんな。

Y木:透明って、体全体が消えていくってこと?

S原:この時点では、手の指やな。包帯をまいてごまかしてる。よくわからんのが、どうも透明になっていくと、体調が悪くなるみたいやねん。結局、娘に会いに行くねんけど、そのあいだにも徐々に体が消えていく。

Y木:ストーリーは確かに地味やな。そこからどう展開するの?

S原:娘と再会して心の交流なんかをしていく。同時にドラッグをやりとりするギャンググループとかがからむけど、そんなに効果的ではなかったかな。わかりにくいけど、結局は「人体実験」で主人公の体は透明になっているということが分かってくる。娘も拉致されて、同じ実験をされてしまうねん。

Y木:病気でも呪いでもなく人体実験か。

S原:たぶんな。よく呑み込めなかったから、間違ってるかもしれんけど(笑)じつは主人公の父親は行方不明になってて、主人公は「自分を捨てた」と思って傷ついてたんやけど、人体実験で透明にされたんじゃないか、と疑ったりする。

Y木:ほー、じゃあその実験の謎を解き明かしていくわけね。

S原:いや、とくに実験の謎はわからんかった。

Y木:えー主人公はどうなるん?娘も実験台にされて透明になっていくんやろ?

S原:最後は、主人公は完全に透明になったみたい。でも、安心してくださいませ。透明のまま、娘のそばで暮らし続けるから、ネ!…で、おしまい。

Y木:なんやねん、そのラスト。

S原:これをコメディでなく、シリアスな感じで描いてるのがなんともまた。

Y木:あー、しょうもなさそう…

S原:ハッキリ言うんじゃないよ、あなた。ええ所だってあるねんで。

Y木:どこ?

S原:うーん…

Y木:ないんやないか。

S原:さっきも言ったけど、SFXはまずまず。パーカーのフードをとったら、頭が半分消えかかっているという場面はよかった。でもここだけやねん。あとはなあ…要するに観客は、透明人間ならではの設定をいかしたミステリーとかアクションをみたいと思うはずやのに、実際は暗い顔をしたひげ面のオッサンが終始苦しんでいるだけのを見せられるだけ、という…それにしてもなあ、なんでこんな家族愛をテーマにしたんやろ?

Y木:まあ、ミステリーとドラマの両方を狙ったんやろな。ことわざで言うと「一石二鳥」というか。

S原:だれか、「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざを、この監督に教えておいてちょうだい。

Y木:今回の映画はいかにも『ワゴンコーナー映画』ってことやな。

S原:さあ、みなさん、暗い男が悩む姿が好きな人、ちょっとだけ特撮があれば十分で本当は家族愛が観たい人、そんな人はマストバイ…いや買わなくてもええかな…

Y木:そうやろうな…