あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

タイムリープ映画3本勝負!「プライマー」(2004年)の巻

!プライマー [DVD]

 

 

S原:タイムリープ映画3番勝負。はじめはこちらです。

Y木:「プライマー」?全然しらんなー。

S原:これは、問題作ですよー。

 

(あらすじ)

2004年のサンダンス映画祭で脚光を浴びたSFサスペンス。若きエンジニアふたりが研究中に偶然タイムマシンを作り出し、過去に戻って株で大儲けをする。だが、タイムトラベルのタブーである過去の自分たちとの出会いが運命を大きく狂わせていく。
2004年サンダンス映画祭で、審査員大賞/アルフレット・P・スローン賞をW受賞

 

S原:いやー、久しぶりに監督が『全力投球』する映画に出会ったわ。とにかく、これが撮りたいんや!という魂の叫びが聞こえてくるような作品やったなー。

Y木:へー、タイムマシンの映画?

S原:うん。凝りに凝ってる設定で理系の映画といえばええのか、タイムリープに正面から取り組んだ野心作というのか。観客に対して挑戦状を叩きつける!って感じでな。
Y木:へーいまどき珍しい。

S原:ただ単純に面白いといわけでもないねん。ぼくは、映画の途中からほとんど理解できんかったし…(苦笑)予備知識がないほうが映画は楽しめるというのが、ぼくの持論やねんけど、この映画だけは例外かもしれん。

Y木:どういう映画?

S原:ある日、偶然に主人公がタイムマシン(箱)を2台開発できてしまう。それを友達に教えるねん。はじめは小さな箱やったんやけど、友達の協力で人が入れるくらい大きく出来るのよ。2つタイムマシンがあるから、2人同時に過去に戻って、お金儲けしようとするんねん。でも、この箱には制限があってな、大昔に戻れるわけじゃなくて、(タイムマシンを)起動した時点までにしか過去(たとえば6時間前)に戻られへんねん。で、過去に戻ったら、(6時間後に)価格が上がる株を事前にチェックして購入したりする。でも、当然同じ自分たちが(その時間には)存在するから、顔を合わせないように注意しながら行動するわけやな。2人でホテルで同じ時間を閉じこもったりして。ここまではわかる?

Y木:なんとなくわかる。じゃあ、そのあと(タイムマシンで過去に戻った後)は、いつまでも同じ人物が2人存在するってこと?

S原:ここが分かりにくいんやけど、どうも「過去に戻る前の時間」(過去に戻ってから6時間後)になれば「リセット」されるらしい。2名分の存在が1名分になるみたい。ここもあまり説明はないから、解釈が間違ってるかもしれんけど。

Y木:ちょっとわかりにくいな。

S原:ここからがさらに、ややこしい。まず、主人公たち2人はお互いに黙って(好き勝手に)箱に入って過去に戻ってるみたいやねん。この理由ははっきりわからんけど、お互いを出し抜こうと(お金儲けしようと?)するためみたい。これから展開する場面ごとの主人公たちが『いつの時間の主人公たち』なのかが(観客に)説明がない。

Y木:わからんようになってきたぞ…

S原:要するに、この映画は「時間軸」を丁寧に説明していないのよ。観客は、いま自分が観ている登場人物たちが、「そのときに時間を普通に過ごしている主人公」なのか、「過去に戻って、もう一度やり直している主人公」なのか、「お互いを騙して、過去に戻った主人公」なのか、わからへんねん。まずここが観ている人に、不親切かもしれん。

Y木:たしかに混乱しそうやな。

S原:何回も見直したら、設定もストーリーもちゃんと理解できるらしい。そのあと、何度も過去に戻った影響で主人公の耳から血が出たり、字が書けなくなっていく…これもはっきりとした説明はない。でも、タイプリープは危険やと分かったから、タイムマシンを使う前(主人公が友人に話す前)に行こうとしたり、その前にそれを察したもう一人の主人公が先回りしたり…どんどん複雑になっていく。

Y木:でも、タイムマシンの矛盾は?『同じ時間に同じ自分が存在する矛盾』はどうなるの?

S原:はじめに言ったとおり、ぼくもわからんかった。だから、映画を観た後にSNSで他人の感想をかなり読んだ。普段はほとんどそういうことをしないねんけどな。そのなかでは、「この映画では未来が枝分かれしていく」という見解があって、なるほどと思ったなあ。主人公たちが過去に戻って、起こした出来事が(未来の)つじつまを合わせるんでなくて、別々の未来になっていく。多次元世界というんかな。次々と「別の未来(時間軸)があるようになるという設定」というわけやな。

Y木:へー、ネットでは、この映画を解説と言うか解釈している人もおるんや。

S原:この映画をきちんと解説している人はすごいと思う(笑)あと映画のほかのエピソードでは、ひとつの箱を分解して、その箱と一緒にもうひとつの箱(タイムマシーン)で過去に戻るというエピソードとか、主人公たち以外にこっそりとタイムマシンを使っている人がいるのではないか?という謎もあったりして、どんどん複雑怪奇になっていく…

Y木:ごめん、わからん…(苦笑)

S原:わかりにくい分、どこか閉塞感のある雰囲気やねんけど、好きな人は好きやと思う。

Y木:今回ばかりは観てみないとわからん。

S原:この映画チャレンジするテーマとしては、さすがサンダンス映画祭の審査員賞というレベルやねん。でも、欠点もあってなー。まず、キャラクターとしては弱いねん。二人の個性なんかがハッキリしてなくて、行動の動機がいまいちつかみにくいねんな。主人公たちのうまくいかない焦りというか、タイムパラドックスに触れてしまう怖さとかは、あまり描けてないと思う。あとは、やっぱり設定と展開が難解すぎてついていけないことかな。ただ、後者に関しては監督の狙い通りとも言える。

Y木:「監督の意図通りに、観客は混乱する」と。

S原:そうそう。ただ、この映画の難解さが「監督の意図通りの難解さ」なのか「映画の出来(演出)が上手くなくて難解になってしまった」のかは、ちょっと微妙かもしれん。ぼくとしては『凝った設定』やけど、『凝った映画』とは言いにくいな。

Y木:なるほどな。

S原:ハリウッドとかは、とにかく上手に説明しようとするやろ?観客をミスリードしつつ、最後は理解してもらうみたいな。そんなウェルメイドなミステリーを期待しては期待外れやろな。これは、頭をフル回転してパズルを解くような映画やねん。すこし前の映画「バタフライ・エフェクト」(2004)もタイムトラベルを扱ってるねん。主人公が過去に戻ってなんとか(嫌な過去を)修正しようとする映画やねんけど、やればやるほど上手くいかなくなる…過去を知ってるはずなのに…というよく出来た映画やったんやけど、同じような題材でもこうも違うんか、と思ったなー。

Y木:「バタフライ・エフェクト」は理解できるんや?

S原:出来る。映画としてはちょっと暗いけどな。でも最後までハラハラドキドキするし。でも、「プライマー」は初めからそこを目指さんかったんやろうな。だから、鑑賞後の評価・感想も真っ二つになってるみたい。

Y木:まあ、そこは監督の意図通りやろうな。

S原:そうやな。監督は、何回も観てほしいという意図があるんと違うかな?そういう映画もあってもよいと思うで。この映画を観ると、すごくこの映画についてしゃべりたくなる(笑)ただカタルシスはないから、そこは覚悟したほうがええと思うなあ。

Y木:今回は異色作の紹介やなあ。

S原:さあみなさん。脳みそフル回転でメモを取りながらお楽しみください。監督からのパズル難問に挑戦したい方は、マストバイです!全部理解できた人は、S原にも教えてくださーい(笑)