S原:みなさん、コマンタレブ?フランス映画カルトシリーズ、今回はこちらです。
Y木:ほー。
(あらすじ)
1960年代のパリを舞台に、アイドルたちの記者会見から華やかな世界の嘘や裏側などが暴露される物語を描いた、マルク’Oが贈るフレンチ・ヴィンテージ・シネマ。ビュル・オジエ、ピエール・クレマンティ、ジャン=ピエール・カルフォンほか出演。
S原:あなた、フランス映画好きやったやろ。全体としてどんな印象がある?
Y木:いや、一言では言えんなー。同じ時代でもゴダールとトリュフォーはやっぱり違うし。なんというか作家ごとに違いすぎて、とても全体では話せん。
S原:たしかに。とくにフランス映画は作家性とかよくでる傾向があるかもな。この映画は知ってた?
Y木:いや知らんかったなあ、こんな映画。
S原:もとは舞台みたい。マルク‘Oという舞台演出家がそのままこの映画の監督をしている。この人は、演劇界のゴダールというニックネームらしい。
Y木:前衛的ってこと?
S原:うーん。たしかに挑戦的というか前衛的というのか、そんな映画になってるけど、どうやろうか。ちょっと観るのが辛いというのが正直な感想かな。
Y木:そうなんや。おもしろそうやけどな。
S原:ほとんどストーリーらしいストーリーはないねん。一応、イエイエという音楽ブームにのったアイドル3人の物語やけど、すこし売れ上げが落ちたり、私生活を絡めて(恋愛関係)また売り出したり、という感じで大してことはなかったな。レコード会社とか芸能事務所の描き方も、ステレオタイプやし。
Y木:みどころは、やっぱり歌やダンスのシーン?
S原:そうやな、舞台(テレビの撮影現場など)で歌うシーンが大半やけど、音楽(当時のフレンチポップス)に興味がない人には、きついと思う。当時の振り付けがちょっと面白いけど、まあ大したことないし(笑)
Y木:えーでも、カルト映画なんやろ?
S原:これは、カルトというかレアというか。なんと言えばいいのか…ただ、この映画ではものすごい長所というか売りがあるねん。
Y木:どこ?
S原:登場人物たちが着るファッション(とくにアイドルたちが着る服)が、すごい独創的で面白いねん。ファッションに疎い、もっと言うとユニクロとブランド服の区別がつかないレベルのぼくでも、ここででてくる衣装は興味深かった。あれはなかなかスゴイ。だから、そういうところは(歴史的な)価値があるかもしれん。
Y木:奇抜なファッション?
S原:うーんサイケというのか奇抜というのか、ぼくの語彙力ではうまく言えないけど、そうそう昔に「ディック・トレーシー」って漫画風の映画があったやろ?あのカラフルな衣装をちゃんと人が着れるようにアレンジしたって感じかな?
Y木:「ディック・トレーシー」か。覚えてないなー、いつものことやけど(笑)要するに、これはアイドルの話なのね?
S原:その通り。アイドルとして虚像を売り物にする(私生活も嘘で話題作りをする)という物語やねん。
Y木:どういうアイドルなん?
S原:ちゃんと個性があるねん。これは今も昔も同じやな。エキセントリックかつコケティッシュな「狂乱ジジ」、不良をモチーフにした「短刀のチャーリー」、占い師という設定の「魔術師シモン」。女性1男性2のグループやねん。
Y木:なんかネーミングが時代を感じる…(苦笑)どんな歌を歌うの?ラブソング?
S原:ラブソングも歌うけど、ほかに「タツノオトシゴの唄」とか歌うから、やっぱり皮肉というか揶揄している部分はあるんやろうな。
Y木:「タツノオトシゴの唄」?
S原:「タツノオトシゴは、足がないから靴がはけなーい」とかそういう歌やったかな。
Y木:なんか面白そうやがな(笑)イエイエという音楽はどうやった?なかなか、フランスのポップスなんか聞く機会がないやろ。
S原:初めて聞いたけど、とくにユニークには感じなかった。ところどころ、日本のアイドルソングと似てるかも、と思うくらいで。うーん…ポップ音楽の歴史のなかで、このイエイエがどんな評価されてるかは知らん。でも、1968年といえば、ビートルズが「アビイロード」、ローリングストーンズが「レット・イット・ブリード」を出した年やで。マイルス・デイビスは「イン・ア・サイレントウェイ」を発表してる。このへんと比べると可哀そうかもしれんけど…結局、イエイエは一時期流行しただけの音楽のままで終わって、いまは誰も聞いていないのが現実やろ。それも、なんとなく納得できるなー。
Y木:要するに、大したことないんや。
S原:ぼくはそう思う。例えていうなら、いま竹本孝之の「とっておきの君」をだれもカラオケで歌わへんのと一緒とちゃうかな?
Y木:そんな歌、知らんから、おまえの例えが正しいのかさえも判断でけへん…
S原:まあ、この映画の欠点は、アイドル本人たちが何を考えて、どう感じているのかがイマイチわかりにくいってことかな。(売れるために)割り切っているわけでもないし、葛藤しているわけでもないし、キャーキャー言われるて嬉しい・うっとおしいというのも、ぼくにはわからんかったな。お金儲けでもないみたいやし。
Y木:それこそ、わざとやろ?それが狙いというか。本人たちは何もない空虚な存在ってことじゃないの?
S原:うーん。そうなんかな。一応、本人たちも少しは悩むねんけど、まあ観客としてはどうでもええというか(笑)普通の映画と思っては楽しめないと思う。あくまでも、当時の芸能・カルチャーを楽しむ映画とちゃうやろか。
Y木:なるほどー、貴重といえば貴重かもな。
S原:たまらなく面白く感じる人もいると思うけど、今回ばっかりは「人それぞれ」としかいいようがないなー。
Y木:まあ、こういう映画もあるってことやな。
S原:さあ、みなさん。カルトというよりもレアな映画ですが、当時のファッションに興味がある人におススメですよ、モナミ。ちょっと変わった映画を観たい人やフランスポップカルチャーに興味がある人はマストバイですよ!それ以外の人は…正直に言ってお勧めしません!では、オフボワール(さようなら)!