あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

フランス映画カルト3番勝負!「奇人たちの晩餐会」(1998年)の巻

 

S原:ボンジュール!フランス映画カルトシリーズ、今回はこちら!

Y木:あ、なんかいかにもフランス映画って感じかも。

 

(あらすじ) 

パリに住む出版社社長のピエールは、毎週友人たちとディナーを取ることを習慣としていた。しかし、そのディナーは単なる食事ではなく、仲間内では「奇人たち(バカ)の晩餐会」と呼ばれていた。それは、毎回メンバーがこれはと思うゲストを一人ずつ連れてきて、その奇人変人ぶりを皆で笑うという悪趣味なものであった。

 

S原:結論からいうと、この映画は面白いねん。

Y木:そうなんや。たしかに、ストーリーを読むと皮肉やユーモアやドタバタドラマが混ざり合っていて、フランスらしいな。

S原:この映画を語る前に、すこし説明をしておくと、じつはこのブログでは、バカとかアホとか使わないようにしてるねん。我々2人は生まれも育ちも関西人なので、実際の会話では「アホやなあ」とか「おまえ、アホちゃうか」とか言ってるけど、文字にすると印象が違うから、というのが理由やねん。これはY木氏のアドバイスね。

Y木:そうやったかな。たしかに、文字と言葉では印象が違うからな。

S原:あ。関東の人は「バカ」を使いますけど、われわれ関西人は、「バカ」じゃなくて「アホ」を使いまんねん。そこんとこは堪忍しておくれやっしゃ。

Y木:そんな言い方は、関西でも普段言わへんやろ。

S原:でも、この映画を話すときは、バカとかアホという言葉を使わな説明できない。だって、この映画は、バカとかアホがテーマやから(笑)

Y木:今回ばかりは例外ってことやな。

S原:この映画やけど、いつものように予備知識なしで観たら、ほんまにアホみたいで面白かった。あ、これは誉め言葉ね!

Y木:この映画は、コメディやろ?「裸の銃を持つ男」みたいな感じ?

S原:登場人物が「天然」で、周りの登場人物たちが振り回されるという意味では一緒やけど、テイストは全然違う。なんというか、こっちのほうが単純やけど凝ってると言えばええんかな。

Y木:へー、そうなんや。

S原:まず設定がおもろい。だって「晩餐会に(出席者が1名ずつ順番に)バカを1名呼んできて、(バカ具合を楽しみながら)一緒に食事を楽しむ」やで!この設定を考えたやつは天才やわ。これに匹敵する設定って思いつく?

Y木:そうやな。「悪魔の毒毒ハイスクール」(1986)くらいとちゃう?だって、あの映画の設定は『普通の高校の生徒が、高校の隣にある原子力発電所の影響でパンクになってしまう』やから(笑)

S原:あー!あれは滅茶苦茶な設定やったなー!(笑)放射能の影響でパンクロッカーになるって。どの角度から見てもダメやろー(笑)

Y木:なんか、おまえ今回はテンションが高いな…

S原:この映画の話をすると盛り上がるでえー。主人公がバカな男(ピニョン)を見つけて、例の晩餐会に連れて行こうとするのがストーリーなんやけど、そのバカな男に散々主人公が振り回される…ありがちなコメディといえば、その通り。でもピニョンの設定が最高やねん。だって、このピニョンは、税務署勤務で『マッチ棒で建物等を作る趣味』があるバカやねんで!また自分でつくった建物(マッチ棒を何万本も使ったエッフェル塔とか)を写真で撮って、延々と自慢する。晩餐会に行きたい理由は、お偉いさんたちに自分の作品の写真集をだしてもらうためというところが、なんともまた(笑)

Y木:ジャケットの人やろ。結構、微妙な感じが…(笑)

S原:「この人もしかして…?」というギリギリのラインやねん(笑)しかも、いつ晩餐会に連れて行くんだろうと思って観ていたら、結局晩餐会にか行かなかった(笑)あとで調べると元は舞台らしい。そういわれれば、納得。たしかに、ほとんど部屋の中での会話劇やから。

Y木:三谷幸喜みたいな感じ?まあ、もちろんおれは観てないけど。

S原:あくまで個人の印象やけど、三谷幸喜のほうが、ガッチリつくっている感じはする。まあ三谷も、珍作映画を作っているらしいから(笑)あ、珍作というのは「ギャラクシー街道」(2015)のことね。この映画ともいつかワゴンコーナーで出会えるんだろうなあ、楽しみだなー、ワクワク!

Y木:いやな楽しみ方やなあ…結局、この映画は会話劇の面白さってこと?

S原:そうそう。ピニョンが良かれと思ったことをするんやけど、どんどん悪い方向へ転がっていく…というベタな展開やけど、うまく出来ていて単純に面白い。

Y木:そのへんはやっぱり舞台の脚本を上手く料理してるんやろうな。 

S原:そう思うわ。例えば、ピニョンを晩餐会に連れて行こうとした主人公は、ギックリ腰で歩けなくなるねん。ピニョンは根が優しいから、主人公のためにいろいろなことをしてくれる。ところが、ちょっとオツムが足りないから(善意での行為のはずなのに)ことごとく裏目に出る。妻で愛人(浮気相手)と間違って、家から放り出したり、主人公を助けるために(作家に)電話をしたら映画化の権利を買ったり、税務査察官に対して、(主人公が)脱税している証拠を全部見せたり…

 Y木:なるほど。なんとなく面白さが分かるわ。

S原:あ、ひょっとしたら、まじめな人は「他人をバカだと笑う」ということで気を悪くする人もいるかもしれんな。でも、ちゃうねん。この映画では「他人をバカだと笑う周りの金持ち達もバカだよ」「こんなバカな映画を作る俺たちもバカさ。そして、こんな映画を観ているあんたもバカなのさ」というメッセージが、ほんの少しだけあるねんな。

Y木:ほんまか、それ?

S原:いや、わからん(笑)

Y木:なんやねん。

S原:まあでも、一回観てほしいなあ。ピニョンの破壊力はなかなかすごいから(笑)このレベルって、もう「アパッチ野球軍」(1970~1972)くらいしか思いつかないで。

Y木:うひょひょーすごいなー、アパッチ野球軍かー(笑)

S原:なんか大げさかもしれんけど、こんな『バカな映画をちゃんと作る』って、やっぱりフランス文化の奥深さみたいなのを感じたなあ。

Y木:大げさやなあ。

S原:でもな、アメリカ(ハリウッド)は、いろんなジャンルはあるけど、よく似てるやろ。基本的に多くの観客に受けるように作るし。でも、フランス映画は、シリアスもコメディもアクションも普遍性と作家性が混じってるような作風が多くて、このへんが中毒になるのかもな。

Y木:言いたいことはわからんでもない。 

S原:しかも、この映画は80分でコンパクトにまとまっているというのもグーやわ。ダラダラせずにスパッと終わるしな。

 Y木:今回は褒めるなあ。

S原:この映画を観ていろいろ考えたのよ。どうせ、100年度はみんな生きてないやろ?それやったら楽しく生きるほうがええやん!

Y木:なんか、前向きやなー。今回のブログの紹介で「観ようかな」と思う人もおるんとちゃうの?

S原:あ。あんまり期待しすぎたらダメよ!(笑)「どうせバカバカしい映画なんやろ?」と気軽にみてほしいかな。

Y木:たしかに期待すると、ただのアホな映画かも(笑)今回のフランスのカルト映画3本シリーズは、どうやった?

S原:単純に面白いのは「奇人たちの晩餐会」。当時のファッションとか時流に興味がある人は「アイドルたち」がおススメ。観終わった後に、だれかと何かを語りたくなるのは「小さな悪の華」かな。やっぱり、レアというかカルト作品という評判だけあって、どれも、なかなかクセのある映画ばっかりやった。

Y木:なるほど。

S原:さあ、みなさん!この映画はマストバイです!バカによるバカのための映画です。恥ずかしがらなくてよいのです。もう賢くふるまう必要はありませんよ。みんなで頭をからっぽにして映画を観ましょう。今度、一緒にマッチ棒で通天閣とかを作らへん?

Y木:作るか!