あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「テンタクルズ」(1977年)の巻

テンタクルズ 40周年特別版 [Blu-ray]

 

S原:今回はこちら。タコさんが襲ってくる映画です。

Y木:あー、これは知ってるで。

 

(あらすじ)

人間を襲う巨大ダコの恐怖を描くモンスターパニックムービー。カリフォルニアのビーチで人間が次々と行方不明になる。ひとりのベテラン記者が捜査に乗り出すが、協力者までもが何者かに襲われてしまう。そして、彼らの前に現れたのは巨大な怪物だった。

 

 Y木:あれやろ?「ジョーズ」の二番煎じやろ?

S原:おっしゃる通り。「ジョーズ」の大ヒットを受けて、世界中で動物パニック映画が作られてた頃の1本。これ、イタリア映画やねん。

Y木:あの頃のイタリアは、西部劇からホラーから何でもパクリまくってたから(笑)、当然こういう映画も作るやろな。

S原:この「テンタクルズ」は、DVD特別版が再発売されたりしてるから、マニアには人気があるみたい。でも、映画の出来は正直に言ってイマイチやと思う。まず、マカロニウエスタンでもよくあったように、アメリカンな俳優を連れてきて適当に作る姿勢がありありとみえるしな。

Y木:アメリカ人が俳優が出演してると、ちゃんとした映画と勘違いして(国際マーケットで)売れるという発想やろ。

S原:お金儲けしか考えてない奴らが作ってるから(笑)映画の出来なんかどうでもえんやろうな。しかし、イタリアって不思議やろ?だって、フェリーニヴィスコンティ、ベルトリッチとかおる一方で、ルチオ・フルチとか、ダリオ・アルジェントとかおるねんで(笑)

Y木:ものすごいカオス(笑)

S原:作る車は、あのカウンタックやしな。ワンアンドオンリーと言えばいいのか。たぶん当時のイタリア映画界は、混沌としたパワーが渦巻いてたんやろうな。でもそんな本流(?)とは別に、ちゃっかりと、こんな小遣い稼ぎの映画も撮るという(笑)あ、でもマカロニ魂も垣間見れる点があるで。たとえば、最初にタコに襲われるのは赤ちゃんやし、子供とか主人公の奥さんもやられちゃう。これはアメリカ製では、あまりない描写ちゃうかな。

Y木:娯楽映画なのにモラルも低い(苦笑)

S原:それにしても、味のあるジャケットやろ?イラストは生頼範義画伯。本当にこの人の絵は素晴らしい。素晴らしすぎて、この映画も面白いと誤解してしまう(笑)

Y木:ストーリーは「ジョーズ」と同じ?

S原:ほぼ一緒です。ただ、あんなに緊迫感はない…(苦笑)当時のB級パニック映画の通り、とにかく怪物(タコ)がでてこない。タコのアップ(普通のタコ)とか、断片的なカットばっかりが延々と続くねん。ちょっと良い場面もあるねんで。タコが出てくる前に、漁船に周りの海面がババババッと波打つショットとか、海底で魚が逆立ちして死んでいる場面も良かった。ちょっとシュールやしな。

Y木:え?魚が逆立ちして死んでる?

S原:一応、トンネル工事のために使用した電気振動装置のせいで、海生生物に異常な影響をあたえた、という設定みたい。その影響で巨大タコが誕生した、と。でも、そういう設定はあんまり製作者側も興味がないみたいで、ものすごい適当な感じやな。あ。そうそう、この影響で人間の死体もビヨーンって逆立ちで海面にあがってくるねん。海面から足だけ出てるねん。

Y木:それ、「犬神家の人々」のパクリやないか。あんなんまでパクるんか、イタリア人は。

S原:貪欲というか雑食やから(笑)劇中音楽が意外と面白くてな。なんか同じフレーズが繰り返される妙な感じのサントラで、はまってしまうねん。タコと闘うシーンに、変な男性コーラスが入ってたりして、「オーメン」(1976)からパクってるかも(笑)シンセの使い方は、ちょっとジョン・カーペンターみたいやねん。

Y木:カーペンターからは、パクったらあかんって。ショボいんやから

S原:この映画で「損した!」「☆ひとつの価値なし」とコメントしている人も多いけど、それは正解。とにかく、下手やから(笑)タコがたくさんの人を襲うという定番のシーンはあるねんけど、そのまえに延々とヨットレースが映ったりする。一応、ヨットレースの参加者を次々と襲っていく前というシーンなんやけど、あきらかに演出がアンバランスやねん全然、ドキドキしないしな。

Y木:人が襲われてキャー!がないのね。

S原:ないこともない。でも、観ているうちにどうでもよくなってくる…(苦笑)最後はもちろん巨大タコと対決なんやけど、主人公が世話していたシャチ2匹がタコと戦うねん。

Y木:シャチ?なんで?

S原:理由は聞いたらあかん。シャチは(主人公のために?)タコと闘うんやけど、なんやよくわからん。最後は、タコの足(触手?)にガブって喰いついて、やっつけておしまい。シャチがグイグイとタコの足を引っ張るのがクライマックス。そしてタコの足がちぎれて、おしまい。

Y木:うーん…

S原:さあ、みなさん、70年代ののんびりとしたムードと、イタリア人のバイタリティと同時に適当さ加減が味わえる映画です。巨大生物ならどんな映画でも好きな人、お寿司屋さんでイカじゃなくて、ついタコをいつも頼んでしまう人、珍妙なサントラ音楽ファンはマストバイです!