あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「ザ・チェーンソー・スラッシャー 悪夢のいけにえ」(2007年)の巻

ザ・チェーンソー・スラッシャー-悪夢のいけにえ- [DVD]

 

S原:今回はこちらです。

Y木:うわー、いかにもワゴンコーナーにありそうな映画…

 

(あらすじ)

森や湖に遊びにきたカップルたちが、チェーンソーを持った男によって惨殺される事件が相次いでいた。大学生のエリンは、女友達や彼女のボーイフレンドらと人里離れた森へキャンプに出かけ、楽しい時を過ごせるはずだったが、その夜、突然現れた謎の殺人鬼によって地獄と化す。パニックに陥る仲間たち、残虐な殺人…。ホラー界の新星、フランク・W・モンタグが、かつての傑作ホラー要素を盛り込んだ渾身の作品!R-15指定作品。 (アマゾンより引用)

 

S原:まずはタイトル。この日本語タイトルをつけた人は天才やと思う。「チェーンソー・スラッシャー 悪夢のいけにえ」…あの有名な「テキサス・チェーンソー」を「チェーンソー・スラッシャー」に加筆修正したうえで、「悪魔のいけにえ」を「悪夢のいけにえ」にするという、パッと見た目は絶対に間違う絶妙さ。

Y木:ただのパクりやろ。ホラーに興味ない者からすると、どれも一緒やろ。

S原:えー「悪魔にいけにえ」は良かったやん。

Y木:トビー・フーパーやったけ?昔観たけど、忘れたなー。いや観てないかな。

S原:あなた、それが多いなあ。

Y木:いやほんまに忘れるねん。

S原:テキサス・チェーンソーシリーズも色々とあって、ぼくも全部観てないけど、人気シリーズなのは間違いないと思う。一番の売りは、「チェーンソーで襲い掛かること」やな。

Y木:危ないなー。

S原:そういう次元の問題か。この映画はとにかく低予算。元ネタ(?)の「悪魔のいけにえ」も低予算やったけど、こっちの場合は、もう無意味なパワーが異様な雰囲気を醸し出してたやろ(笑)説明がないうえに出演者もどこか歪んでて、映画自体に整合性がとれていないのが余計に怖い。ああいうのは珍しい成功例やと思う。カルトといか、いまだに語り継がれる映画やな。邦画なら「狂い咲きサンダーロード」とかかな。

Y木:自主製作のノリが奇跡的に良いほうに転んだというか。まーでも、それは偶然の要素が多いんやろうな。幸運というか。

S原:そうやな。ホラーに限らず「なんかよくわからんけど、すげえ!」って感じる映画っていうのもあるから。ムチャクチャやけど、監督や出演者たちのやる気だけはみなぎっている、とか。

Y木:「鉄男」とか?

S原:そうそう。この映画の製作者は狙うとしたら、そんな「素人らしい無軌道なパワー」しかなかったと思う。

Y木:そうかー?観てないからわからんけど、素人らしい無軌道なパワーじゃない狙い目もあるやろ。ウエルメイドなホラーとか、コメディホラーとか。

S原:まあな。でも、たぶん製作者はそういうウエルメイドとかコメディは作りたくなかったんちゃうかな。というか、作る技術がそもそも足りていないという話もある(笑)

Y木:じゃあ、「やったるで!」というやる気が大事というのがおまえの言い分やな。それで、この映画はどうやった?

S原:まったく、作り手のやる気がなかった…

Y木:なんやねん。じゃあ、映画としての面白さは?

S原:最低ランクの出来やと思う…

Y木:困ったちゃんやな。

S原:うーん、ほんまに困ったちゃんやわ。単純にやる気も才能もセンスも技術も工夫も予算もないから、面白くなるわけがない…(苦笑)

Y木:身もふたもないな。

S原:この映画のストーリーは単純明快やねん。ヤングたちが森にキャンプに行く、そこで殺人鬼に襲われる、それだけやから。でもあらすじは単純でもええし、スラッシャーシーンを撮りたいのもええねん。この映画を作る動機(原動力)やろうし、この映画の「売り」やしね。でも、どういえばええんやろ…たしかに、この監督は、ホラー映画が好きなんやろうと思う。でも、いままでにあった場面の連続やねん。それも、すべておいて劣化しているという(笑)

Y木:要するに「いままでのグロ映画が好きやから、そんな感じで撮ってんでー」ってこと?

S原:そうそう。もともと新しいことをするという気持ちはないんやろな。たとえば、ローリング・ストーンズが好きなやつが、作曲したらストーンズの劣化版になったみたいな。

Y木:まあ、アマチュア・バンドあるあるやな(笑)

S原:マイルス・デイビスが好きすぎて、ミュートトランペットで、マイルスっぽいフレーズを吹くみたいな。

Y木:それはプロでもおるけどな(笑)

S原:まずキャンプ場に行く前もひどい。スーパーマーケットで、買い物カートに乗って遊ぶ(大人なのに) → 森に向かう車のシーンが、しょぼい音楽とともに延々と写される(ただの雑談) → テントを張るシーンはコマ撮り・早回し(本当に準備するだけ)…もう演出のメリハリも何もない(笑)

Y木:うーん、なんか修正できるようなレベルじゃないなー。俳優たちはどうなん?

S原:女性たちはとくに可愛くないし、男性たちはイモそうなヤツばっかり。なんか昔の俳優の劣化版でな。ケビン・ベーコンの劣化版、ダイアン・レインの劣化版、そんなんばっかり。

Y木:相変わらず、例えが古いな。とにかく、ひどい出来やっていうのは分かった。

S原:何度も言うけど、いままでのホラーの決まり事をそのまま見せられる(苦笑)ヤングたちが頭が悪いのも定番、キャンプ中に怪談話をするのも定番、テントの中で乳繰り合うのも定番、女優がデカパイでノーブラなのも定番、それを覗いているやつが、後ろから殺されるのも定番、挙句は殺人鬼から逃げるときに車のエンジンがかからない(笑)

Y木:うわー、そんな場面まであるんやー。

S原:おまけに、ホッケーマスクをかぶった殺人鬼もでてくる。

Y木:うひゃー。

S原:すこしだけ工夫(?)をしようという意識もあるねん。たとえばキャンプ場の近くに、周りに始終怒鳴っているような危ない中年男が住んでるねん。この男は殺人鬼とは別ね。ブラックジャックみたいな傷が顔にあってな(笑)そいつが後半になって、ストーリーにからんでくるかと思ったら、ヤングたちと一緒にあっさりと殺されてた。もう意味がわからん…。

Y木:でも、ちょっとは新しい部分あるやろ?一応「ホラー界の新星」なわけやし。この監督のセンスというか、そういうのはないの?

S原:あったかなー、あ。そうそう、湖ではしゃぐヤングたちのシーンがあるねんけど、女性のお尻をやたらととるねん。ズームアップになったり、スローモーションになったり、水の中から撮ったり(笑)これは、いままでの映画にはない場面やったかな。

Y木:そこが、監督のこだわりなんや…

S原:殺人鬼が女性のパンツをぬがすカットは、やたらとじわじわと脱がして、ここだけやたらと丁寧に撮るねん(笑)

Y木:そっち方面で活躍してくれよ。

S原:あとなんか俳優たちの顔色が変やねん。生牡蠣を食べて下痢したたんかもしれん。

Y木:そりゃ、おれらの学生時代や。ま、撮影に使ったフィルムの質が悪いんやろ、たぶん。

S原:そうかもなー。金髪がやたらと金色に光ったりな。血の色もなんか紫色やねん。演出なのか絵の具の配合を間違えたのか。とにかく画面が見づらくてなー。

Y木:ほんまにええところがないな…

S原:あと殺人鬼が、小太りでな。森の中でチェーンソーの音を立てながら、ビール腹のおじさんが、のんびりと女性を追いかけまわす姿は、コントを通り越して北欧の前衛映画みたいよ。

Y木:おまえの表現もわからん。

S原:しかも、殺人鬼はときどき立ち止まって、チェーンソーで雑草を刈っている。ほんまにそういうシーンがあるねんで。

Y木:雑草が気になるんやろな(笑)

S原:追いかけっこの最中に、突然、朝になったり夜になったりするけど、演出なのか撮影ミスなのかも判断できない(笑)

Y木:肝心のチェーンソーでの殺人シーンはどうやった?あ、べつに聞きたくないねんで(笑)

 S原:チェーンソーでやられる時には、電気ビリビリみたいに体が痙攣する。でも殺人鬼は、チェーンソーをもっているのに首を絞めるねん(笑)一つだけ気になるのが、ある俳優が死ぬときに「寄り目」になってるねん。あれは、アドリブなのか演出なのか、笑わしたいんか怖がらせたいんか。もうどっちでもええけどな(苦笑)

Y木:殺人鬼は最後にやっつけられるんやろ?

S原:やられます。最後に、一人生き残った女性が殺人鬼に逆襲します。これも定番シーンやけど、ナイフで殺人鬼を刺すねん。延々と刺し続けるねん。巻き戻して数えたら、21回も刺してた(笑)

Y木:おれは、巻き戻して数えるおまえを尊敬するわ。 

S原:結局、殺人鬼の正体は、キャンプに参加した女性の弟やねん。たしか動機は復讐やったかな。最後は、トラクターで殺人鬼の首を紐で絞っておいまい。

Y木:最後もなんかなあ。もうこの映画のことを話す機会は、人生で2度と訪れないような気がする

S原:さあ、あなたはワゴンコーナーでこの映画を見つけた時に、2つの選択肢に迫られるでしょう。その1 この映画DVDを買ってしまい『あーまた無駄遣いをしちゃったなー…こんなくだらないDVDを買って…』と背徳感を感じるか? その2 買わないま家に帰った後に『あー買っておいても良かったなー…どうせ安かったんだし…なかなか見る機会のない映画なんだし…』と後悔するか?2択にひとつ!

Y木:心配せんでも、みんなどっちの感想も持たへん。ただワゴンのをスルーするだけ

S原:そんなワゴンセールで出会っただけで、人を不幸にしてしまうこの映画。さあ、心の中で「マストバイ!」と叫ぶかどうか、それはあなた次第です!