S原:サッカー映画3本勝負。はじめはこちら!
Y木: 青春映画かー。おれが、最も観ないジャンルやなー。
(あらすじ)
想いの数だけ未来がある。“泣ける”青春サッカー漫画が映画化!安藤ソラは自分の才能に限界を感じ、サッカーを辞め空虚な生活を過ごしてた。そんな時、女子サッカー日本代表の若宮四季と運命的に出会い、ソラにサッカーの素晴らしさを伝え去っていく。そして彼は高校で再びピッチに立つことを決意するが…。池岡亮介、阿久津慎太郎、工藤阿須加ほか出演。
S原:これは、色々と考えさせられたなー。
Y木: ほー。
S原:ふつう、この手の青春映画って、いまから知名度を売りたいアイドル/俳優とか、すでに人気のあるアイドル/俳優とか、原作漫画にぴったりのイケメン、もしくは美少女とかが出演することが多いやろ?
Y木:そりゃ、(出演者を)売り出さんとあかんから。青春ものの大半が、そういうもんやろ。ジャニーズとかそうなんちゃうの?
S原:この映画ではジャニーズじゃないみたいやけどな。その分、予算がなかったかもしれんけど、まあそれはそれとして(笑)この映画では、全然知らん俳優ばかりやった。ぼくが知らんだけで有名な俳優もいるかもしれんけど、逆に先入観なく観ることが出来てその点は良かったわ。なかなか、映画全体の雰囲気も爽やかやしな。
Y木:おれは、 いままでの人生で「青春映画を観よう」という気持ちになったことないねん。だからよくわからんけど、あれやろ?こういう映画って、男はかっこよくてOK、女は可愛くてOK、なんちゃうの?
S原:うん、そうやな。この映画でも男子はイケメンが多い。でも女子たちはそんなに可愛くないねん。元は漫画やから、役柄に合ったキャスティングやったかもしれんな。
Y木:なるほどな。漫画が原作か。
S原:原作は人気作みたい。読んでないから漫画が面白いかどうかはわからん。でもなー、この映画化はなー。
Y木: さっき「爽やかな雰囲気」って言ってたやん。それだけで十分でしょ。
S原:うーん。爽やかではあるんやけど、残念ながらこの映画ははっきりいって「失敗作」やと思う。ファンの人はごめんね。
Y木:えー失敗作なんや。
S原:まず演技はやっぱり上手くない。でも、それが新鮮さにもなってたし、こういう作品はこれでも良いと思う。問題は演出・構成やなー。
Y木:監督が下手ってこと?
S原:それもあるけど…いやーそういう問題ではないかなあ。まず、こういう青春映画は単純なほうがええと思うねん。登場人物に感情移入しやすいし、上手くいけば盛り上がるやろ?でも、この映画では話がストレートにすすまないねん。群像劇っていうんかな、いろいろなエピソードがあってそれぞれのドラマが絡み合っていく…そんな展開を狙ったみたいやけど、完全にコントロールミスしてる。
Y木:群像劇って青春ドラマに合いそうやけどな。
S原:上手く描ければ合うはずやねんけど…俳優たちがサッカーが上手くないのは目をつぶるわ。そういう映画でないし。でも、こういうタイプの映画で群像劇を選ぶなら、①それぞれのドラマがあって、②困難があったり、恋愛で悩んだり、人間関係などでギクシャクしつつも、③大事な試合にむかってひとつにまとまっていく…とかで充分やと思うねん。
Y木:おれはそういう映画は興味ないけど…(苦笑)まあ、おまえの言いたいことはわかる。
S原:そもそもこの映画は80分しかないのに、4~5つのエピソードがあるねん。それもどれも薄味やねんなー。すごく表面的やし、なんの葛藤も生んでいない。バラバラに並列してるだけという感じがちょっとな。おまけに時系列も変えてるから、わかりにくい。あと、たくさんの登場人物がでてくるのに紹介クレジットもないから、どんな役柄かわからなくなる。おっさんにとっては、ヤングたちのルックスはみんな同じに見えるからな。とくに同じ髪型はやめてほしい(苦笑)
Y木:登場人物の見分けがつかないのは、やっぱり監督が下手なんとちゃう?
S原:そうかもな。まあ、べつにこの映画を観て「つまらん!腹が立つ!」とかじゃないねん。でも「なんでこの物語でこの手法を選んだの?」ってことやな。つまりは、監督も含めた製作側の責任やと思う。
Y木:今回は、なかなかビターテイストやな。
S原:なんかな、上手く言えんけど「あーもう、面白くなったはずやのに!」とちょっと悔しいねん。これを映画館で観た人も「しょせん邦画ってこんな程度でしょ」と思ったはず。なんかそれも悔しいしなー。
Y木:ふーん。おれみたいに昔から邦画のレベルに期待してない人間からすると、おまえが悔しがる気持ちがわからん。
S原:まあそうなんやけどな。別にこの映画の関係者でもないし(苦笑)でも、ちょっと工夫したら、というかこの映画のテーマを考えたら、こんな変な映画にならんかったはずやねん。やっぱりどうせ作るんなら、面白い映画を作ってほしいしな。
Y木:ワゴンでB級映画を漁ってるくせに。説得力がないやろ(笑)
S原:あ、そうか。それはソーリーね(ペコリ)
Y木:エピソードがしょぼいって言ってたけど、具体的には?
S原:例えば、サッカー部のマネージャーの父が、やたらと部活動に反対するねんけど、反対する理由がよくわからん。はっきりいってこのエピソードは不要。ほかに、元サッカー部の男子生徒が演劇部を追い出される(サッカー部に戻る)エピソードもあるけど、もっとドラマチックにできたはず。とくに演劇部の部長は個性的で、唯一ちゃんと演技が出来る女子だったので、もったいなすぎる。他には、時々でてくるカメラ好きの女子生徒は変なキャラで存在感がある。顔も一番個性的で覚えやすい。なのにぜんぜん物語にからまない…(苦笑)メインは、主人公の幼馴染が(主人公が知らないうちに)女子サッカーの日本代表になっているエピソード。これが主人公のサッカーへの気持ちを変える重要エピソードのはずやのに、どうにもこうにも平坦すぎる。
Y木:なんかほんまに、面白なさそうなエピソードばっかりやな。
S原:一番惜しいと思ったのは、髪を染めて、いつもチャラチャラした女生徒と一緒にいた男子のエピソード。いつもサッカー部をバカにしていた男子が、心変わりして丸刈りにして「おれでよかったら、サッカー部にいれてくれ!」と頭を下げる展開は、ベタやけど青春って感じでええねん。でも、そのあとほとんど出てこない…(ため息)
Y木:あかんなあ。
S原:どのシーンも、不器用と言うか素人っぽさがある。でもそこが長所にも短所にもなり得る題材やったと思うねん。たくさんの若手俳優(所属事務所?)に、華を持たせる必要があったのかもしれんけど、それやったらこの原作は選んだらあかんかった、というのがぼくの結輪。ちょっとキツイかもしれんけど、やっぱり青春映画やねんから、もっと10代の溌剌とした瞬間が欲しかったなあ。
Y木:ハツラツって、おっさんくさー…説教みたい…
S原:さあみなさん。たくさんあって、覚えきれないくらいのヤング向けの映画の1本ですが、10年後には絶対に忘れられてます。だれも話題にしていません。もしも、あなたがワゴンコーナーでみつけたら、マストバイですよ。なぜって?だって、あなたが買わないと、永久にワゴンコーナーに残りつづけるからです。そういうわけでマストバイ!
Y木:あー、なんか今回の締めの言葉はヒドイなー…