あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

サッカー 映画3本勝負「1/11 じゅういちぶんのいち」(2014年)の巻

1/11 じゅういちぶんのいち [DVD]

 

S原:サッカー映画3本勝負。はじめはこちら!

Y木: 青春映画かー。おれが、最も観ないジャンルやなー。

 

 (あらすじ)

想いの数だけ未来がある。“泣ける”青春サッカー漫画が映画化!安藤ソラは自分の才能に限界を感じ、サッカーを辞め空虚な生活を過ごしてた。そんな時、女子サッカー日本代表の若宮四季と運命的に出会い、ソラにサッカーの素晴らしさを伝え去っていく。そして彼は高校で再びピッチに立つことを決意するが…。池岡亮介、阿久津慎太郎、工藤阿須加ほか出演。

 

S原:これは、色々と考えさせられたなー。

Y木: ほー。

S原:ふつう、この手の青春映画って、いまから知名度を売りたいアイドル/俳優とか、すでに人気のあるアイドル/俳優とか、原作漫画にぴったりのイケメン、もしくは美少女とかが出演することが多いやろ?

Y木:そりゃ、(出演者を)売り出さんとあかんから。青春ものの大半が、そういうもんやろ。ジャニーズとかそうなんちゃうの?

S原:この映画ではジャニーズじゃないみたいやけどな。その分、予算がなかったかもしれんけど、まあそれはそれとして(笑)この映画では、全然知らん俳優ばかりやった。ぼくが知らんだけで有名な俳優もいるかもしれんけど、逆に先入観なく観ることが出来てその点は良かったわ。なかなか、映画全体の雰囲気も爽やかやしな。

Y木:おれは、 いままでの人生で「青春映画を観よう」という気持ちになったことないねん。だからよくわからんけど、あれやろ?こういう映画って、男はかっこよくてOK、女は可愛くてOK、なんちゃうの?

S原:うん、そうやな。この映画でも男子はイケメンが多い。でも女子たちはそんなに可愛くないねん。元は漫画やから、役柄に合ったキャスティングやったかもしれんな。

Y木:なるほどな。漫画が原作か。

S原:原作は人気作みたい。読んでないから漫画が面白いかどうかはわからん。でもなー、この映画化はなー。

Y木: さっき「爽やかな雰囲気」って言ってたやん。それだけで十分でしょ。

S原:うーん。爽やかではあるんやけど、残念ながらこの映画ははっきりいって「失敗作」やと思う。ファンの人はごめんね。

Y木:えー失敗作なんや。

S原:まず演技はやっぱり上手くない。でも、それが新鮮さにもなってたし、こういう作品はこれでも良いと思う。問題は演出・構成やなー。

Y木:監督が下手ってこと?

S原:それもあるけど…いやーそういう問題ではないかなあ。まず、こういう青春映画は単純なほうがええと思うねん。登場人物に感情移入しやすいし、上手くいけば盛り上がるやろ?でも、この映画では話がストレートにすすまないねん。群像劇っていうんかな、いろいろなエピソードがあってそれぞれのドラマが絡み合っていく…そんな展開を狙ったみたいやけど、完全にコントロールミスしてる。

Y木:群像劇って青春ドラマに合いそうやけどな。

S原:上手く描ければ合うはずやねんけど…俳優たちがサッカーが上手くないのは目をつぶるわ。そういう映画でないし。でも、こういうタイプの映画で群像劇を選ぶなら、①それぞれのドラマがあって、②困難があったり、恋愛で悩んだり、人間関係などでギクシャクしつつも、③大事な試合にむかってひとつにまとまっていく…とかで充分やと思うねん。

Y木:おれはそういう映画は興味ないけど…(苦笑)まあ、おまえの言いたいことはわかる。

S原:そもそもこの映画は80分しかないのに、4~5つのエピソードがあるねん。それもどれも薄味やねんなー。すごく表面的やし、なんの葛藤も生んでいない。バラバラに並列してるだけという感じがちょっとな。おまけに時系列も変えてるから、わかりにくい。あと、たくさんの登場人物がでてくるのに紹介クレジットもないから、どんな役柄かわからなくなる。おっさんにとっては、ヤングたちのルックスはみんな同じに見えるからな。とくに同じ髪型はやめてほしい(苦笑)

Y木:登場人物の見分けがつかないのは、やっぱり監督が下手なんとちゃう?

S原:そうかもな。まあ、べつにこの映画を観て「つまらん!腹が立つ!」とかじゃないねん。でも「なんでこの物語でこの手法を選んだの?」ってことやな。つまりは、監督も含めた製作側の責任やと思う。

Y木:今回は、なかなかビターテイストやな。

S原:なんかな、上手く言えんけど「あーもう、面白くなったはずやのに!」とちょっと悔しいねん。これを映画館で観た人も「しょせん邦画ってこんな程度でしょ」と思ったはず。なんかそれも悔しいしなー。

Y木:ふーん。おれみたいに昔から邦画のレベルに期待してない人間からすると、おまえが悔しがる気持ちがわからん。

S原:まあそうなんやけどな。別にこの映画の関係者でもないし(苦笑)でも、ちょっと工夫したら、というかこの映画のテーマを考えたら、こんな変な映画にならんかったはずやねん。やっぱりどうせ作るんなら、面白い映画を作ってほしいしな。

Y木:ワゴンでB級映画を漁ってるくせに。説得力がないやろ(笑)

S原:あ、そうか。それはソーリーね(ペコリ)

Y木:エピソードがしょぼいって言ってたけど、具体的には?

S原:例えば、サッカー部のマネージャーの父が、やたらと部活動に反対するねんけど、反対する理由がよくわからん。はっきりいってこのエピソードは不要。ほかに、元サッカー部の男子生徒が演劇部を追い出される(サッカー部に戻る)エピソードもあるけど、もっとドラマチックにできたはず。とくに演劇部の部長は個性的で、唯一ちゃんと演技が出来る女子だったので、もったいなすぎる。他には、時々でてくるカメラ好きの女子生徒は変なキャラで存在感がある。顔も一番個性的で覚えやすい。なのにぜんぜん物語にからまない…(苦笑)メインは、主人公の幼馴染が(主人公が知らないうちに)女子サッカーの日本代表になっているエピソード。これが主人公のサッカーへの気持ちを変える重要エピソードのはずやのに、どうにもこうにも平坦すぎる。

Y木:なんかほんまに、面白なさそうなエピソードばっかりやな。

S原:一番惜しいと思ったのは、髪を染めて、いつもチャラチャラした女生徒と一緒にいた男子のエピソード。いつもサッカー部をバカにしていた男子が、心変わりして丸刈りにして「おれでよかったら、サッカー部にいれてくれ!」と頭を下げる展開は、ベタやけど青春って感じでええねん。でも、そのあとほとんど出てこない…(ため息)

Y木:あかんなあ。

S原:どのシーンも、不器用と言うか素人っぽさがある。でもそこが長所にも短所にもなり得る題材やったと思うねん。たくさんの若手俳優(所属事務所?)に、華を持たせる必要があったのかもしれんけど、それやったらこの原作は選んだらあかんかった、というのがぼくの結輪。ちょっとキツイかもしれんけど、やっぱり青春映画やねんから、もっと10代の溌剌とした瞬間が欲しかったなあ。

Y木:ハツラツって、おっさんくさー…説教みたい…

S原:さあみなさん。たくさんあって、覚えきれないくらいのヤング向けの映画の1本ですが、10年後には絶対に忘れられてます。だれも話題にしていません。もしも、あなたがワゴンコーナーでみつけたら、マストバイですよ。なぜって?だって、あなたが買わないと、永久にワゴンコーナーに残りつづけるからです。そういうわけでマストバイ!

Y木:あー、なんか今回の締めの言葉はヒドイなー…