あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

女子ボクシング2本立て!「ボクシング・ベイビー」(2000年)「ガールファイト」(2000年)の巻

ボクシング・ベイビー [DVD]ポスター画像

 

S原:今回はこちら、2本立てでお送りします。

Y木:女子ボクシングか…

 

(ボクシングベイビーのあらすじ)

沈黙の戦艦』のエリカ・エレニアック主演によるボクシングドラマ。恋人の暴力から家を飛び出し友人の下に転がり込んだパティ。ボクシングのラウンドギャルをしている友人と共に試合会場を訪れたパティは、次第にボクシングに魅せられていく。 

(ガールファイトのあらすじ)

ボクシングジムという男社会に単身乗り込み、自らの実力で勝ち上がって行く17歳の少女の姿を描いた、2000年度サンダンス映画祭でグランプリを受賞した傑作ドラマ。ミシェル・ロドリゲスの演技は必見!

 

S原:「ミリオンダラーベイビー」(2004年)は、観た後にいろんな意見や感想を言いたくなる映画やったやろ?SNSでもすごいレビュー数やし、アカデミー賞を獲ったしな。

Y木:そうなんや。観てないからわからんけど。

S原:「ミリオンダラーベイビー」の前に製作されてるから、着眼点は良かったと思う。女子ボクシングって興味ある?

Y木:まったくない。

S原:まあ、大半の人がそうやろうな。そんなマイナーな競技やから、映画として、面白い題材になるんやろうな。実際「ガールファイト」は、サンダンス映画祭グランプリを獲ってるから、評価も高い。だけど、個人的には、2本ともちょっと…かな。

Y木:面白くないってこと?

S原:うーん。そうやな、2本まとめて話してみようか。まず「ガールファイト」も「ボクシングベイビー」も、抑圧されて鬱屈した生活をしている女性が主人公やねん。前者は、高校生で父はどうしようもない男で、学校ではケンカして退学寸前。後者は、同棲している恋人から殴られて、どうしようもない状態。それがボクシングがきっかけで変わっていく、という話。

Y木:スポ根というか、そういう抑圧された気持ちがボクシングで爆発するって感じ?

S原:そうなんやけど、いまいちスカッとしないねん。2本とも女優は、ボクシングのトレーニングをしているのがよくわかるし、試合も場面もごまかさずに撮影してるんやけどな。なんか燃えないのよ。

Y木:ふーん。ストーリー展開は?

S原:2本ともだいたい同じ展開やねん。ジムで練習させてくれとお願いしても、最初は鼻で笑われたり、練習を始めた最初は(いかにも女性の)猫パンチしかできないけど、だんだんと「ボクサー」になっていく。このあたりは定番やけど、なかなか良いねん。

Y木:ロッキーみたいな感じ?

S原:そのほうが単純に盛り上がったかもしれんなー。2本ともちょっと違うねん。ボクシングにも打ち込むけど、もっといろんなことに悩むというか。「ボクシングベイビー」のほうは、八百長が少し絡むし、「ガールファイト」は貧困がからむ。でも、一番の大きな問題は…ほら?女子が主人公やから…

Y木:恋愛の話?

S原:その通り。「ボクシングベイビー」は、ジムのオーナーと恋人関係になる。「ガールファイト」は、同じジムのボクサーと恋人になる。ともに恋愛関係で悩む。映画としては大きなテーマやねんけど、実はぼくはここが不満やねん。

Y木:映画としては「女子ボクサーの恋愛」というのは、当然描く要素やろ?

S原:でもなー、なんかありがちやろ?「女子」やから恋に悩んで当たり前っていう製作者の安易なスタンスが見え隠れして、どうもなー。「ボクシングベイビー」のほうは、そんなにボクシングにのめり込んでないから、まあええとして、「ガールファイト」は必死でボクシングをする状況やのになー。

Y木:恋愛なんかせずに、ボクシングの練習をしろよってこと?

S原:そうなると違う映画になってしまうのかもしれんけど…とくに「ガールファイト」では、恋愛の気持ちを抑えてボクシングに打ち込む、というほうが良かったような気がする。鬱屈した感情をぶつける対象がボクシングなわけやし。ボクシングで成功すれば貧困から抜け出す可能性もあるし。でも、映画では恋人と熱々になったり、ギクシャクしたり、チューとかするしな。

Y木:ええやないか、チューしても。

S原:まあな。恋もしたい乙女心とボクサーとしてのストイックさの間で揺れる、みたいな部分を描きたかったんやろうけど、ぼくはあんまり関心しなかったなー。もうオッサンになったからかもしれんけど、ヤングな女子の気持ちはわからん…(苦笑)

Y木:たしかに。俳優はどうなん?

S原:まず「ガールファイト」の主演ミッシェル・ロドリゲスの存在感はすごい。下町のジムのコーチたちの貧乏な感じもリアル。DVD特典で彼女のインタビューがあるけど、独特の雰囲気がある人やな。「ボクシングベイビー」の主役は美人やけど、華がない。脇役もハンサムやけどインパクトがない。これが決定的な差やと思う。

Y木:ということは「ガールファイト」のほうが良かったのね?

S原:うん。でも、期待してたよりは燃えなかった、というのが本音かな。せっかくの「女子ボクシング」という食材を上手く料理しきれなかった、という印象かな。

Y木:「ミリオンダラー・ベイビー」は上手く料理したと?

S原:そうそう。それも、最後に強烈なスパイスをふりかけてるから(笑)

Y木:「ガールファイト」と「ボクシングベイビー」は、ラストはどうなるの?

 S原:「ボクシングベイビー」は、主人公がボクシングジム(と恋人)から去っていく。ところが、ジムが火事になってしまう。なにもかも失ったジムのオーナーの前に、主人公が戻ってきて「もう一度やり直しましょう」みたいなことを言っておしまい。「ガールファイト」は、最後は、決勝戦で恋人と(男女対決の見世物的な)ボクシングの試合をする。結果は主人公が勝つけど、そのあと、静かに恋人とチューしておしまい。両方とも、中途半端に感じたかな。

Y木:ふーん、そんな終わり方なんや。

S原:まあ、いまでは2本ともあまり話題になっていないみたい。実際にSNSでも、レビューや感想が少ない。それも、なんとなくわかるような出来やったわ。

Y木:おまえの感想を聞く限り、女子ボクシングに興味がないとイマイチな映画っぽいな。

S原:さあみなさん。スポ根というよりも、ドラマ部分が大きいですが、「ガールファイト」は悪くない映画です。「ボクシングベイビー」は薄い味わいを感じてください。「ミリオンダラー・ベイビー」ほどではありませんが、なにかを話したくなるのは間違いありません。ワゴンでみつけたらマストバイ、とまでは言えませんが、ぜひ手に取ってくださいませ!