S原:今回はこれ!
Y木:おまえにしては、珍しい。ゾンビとか宇宙人の映画じゃないんや。
(あらすじ)
『エレファント』のガス・ヴァン・サント監督による異色スリラー。ドライブ途中のふたりの男が砂漠に迷い込み、3日3晩彷徨った末にひとりだけが生還した実話を映画化。マット・デイモンとケイシー・アフレックが、極限状態に陥る男たちを好演している。 (アマゾンより引用)
S原:この映画はですねえ、かなりの問題作です。
Y木:そうなんや。登場人物が2人だけやし、ストーリーもちょっと変わってるな。
S原:なんといっても、演出がすごいです。延々と長回し撮影が続きます。あ、皆さんに説明すると「カット(編集)せずに、長い間カメラを回し続ける映画の技法」が長回しです。要するに、ずーと同じ画面が続くと思ってくれればよいです。
Y木:あー、長回しね。監督をしたら一度はみんなやってみたくなるという技法やなあ。
S原:延々とエンパイアステートビルを映したりな。
Y木:あれは、実験映画やっちゅーねん。
S原:ちょっとこの映画を解説します。まず、ゆっくりと車が走っているカットが延々と続きます。車の後ろからずーと撮ってます。
Y木:ふむ…
S原:車を降りるまでに6分。ほとんどセリフなし。
Y:ほう…
S原:それから、ゆっくりと2人で歩くだけで3~4分。もちろん1カットです。よくわからんセリフがボソボソとあって、立ち止まったり、また歩いたりして、また3分。「道を戻ろう」とか言って、また歩いて3分。
Y木:うーん…
S原:まだまだ続きます。広大な砂漠みたいな風景のショットが2分。たき火を囲んで、どうでもええ会話を聞かされて5分。次の日、凸凹の岩を延々と歩いて6分。旅行番組みたいにキレイな山の風景をまた映して2分。それからまた歩いて…
Y木:むむ…
S原:きわめつきは、ラストの前のたぶん監督が一番撮りたかったであろうショット(白い砂の上を歩くショット)は、なんと7分!
Y木:もうええわ!
S原:まあ、観てない人にはわからんと思うけどな。ほんまに、こんな映画やねん。
Y木:わかった。自然とかを綺麗に撮ってるんやろ。壮大な自然の中のちいさな人間みたいなテーマとちゃうの?
S原:違います(きっぱり)
Y木:おまえ、監督でもないのに断言するなよ。そんで、ラストはどうなるの?
S原:1人を放置して、1人だけ助かります。
Y木:なんで放置?一緒に助けたらええやん。
S原:よくわかりません。
Y木:おいおい、そこって大事なポイントやろ。無駄に長いシーンを撮りながら、わかりにくいって、監督の独りよがりの映画やないか。
S原:まあな、ただ1人だけが助かるというのは、実話がベースらしい。
Y木:観客に意味や解釈をゆだねるタイプの映画…かな?
S原:違います(きっぱり)
Y木:こらこら。まあ、はじめに言ったけど、長回し撮影ってやっぱり監督は一回チャレンジしてみたくなるんかもな。
S原:映画の効果的な技法のひとつやと思うよ。ただ、監督に上手に使用する技量がないと、こんな珍妙な映画になってしまう。
Y木:おれは学生の頃とか、1シーン1カットとか結構好きやったけどな。なんか作家性がでるというか。
S原:ほー。
Y木:ただ、観客からすると「見てられる」シーンと監督の「撮ってられる」シーンは違うよな。
S原:なるほど。
Y木:なかなかそのあたりは難しい。テオ・アンゲロプロスとか、すごく上手で良い映画やろ。「旅芸人の記録」とか「霧の中の風景」とか。なんか独特のリズムで見てられるねん。
S原:日本では相米慎二かな。
Y木:「ションベンライダー」の人ね(笑)。1ナノメートルも覚えてないけど。
S原:ナノメートルって。まあ、どちらにせよ、この「ジェリー」という映画は、何年後かには誰も覚えてない映画になりそうやな。
Y木:おれらもこんな話をしたこと自体も、忘れそうやなあ(苦笑)あれ?もう最後やけど、ワゴンセールでみつけたら、ぜひゲット!とか言わへんの?
S原:いや、今回はやめておくわ。ガス・ヴァン・サントとかマット・デイモンのファンにもおススメでけへん…
Y木:よほどの映画やな。ちょっと、観ようかなと思ってきたわ。
S原:あ、じゃあDVDあげるで。
Y木:いや、やっぱりええわ。面白なさそうやし。
S原:どないやねん…