S原:さあ今回は「ローマの休日」ならぬ「ローマ法王の休日」!
Y木:ダジャレやん。
(あらすじ)
ローマ法王が亡くなり、新しい法王を選出するため各国の枢機卿がヴァチカンに集められた。全員が心の中では法王に選ばれないようにと祈る中、誰もが予想外だったメルヴィル(ミシェル・ピッコリ)が新法王に選出される。サン・ピエトロ広場に集まった群衆たちを前にバルコニーで就任演説をしなくてはならないメルヴィルだったが、重圧のあまり街へ逃げ出してしまい……。
S原:かなり前に、このブログで「ぶっとんだ映画特集」をしたやろ?
Y木:あーあったなあ。
S原:あれ、ちょっとだけ評判よかったんやけどな。この映画は、あのカテゴリーでもええかもしれん。
Y木:ウェルメイドなコメディなんとちゃうの。
S原:甘いです。これは頭のおかしな人が、頭のおかしな人のために作った、頭のおかしな映画やねん。
Y木:意味がわからん。ストリーを読むと完全にコメディやん。
S原:甘いです。コメディではありません。
Y木:じゃあドラマ?
S原:ドラマ……でもないはず。よくわからないです。
Y木:なんやねん。
Y木:ストーリーは上の通りやろ?
S原:そうです。ローマ法王がなくなり、次のローマ法王を選ぶことになる。ところが、みんな法王になりたくないのよ。で、全然有力な候補でなかった主人公が、次のローマ法王に選ばれてしまう。ところが、主人公は全然自信がないし、やる気がない。重圧で押しつぶされそうになるねん。そして逃げ出してしまう。
Y木:ほう。それから街に出て市井の人々の暮らしや温かさに触れて、次の法王として気持ちを整えていく……こういう展開やろ?
S原:甘いです。この主人公は根っから腐ったような奴でな。精神科医のセラピーを受けるねんけど、全然効果がない。ちなみに、精神科医を演じているのは監督(ナンニ・モレッティ)ね。美味しい役を自分で演じしてまうというシャマラン病やな。
Y木:それは知らんけど。
S原:あとは、他の枢機卿たちが心の平穏を保つためにバレーボールをしたり、主人公がある役者と出会って自分がかつて役者を目指してたことを思い出します。
Y木:あーそれで、自分の人生を省みる、と。
S原:甘いです。そういう自省はしません。ただ単に逃げているだけです。自分勝手な男で暗い顔してブツブツ言うだけ。
Y木:えー……
Y木:じゃあ最後はどうなるの?
S原:あー最後はすごいで!新しい法王として選ばれた主人公が民衆の前にでます。みんな、新しい法王の言葉に期待します。ところが、「自分には向いていないと思うから、やめときますわ」と言うねん。
Y木:え、それでどうなるの?
S原:民衆も他の枢機卿たちも唖然とします。主人公は「バイなら」と言って、みんな困った顔をしておしまい。
Y木:……すごいラストやな。
S原:呆然とするのは、こっちのほうやっちゅーねん(苦笑)
Y木:(観客の)期待を裏切るという映画なんやろ。「常識」を覆すというか、宗教観を皮肉るというか。モンティ・パイソンとかメル・ブルックスとか、そういう作品自体が皮肉になっているタイプの映画ってあるやん。
S原:たぶんそうなんやろうなあ。でも主人公はどう考えても心の病気やねん。そういう人をみても笑われへんやろ? 本人は真剣に悩んでるし、観てるこっちは気の毒に思うし、自分やったらと考えたら余計に考え込んでしまうし……
Y木:心の病気か。コメディではないなあ。
S原:どっちにせよ、あまり上手く作っていないから全然映画に集中できない。生活に信仰心や宗教が根付いている国やとまた違う感想になると思うねんけどな。
Y木:それはあるやろうな。
S原:タイトルが(悪い方に)余計にミスリードしてる。みんなが想像するようなコメディではないです。デ・ニーロの「アナライズ・ミー」(1999)とかは、強面のマフィアのボスが実は心の病気にかかってしまうけど、なんとか誤魔化す…というのが面白いわけやん。同じように作ればええのに、この映画では、嫌なことからひたすらに逃避するだけやから、感情移入出来ない。
Y木:ふーん、今回は変な映画やな。
S原:イエース。さあみなさん。面白くないコメディを観たい人、皮肉を上手く言えていない映画を観たい人、そしてオロオロしているおじいさんを観たい人のみにおススメします。個人的には全然笑えず、またつっこみにくい映画でした~!