あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

観た後に、誰かに話したくなる映画 10選!「ゾンビ・ドッグ」(2002)の巻

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S原:今回は犬!ゾンビ!その名も「ゾンビ・ドック」!

Y木:ええ年した大人が観るもんではないよな……

(あらすじ)

数々の米国ホラー映画祭でグランプリを獲得した、アメリカで実際に起きた「連続女殺人魔事件」をモチーフに描いた“ゾンビ犬”映画。巨漢でアル中の売れない劇画作家のマッドは、ある日飛び出してきた小犬“ラッキー”を車で撥ねてしまい…

 

S原:みんな、犬が好きやん?

Y木:まあ好きな人は多いわな。

S原:ゾンビも好きやん?

Y木:まあ人によるけど、ゾンビが好きな人は多いわな。

S原:犬!そしてゾンビ!もうみんなが大好きな2大テーマで映画を作っちゃったゾ、テヘッ♡

Y木:テヘッ♡、じゃねえ。あのなあ、こういう映画はもう飽きたわ。いや観てないけどな。観てないけど話を聞かされる身にもなってくれ。犬がゾンビになる映画なんか観たくないねんって。

S原:いま、あなた何て言った?

Y木:は?

S原:あなた、何て言ったのさ?犬がゾンビになる映画?犬がゾンビになる映画だってえええ?

Y木:なんやねん。

S原:アリアリアリアリアリ!アリーヴェデルチ!(さよならだ!)

Y木:うるさいわ!さよならでええわ!

S原:あーんもう。ちょっとふざけただけじゃないの、つれないお方!えーとですねえ、この映画はですねえ…なんと!犬はゾンビになりません!!ビックリしたでしょう!?

Y木:………(無言)

S原:……ねえ、モナミ?

Y木:………(無視)

S原:聞こえなかったかな?よーしワンスアゲイン!犬はゾンビになりません!!

Y木:ど・う・で・も・え・え・わ!

S原:いやー、どうでもよくないよ。だって、この映画を観る人は100%ゾンビ犬がでてくる話やと思うやん?猿の惑星シリーズでは猿がでるやん?コンバトラーVでは合体シーンがあるやん?合体ロボアニメではニヒルな奴がいるやん?(S原注:コンバトラーVでは、浪花十三)そういうお約束がないなんてあり得へんやろ?いやー久しぶりに驚いたわ。

Y木:はあ(ため息)それで、ゾンビにならない犬がどうなるの?

S原:ちょっとストーリーを話すと、主人公はメタボでアル中なアニメ脚本家です。仕事がなくて貧乏です。食べるものがないのに、お酒だけは飲むどうしようもないダメ人間です。ある日、飲酒運転で小型犬をひいてしまいます。犬の名前はラッキーです。家へ連れ帰って介抱します。その後、原稿を取りにきた女性を追い返したり、電気メーター点検の女性や教会への寄付を募る女性も追い返します。

Y木:え?よくわからんけど。

S原:どうもこの主人公は偏屈でな。自分以外の人間を心の底から憎んでいるみたいやねん。心の声で悪態をつきまくります。想像の中では、チェーンソーで首を斬ります。そういう主人公だから当然モテません。だから、余計にネガティブな妄想ばかりをするのよ。しかも、そのモノローグが超ダサい。底の浅い哲学風の愚痴というか、押井守好きの中学生が書いた小説というか。

Y木:全然分からん。

S原:たぶん誰もわからんよ。それで、脳内でミスティという女性を「創造」して自分を慰めています。一方で、とにかくお金がないから自分の血を売ってお酒を飲みます。

Y木:かなりヤバいな。そんな奴が主人公か。

S原:で、最初に轢いた犬(ラッキー)が危篤やったんやけど死にます。主人公はラッキーをお墓に埋めようとしていたのですが、なぜかラッキーは復活します。もちろん、この展開に説明はありません。

Y木:あーそう……

S原:主人公とラッキーは仲良くなります。ラッキーはテレパシーで話し掛けてきます。生肉を要求したり、「お前は息が臭いから歯を磨け」と主人公をディスります。なんだかんだあって、一緒に脚本を書くことになります。主人公はラッキーの言う通り脚本を書きます。主人公が少しでも自分のアイディアを入れたりするとラッキーは怒ります。スペルも間違っていると指摘します。

Y木:あの-、どういう映画……これ?

S原:結局、ラッキーの言う通り書いた脚本が売れます。そのあと仕事がもらえてハッピーなんやけど、ラッキーの言う通り脚本を作るだけの人間になります(犬はタイプできないから)。ある日、主人公が妄想していた女性(ミスティ)と出会います。主人公は大喜び。ラッキーと協力して仲良くなりますが、「犬とテレパシーで話している」とバレてドン引きされます。

Y木:そうやろうな。

S原:この辺から主人公は頭が、さらにおかしくなります。ついに仕事で訪ねてきた女性を殺してしまいます。庭に埋めますが、また掘り起こして死体をレイプします。

Y木:おいおい……

S原:ラッキーも調子にのって主人公をあおります。おまけにラッキーは死体を食べます。

Y木:気持ちわる……もうメチャクチャな映画やん。

S原:メチャクチャやったよ。主人公に嫌悪感しか抱かない狂った映画です。出来が悪いのはええねんけどな、とにかく理解が出来ないねん。ザラザラの映像で、わけのわからないことを延々と呟くメタボのオッサンと可愛げのない犬がでてきて、頭の悪いミュージックビデオみたいな映像が延々と続く。サイケのような演出でもなく、ただ気分が悪くなるだけ。字幕の誤字があるし、吹替は俳優の口の動きに合っていない。あと、普通は口語と字幕って違うやん?

Y木:ん?字幕と言葉の違いってこと?

S原:そうそう。例えば「きみのことが好きだ」と字幕がでても、現実にはそうは言わないから「好きなんだよ、きみが」とか変えるやん。この映画では、ただ棒読みで字幕を読んでいるだけ。そんな映画、初めて観たわ(苦笑)これ、ほんまやで。

Y木:というか、単純に犬がゾンビになる映画を作ればよかったんちゃうの?

S原:そういう映画を作りたくなかったんやろうな。驚いたのは、ネットでこの映画をちゃんと考察というか深読みしている人がおることやな。

Y木:ほんまいかいな。

S原:その人によると「はじめから主人公は狂っていて、犬の会話などはすべて主人公の幻想」らしい。「殺人や死姦をした現実を受け止められず自ら命を絶った」と。

Y木:なるほど。

S原:たしかにそう言われれば、筋は通るのよ。

Y木:もう1回観たら?意外と映画の評価が変わるかもよ?

S原:もう勘弁して。1回で十分です。さあみなさん。犬好きにもゾンビ好きにも無視されるような映画になってしまいましたが、「頭のおかしい奴の脳内映画」と考えれば、これはこれでアリ……いやぼくはナシですねえ(笑)というわけで、今回は、きっと誰かに話したくなるような珍作中の珍作、ほんとうに変な映画でした。おしまい!



観た後に、誰かに話したくなる映画 10選!「ANIARA アニアーラ」(2019)の巻

S原:今回は、変わり種のSF!

Y木:凝ってる感じやな。

(あらすじ)

宇宙船アニアーラ号は、火星への移住者8,000人を乗せ、放射能に汚染された地球から飛び立った。だが事故で燃料がなくなり、軌道から外れた上に修理ができなくなる。宇宙をさまよう中、乗客たちは人間の感情を治癒・制御する人工知能MIMA(ミーマ)に依存し絶望から逃れようとする。しかし、MIMAは限界を超え自爆してしまう。5年後、アニアーラ号の前に槍の形をした巨大な物体が出現する…

 

S原:これは、なかなか興味深い映画やった。もしも今の時点で観るつもりの人がいたら、できるだけ予備知識なしで観ることをおススメします。

Y木:難解というかそんな感じ?

S原:そうやな。ちょっと表現しにくいんやけどな。これは、スウェーデンノーベル文学賞受賞作家ハリー・マーティンソンの原作「アニアーラ」を実写映画化のスウェーデンデンマーク合作のSF映画です。いやーなんとも不思議な雰囲気やねん。「北欧版2001年宇宙の旅」と呼ばれているらしい。

Y木:へえ。すごいやん。

S原:前半は分かりやすくいわゆる娯楽映画っぽくすすんでいきます。問題は後半やろうな。これは詳しくは後で言います。で、SF映画としては良質やと思う。まず宇宙船や途中で遭遇する槍の形をした巨大な物体のデザインが良いのよ。大きな船内(小さな町みたいになっています)も丁寧に作りこんでるし、宇宙空間をびゅーんと進まず、静かに浮いている感じがなかなかのもんです。

Y木:びゅーんって。頭が悪い表現やなー。

S原:SFならでの設定も面白いねん。例えば、漂流しても「藻類」のおかげで空気や食糧には困らないとか。この映画ならでは、というのかユニークなのは、漂流してから人間たちが人工知能のMIMAに依存し始めるのよ。人間の「負の感情」というのか「マイナスのオーラ」というのか「人間の嫌な部分」を一身に背負ったストレスで、人工知能が自爆してしまう。「ポチッとな」って(笑)

Y木:タイムボカンか。

S原:予備知識なしで観たから、ここは笑ってしまった。この展開は、なかなか独特やわ。で、問題は後半のストーリーなんやけど、ちょっと難解と言うかシュールになります。カルト宗教や孤立感・寂しさ、愛欲なども絡み合って、いかにも「作家」という感じのメタファー・暗示などのてんこ盛りです。人工知能が自爆するまえに難解な言葉を話し出す……

Y木:あーそういうところが「2001年宇宙の旅」なんやろ。

S原:そうやな。難解な映画を「解釈」するのが好きな人は、かなり面白いはず。もちろん頭の悪いぼくには理解できないけどな(苦笑)さらにこのへんになると、映画のペースもスローになって、ちょっとイマイチやったかな。ただあくまでも静謐なトーンで統一されていて、その点は悪くない。

Y木:ラストは?

S原:………どうかな?好き嫌いが分かれると思う。人によっては「なんじゃ、これ?」と突っ込むかも。でも、このラストも含めて、誰かに話したくなる映画なのは間違いないです。視点をどこに持っていくかで全然印象が変わる、奥行きのある作品やと思う。人によって話す内容・テーマが違ってくるやろうな。

Y木:最終的なおまえの評価は?

S原:ぼくは、単純に静かな雰囲気のSF映画として楽しめた。普段、観ているZ級映画よりも断然ちゃんと作ってるしな(笑)

Y木:結局は、そこが基準かい。

S原:というわけで、みなさま。ハリウッド製のカラッと明るい映画が観たいときにはおススメ出来ませんが、単純な映画に飽き気味なときはおススメです。友人や恋人と一緒に観るのもアリだと思いますよ~!

 

観た後に、誰かに話したくなる映画 10選!「友達のパパが好き」(2015)の巻

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S原:今回は、オジサンが娘の友人に恋をされてしまう話!

Y木:タイトルそのままやな。

(あらすじ)

ある日、マヤ(安藤輪子)は親友である妙子(岸井ゆきの)に、彼女の父親・恭介(吹越満)が好きだと打ち明ける。それを聞いてあきれ果てる妙子と笑う母親のミドリ(石橋けい)だが、当の本人である恭介は悪い気がしない。だが、それを機にマヤは公然と恭介に対して激しいアプローチをかける。次第に彼女の強い思いと猪突猛進な姿は、恭介とミドリ、彼の愛人を筆頭にさまざまな者たちの関係を変化させていくように。やがて、思いも寄らない恋愛模様が繰り広げられるが……。

 

S原:いやー、これは面白かった!

Y木:娘の友達がその父親を好きになる、か。日本映画でよくあるラブコメ風映画?

S原:まったく違います。むしろ真逆かも…

Y木:へえ。

S原:レビューの評価もおおむね悪いし、好みのストーリーでもないので全然期待してなかったけど、もうワンアンドオンリーの世界で観ているとグイグイ引き込まれます。

Y木:監督の個性ってことか。

S原:たぶんな。山内ケンジという人やけど、ほかの作品も観たくなったわ。

Y木:よくわからんから、具体的に良いところを言ってや。

S原:演出は暗めですごくリアルやねん。現実にありそうな場面・台詞ばかり。まるで隣の人の会話を聞いてるみたいな気持ちになって変な気持ちになるねん。ところが、この作品はどうしようもなく「映画」「フィクション」やねん。そのバランスがすごく良いのよ。

Y木:ほう。

S原:ワンシーンワンカットで暗めの照明、俳優たちはボソボソとしゃべる。それが奇をてらった演出でなく自然に流れていく。さっきも言ったけど、現実にいそうな登場人物ばかりなのに、全員どこか不自然に歪んでいる。葛藤を持ちリアルな心情を描写しているのに、漫画チックな雰囲気が陰鬱に漂う。もうなんというか……

Y木:へえ。面白そうやな。ストーリーは?

S原:主人公は一応、おじさん・恭介やと思う(ただし観る人によって変わるかもしれません)。恭介には妻・妙子も娘・ミドリがいる。ミドリはもうすぐ大学に行く予定。ミドリには友人のマヤがいるが、マヤが突然、妙子とミドリの2人に対して「お父さん、すてきな人ですね」と話しだす。突然のことで変な空気になるが、とりあえずは冗談としてその場は流す。マヤは平然と「(恭介のことを)異性として好きで、ハゲていても水虫でも受け入れる」と言い出す。

Y木:ちょっとおかしな娘?プッツンというか。

S原:そうやな。思込みが激しいというか。でも純粋なところもあって、自然に歪んでいるねん。そのあと、マヤは、恭介を駅で待ち伏せする。偶然出会った振りをして、声をかけて一緒に歩いたりします。恭介は、ただの娘の友人ということで当然大人な対応をしますが、あとで「マヤが好意を抱いている」と聞かされ驚きます。いっぽうで、恭介と妙子の夫婦関係は破綻しており(恭介に愛人がいる)、離婚に向けて話をすすめています。

Y木:へえ。

S原:このへんの吹越満のグズグズ加減が最高に良いです。あ、ここは強調したいんやけど、この映画に出てくる役者はみんな素晴らしいです。だって「役のまんま」にみえるもん。ちょっとヤバそうな感じの人ばかりで(笑)

Y木:で、結局娘の友人とデキちゃうのか?

S原:そのまえにマヤという女性について話しておきます。マヤは中年の高校教師・田所と交際していましたが、気持ちはすっかり冷めており、別れ話を切り出します。田所は未練タラタラですが、マヤはきっぱりと「好きな人ができたので!」と言い切ります。

Y木:あー主人公のことを本気で好きってことか。まだ18歳くらいやろ。ちょっと怖いぞ。

S原:こんな感じでメインストーリーはすすむけど、娘・ミドリの恋愛関係や、マヤにフラれた後の田所の嫉妬がからむ。ほかにも主人公の愛人・ハヅキの妊娠が判明したり、妻・ミドリが他の男に迫られたり、という濃いめのエピソードがでてくる。それも「すごいでしょ!」って感じじゃなくて、ドサッとそのまま机に置かれる感じで淡々と話が続いていく。もちろん、登場人物たちにとっては淡々と、といわけにはいかないんやけどな。

Y木:ちょっと変わった映画っぽいな。フランス映画っぽい?

S原:いやーそうでもない…かな。「日本映画」風でもあるねんけど、上手く言えなくわ。

Y木:ラストは?

S原:言いません。だって、みんなに観てほしいから。ぼくは、ラストシーンの2人の会話で背中がモゾモゾしました。ストーリーも始めの部分だけ細かく言ったけど、あとはぜひ映画を観て楽しんでください。

Y木:今回は「変やけど面白い映画」っていうことは分かったけど、どうかな。普段あんまり映画を観てない人は、退屈かもしれんなー。

S原:かもしれん。でも、そういう人の感想を聞きたい!本当にテレビ局製作の大作映画にはない空気感が充満しています。人間関係の面白さが主軸やけど、メロドラマになる寸前で、踏みとどまっている。その踏みとどまり方が絶妙で、観た後にザラザラとした気持ちが残る。こんな映画は珍しい。

Y木:じゃあ、今回の映画はおススメってことやな。

S原:はい。おススメです!完成度は高くなくて「上手な映画」ではないですが、変な気持ちになりたい人におススメです。この独特の世界に浸ってくださいませ~!

観た後に、誰かに話したくなる映画 10選!「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」(2014)の巻

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Y木:これは犬の映画?

S原:今回は、なんとも形容しがたい映画を紹介しますよ。

(あらすじ)

3歳のリリは母親の出張のため、数日間、折り合いの悪い別居中の父親のもとに預けられることになる。久々に対面した父親はリリの愛犬ハーゲンのことが煩わしくてしょうがない。最近、この国では雑種犬の飼い主に重税を課す法律が施行されていた。当局からの税金の督促と、リリの反抗的な態度に怒った父親は、高架下にハーゲンを置き去りにしてしまう。「必ず迎えに来るから! 」と涙するリリ。孤立感に打ちひしがれたリリは、必死にハーゲンを捜し続けていた。
その頃、ハーゲンは執拗な野犬狩りを行う当局に追われ迷い込んだ路地でホームレスに拾われ、野犬ブローカーに売り飛ばされてしまう。 流浪の果てに裏社会の闘犬場へと駆り出され、獰猛な野生に目覚める。やがて脱走したハーゲンは、虐げられてきた犬の群れを率いて人類への反乱を引き起こすのだった…。

 

S原:これは、わりと有名らしい。ぼくは全然知らんかったから、ホラー/サスペンスかと思って観たんやけどな。

Y木:あらすじを読むと、ホラー……ではないな。

S原:なんとも不思議な映画でな。寓話性のあるサスペンスというのか、怖い絵本のような映画というのか…

Y木:面白いの?

S原:結構イケます。とくに主人公リリ(ジョーフィア・プソッタ)と主人公の愛犬(ハーゲン)は本当に素晴らしい。いわゆる少女映画が好きな人にはたまらんと思う。いや、変な場面はないで。あとはハーゲン役の犬の「演技」やな。どうやって撮影したのかと驚くこと間違いなし。ほんまにどうやって演技させたんやろ?

Y木:ドッグトレーナーが訓練したんやろ。

S原:もちろんそうなんやろうけど、それにしても凄い。はじめは可愛くて従順な愛犬だったのが、徐々に人間に対して敵意を持っていく……本当に同じ犬かと信じられないくらいの表情の違いでな。下手な人間の役者よりも上手いで(笑)

Y木:へえ、じゃあ犬好きにもおススメちゃうの?

S原:それがなあ……犬が好きな人にはおススメできないなあ。というのは、中盤で犬が虐待される場面がかなりしつこいのよ。ちょっと気が滅入るくらい長い。ここが中だるみしていると僕は思う。もちろん、こういう場面があるからこそ、人間に敵意を持つわけやけど……

Y木:上のあらすじでは「やがて脱走したハーゲンは、虐げられてきた犬の群れを率いて人類への反乱を引き起こすのだった…。」って書いてあるけど、ここが見どころやろ?

S原:うん。無人の街を自転車で走る主人公の後ろをたくさんの犬たち(約250匹)が追いかけていく場面が一番すごい。ここもどうやって撮影したんやろかと感心したわ。

Y木:ラストはどうなるの?

S原:言えません。ぜひ観てほしい。ハリウッド映画では絶対にしないようなラストやな。ここは人によって解釈が変わると思う。

Y木:へえ、解釈か。そういえば最初に寓話性とか言ってたけど、そのへんはどうなん?

S原:単純に言えば、動物虐待の問題提起なんやけど、牛を解体する(もちろん人間が食べる高級肉になる)場面を即物的に挿入したりかなり多様なテーマが含まれていると思う。あと、これはハンガリー映画やねん。詳しくしらんけど、たぶん欧州での移民問題を暗示(暗喩)していると思う。やたらと「雑種だから、不要な犬である」という意味のセリフがでてくるしな。

Y木:確かに、よく考えれば「雑種犬を片っ端から殺処分する」という設定がかなりぶっ飛んでるよな。

S原:さあ、みなさま。いろいろ考えさせられる映画なので、機会があれば予告編でもよいのでぜひ観てください。観れば、誰かに話したくなること間違いなし!です。それにしても、久しぶりに『画面の力強さ』を感じた映画でしたー!

観た後に、誰かに話したくなる映画 10選!「さようなら」(2015)の巻

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S原:今回から、観た後になんともいえない気持ちになる。そして誰かに何かを話したくなるような映画を10本選んで紹介しますよ~!

Y木:なにこれ、人形?

S原:今回の映画はぜひたくさんの人に観てほしい!

(あらすじ)

原子力発電施設の爆発によって国土の大半が放射性物質に汚染され、政府が「棄国」を宣言した近未来の日本。国民が次々と国外へ避難していく中、外国人の難民ターニャと、幼いころから病弱なターニャをサポートするアンドロイドのレオナは、避難優先順位下位のために取り残される。多くの人が消えていくなか、やがてターニャとレオナは最期の時を迎える・・・

(解説)

劇作家・平田オリザとロボット研究者の石黒浩大阪大学教授・ATR石黒浩特別研究所客員所長)とのコラボレーションで2010年に発表され、生身の俳優とロボットが共演する異色の世界観が国内外で注目されたロボット演劇「さようなら」を、「歓待」「ほとりの朔子」の新鋭・深田晃司監督が脚本も手がけて映画化。レオナ役には石黒教授の開発した本物のロボット、「ジェミロイドF」を起用。ターニャ役は舞台版と同じブライアリー・ロング。新井浩文村上虹郎らが共演。

 

S原:今回は解説をコピペしました。この映画を語るには、解説があったほうが良いと思うので。

Y木:ロボットと俳優の共演か。元が舞台と言われれば納得やな。

S原:結論から言うと、この映画はすごく良いねん。ぜひ舞台でも観てみたいわ。

Y木:ストーリーは、タルコフスキーの「ノスタルジア」(1983)っぽいな。

S原:そうやな。あれよりもなんというか、少しSF風味と日常が混ざっているというか。すごく言葉にしにくい映画やねん。でも、観れば何か言わずにおれない…鑑賞後になんとも不思議な感覚を味わう。こういう映画も久しぶりやな。

Y木:そうなんや。話は上の通りやな。淡々とした感じ?

S原:そうそう。ほとんどドラマチックな展開はない。最初は、遠景で火が燃えている原発のカット。その次は、もう世間では放射能汚染で住めないような日本になっています。

Y木:日本人は全滅ってこと?

S原:一応、日本から海外へ移住する制度があるらしくて、人々はその順番を待っている。みんなが逃げる場面もあるけど、なんとなく疲れていてトボトボあるくのが映るだけ。こういうのが妙にリアルやねん。

Y木:もうパニックを起こす気力もないわけやな。

S原:主人公は、アラサーくらいの白人女性(ブライアリー・ロング)。日本にアフリカから難民としてきているので、どうも順番が後回しになっているみたい。周りのみんなも諦観ムードでなんとか生き延びてやる!という気力さえもない。主人公はロボットと2人(?)で、人里離れた一軒家に住んでいる。そのロボットは、足を故障していて車いすにのっている。AIというか知能が高くて、日本語でも英語でもフランス語でも会話できる。ランボー谷川俊太郎の詩も朗読できるくらいのデータベースがあるけど、当然ながら人間の感情は持ち合わせていないし、理解できない。

Y木:ほう、面白そうやな。

S原:ある日、主人公がロボットと外出します。山というか竹林にいくんやけどな。主人公は、竹の花を見たいと言うねん。100年に1度しか咲かない花らしい。これがラストの伏線になる。残り少ない人生のなかで、自然を感じて花を見たいという主人公とロボットの会話がええのよ。

Y木:主人公に友達とかおらんの?

S原:恋人っぽい男(新井浩文)もいる。結婚しようと約束するけど、自分が海外移住が決まったらアッサリと主人公を捨てる。ほかにアラフォーの女の知人(村田牧子)もいる。この女性は、いろいろと主人公の世話をやいてくれるが、子供を虐待した過去があり、海外移住の順番が来ないことを気にしている。遠方まで子供に会いに行った後に、焼身自殺してしまう。新井浩文も村田牧子も、変な存在感があるねん。普通のような異常のような感じと言えばええんかな。だから少ししかない出演シーンも印象に残る。これはキャスティングが上手いと思った。

Y木:それからどうなるの?主人公は、ひとりぼっちになる?

S原:その通り。いよいよ主人公は、ひとりぼっちになる。体調がすぐれず家にいる。窓から(おそらく放射能に汚染された)風が吹く。そばにいるのはロボットだけ…

Y木:…なんか哀しいな。

S原:でもドラマチックにお涙頂戴の場面は全くないねん。人によっては眠くなるやろうな。でも、妙に印象に残る映画なのは間違いない。

Y木:おまえはどやったの?

S原:観ているときは、細かい点で疑問はあったし、もっと演出が良ければなあ、と思てたのよ。でも観終わって、そんなもんはどうでもええと思った。ただただ鑑賞後の余韻に浸るのみ…なんとも不思議な映画です。

Y木:まあテーマがテーマやもんな。

S原:不思議なんは、ロボットにだんだんと表情があるように見えることやねん。もちろん、こっちの勘違いなんやけどな。これも不思議な体験やった。

Y木:ラストはどうなるの?主人公は死ぬんやろ。

S原:死にます。眠るようにソファで死にます。長い間(主人公が白骨化するくらいの長い間)、ロボットはそれを見つめます。そのあと、ロボットはある行動をします。

Y木:行動?

S原:車いすで山まで行きます。山の中には、車いすでは行けないので、ほふく前進ですすみます。このほふく前進でロボットが山中をすすむカットが、すごく良いねん。目指すは竹林です。主人公とかつて見に来た、あの竹林やな。

Y木:あー竹林。

S原:ラストで、ロボットは竹林をみます。そこにに咲く花を見ます。そのときのロボットの表情に何を感じるか?ロボットだから表情は変わらない。だけど観る人によってロボットの表情が違って見えると思うねん。竹の花を見れた喜びか、主人公を失った哀しみか、それてもただの機械の顔か。もちろん、それは観客に委ねられているわけやなんやけどな。

Y木:そこまでのラストなら、良い映画やろ。

S原:このラストシーンは、すごく印象に残る。賛否あるやろうけど、これしかないと思う。

Y木:しかし、かなり変わった映画やな。

S原:うん。主人公が死んでいくのを写しているだけの映画やからな。あとは、静謐というか淡々というか、静かなムードを観客がどう感じるかやと思う。

Y木:今回はハマったみたいやな。おまえとしてはおススメ?

S原:おススメです。さあ、みなさま。映画ファン、芝居ファン、静かな雰囲気の映画が好きな人は必見です。ハリウッド製の演出とはまったく別のタッチのこの映画にぜひトライしてください。本当に印象に残って、鑑賞後に誰かに何かを言いたくなりますよ。今回はレンタルでも良いので観てほしい。もちろん店にあればマストバイです!

「ジュラシック・プレデター」(2018)の巻

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S原:今回は久しぶりにこういう映画!

Y木:中学生が考えたようなタイトルやな。

(あらすじ)

政府の研究施設で、太古のDNAを使って恐竜を復活させる実験が秘密裏に行われていた。成功を急ぐあまり担当の科学者が性急に実験を進めたため、T-レックスは異常な速さで成長をしていく。そして現代に蘇った恐竜は科学者たちを捕食・惨殺し、研究所を飛び出して近くのリゾート地へと消えていった。
政府機関から特命を受けた元軍人のホーキンスは、恐竜を絶滅させるため、昔の仲間を集めて傭兵チームを結成する。殺人兵器と化したT-レックスを退治することはできるのか?巨大な怪物との戦いが始まった―。

 

S原:ズバリ!男の子の大好きなものは、3つでしょう!

Y木:なんやねん、いきなり。

S原:それは、ロボット!ゾンビ!そして恐竜!

Y木:偏ってるなあ…

S原:いやほんまにそう思うで。だって、いまだに延々とこうやって恐竜映画が作られてるやん?誰かがDVDを買ったりレンタルしてるってことやろ?

Y木:まあな。一定のコスト回収が出来るということなんやろうな。

S原:うん。なので製作費が安ければ安いほど儲かる。そして製作費が安ければ安いほど、観ている人は苦痛が増す反比例になるという(微笑)で、この映画やけど、じつは結構イケるねん。

Y木:ほんまかいな。

S原:いや、面白くないで。面白くないねんけど、ちょっとだけ面白いねん。

Y木:わかりにくいなあ。

S原:まずオープニングがちょっとだけタランティーノ風です。主人公がカフェに行きます。主人公とカフェの店員がくだらない(けど噛み合わない)会話をする。実はカフェの(客からは)見えない場所に、強盗がひそんでるねん。それを察知した主人公が、かっちょよくやっつけます。このへんはテンポもええし、主人公が凄腕やとわかるので、グーです。

Y木:それで?

S原:主人公たちが、恐竜退治に行きます。やっつけます。おしまい。

Y木:端折りすぎやろ。

S原:ほんまにそれしか言いようがないねんって。ほかに何があったかな。あー思い出した。恐竜がヨダレをたらしてたわ。かなり大量にダラダラと。

Y木:あーヨダレ…

S原:あ、他にも思い出した。恐竜が頭しかでてこないねん。

Y木:あー頭…

S原:あとは何があったかな。あ、思い出した。内臓がビヨーンって出た死体が映ってたわ。

Y木:わかった。もうええ。聞いたおれが悪かった。

S原:こちらこそ聞いてくれてありがとう。

Y木:なんやねん、もう。じゃあ言うで、ほんまは聞きたくないで。聞きたくないけど言うで。ラストはどうなるの?

S原:ラストが知りたいのかい、モナミ?ラストは恐竜の卵が動くところで「ジ・エンド」なのさ……(ドヤ顔)

Y木:かっこよく言うな。しょぼい映画のくせに。

S原:でも短い映画(本編70分くらい)やし最後まで観れるよ。今回は久しぶりにZ級映画を楽しんだわ。

Y木:確かにこういう映画を取り上げるんは久々かもな。だれも喜んでないと思うけど。

S原:あ!大事なことを言い忘れてた!

Y木:なんやねん。

S原:「ジュラシック・プレデター」は同じタイトルの映画が2本あります。みなさん、間違ってレンタルしないでね~!

Y木:いや、人類のほとんどは、どっちも観ないから大丈夫ちゃう?

 

(もう一本はこちら↓これはこれで観てみたい気もするから不思議ですね・うふふ)

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ちょっと疲れてきた頃の続編映画を観る!「ホーム・アローン4」(2002)の巻

Home Alone 4 DVD

S原:いよいよ、今回で続編特集はラスト。最後にふさわしく「ホーム・アローン」シリーズですよ!

Y木:へえ、part4なんかあったんや。

(あらすじ)

大ヒットコメディ「ホーム・アローン」のシリーズ第4作として製作されたテレビムービー。クリスマス前のある日、ケビンのパパが恋人をつくって家を出て行ってしまう。パパの恋人ナタリーは大資産家で、ケビンはハイテク設備が整う彼女の豪邸でクリスマスを過ごすことに。しかも、クリスマスにはロイヤルファミリーの王子も来るのだという。ところが、ケビンの宿敵である悪党マーブたちが、王子の誘拐を企んで豪邸に忍び込んでくる。

 

S原:ついに……

Y木:え?

S原:ついに手に入れたぞ……

Y木:は?

S原:ついに…珍作中の珍作と言われている「ホーム・アローン4」を手に入れたぞ!これで…おれは…おれは……マニア(悪魔人間)だ!

Y木:うるさいわっ。

S原:いやー興奮して思わず永井豪デビルマンごっこをしてしまったわ。

Y木:ええ年して「ごっこ」とか言うな。しかも永井豪って。

S原:この映画はですねえ、珍作怪作マニアでは有名なのよ。あの「ホーム・アローン」シリーズの第4弾なのですよ、あなた!

Y木:これ、主演の子が交代してんやな。マコーレー・カルキン君やったけ?

S原:そうそう。大人になったらどんなにハンサムになるんだろうと思っていたら、スティーブ・ブシェミになってしまったという(笑)周りの大人に振り回されて人生がメチャクチャになってしまったみたい。

Y木:かわいそうに。

S原:で、この映画ですが……上手く説明する自信がないわ。

Y木:ん?

S原:すべてに違和感があるのよ。まず、主人公の顔が人形みたい。なんというか目が笑っていない蝋人形みたいな。というか、この映画にでてくる登場人物全員の目が笑っていない。これは怖いでー。「ローズマリーの赤ちゃん」(1968)の隣人かと思ったわ。

Y木:あれは悪魔やろ。

S原:主人公は、兄と姉にいじめられてます。それはええねんけど、母は笑ってみてるだけ。そんなことってある?ふつう止めるやろ。

Y木:まあな。

S原:たぶん「全員が気が狂っている」という設定なんやろうな。筒井康隆の「虚構船団」みたいな。

Y木:そんなコメディ映画あるか。

S原:映画は、シリーズお決まりのクリスマスシーズンが舞台です。主人公の父親(ピーター)は、じつは家族とは別居中なのよ。新しい恋人(ナタリー)と一緒に暮らしてます。父親はあっさりと「離婚しよう。ナタリーと再婚するのさ」と妻に言います。ナタリーはすごい金持ちで、若い女体とお金に眼がくらんでいます。

Y木:最低な父親やな。

S原:で、主人公は父親のところに遊びに行きます。父親もナタリーも歓迎してくれます。主人公が訪ねていくと、父と恋人はチョメチョメ寸前です。

Y木:……これって、家族みんなで観る映画やろ?

S原:父親とナタリーが住んでいるのは、超ハイテクな屋敷やねん。ドアを開けるのも、いちいち「開けドア」と言わないと開きません。閉めるときは「閉まれドア」と言わないと閉まりません。

Y木:それ、かえって不便やん。

S原:執事と家政婦がおるねんけどな。この2人がすべて雑用をしています。ナタリーは、すごい広い部屋でおもちゃがたくさんある特別な部屋を用意してくれます。

Y木:(ナタリーにとっては)他人の子供やろ。ええ人やん。

S原:しかもテレビが超でかい。でも、分割で同じ画面が映るので目がクラクラします。さらにベッドは、原色でラブホテル用のダブルベッドです。

Y木:……もう一回言うけど、これって家族みんなで観る映画やろ?

S原:さあ朝食もすごいです。なんでもリクエストしていいと言われて「ほんとに?やったー!」と喜ぶ主人公。次の場面ででてきたのは、焦げたフレンチトーストです。

Y木:なんか意味があるの?

S原:普段、フレンチトーストが食べれないという設定なのか、アメリカでは金持ちはフレンチトーストを朝食で食べるという揶揄があるのか、全然わからん。そのあと、勝手に大音量でジェームス・ブラウンをかけて、主人公はノリノリで屋敷中をとびまわって遊びます。ものすごい大音量です。ムッとする執事。主人公は聞きます。「音楽がうるさい?」

Y木:そりゃ、うるさいやろ。というか、なんやねん、その場面は。

S原:こんな感じで、どうもピントがずれてるのよ。なんというか、とにかく不自然やねん。コメディのはずなんやけどなあ(苦笑)

Y木:そうなんや。

S原:だって一番まともなのは、ナタリーやもん。彼女は、主人公の父親と結婚するかもしれない。そうなれば主人公の義母になるから、なんとか主人公と上手くやろうと努力するのよ。たしかに金持ちで貧乏人の気持ちはわからんし、機械に頼っていてピント外れなことを言うけどな。でも悪意があるわけじゃなくて、根は悪い人じゃないねん。しかも、喘息持ちというか興奮すると過呼吸になる。

Y木:その過呼吸の設定も要るか?それはええとして、ホーム・アローンといえば、泥棒をやっつけるんやろ?

S原:今回は、ジャケットに写っている男女2人組。この女優の眉毛がやたらと動く。サンダーバードのパーカーかよ!

Y木:あれは人形やろ。

S原:この2人がハイテク屋敷に忍び込んでくるわけやな。これが悲しくなるくらい頭が悪い(笑)

Y木:ハイテク屋敷やから、簡単には入られへんやろ?

S原:いや正門から普通に入ってたで。

Y木:なんやねん。

S原:ホーム・アローンの面白さって、「どうやって泥棒をやっつけるか?」やろ。今回はすごいで。泥棒を風呂というかジャグジーにおびき寄せて、スイッチオン!全自動で水がブシャー!泥棒は水浸しです。そのまま水を出しつづけて、屋敷は水浸し。「タイタニック」のクライマックスみたいに水がドドドド!ここが一番、お金がかかっています。屋敷中が水浸しになっているのをみつけて、父親は激怒。ナタリーはショックで過呼吸を起こします。

Y木:えー……

S原:さんざん怒られた主人公は、自分が全部悪いのに「いままで一番最低なクリスマスだ」とつぶやきます。その翌日、父親は「大事な仕事なんだ」と主人公を放って仕事に行きます。

Y木:用事があるんなら、何故息子を呼んだんや。

S原:そうこうしているうちに、また泥棒2人組がやってきます。さあ、いよいよ子供と泥棒の対決です。

Y木:やっとか。というか、泥棒の目的は?金庫とか狙うの?

S原:この屋敷にロイヤルファミリーを招待する大事なイベントがあるねん。とくにナタリーにとっては、それがすごく大事なわけ。泥棒はロイヤルファミリーの子供(王子)を誘拐するために、この屋敷に忍び込もうとするのよ。それはまあええねんけど、一番メインのはずの泥棒との対決がなあ。ショボいのよなあ。

Y木:子供がみて、アハハと笑えばええんやろ。

S原:いや笑わんよ。だって、鉄製のナベを頭にゴツン!とか、食事を運ぶような小型エレベーターに頭が挟まってイタイイタイ!とか、2階から落ちてズドーン!とか、転んだあとにもう一人が落ちてきてウギャー!とか、そんなんばっかり(苦笑)

Y木:なんやねん。最後は泥棒をやっつけておしまいやろ。家族はどうなんの?

S原:あーラストシーンはすごいで。ロイヤルファミリーを迎えます。主人公の家族もいます。父親もナタリーもいます。屋敷の前に全員集合です。主人公の父親は、かっこよく言います。「ナタリー、やっぱり家族の元にもどるよ」ナタリーは驚きます。

Y木:そりゃ、おどろくやろ。

S原:「ぼくが本当に愛していたのは、妻なんだ」「君とのチョメチョメはすごく良かった。それを愛情と勘違いしてしまったようだ」

Y木:ゲスな父親やな。

S原:それを品位あるロイヤルファミリーの前で言い放つ神経がすごいよな。だって、いくら僕らがふざけてても、小室圭さんと眞子さんがおるところで下ネタは言わんやろ?

Y木:なんでその2人を引き合いにだすねん。

S原:しかも主人公は、ロイヤルファミリーの王子に対して「せっかくクリスマスだから、うちの実家においでよ」と勝手に誘います。無垢な王子は「楽しそうだね。いいよ」とあっさりと返事して主人公の実家に泊まることになります。

Y木:……なにそれ?

S原:ナタリーは、いままでロイヤルファミリーを迎えるために、綿密にお金もかけて計画をしたんやで?いくらなんでも可哀そうやろ。おまけにナタリーは、ショックのあまり過呼吸になってしまう。ものすごく苦しそうです。それをみて、執事が紙袋を渡します(過呼吸は空気を吸いすぎるから小さな袋を口にあてる)。ゼエゼエと苦しむナタリーをみて、「ざまあみろ」って感じでみんなでニッコリと笑顔です。(実際には言わない)

Y木:ニッコリちゃうやろ。

S原:最後は主人公がハイテク機械にむかって、「雪を降らせてくれ」と命令します。

Y木:おいおい、いくらハイテク屋敷やからって、雪は降らすことは出来ないやろうって。

S原:あーら不思議。雪がちゃんと降ります。主人公は意地悪そうにニヤリと笑って、おしまい。最後は主人公が『全知全能の神』になったということなんやろうな。

Y木:ちゃうわ。

S原:さあみなさま!これは久しぶりに珍作中の珍作でしたよ。こういう映画ひっそりとレンタル店の片隅に置いてるんですからね。B級映画の宇宙は果てしないですよ。さあ、あなたのビッグバンをみつけるために、宇宙への旅へレッツゴー!珍作映画好きの人はマストバイです!