あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

観た後に、誰かに話したくなる映画 10選!「さようなら」(2015)の巻

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S原:今回から、観た後になんともいえない気持ちになる。そして誰かに何かを話したくなるような映画を10本選んで紹介しますよ~!

Y木:なにこれ、人形?

S原:今回の映画はぜひたくさんの人に観てほしい!

(あらすじ)

原子力発電施設の爆発によって国土の大半が放射性物質に汚染され、政府が「棄国」を宣言した近未来の日本。国民が次々と国外へ避難していく中、外国人の難民ターニャと、幼いころから病弱なターニャをサポートするアンドロイドのレオナは、避難優先順位下位のために取り残される。多くの人が消えていくなか、やがてターニャとレオナは最期の時を迎える・・・

(解説)

劇作家・平田オリザとロボット研究者の石黒浩大阪大学教授・ATR石黒浩特別研究所客員所長)とのコラボレーションで2010年に発表され、生身の俳優とロボットが共演する異色の世界観が国内外で注目されたロボット演劇「さようなら」を、「歓待」「ほとりの朔子」の新鋭・深田晃司監督が脚本も手がけて映画化。レオナ役には石黒教授の開発した本物のロボット、「ジェミロイドF」を起用。ターニャ役は舞台版と同じブライアリー・ロング。新井浩文村上虹郎らが共演。

 

S原:今回は解説をコピペしました。この映画を語るには、解説があったほうが良いと思うので。

Y木:ロボットと俳優の共演か。元が舞台と言われれば納得やな。

S原:結論から言うと、この映画はすごく良いねん。ぜひ舞台でも観てみたいわ。

Y木:ストーリーは、タルコフスキーの「ノスタルジア」(1983)っぽいな。

S原:そうやな。あれよりもなんというか、少しSF風味と日常が混ざっているというか。すごく言葉にしにくい映画やねん。でも、観れば何か言わずにおれない…鑑賞後になんとも不思議な感覚を味わう。こういう映画も久しぶりやな。

Y木:そうなんや。話は上の通りやな。淡々とした感じ?

S原:そうそう。ほとんどドラマチックな展開はない。最初は、遠景で火が燃えている原発のカット。その次は、もう世間では放射能汚染で住めないような日本になっています。

Y木:日本人は全滅ってこと?

S原:一応、日本から海外へ移住する制度があるらしくて、人々はその順番を待っている。みんなが逃げる場面もあるけど、なんとなく疲れていてトボトボあるくのが映るだけ。こういうのが妙にリアルやねん。

Y木:もうパニックを起こす気力もないわけやな。

S原:主人公は、アラサーくらいの白人女性(ブライアリー・ロング)。日本にアフリカから難民としてきているので、どうも順番が後回しになっているみたい。周りのみんなも諦観ムードでなんとか生き延びてやる!という気力さえもない。主人公はロボットと2人(?)で、人里離れた一軒家に住んでいる。そのロボットは、足を故障していて車いすにのっている。AIというか知能が高くて、日本語でも英語でもフランス語でも会話できる。ランボー谷川俊太郎の詩も朗読できるくらいのデータベースがあるけど、当然ながら人間の感情は持ち合わせていないし、理解できない。

Y木:ほう、面白そうやな。

S原:ある日、主人公がロボットと外出します。山というか竹林にいくんやけどな。主人公は、竹の花を見たいと言うねん。100年に1度しか咲かない花らしい。これがラストの伏線になる。残り少ない人生のなかで、自然を感じて花を見たいという主人公とロボットの会話がええのよ。

Y木:主人公に友達とかおらんの?

S原:恋人っぽい男(新井浩文)もいる。結婚しようと約束するけど、自分が海外移住が決まったらアッサリと主人公を捨てる。ほかにアラフォーの女の知人(村田牧子)もいる。この女性は、いろいろと主人公の世話をやいてくれるが、子供を虐待した過去があり、海外移住の順番が来ないことを気にしている。遠方まで子供に会いに行った後に、焼身自殺してしまう。新井浩文も村田牧子も、変な存在感があるねん。普通のような異常のような感じと言えばええんかな。だから少ししかない出演シーンも印象に残る。これはキャスティングが上手いと思った。

Y木:それからどうなるの?主人公は、ひとりぼっちになる?

S原:その通り。いよいよ主人公は、ひとりぼっちになる。体調がすぐれず家にいる。窓から(おそらく放射能に汚染された)風が吹く。そばにいるのはロボットだけ…

Y木:…なんか哀しいな。

S原:でもドラマチックにお涙頂戴の場面は全くないねん。人によっては眠くなるやろうな。でも、妙に印象に残る映画なのは間違いない。

Y木:おまえはどやったの?

S原:観ているときは、細かい点で疑問はあったし、もっと演出が良ければなあ、と思てたのよ。でも観終わって、そんなもんはどうでもええと思った。ただただ鑑賞後の余韻に浸るのみ…なんとも不思議な映画です。

Y木:まあテーマがテーマやもんな。

S原:不思議なんは、ロボットにだんだんと表情があるように見えることやねん。もちろん、こっちの勘違いなんやけどな。これも不思議な体験やった。

Y木:ラストはどうなるの?主人公は死ぬんやろ。

S原:死にます。眠るようにソファで死にます。長い間(主人公が白骨化するくらいの長い間)、ロボットはそれを見つめます。そのあと、ロボットはある行動をします。

Y木:行動?

S原:車いすで山まで行きます。山の中には、車いすでは行けないので、ほふく前進ですすみます。このほふく前進でロボットが山中をすすむカットが、すごく良いねん。目指すは竹林です。主人公とかつて見に来た、あの竹林やな。

Y木:あー竹林。

S原:ラストで、ロボットは竹林をみます。そこにに咲く花を見ます。そのときのロボットの表情に何を感じるか?ロボットだから表情は変わらない。だけど観る人によってロボットの表情が違って見えると思うねん。竹の花を見れた喜びか、主人公を失った哀しみか、それてもただの機械の顔か。もちろん、それは観客に委ねられているわけやなんやけどな。

Y木:そこまでのラストなら、良い映画やろ。

S原:このラストシーンは、すごく印象に残る。賛否あるやろうけど、これしかないと思う。

Y木:しかし、かなり変わった映画やな。

S原:うん。主人公が死んでいくのを写しているだけの映画やからな。あとは、静謐というか淡々というか、静かなムードを観客がどう感じるかやと思う。

Y木:今回はハマったみたいやな。おまえとしてはおススメ?

S原:おススメです。さあ、みなさま。映画ファン、芝居ファン、静かな雰囲気の映画が好きな人は必見です。ハリウッド製の演出とはまったく別のタッチのこの映画にぜひトライしてください。本当に印象に残って、鑑賞後に誰かに何かを言いたくなりますよ。今回はレンタルでも良いので観てほしい。もちろん店にあればマストバイです!