あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

酷評されている映画を観てみる!「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」(2017)の巻

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章 スタンダード・エディション [DVD]

S原:今回は、当時話題になったこれ!山吹色の波紋疾走(オーバードライブ)!

Y木:あー、ジョジョかー。

(あらすじ)

東方仗助、通称JOJO。。“スタンド”と呼ばれる特殊能力を持つ仗助は、この町で満ち足りた高校生活を送っていた。そんな彼の住む杜王町で変死事件が続発する。その事件を引き起こしていたのは、アンジェロこと安十郎。だが、最凶の悪はその奥に潜んでいた・・・アンジェロを操る謎の兄弟の目的とは?杜王町に平和は戻るのか?そして仗助の運命は?

 

Y木:前から言おうと思ってたんやけど、おまえさ、もっと名作と言うか評価の高い映画があるやん。なんで、こんな映画ばっかりみてるの?

S原:おまえには、おれの心は永遠にわかるまい!

Y木:わからんでもええわ。これもワゴンセールかもしれんけど、ちゃんと自腹で買ったんやろ?

S原:おれは、ワゴンコーナーの前に立っていたと思ったらいつのまにか買っていた…何を言っているのか分からねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった!

Y木:自分で買ってるだけやろ!大抵1回しか観ないのにもったいないなあ。いままで何本くらい買ったの?

S原:おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか?

Y木:その変な言い回し…ひょっとしてジョジョの作中のセリフか?

S原:ブラボー!おお…ブラボー!!

Y木:はあ、めんどくさいなあ……だれも褒めてくれないのに、ジョジョのセリフを引用するなんて。

S原:このS原が金やちやほやされるために、ブログを書いているとおもっていたのかァーーーーー!!!

Y木:うるさいわ!おまえ、絶対ちやほやされたいやろ。

S原:あー楽しい。ジョジョごっこは、盛り上がるよなー。

Y木:盛り上がらへんわ。漫画を読んでない人にはチンプンカンプンやろ。はあ……もう疲れた。映画本編の話をしてくれ。

S原:あなた、普段マンガ読まへんやろ。ジョジョも読んだことないんちゃうの?

Y木:パラパラとは読んだことあるで。でもちゃんとは読んでいない。おまえは、むかしハマってたな。

S原:荒木飛呂彦先生の漫画は、世界一イイイイイイ!

Y木:うるさいねんって!しかし、あの漫画を実写化とは。ファンならずとも驚いたやろな。それで、どうやった?

S原:いやあ、これはなあ……頑張りは認めたい。だけどなあ……

Y木:なんやハッキリせん言い方やな。

S原:良いところから言おうか。キャストは頑張ってたと思う。仗助(山崎賢人)は顔が童顔な気もするけど、まあまあ。逆に承太郎(伊勢谷友介)は少し年がくってるけど、これもまずまず。広瀬康一神木隆之介)は、とぼけた感じがでてたし、山岸由花子(小松奈々)は時々怖い顔をするのが漫画そっくり。一番良かったのは、虹村億康(新田真剣佑)で、ちょっと頭が良くないキャラを忠実に再現してた(笑)まあ、「水鉄砲は穴が小さい方がイキオイよく遠くまで飛ぶ!」ということだ!わかったか!

Y木:例えになってないやろ。でもこれ、予告編みたけど、みんな変な髪形やん。

S原:シー!それを言っちゃダメ!でも、一応観ていると気にならなくなる…はず(笑)まあ気にしないことやな。それに…お言葉ですが、ぼくは自分を知っている…バカではありません、ジョースターさん。

Y木:だれがジョースターさんや。

S原:まあキャラクターもそうやけど、他に賛否があるのは、ロケ地に海外を選んだことやろな。

Y木:そうなんや。

S原:原作では日本(一説では宮城県仙台市)が舞台やけど、荒木先生が描くと全然日本に見えない(笑)それで、スペインで撮影したみたい。

Y木:スペイン!また大胆な改変というか。

S原:たしかに、ところどころ「ん?」と思うけど、日本でコンビニとかマンションとかでてくるよりも原作のムードは近いと思う。でも、人によっては嫌がるやろうな。

Y木:まあ非難は覚悟の上でしょ。

S原:たしかにジョジョの実写化なんかだれもしようと思わんもんな。でも本当に映画化した。さすが!おれたちに出来ない事を平然とやってのけるッ!そこにシビれる!あこがれるゥ!

Y木:ウソつけ。ほかはどう?良いところはあるの?

S原:VFXもわりと悪くない。延々と超能力(スタンド)で戦うシーンが続くと辛いなあ、と覚悟してたけど意外とアッサリとしてて良かった。

Y木:ここまで聞くと悪くないように思うけど…悪いところは?

S原:聞きたい?

Y木:まあな。

S原:だが断る

Y木:ちゃんとしゃべれ。

S原:そうやな。あくまで私見やけど…まず、三池崇史監督の個性とこの作品(原作)の個性は全く合わない。なんでこの人に頼んだんやろか。三池監督は職人気質の監督やろ。

Y木:別にそれでもええやん。

S原:「ジョジョ」でなければ、な。

Y木:ん?

S原:ジョジョって、やっぱりあの独特の世界観が見どころやろ。ジョジョ特有の美術や擬音の表現方法とか工夫も必要やん。ちゃんと『凝るところ』『こだわるところ』を見極めないとあかんタイプの作品やと思うねん。ワムウやったら「このワムウ…… 映画製作を楽にさせる趣味はない…」と突っ込むところやろな。

Y木:だれやねん、ワムウって。

S原:要するに、全体として雑でも、『ジョジョがかっこよければええねん』とか『バトルが迫力があればOK』というわけとちゃうねん。

Y木:マンガも映画もみてないから、そのへんはよくわからん。

S原:要するに、もっとプリプロ(事前の準備)とポスプロ(撮影後の仕上げ)を入念にしてほしかったのよ。やっぱり「ジョジョ立ち」と呼ばれるようなポージングや、ほとんどのコマが斜めに描かれているような独特の世界に、製作者は本気で向き合ってほしかった。

Y木:へえ…いや、よくわからんけど「へえ」としか言いようがない(笑)

S原:うまく言えないけど、ここぞ!というところに「力点」がない。だから、それぞれの場面はそんなに悪くないのに、なんとなく大味でB級感が漂ってしまう…残念ながら、観客が「ふるえるぞハート! 燃えつきるほどヒーーーーート!!」というわけにはいかんかったな。

Y木:それはどっちかと言うと映画のトーンというか雰囲気の話やろ。ストーリーはどうなん?

S原:うーん。「第一章」と銘打っているから、続編ありきで製作したんはわかるけど…やっぱり全体としては不満がある。

Y木:どこが?

S原:この映画は前半と後半で話が2つに分かれているねん。さっきも言ったけど、登場人物が多くて設定も複雑やから仕方ないと思うけど、今回はもっと単純な起承転結で良かったと思う。第2章のために、少しでも原作のエピソードを入れたかったのかなあ。

Y木:2つの話って、どんなの?

S原:前半は、殺人鬼を追いつめる話。それに、特殊な能力(スタンド)や承太郎(主人公の親戚)が、突然訪ねてくるというエピソードが絡んでくる。後半は、虹村兄弟という謎の存在と大きな洋館屋敷で戦う話。両方ともわりと地味やし、悪役をやっつけるカタルシスもないから、いくらバトルをみせられても燃えない。観ていて「こんな映画は、貧弱ゥ!」というほど出来が悪いわけではないけど…結局は中途半端になってしまった。

Y木:うーん、なんか今までの話を聞いてもちょっと観ようかな、という気にならんな。

S原:それは正解やと思うで。やっぱり「一見さんお断り」になってる。マンガ読んでない人にはチンプンカンプンやもんな。うーん、もっとヒドイ漫画の実写化もあるから、それに比べれば合格点をだしたいんやけども、なんせジョジョやからなー。これは、結構多くの人と同じ感想とちゃうやろか。

Y木:ふーん。なんの思い入れもないおれからすると、ただのファンがブツブツ文句を言ってるだけに見えるなあ。

S原:そうかもな、というよりそうなんやけどな(苦笑)

Y木:やっぱり。

S原:さあ、みなさん、残念ながら低評価となってしまいましたが、興味を引く場面もありますよ。この手の映画がキライでなければ、一度ご賞味あれ!そして、S原はクールに去るぜ!

Y木:……もう戻ってこなくてもええんちゃう?

酷評されている映画を観てみる!「ジャッカル」(1997)の巻

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S原:ほとんどの人は褒めない映画シリーズ。今回はこれ!

Y木:あー、おぼえてるで。「ジャッカルの日」(1973)のリメイクやろ?

(あらすじ)

「“ジャッカル”が動き出す…」漏れ伝わってきた情報に、世界中のVIPが震え上がった。歴史の裏で暗躍し、歴史を覆してきた恐怖のプログラムが、ついに始動したのだ。いったい誰が、何処で、何を起こそうとしているのか!?闇の世界に目を光らせる各国の情報組織の捜査線上に浮かび上がったのは、100億の報酬で、どんな依頼でも請け負う、正体不明の暗殺者。毒には、毒を…防衛網は最も危険な賭けに出た…。

 

S原:これ、いままで「ジャッカルの日」のリメイクやと思ってたんやけどな。どうもリメイクじゃないらしい。いろいろとあって原作(F・フォーサイス)は使用できずに、オリジナルの脚本の初稿をもとにした別物らしい。

Y木:へえ。

S原:だから、オリジナルの映画、原作ともかなり違う感じになってる。

Y木:たしか公開当時は、結構宣伝してたやろ。ブルース・ウィリスリチャード・ギアのW主演やしな。

S原:実は、ぼくはオリジナルの「ジャッカルの日」の大ファンでな。好きなシーンは何回もみてる。こっちは今回初めて観たのよ。公開当時はあまりに評判が悪いうえに、予告編をみてもピンとこなかったから、いままで敬遠してた。

Y木:それで、感想は?

S原:これはちょっと納得できんなー。たとえば、大統領の暗殺を防ぐハリウッド映画ってたくさんあるやん。バギューンって銃を売ったり、ドカーンと車がふっとんだり。

Y木:なんか頭の悪い表現やな。

S原:「ザ・シークレット・サービス」(1993)とか「ホワイトハウス・ダウン」(2013)とか、いろいろあるけど、ハリウッド製はやっぱり大味なものが多いねん。残念ながら、これもその中の1本かな。

Y木:ポップコーンムービーってことか。それでええやん。

S原:それでええねんで。でも、この映画の場合は、あの「ジャッカルの日」と比べられるから。それだけで、不利やろ。

Y木:まあな。でも、全然違うタイプの映画にしたんやろ。それでええやん。

S原:ちょっと大味すぎるわ(苦笑)例えていうと、旨味やコクのない味噌ラーメンやな。

Y木:「味噌の味だけ」って言いたい?

S原:うん。たしかに「味噌味」なんやけどな。でも、いくら味噌をドボドボに入れられてもなあ。ラーメンを味わいたいわけで、味噌だけを味わいたいわけじゃないねん。

Y木:味噌は、「アクション」ってことやな。

S原:そうそう。まず、フランスの大統領を狙う話じゃなくて、アメリカが舞台で大統領もしくは要人が狙われるかも、という設定に変更してるから全然雰囲気が変わってしまっている。なんというか時代もあるけど、どことなくオリジナルにはどんよりとした空気感があって、それがムード作りに役立ってたのよ。それが、今回の舞台はミシガン湖とか、明るい陽射し降り注ぐ場面が多いから、観ているとハッピーな気分になってしまう。

Y木:ハッピーな気分…それはあかんな(苦笑)

S原:「ジャッカルの日」では、無口で無表情の暗殺者(ジャッカル)が淡々と暗殺の準備をする。一方で、フランスでは、一見さえない風貌の警視が地道に暗殺者を追いつめていく。それだけで、2時間超の映画を一気にみせるやろ。いよいよ暗殺という場面のハラハラドキドキや、そのあとの墓地の短い場面もクールでかっこええねん。でもこっちは、そういう要素をバッサリと切り落としてるねん。

Y木:原作をそのまま使えんかったんやろ?しゃーないやん。

S原:いやいや、良い点は上手に換骨奪胎せなあかんやろ。オリジナルでは、細身の改造銃を車の下に改造して隠したりするとか髪の毛の色を変えるとか、ディテールの積み重ねで映画の厚みがでてたけど、こっちは車の後部座席にのせたでっかい機関銃で撃ちまくるからな。まわりのビルも一般人もお構いなく撃ちまくるだけ。

Y木:それは、かなり違うなー…ん?車から撃ちまくるってことは、犯人(ブルース・ウィリス)は、暗殺現場近くにおるんやろ。なんでバレへんの?

S原:警官の恰好をしてるから、怪しまれない。警官が来ても「ごくろーさま♡」って感じで挨拶してセーフ(笑)

Y木:えー…なんかゆるい設定やな。

S原:ゆるいといえば、リチャード・ギアの設定もそうやで。ギアは刑務所にいる犯罪者やねん。でも、ジャッカルを追うために「こいつしか犯人を捕まえられない」と仮出所させる。もちろん、さいごは刑務所に戻さずに見逃してやる。

Y木:おお、いかにもハリウッド。

S原:能天気に楽しむ分にはええねんけど…どっちの主人公も、クセのある人物でもないし、ハリウッド的な派手な場面をつなぐだけでは、感想は「ま、こんなもんでしょ」「派手なだけで印象に残らんなー」となってしまう。もしかしたら映画館で観ると、意外と楽しいかもしれんけどな。

Y木:失敗作って、こともないんやろ?

S原:酷評されるほどでもない…かな。でも、やっぱり納得いかん(笑)

Y木:こんな映画に興味がない俺からすると、ほんまにどうでもええ映画やなあ。

S原:さあ、みなさん。この映画は酷評する人が多いですが、単純なアクション映画と考えれば普通の出来です。ほかにも良いアクション映画はあるので、わざわざこの映画を選ばなくても良いと思いますが、お好きな人はゲットしてくださーい!

 

 

酷評されている映画を観てみる!「R100」(2013)の巻

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S原:今回は、有名なこれですよ。

Y木:松本人志監督か。おれ、「大日本人」(2007)だけ観たで。

(あらすじ)

笑いのカリスマ・松本人志による第4回監督作。SMクラブ「ボンデージ」に入会した実直なサラリーマン・片山は、日常生活の中に突然現れる女王様たちにより味わったことのない世界を体験する。だが、プレイの内容は次第にエスカレートしていき…。

 

S原:「大日本人」はどうやった?

Y木:もう忘れたけど、あーテレビとやってることは同じやなあ、と思ったな。

S原:それは、この映画も同じかもな。とにかく松本人志監督の映画はどれも評判悪いねん。とくにネットではボロクソに書かれてる。

Y木:そうみたいやな。

S原:当時ちょっと観ようかなと思ってたけど、あまりの低評価にいままで敬遠してたんやけどな。ついにワゴンコーナーで出会ってしまって観ることになってしまった。

Y木:それで、おまえはどうやった?

S原:じつは結構楽しめた。本当に期待値が底辺まで下がっていたからやろうけどな。

Y木:よかったやん。おもろかったのね?

S原:いや、おもろくはない!(キッパリ)

Y木:なんかこの会話パターン、多いなあ…

S原:うん。まあネットの評判通りやな、とは思ったで(苦笑)でも、ちょっと良いところもあったけどな。

Y木:具体的に良いところって?

S原:まず色調が抑えられていて、なかなか良い世界観になってると思う。遊園地みたいなところで、SMクラブ(?)の説明を受ける場面はユニークやったし、女優陣はボンテージ姿でなりきっていて、ここも良かった。テンポもそんなに悪くないと思うで。

Y木:へえ。上のあらすじを読むと、撮り方次第では面白くなりそうやけど。

S原:ストーリー自体はベタやと思う。松本人志は映画監督として、よくインタビューとかで「映画を壊したい」と言っていたから、壊し方が上手くいかんかったんかな。

Y木:映画を壊すか…この人、いままでも映画を撮っているやろ。過去に上手に「映画を壊した」ことってあるの?

S原:ない。(キッパリ)

Y木:あかんやん。

S原:だから評価が低いんやと思う。単純に面白くないし、アバンギャルドでもない。すこしシュールというには、松本人志というタレント性が邪魔している。

Y木:なるほどなあ。それにしてもネットで酷評って…この映画ではどのへんが叩かれてるの?

S原:ざっと整理すると…

1 訳が分からない (ストーリーが破綻している)

2 SMシーンが凡庸 (ムチで叩くなど、そのままの演出がある)

3 笑えない(既存ネタを使って外して、新しいネタも外している)

4 隠喩・暗喩がある(らしい)が、失敗している。(それが余計に腹立たしい)

5 豪華な俳優陣の無駄遣い (そもそもSM=ボンテージ嬢という発想が陳腐)

6 前半は退屈。後半は意味不明 (どんな映画を目指したのか、製作の意図が不明)

7 監督の自己満足で作っている (しかも理解できない観客を小ばかにしている) 

8 この映画自体が、「100歳の監督が作った老人映画」であるというメタ構造がダメ (はじめから、批判や低評価に対する防御をしている)

ざっとこんな感じかな?

Y木:ほんまに酷評やな。

S原:とくに、物議をかもしだしたのは、8やろうな。映画の中盤ででてくるメタ構造で一気についていけなくなるねん。それが狙いといえば、その通りなんやけど。たしかに、必要な設定・場面とは思えんなあ。

Y木:ふーん。まあ、映画としては大したことないってことね。

S原:もうかなり前の映画やし、大半の人は話題にもしないと思うけど、観た人は「面白くなかった」と覚えてると思うで。

Y木:ひどいなー。さっき、おまえは少しだけ褒めてたやん。

S原:あくまでぼく個人の見解やけど、松本監督は『映画の旨味』みたいな部分を捨ててしまっていると思う。

Y木:映画の旨味?

S原:ビールで例えると、「コク」と「キレ」ってあるやん。松本監督は「キレ」を意識するあまり「コク」を逃してるような気がするねん。

Y木:コクとキレか。

S原:お金をかけた名シーンとかもえええねんけど、映画を観てたら「お!」と思う瞬間ってあるやん。普通の場面、例えば主人公が歩いてるだけやけど好きとか、あのときの俳優の表情が忘れられないとか、カメラがスーッと横移動する瞬間がたまらんとか。

Y木:あー映画ならでは、みたいな?

S原:そうそう。映画を作る監督としての「こだわり」といえばええんかな。ちょっとした何気ないことにその作品の魅力を感じたりする瞬間ってあるやろ。カメラワーク、キャスト、特撮、編集、セリフ、場面、小道具、衣装、音楽なんでもええんやけどな。松本監督は「お笑いのプロとしてのこだわり」はあっても、「映画監督としてのこだわり」がないまま映画を作るから、観客はすごい薄味に感じるんとちゃうかな。

Y木:薄味かー。

S原:職人がこだわってビールを作ったけど、ほぼ自分にしかわからない「良い味」がする…会員制の高級小料理屋ならそれもありかもしれんけど、ビールは大衆向けの飲み物やからな。やっぱり、飲んで「あーおいしい」というのが前提とちゃうやろうか。だから、この映画を観た人は「せっかく映画を観にっているのに」「こんなもんか」「やっぱ映画を作る才能はないなー」という気持ちになるんやと思う。鈴木清順とかデビット・リンチとかルイス・ブニュエルとかもメチャクチャな映画作るやん。でも、たぶん彼らは自分の好きな『映画像』みたいなものがあると思うねん。松本監督には、自分の好きな『お笑い像』はあっても『映画像』はないやと思う。

Y木:要するに「映画」じゃなくてもええやん、と?

S原:そうやな。お金のかかったシュールなお笑いコントビデオとどう違うのか?という話かもな。それでも、これを「こんなんは映画じゃない!」「もう二度と作るんじゃねえ!」と排除するのもどうかと思うで。こういうのもアリやと思う。どっかで「化ける」可能性もあるわけやし。やっぱり個性としては稀有やし。

Y木:うーん……

S原:さあ、みなさん。有名な割になんとも言えない珍妙な映画です。いつものテレビの笑いを期待してはいけません。監督の個性が充満しているのは間違いありませんので、変な映画だと覚悟すれば十分に楽しめるはずですよ。意外とワゴンコーナーには置いていないので、みつけたらゲットです!そして、1回観たら十分なので、物好きな友達にあげてくださーい!

酷評されている映画を観てみる!「亡国のイージス」(2005)の巻

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S原:ほとんど褒められない映画シリーズ、 今回はこちらですよ。

Y木:おお、当時は結構話題になった映画とちゃうの?

 (あらすじ)

海上自衛隊イージス艦いそかぜ」がテロリストに占拠された。人質は首都・東京!

副長の宮津2等海佐は、東京湾沖で訓練航海中に某国対日工作員のヨンファと共謀の上、艦長を殺害し「いそかぜ」を乗っ取ったのだ。彼らは乗務員を強制的に退艦させ、日本政府に宣言する。「現在、本艦の全ミサイルの照準は、東京・首都圏内に設定されている。その弾頭は通常にあらず…」彼らの手にはわずか1リットルで東京を壊滅させる特殊兵器(GUSOH グソー)があった。防衛庁情報局(DAIS)のメンバーはじめ首相官邸、政府高官らは事態解決にあたるが、最新鋭の防空システムをもつイージス艦いそかぜ」に対して、突破口が見いだせない。そんな中、「いそかぜ」の先任伍長の千石はたった一人でテロリストと対峙しようとしていた…!

 

S原:これはなあ…ちゃんと撮影してるし、悪くないはずなんやけどなあ。

Y木:あかんかったのねえ。

S原:観終わった後に、激怒したりするほどひどくない。でも、どこか空しさを感じる。

Y木:だってこんなストーリーやったら、ブルース・ウィリスとかスティーブン・セガールとかの映画と一緒やろ?

S原:基本的にはアクション&サスペンス映画なんやけど、裏テーマとしては大人向けに設定してるねん。国家とか戦争とか専守防衛とか軍の在り方とか、今の日本が潜在的に抱えている問題に挑んでいる……はずなんやけどな。残念ながら、全然深みや重みは感じないなあ。「大人の鑑賞に堪えない」というのか「幼稚」というのか。

Y木:手厳しいな。

S原:いや、ちゃんと出来てるねんで。最後まで観ることが出来る。起承転結もある。でも、最後まで観終わったときに「あー面白かった!」とは言えない。「なんだかなあ…」と感想になってしまう。

Y木:勝手に期待して、勝手に失望してるだけやん。

S原:そうなんやけどな。まあ説明的な台詞は、目をつむる。特に前半は仕方ないと思う。このタイプの映画は、観客がすぐに状況が理解できないと、面白くないから。でも、どういえばええんかな、簡単に言うとハラハラドキドキが全くないねん。

Y木:そうなんや。

S原:だってほんまにイージス艦をジャックされたら大問題やん。こういう映画って「本当に起こったら、さあどうする!?」という緊迫感を出さなあかんやろ?

Y木:そりゃな。

S原:でも全然現実味がない…テロリスト側は、東京を攻撃すると脅す。一方の政府側も、いよいよイージス艦を(乗組員ごと)自らの手で沈めないといけないというギリギリの判断に迫られる。だけど、映画全体がゆるいムードですすむから、「どうせ撃たへんねやろ」「どうせ寸前で回避するんやろ」と思いながら観てしまう。そして実際、その通りになる(笑)

Y木:それはちょっと…

S原:原作ではもっとリアルに緻密に描かれているらしい。映画化するときに全部リアリティをごっそりと削ったんやろうな。

Y木:リアリティを削るって、あかんやん。

S原:それを補うために、有名な俳優を並べたんかもな。勝地涼は良かったし、真田広之佐藤浩市もまずまず。でも中井貴一とか寺尾聡はすごい浮いてるねん。ミスキャスト以前に、なんか中井貴一と寺尾聡がそこに立っているとしか見えない。

Y木:いつものことやん(笑)

S原:あとは、やっぱり「あれ?」「なんで?」「おかしいとちゃうの?」という場面が多い。たとえば、銃撃戦での血糊が、小学生の絵の具みたいな色やねん。もう少し工夫は出来なかったんやろか…あとは、ときどき登場人物たちの回想シーンがあるけど、メインストーリーには関係ない(はず)。意味深に野球場をゆっくりと歩く工作員の場面が、さも重要なように挿入されるけど、どんな意図があるのかまったく理解できない。イージス艦の舟艇に穴があくけど、沈んだりしない。中井貴一が棒読みで「おまえたちは、いつになったらこれが戦争だと分かるのだ?」と日本人に説教する場面では、ミキプルーンのCMと全く同じ口調。きわめつけは、海中でお互いに戦っている男女(敵同士)が、急に水中でキスをするねんで!ダチョウ倶楽部か!

Y木:何それ?意味わからん。

S原:こっちのセリフやっちゅーの。撮影現場でだれも止めんかったんかいな。「監督、ちょっと不自然ちゃいまっか?」「戦っている者同士が、急にキスしたら変でっせ」と。あんまり気になったので、後でネットで調べたら、原作ではちゃんと意味があるらしい。他にも小説ではいろいろと丁寧に描かれてるみたいやけど、映画だけ見ても全然わからん。

Y木:それは演出が悪いんやろ。

S原:そうなんやろな。国家を揺るがすような大仰な話やで。もっと上手に大風呂敷を広げてくれって。

Y木:大風呂敷じゃなくて、タオルやったと?(笑)

S原:そうそう。それも小さめのタオル(でもちょっと高くてキレイなタオル)を広げているだけ。「これ、本物のタオルでっせ!」とドヤ顔されてもな(笑)とにかく全体的に大人しくて、こじんまりしてる。政府高官のやりとりも銃撃戦も、なんか紙芝居をみてるみたいやねん。

Y木:面白くなりそうな題材やけどな。 

S原:マンガ的なストーリーやけど、リアルな背景もあるから、いくらでも面白くできるはずなんやけどな。何が悪いんやろ?企画?演出?脚本?製作段階でいろいろと横やりがあったんやろか?

Y木:さあな。

S原:今回は、ハリウッドみたいにお金がかけられないという言い訳はしてほしくない。実際、この映画では本物のイージス艦で撮影してるんやから。

Y木:本物ならでは迫力はないの?

S原:少しあるで。でも船内のアクションシーンよりも、真田広之イージス艦の甲板のうえで座っているシーンのほうが印象に残ってる…(苦笑)本物とかリアルさ云々は置いておくとしても、この映画では一番肝心なところで、逃げてるねん。

Y木:肝心なところで逃げてる?

S原:犯人(中井貴一、寺尾聡たち)は第3国のテロリストなんやけど、それは「北朝鮮」やねん。なのに、なぜか北朝鮮というという言葉を使わないようにしてるねん。ここが一番不自然。原作ではちゃんと書いてるらしいのに。

Y木:なんで、北朝鮮って伏せてるの?

S原:大人の事情なんやろうな。でも、これ観た人全員が「テロリストが悪いやつらなのは分かった。日本が悪いとか隠ぺいしてるとかいう主張も分かった。えーと、それで?こいつらってどこの国の人?」って突っ込むという(笑)だって、それぞれの国によって、日本に対するスタンスや距離感や感情が全然違うやん。どこのだれかわからん人に「おまえのせいだ」「おまえが、おれたちにヒドイことをした」「おまえたちは平和ボケしている」と説教されてもなあ…

Y木:なるほどー。

S原:映画が面白ければどんな思想でもええねん。こういう映画では、正面からテーマに向き合わないといけないのに、いろんなところに気を遣って、すべてに中途半端な出来になっている。こうなってしまうのが、日本の映画界の運命やろか…

Y木:あれちゃう?初めて本物のイージス艦を利用した本格的な映画!ってことで監督も製作会社も、ある程度満足してしまったんとちゃうの?

S原:そのわりには、最後イージス艦が沈む場面は、模型とかCGやったけどな。しかも、すごくチープやし…(苦笑)

Y木:じゃあ今回は、「前評判通りのダメな映画」ってことやな?

S原:それが結論でござる。はあー…みなさん、たぶんテレビ放映もすると思いますので、ちょっと観て下さい。つまらんと思えばチャンネルを変えてもらって結構です。だって、後半にいくにつれて腰砕けになりますから(笑)え?ワゴンで見つけたら、どうするって?そんなことは自分で考えて下さーい!

Y木:おいおい、無責任すぎるやろ…(ため息)

酷評されている映画を観てみる!「ジーリ」(2003年)の巻

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Y木:ジーリ?なにこれ?

S原:今回は、「最低映画」と名高いこの作品を取り上げますよ。

(あらすじ)

ラリー・ジーリはロスに縄張りをもつ犯罪組織の一員。兄貴分のルイスからNY時代の知り合いを助けるため、ある人間を誘拐するよう命じられる。相手は知的障碍を持つ少年ブライアンだった。ラリーはうまく言いくるめブライアンを自分のアパートに連れて行くがそこへ謎の女リッキーが現れる。ラリーだけでは不安に思ったルイスがリッキーを差し向けたのだ。こうしてラリー、リッキー、ブライアンの奇妙な共同生活が始まる。

 

S原:これ、ラジー賞(最低映画賞)受賞してるねん。

Y木:知らんなー、こんな映画。

S原:たしか、当時の映画秘宝でもボロクソにやったんとちゃうかな。「最低映画マニア」たちには、有名作やけどな。

Y木:いやな奴ら(マニア)がおるなー。おまえも含めて(笑)それで、やっぱり最低映画やった?

S原:ノーです。結論から言うと「わりとマシ」な映画やった。まあ、こっちが覚悟の上で観たというのがあるにしても、そんなに酷評するような映画かなあ。

Y木:そうなんや。

S原:これを最低だ・最悪だと騒いでいる人もいるけど、これよりもヒドイ映画はたくさんあるもん。だって「フィア・ストーム」とか「悪魔狩り」とかと比較したら、ちゃんとしてるで。ストーリー展開は分かるし、アフレコの音声も口に合っているし、カメラのピントも合っているしな。

Y木:おいおい、どんなレベルで話しているねん。

S原:でもまあ、やっぱり面白くはないねんけどな(笑)。変な映画やし、面白くはないけど、そんなにボロカスに言われるほどの映画でもないというのが、ぼくの感想。

Y木:おまえ、普段からしょーもない映画ばっかり観てるから、マシに感じたんとちゃうの?

S原:そうかもしれん。

Y木:どんな話?

S原:すごく単純やねん。上のあらすじの通りなんやけど、ギャング’(チンピラ?)の男女が知的障碍のある男子(10代後半くらい)と一緒に過ごすことになる。

Y木:それで?

S原:それだけ。

Y木:なんやねん、それ。

S原:ほんまにそれだけやねん。

Y木:むかし「レインマン」(1988)っていう映画があったやん。あんな感じとちゃうの?

S原:ちょっと似てるけど、全然深みが違う(笑)

Y木:そりゃそうやろうけど。もうちょっと説明してや。

S原:「レインマン」では、ダスティン・ホフマンと交流することで主人公の心情が変わっていくやろ?でも、この映画ではほとんどそういう場面がないねん。心の交流なんかなくて、ほんまに連れまわすだけ(失笑)

Y木:最低やがな。

S原:最後は、この男子の望みが叶うようになるんやけどな。でも、とくにハッピーエンドという感じもなくて淡々とした結末やったな。べつにお涙頂戴のドラマにしなくてもええけど、それやったらこんな障碍者のキャラにしなけりゃええのに…不自然さが残るだけ。たぶん、こういうところが嫌われたんとちゃうかな?

Y木:なるほどな。

S原:あと、主演の2人(ベン・アフレックジェニファー・ロペス)が当時恋人同士やったらしい。これも反感を買ったんやろうな。濃厚なベッドシーンもあるし、観ていると「こらこら、そういうのは私生活でやりなさい」と突っ込んでしまうからな(笑)

Y木:たしかに。

S原:ジェニファー・ロペスはめちゃキレイやねんけどな。そのくせ、2人で猥談というか下ネタを言い合う、それも全然面白くない下ネタやから、観ているこっちはどう反応してええか混乱するばかり。

Y木:ふーん。他にはどこがあかんの?

S原:まず全体的に「薄味」やねん。どこにも引っかかるところがない、というか。

Y木:薄味か。

S原:さっきも言ったようにドラマ部分も大したことない。ラブストーリーとしてもダメ。犯罪組織の一員という設定やけど、サスペンスは特にない。普通、こういう映画やったら、障碍のある男子を守っていく方向になるやん?それもないねん。主人公たちは障碍者をうっとうしいと思いながら、一緒に生活するだけ。これじゃあ、ちょっとな。

Y木:なんか、ダメなところがわかってきた(笑)

S原:まあ、一番の原因はキャラクターが魅力的でないことやと思う。だれにも感情移入できないから、やっぱりつまらんよ。

Y木:「思ったよりもマシやった」というわりには、やっぱり辛口やな。

S原:まあ、「マシやった」だけで「面白い」わけではないから(笑)

Y木:なるほどな。

S原:さあ、みなさん。この映画は最低映画として名高いですが、まだまだ下には下がありますよ。そういう意味では中途半端な映画かもしれませんが、とくに観たからと言って何の印象も感想も残りません。テレビ放映してれば、用事をしながら20分くらい見るのがベターでしょう。そんなわけで、今回の格言。

Y木:急に格言?

S原:「ワゴンセールという名の底なし沼には、底はなし!」

Y木:なんか、よくわからん格言やな……

酷評されてる映画を観てみる!「Deep Love アユの物語」(2004年)の巻

Deep Love アユの物語 [DVD]

 Y木:あ。これケータイ小説やろ?

S原:そうです。今回はこれを語ります。 

(あらすじ)

女子高生を中心に話題となり、アクセス数2,000万件を突破した携帯連載小説を、著者であるYoshi自らが映画化。援助交際を繰り返す17歳の女子高生・アユが、ひとつの出会いをきっかけに真実の愛に目覚め、次第に心のよりどころを取り戻していく。

 

S原:これは、原作者はYoShi。自らが映画化してます。

Y木:あー原作者自らが監督…あー…

S原:いまのヤングたちは「ダメ映画フラグがたつ」と言うんかな(笑)

Y木:もう言わへんのとちゃう?それにしても、いままで原作者が映画監督をして、ほとんど上手くいったことはないやろ?

S原:そうやなー。パッとでないけど…あーそうそう、一時期ちょっとだけ話題になった椎名桜子って小説家がおったやん?

Y木:あー!「家族輪舞曲(ロンド)」(1989)!覚えてるで~(笑)あれは椎名桜子が脚本・監督やったなー。

S原:あれも珍作らしいけど、まだ観てないねん。いつか、ワゴンで出会えるかなあ。ワクワク!

Y木:ワクワクするなって。確か他にもあるやろ?

S原:「さよならジュピター」(1984)(小松左京自身が製作・監督)が有名かな。ほかでは、「地獄のデビルトラック」(1986)(スティーブン・キング自身が監督)とか、「BE-BOP-HIGHSCHOOL  ビバップハイスクール」(1994)(きうちかずひろ自身が監督)とかかな。たぶん、ほかにも色々とあるんやろうけどな。

Y木:たしか村上龍も何本か監督してるやろ?

S原:「限りなく透明に近いブルー」(1979)「だいじょうぶマイ・フレンド」(1983)「トパーズ」とかたくさん監督してる。ぼくはどれも観てないけど、小説に比べると評価はされていない。というか、全然相手にされていない(笑)

Y木:まあ村上龍やからな。そうでしょ。

S原:あと、このブログの愛読者は、なんといっても「ふぞろいな秘密」の石原真理子監督やろうな。

Y木:愛読者なんかおらんけどな。たしかに、あの回の評判はよかった。友人たちからの評価やけど(笑)

S原:でもなー、フォローするわけじゃないねんけど、小説家とか漫画家が、映画監督をして成功するのは難しいと思うわ。全然違う表現方法やからなー。

Y木:そうやろうな。自分の小説や漫画を映像化するのは、自分の「世界観」だけではダメなんやろうな。それで、この映画は?

S原:じつは、そんなに悪くなかった…

Y木:うそつけー!

S原:いやいや出来はメチャクチャ悪いで。しかも演技もなにもあったもんじゃないねん。完成度としては最低ランクといっていいと思う。

Y木:じゃあ、あかんやん。

S原:でもなー、香取慎吾の「座頭市 The Last」を観た後では、すごくしっかりと作っているように感じたわ(笑)

Y木:こらこら。

S原:これは、さっき話が出た「ふぞろいな秘密」にちょっと似てるねん。

Y木:どういうところが?

S原:そっくりなのが、演技とセリフの言い方。無表情&棒読みやな。

Y木:ひどいな、おまえ。

S原:ほんまに、そうなんやから仕方がない(笑)でも、貶してるわけちゃうねん。「ふぞろいな秘密」のときもそうやったんやけど、観ていると途中で違和感がなくなるねん。自分でも不思議やわ~。棒立ち・棒読み・無表情の3点セットが、一種の快感になるねん。

Y木:ほんまいかいな。

S原:主演の重泉充香は、モデルらしい。他にも無名の俳優たちがでるけど、揃って3点セットやった。ちょっと有名な俳優もでるけど、まあ大したことはないです。この原作本は携帯小説というんかな、そういう小説で当時のヤングたちにバカ受けしたらしい。たまに古本屋の100円コーナーでみかける。勇気がなくて買えないけど(笑)

Y木:どんな話?結構、ハードな物語とちゃうの?

S原:いやーそうでもなかったで。これは要するに、援助交際とかをしている女子高生が主人公やねん。

Y木:うわー、性描写とか激しそうやな。

S原:反対にセクシャルな場面もできるだけ直接的な描写を避けてた。そこは監督のこだわりやと思う。

Y木:ふーん。間接的に描いてるんや。

S原:レイプのシーンとかあるけど、そんなにエグくない。主人公は、ヤク中の男と同棲してるけど、ひょんなことから老女と出会う。老女らしい素直な対応(大人な対応)に、心惹かれて老女の家で一緒に住むことになるねん。そして、援助交際もやめようと決心するねん。

Y木:え?実家は?親は?

S原:まったく描写がないからわからん。原作には書いてあったんかなー。

Y木:老女と住む……知らん人と一緒に住むってこと?

S原:うん。とくに説明なかったけどな(笑)そのうちに公園で子犬を拾ったり、老女が死んでしまったりする。

Y木:えー老女が死んだら、家をでていかなあかんやん。

S原:いや、老女が死んだ後も一人で住んでた。

Y木:なんやそれ。

S原:要するに、そういう違和感に対する説明的な描写は一切省いているねん。そういう演出なのか、下手なだけなのか、それは判断がつかん(笑)

Y木:なるほど。

S原:でもって、公園である少年(15歳)と出会う。少年は心臓病で心臓移植が必要らしい。費用は1000万円。主人公は、この少年のために援助交際を再開して、小銭を稼ぐ。やがて、主人公はHIVエイズ)に感染してしまい死亡する…おしまい。

Y木:あー心臓病の少年も死んでしまうんやな。

S原:いや、生きてたで。3年後に主人公の墓参りしてた(笑)

Y木:なんやねん、それ。

S原:まあ、心臓病が治った理由の説明はなかったけどな。

Y木:よくわからん。ほんまにおもろいの?

S原:いや、おもしろくないで(笑)でも、この独特の世界にどっぷり浸かったら、なんともいえない気持ちになるねん。

Y木:ほんまかいな。

S原:こればっかりは体験しないとわからんやろうな~。

Y木:体験したくないけどな(笑)

S原:これもネット上では酷評だらけやけど、自分でもわからんけどこの映画を責める気にならんな。

Y木:なんで?

S原:たぶん、監督が素直に撮ってるからやと思う。下手やし違和感あるし棒読みやし盛り上がらへんけど、これでいいような気がする。主人公たちが沖縄に行く場面も結構、キレイしな。でも惜しいところ、というか変なところはやっぱり多いで。たとえば、この手の映画にありがちやけど、肝心な説明描写はないのに、説明セリフが多いねん。主人公は、老女のお金を(ヤク中の男のために)盗むねん。老女は、それに気付いてるねんけど主人公を責めない。「あのお金は、盗った人が必要だったのよ」とつぶやくねん。このあとに、主人公が「わたし、おばあちゃんのお金を盗んだの!」と改めて告白するねんけど、こういう場面は黙って主人公がうつむくだけで、十分観客には伝わると思うねん。

Y木:なるほどな。

S原:主人公の友達でピント外れな同級生がおるねん。すごく変な子やねんけど、主人公を心配してるのは事実やねん。こういう脇役とのやりとりを上手に描けてれば面白くなったと思う。

Y木:うーん、でもこのストーリーではちょっと観る気がしないなー。

S原:普通はそうやろうな(笑)まあ、でも、こういう映画を観るのもレアやから、なかなか面白い体験やったわ。さあみなさん!映画の出来は良くないです。主人公の哀しい心情はイマイチ伝わってきませんが、ちゃんと監督の言いたいことはわかりますよ!

Y木:ん?なんで?

S原:だって映画の最後には、ちゃんと文字で「アユは、現代に生きる人々の鏡なのかもしれない」とわかりやすくメッセージがでるから(笑)さあ、普通の映画に飽きたあなた、ぜひチャレンジしてみてください!

Y木:最後の監督からのメッセージがあるんやったら、そこだけ読めばええやん。べつに映画観なくてもええんとちゃうの?

S原:……え?

 

酷評されてる映画を観てみる!「座頭市 THE LAST」(2010年)の巻

座頭市 THE LAST Poster

S原:今回は有名な映画ですよ。

Y木:あったなー、この映画。 

(あらすじ)

最愛の妻・タネと「これで最後だから」と約束をし、市は大勢の追っ手に向かって行く。しかし、その争いの中、不運にもタネは刺され命を落としてしまう。市は、タネとの最後の約束を守り、平穏な暮らしを求め故郷に帰り、かつての親友・柳司の家に身を寄せる。そして、仕込み杖を置く。柳司の母・ミツや息子の五郎との平穏な日々が続くかに思えたが、村は非道な天道一家に牛耳られていた。封じ込めた仕込杖を再び手にせざるを得なくなる市。しかし、その先には更なる壮絶な運命が待ち受けていた…。

 

S原:いつもここで取り上げるDVDは、ほとんど知られていない映画やOV(オリジナルビデオ)が多いねんけどな。これは、大々的に宣伝して全国ロードショーされたから、覚えている人も多いと思う。

Y木:ジャニーズ主演やしな。

S原:当時、まったくヒットしなかったことを覚えてるんやけど、ちょっと気になってレビューをみたら、もう酷評の嵐やった。これがまた、みんな上手に叩いてるねん(笑)こんな暴風雨にさらされて、阪本順治監督や香取慎吾はつらかったやろうな。もう10年たったし、本人たちは忘れたい記憶やろうなあ。

Y木:じゃあ、いまさらここで語らずにそっとしておいてやれよ。

S原:いやいやワゴンコーナーで出会ったら、これはマストバイでしょ。

Y木:まあたしかに有名な作品自体、ワゴンにはあんまり置いてないけどな。

S原:こういうのが、スペース〇〇とか〇〇オブ・ザ・デッドとかの間に置かれていると、東京からきたお坊ちゃんが、田舎の品のない不良に囲まれてるみたいな感じがするよな。

Y木:別にせえへんわ。それで、酷評だらけのこの映画は、どうやった?

S原:なんとも凄い映画やった。正統派メガトン級失敗映画といばええのかな。

Y木:やっぱり…

S原:さきに言っておくと、できるだけ素直に話したいですが、すでにSNSで書かれている短所と重複すると思いますので、ご了承くださいませ。

Y木:だれに了承を求めてるねん。

S原:この映画は、ものすごくお金をかけてます。一説では製作費5億円以上らしいわ。

Y木:5億!

S原:宣伝費とかはさらに数億かけてるやろうから、総予算はもっと大きいはず。このブログでは低予算の邦画とか、たくさん紹介してるやろ。その映画の監督たちは、予算がなくて撮りたい場面をあきらめたり、チープになってしまって悔しい思いをしたはずやねん。どの監督もロケとか撮影とか機材とかキャストにもっと凝りたかったやろうしな。この5憶円+宣伝費を彼らにまわしてたら、もっと日本映画界の未来への投資になったのに(笑)

Y木:そりゃ結果論やん。

S原:まあな。それにしても、こんな特大場外ファールはあまり見れないで。

Y木:なにがファールやねん?

S原:これは「座頭市じゃない」。これに尽きる。

Y木:いやいや、観てないけどな。それは、阪本順治香取慎吾が可哀そうやで。たぶん、「新しい座頭市」を目指したんでしょ?

S原:では質問です。そもそも座頭市って、どういうところが映画や物語として面白いと思う?

Y木:そりゃ、時代劇で「盲目なのに凄腕のヤツ」ってことでしょ?

S原:100人に聞いたら、100人がそう答えるやろ?

Y木:そうやな。

S原:今回はちゃうねん。

Y木:もしかして盲目じゃないとか?

S原:いや、いくらなんでもそれはなかった。そこまでぶっ飛んでたら面白かったかも(笑)

Y木:5億円もかけたんやろ?ちゃんと観れるようになってるんとちゃうの?

S原:5億円は、まずセット、ロケ、それから俳優のギャラ、これで大半が消えてます。

Y木:えー。

S原:オープンセットというんかな、村の家があって、そのむこうにキレイな山々がみえて…という遠景ショットは文句なしにすばらしい。冒頭の竹林で座頭市が追いつめられる場所も美しいし、ラスト近くで急な傾斜での崖もよく撮れていると思う。

Y木:ほかには?

S原:漁師がいる海岸もしっかりと映していたかな。

Y木:おいおい、自然とかセットとか風景とかそんなんばっかりやがな。

S原:ほんまにそれしか褒めるとこないねん。あと一番違和感があるのは、座頭市の髪型やな。

Y木:髪型?

S原:ゴルゴ13みたいやねん。

Y木:ゴルゴ!

S原:これ、ほんまやで。ゴルゴがいくら仕込み刀を持っても違和感があるで。映画を観ながら「おいおい、どうせ最後はライフルで暗殺するんやろ?」とか突っ込んだりしてな。

Y木:怒られるぞ、阪本順治に。

S原:だって、ほんまに変なカツラやねんもん。DVDのパッケージをみたらわかると思うけど、衣装は赤色がアクセントになっていてカッコよいねん。盲者が赤色を身につけるというアイデアもええしな。でも、それもすべてゴルゴが破壊してしまう(笑)

Y木:わかったわかった。髪型の話はええとして、もっとキャラのことを教えてや。さっき、言った「新しい座頭市」は?

S原:勝新太郎北野武もアクが強い俳優やろ。だから、正攻法でいかず変化球でいこうとしたのは分かるねん。でも、この座頭市は弱いねん。

Y木:えー?剣術というか居合の達人じゃないんかいな?

S原:一応そうみたい。でも、よく斬られてたで。

Y木:なんやそれ。

S原:たぶん、居合の達人じゃないんやろうな。

Y木:それは座頭市ちゃうやん。ただのオッサンやん。

S原:だから、たぶんこれは「座頭市によく似た誰か」なんやろうな。やっぱりデューク東郷の変装かな。

Y木:なるほどなー……って、いやいや納得しかけてしまったわ(苦笑)要するに、いままでの座頭市のイメージと違いすぎるってことやろ?

S原:そうそう。でも北野武バージョンも金髪にしたりしてたけど、観ているうちに気にならなくなってくる。それが映画演出の力というか説得力やろ。今回の「座頭市 THE LAST」は、最後まで?マークの連続やったから、やっぱり説得力がないねんで。

Y木:具体的にはどうあかんの?弱いってこと?

S原:それもあるけど、この映画の登場人物がなにがしたいかよくわからんねん。

Y木:ストーリーをみると、百姓のために、非道な天道一家を斬るっていう話なんやろ?単純明快でええやん。

S原:一応そうなんやけど、ほんまによくわからんねん。まず、今回の座頭市は、はじめに最愛の人(石原さとみ)を失ってしまうねん。それで、地道に暮らすことを目指して村に来たはずなんやけど、その村で天道一家の悪行の苦しむ村人と出会う。単純な話のはずなんやけどな、天道一家も村人も、なんかバタバタしてよくわからんねん。

Y木:苛められて苛められて、ついに座頭市が刀を抜く…という話ちゃうの?

S原:そういう話…のはずなんやけどな。たくさん有名な俳優もでるけど、あんまり区別がつかなくて単純なくせに人間関係がわかりにくい。みんな思わせぶりなセリフを言ったり、裏読みしている表情をしたり、その一方で変な行動をしたりして、全然わからん(苦笑)観ているうちに「えーと、こいつは悪いヤツやったけ?それとも座頭市を助けようとしてるんやったけ?」と、頭が混乱するんねん。ひょっとして、こっちの頭が悪いんかもしれんけどな。

Y木:座頭市ならでは、という場面はないの?

S原:ほとんどない。あ、もちろん香取慎吾は眼を閉じてるで(笑)

Y木:あたりまえやがな。

S原:盲目と言えば「あっしは、眼が見えねえもんで…」というセリフがあるねんけどな。そこは「あっしは、メクラなもんで…」でええと思うねん。なんで言葉を変えるんやろ?

Y木:放送コード?

S原:やろうな。でもこれって時代劇やで。それに、とくにいままでの座頭市が「メクラ」と自分で名乗るときは、自分を蔑むような、でもおまえらなんかいつでも斬ることが出来るという自負があるような、そういうニュアンスがあるねんな。とくに第一作の「座頭市物語」(1962)は、すごく良いねん。

Y木:なるほど。

S原:だいたい、そんな言葉に気を付けるなら、座頭市なんか作るなっちゅーの。

Y木:殺陣はどうやった?

S原:全然たいしたことなかった。昔正月でやってた「芸能人のかくし芸大会」みたい(笑)

Y木:そりゃ、いいすぎや。

S原:ほんまにそんなレベルにみえるねんって。お決まりの賭場に行く場面もあるねんけどな、眼が見えないやつが丁半博打するから、いくらでも面白くできるやん。実際、勝新太郎座頭市では、賭場の場面が多いけど、どれもほんまに面白いからな。

Y木:サイコロの博打やな。そこでは、かっこいい場面はないの?

S原:別に普通に凄むだけやった。ここは勝の座頭市と同じエピソードを使ってもええと思うんやけどな。

Y木:それはしたくなかったんやろ。何度も言うけど、勝新太郎とは別の座頭市像を作りたかったんでしょ。

S原:でもそのくせ、ところどころ勝新太郎の歩き方をモノマネしたりしてたで(笑)結局、目指すところがファールゾーンなうえに、お金のかけかたもおかしいから、こんな映画になるんやろうな。

Y木:有名な俳優がたくさんでてるから、豪華になるはずやのにな。

S原:いやーみんな小汚いだけやったで。リアリズムを追求したんやろうけど、衣装やメイクでなくもっと違うところに気を遣ってほしかった…

Y木:石原さとみが、座頭市の最愛の妻役やねんな。

S原:そうそう。石原さとみは冒頭5分くらいしか出演しないのに、クレジットでは2番目(笑)

Y木:大人の事情が垣間見える瞬間やな(笑)

S原:冒頭は竹林で映像自体はキレイねん。でも、きれいに竹が並んでいる間から、一斉に10人くらいが横にスライドして、バッと敵が現れる。そんなことってある?(笑)昔のディスコミュージックで「ステイン・アライブ」(ビージーズ)ってあったやろ?あのMTVにそっくり。

Y木:いったいいつのセンスやねん。

S原:しかも、石原さとみが死ぬ場面がすごい。コントみたいに、背中にドスッって刀が刺さる。背中から、大きな刀がビヨーンって生えてたまま、ゴルゴ13に別れを告げる(笑)

Y木:ギャグか。

S原:あと、この映画では血が出ないねん。

Y木:あーそれも狙いでしょ。

S原:そういう演出はええねんけどな、映画のはじめのほうで、悪役の手下が手首を切り落とされるねん。血の出ていない手首が映って、男が「イタタタ、イタタタ!」って庭を走り回って、まわりは無表情でじっとみてるだけ。

Y木:カフカの小説みたいやな。

S原:もう疲れたからこのへんで止めるけど、要するにみんなが当然疑問に思うポイントに対して、ちゃんと説明できていないから違和感だらけやねん。「新しい座頭市像」を目指すのはええねんけど、その新しさに説得力がない。だから最後まで観ても「え?これでおしまい?え、間違って違う映画をレンタルしちゃった?」というだけやねん。

Y木:今回は、ボロクソやがな(笑)

S原:さっきも言ったけど、低予算で苦労している映画ばっかり観てるから、余計に腹がたつんやろうな(笑)

Y木:おまえ、だれの味方やねん。

S原:さあ、みなさん。できるだけフラットな気持ちで観たつもりですが、途中からはもう我慢できずに粗探しをしてしまいました(笑)まああれですよ、長い人生で一度くらいは珍作を経験しても良いと思いますよ、ほんまに。普通に座頭市を楽しみたい人はやめておいたほうが無難でしょう。でも、ライフルで暗殺をしないゴルゴを観たい人はマストバイですよ!

Y木:今回はメチャクチャやな(苦笑)