あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

知られざる日本映画をさらに深堀り 15本! 「ファイティング・オカン」(2011)の巻

ファイティング・オカン/TWILIGHT FILE VIII

 

Y木:また女子ボクシングもの?

S原:今回は、中澤裕子がボクシングに挑戦!

 

(あらすじ)

夫と息子と平穏な日々を送っていた40歳の専業主婦・佐伯小夜だったが、ある日突然、夫から離婚届を突きつけられたことをきっかけにボクシングジムに通い始める。それまで何ひとつ打ち込んだことのなかった小夜は、次第にボクシングの魅力にのめりこんでいく。

 

S原:職場の後輩が、かなり以前に街中で中澤裕子を見かけたらしい。

Y木:へえ。

S原:メチャクチャ綺麗で、スタイル抜群やったと言ってたわ。

Y木:まー芸能人なんかそんなもんでしょ。

S原:ぼくもジャイアント馬場を街で見かけた時は「うわ、でかっ!」と思ったもんな

Y木:そのままやがな。

S原:で、この作品は、そんな綺麗な中澤裕子が、40歳の主婦(おかん)を演じるのがミソなんやけどな。でもまあ……うーん、かなり期待したんやけどなあ。

Y木:これに期待するか? どう考えてもテレビドラマやん。

S原:そうなんやけど、竹原慎二が絡んでるからな。以前に紹介した「タナトス」がすごい良かったら、期待したのよ。

 

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S原:失敗作ではないよ。普通やと思うけど……なんというか、1時間のテレビドラマみたいな感じで、どうにも薄味やねんなー。

Y木:そういう作品やろ。それでええやん。

S原:いや良くない。申し訳ないけど、作り手はやっつけ仕事やと思う。もっと言うと、やる気がないと思う。

Y木:手厳しいな。

 

 

S原:これ、切羽詰まった40歳の女性がボクシングに出会う話やねん。でも、そういう衝動と言うかエネルギーが感じられない。

Y木:はあ。

S原:あれよ。「ほとばしる熱いパトスで~」って感じよ。

Y木:え?

S原:あーもう! エヴァのオープニング曲やないの! これくらいわかってよ!

Y木:知らんねんって、エヴァは観てないんやから。

S原:このまえテレビで放映してた「あのクズを殴ってやりたいんだ」もライトなラブコメやったけど、主人公とボクシングに関してはちゃんと描こうとしてたで。

Y木:はあ。

 

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S原:でも、この作品は好きになれない。もっと中澤裕子扮する主人公を正面から描かないとダメやって。それはテレビドラマ風でも短い時間でも出来るはずなんやけど…

Y木:どういう話?

S原:上の通り。明るいというか天真爛漫というか、空気を読めないくらいの関西で言うところの「おかん」「オバハン」が主人公やねん。地元のみんなとワチャワチャやっています。ある日、とくに自分は悪いことをしていない(と思っている)のに、旦那に離婚届を渡される。子どもは思春期で、自分はパート勤務。今後のことを考えたら不安だらけ。そんなとき、ストレス解消でサンドバッグを殴りたくて、ボクシングジムに行く。やがて少しずつボクシングに興味を持って……という感じね。

Y木:普通やん。

 

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S原:こういう題材は「普通」では印象に残らないねんって。それではあかんねん。

Y木:なんで、おまえがそこまで熱くなるんかわからんぞ。

S原:これはあくまで僕の感じ方なんやけどな。これって「女性」のことをバカにしてるように感じるねん。ぼくの職場は、圧倒的に女性が多くてな。昔よりは改善されたとはいえ、社会では男性よりも女性の方が不利な状況ってまだ残ってるやん。それぞれ事情を抱えていて、たぶん能天気に働いてる人なんかいない。シングルで懸命に子育てしている人もいるし、薄給でも真面目に働いている人もいる。同じ能力なのに、男性の方が昇進するのが早いこともあると思うねん。みんな、今後に不安を感じながら、それでも生きてるやん。

Y木:まあな。

S原:そういう女性がボクシングと出会うんなら、もっと感情が揺れ動くはずやねん。ダイエット目的ちゃうんやし。

 

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S原:さらに同じジムには、プロを目指す若い男もおるねん。主人公はそれを横で見るねんで? 年頃の息子を持つ主人公が何も感じないはずがない。なのに、なんでこうなるんやろか?

Y木:だから期待しすぎなんやって。そういうライトなドラマなんやって。

S原:納得いかんわー。中澤裕子も、それなりには頑張ってるけど、あくまで「それなり」やねん。ボクシングに本気で打ち込む役なら、もっとボクシングをしてもらわないと……

Y木:よくわからんけど、おまえが失望してるのは分かった。

S原:とにかく、惜しい作品やった。竹原慎二とのやりとりは少し面白けど、もっとぶつかるはず。他にも息子のバンドのエピソードとか、旦那が他の女性と浮気しそうになるとか、家を出て行った旦那が中澤裕子のことが気になって息子に電話をかける場面とか、ゴミを捨てたモヒカン男のみぞおちに主人公がパンチをいれるとか、わりとユニークな場面は多い。なのに、全然メインストーリーとからまない。結局は、なにを描きたかったのかが決めきれずに作ってしまったんちゃうかな。

 

ファイティング オカン TWILIGHT FILE VIII画像2

 

Y木:どうなんかなー。おまえみたいに「ああすれば良かった」「惜しい」と言うのは簡単やん。それは後出しジャンケンなんやって。

S原:その通り、後出しジャンケンよ。でも、勝っても負けてもええから、ちゃんとジャンケンで勝負しろってことよ。

Y木:今回はよくわからん。

S原:というわけで、どうもモヤモヤする話でしたが、作品自体は普通の出来です。ボクシングを期待せずに、ボクササイズの初心者コースのつもりでご鑑賞ください!

 

 

ファイティングオカン