S原:今回は、ウェス・クレイヴン2本立て!
Y木:ウェス・クレイヴン……って、誰やったっけ?
(ウェス・クレイヴン’s カースドのあらすじ)
満月の夜、獣のような何かに噛まれたキャリアウーマンのエリーとサエない弟のジミー。その日以来、セクシーでエネルギッシュに変貌し、そのうえ血の匂いに惹かれるようになった彼らは、自分たちが‘野獣の呪い(カースド)’にかかってしまったのだと知る。
(ザ・チルド 甦る冷凍人間のあらすじ)
人体の冷凍保存をテーマにしたホラー。富豪のマイルズは病気の治療法確立を待つため冷凍状態に入る。10年後、冷凍カプセルの異常によって彼は目を覚ますが、精神に異常を来していて…。
S原:ウェス・クレイヴンは、ホラーが得意な映画監督です。有名な映画で言うと「スクリーム」シリーズとか「エルム街の悪夢」とかの人ね。
Y木:あーあの人か。
S原:この人、当たりハズレがちょっとあるのよなー。イマイチなのも多い。
Y木:例えば?
S原:「サランドラⅡ」(1985)とか「ショッカー」(1989)とか「デッドリーフレンド」(1986)とか。
Y木:あー……(失笑)
S原:ま、どれも結構好きなんやけどな。
Y木:好きなんかい!
S原:最初は「ウェス・クレイヴン’s カースド」のほうから話します。結論からいうと、これは面白かった~!
Y木:へえ、これが?
S原:狼人間の映画やねん。かなり丁寧に作られていて、ポップコーンムービーとしては上質やと思う。しかも、クリスティーナ・リッチ主演! いやー久しぶりにみたけど、やっぱりええなあ。
Y木:クリスティーナ・リッチが狼女になるの?
S原:そうそう。話は単純やねん。狼に噛まれて、狼人間になるだけ。でも、それまでの経緯と、狼人間になる過程の見せ方が上手い。たとえば、仕事中(オフィス)でクリスティーナ・リッチが「いい匂いがするわね」と不思議に思って給湯室にいくと、女性のOLが鼻血をだしていたとか。
Y木:あー血の匂いにつられて?
S原:うん。銀で出来た食器を触ると火傷をするとか、車の下から狼の足がみえる場面とか、占い師に「あなたは呪われてる。危険よ」と忠告されるとか、ベタなんやけど丁寧に小さな積み重ねてるのよ。「上海から来た女」を引用した鏡の部屋の場面も痒いところに手が届く感じやねん。ウェス・クレイヴン兄貴、さすがだぜ!って感じね。
Y木:ウェス・クレイヴンが兄貴分なんか(苦笑)
S原:ええ人やと思うで。こんな映画ばっかり撮ってるから(笑)
S原:さっきも言ったけど、クリスティーナ・リッチは綺麗やけど、ちょっと癖があるやろ。正統派の美人ではないというか。「おでこ美人」というか。
Y木:そうやな。癖のある役も多かったし。
S原:「ペッカー」とかな。でも、この映画ではすごく魅力的やねんなあ。ちょっと正直に言ってもええかな?
Y木:はあ、どうぞ。
S原:ぼく、彼女になら、ちょっとくらい噛まれて血を吸われてもいい!
Y木:やめろ、きもいねん!
Y木:もう一本は?
S原:これね! 「ザ・チルド/チルド 甦る冷凍人間」!
Y木:はあ、冷凍人間か。
S原:これは……B級そのものやった(笑) 結構面白いねんけどな。3大マイケル俳優の1人が主演やねん。
Y木:なにそれ? 3大マイケル俳優?
S原:あー映画ファンでは有名よ? マイケルの名の付く有名な3人。ひとりめは「フィラデルフィア・エクスペリメント」のマイケル・パレね。
Y木:はあ。
S原:つぎは「スキャナーズ」のマイケル・アイアンサイドね。
Y木:はあ……
S原:そして、「バトルトラック」のマイケル・ベック!
Y木:偏りすぎやろ!
Y木:ほかにも、マイケル・ケインとかマイケル・ダグラスとかマイケル・J・フォックスが、おるやん。
S原:はあ……(ため息) あなたは分かってないわ。
Y木:なにが?
S原:マイケル・ダグラスとかは、ちゃんとしてるやろ。
Y木:まあな。
S原:出演している映画も配信とかされてるやろ。
Y木:たぶんな。
S原:こいつらは、そういうレベルじゃないの! どうしようもない奴らなの! 可哀そうなの!
Y木:どういう基準やねん!
S原:まあ、この映画はマイケル・ベック主演ね。ちなみに、みんな大好き「メガフォース」にも出てます。
Y木:作品に恵まれてない俳優人生やな。
S原:結構、ハンサムなんやけどな。
S原:先に言っておくと、これは画像がボヤボヤです。ビデオテープをそのままDVDに焼いた感じね。
Y木:もしかしてWHD?
S原:その通り。誰も観ないような映画をひたすら販売し続けているナイスな会社ね。で、マイケル・ベックが主人公です。かれは10年間冷凍されています。
Y木:なんで?
S原:病気になったけど治療法がない。なので、母親がある会社に息子を委託する。それは、いまは治療法がない難病を抱えた人を冷凍人間として保存するという会社です。
Y木:なるほど。将来は治療法ができるかも?という可能性に賭けたんやな。
S原:そうそう。で、主人公マイルズが機械のトラブルにより目覚めてしまう。すぐに病院に運ばれてなんとか命を取り留める。母親は喜ぶ。ところが、以前のような優しい人格ではなく、冷血人間に代わっていたという話です。
Y木:冷凍されてたから、冷血になったんか。なんかコメディみたいやな。
S原:映画自体は大真面目やけどな。話は結構イケるねんけど、演出の切れ味が良くない。ところどころは面白いねんけど、全体的にピカレスクとかホラー要素は弱いです。
Y木:面白いところって?
S原:主人公の家は、会社を経営しているねん。主人公が冷凍されていた間、べつのオジサンが経営をしていた。「きみに社長を譲るよ」「ぼくは相談役になってサポートをする」と言うわけ。
Y木:ええ人やん。
S原:でも冷酷な主人公は許しません。「すぐに辞めろ」「おまえなんか用なしだ」
Y木:ひどいな。
S原:そこからが面白い。主人公は「まあ、上で話をしましょう」と言って、オジサンに階段を歩かせる。このオジサンは心臓が弱くてな。延々と階段を歩かせて「く……苦しい!」って死ぬ。
Y木:それ、おもろいやん。
S原:階段を歩かせて殺すって新鮮な方法やろ(笑) でも、そういうユニークな部分は少ない。主人公の残忍さを楽しむ映画やけど、テレビ映画らしくて描写もソフトやしな。ウェス・クレイヴン兄貴、もうちょっと気合をいれて作ってくれよ!って感じね。
Y木:はあ。
S原:というわけで、今回の2本立てはかなり完成度の差がありますが、どちらも「味」がある映画でした。これ系の映画ファンは楽しめます。ホラーが苦手な人でも「ウェス・クレイヴン’s カースド」ならOKかと。もしも中古店で安く売っていれば買って損はないと思います~!