S原:今回はアルゼンチンのホラー!しかも白黒!
Y木:へえ。
(あらすじ)
都会からブエノスアイレスの片田舎にやって来た5人の少女たちが、たまたまバスで乗り合わせる。5彼女たちは乗るべき鉄道を逃して、名も知らぬ街で一夜の宿を借りることになる。紹介された宿の部屋で不穏な空気を感じ、なかなか眠れない彼女達だったが、ちょうどその時、館内に女性の叫び声が響く。ただ1人姿の見えない娘の部屋へ飛び込むが、そこには大量の血痕が……
S原:これはDVDのパッケージが全然良くない。この映画を象徴する良いデザインにすれば、もっと世に広まるはず。大体、カラーじゃないし。
Y木:確かに、これを観るとB級ホラーやと思うよな。
S原:全然違います。これは超個性的な映画です。作家性があるというのか、なかなかユニークやった。
Y木:ほう。やっぱり映像が?
S原:うん。まず白黒の映像が良い。すごく陰影がハッキリしていて、全体的に不安感がある。監督は、アドリアン・ガルシア・ボグリアーノという人で、なんと製作始めたのが19歳の時で、そこから4年かけて完成させたらしい。
Y木:へえ、それはすごいな。
S原:根性と意地やろうな。全編にわたって、監督がやりたいことが明確やねん。B級映画によくある「何をしたいんか分からん」という感じはない。それだけでも、僕としてはOKやねんなあ。
Y木:今回は、当たりみたいやな。
S原:細かいことを言い出せば切りがないけど、あえて「大当たり」と言いたい。それくらい頑張っています。
Y木:ネットの評判はどうなん?
S原:評価は割れているけど、高評価の方が多いかな。知る人ぞ知るカルトホラーと言っていいと思う。よく「悪魔のいけにえ」を引き合いに出している人がいるけど、確かにそうかも…
Y木:えー、あんな異様な映画なん?
S原:いやーあれよりは端正に作ってるし、整合性もとれてます(笑) でも、全編に満ち溢れる不穏な空気が……ぼく、絶対にアルゼンチンの田舎には旅行に行きたくない。
Y木:どうせ行かんやろ。
S原:まあな。ストーリーはもう単純すぎて、話すこともないくらい。一軒家で殺人鬼たちに襲われるだけ。とにかく、この映画の目玉は「暗闇でおびえる女子たち」、これだけやねん。びくびくしている女子が好き人は、もうよだれが垂れるはず。ただ、ちょっと残念なポイントもあるねん。
Y木:ほう。
S原:少し緩急がなくて一本調子なのよ。途中がちょっとだるかったかな。あとは、襲われる女子たちのキャラクターが少し分かりにくい。順番に殺されていくという展開が続くから、そこはスローに感じたかな。
Y木:なるほどな。解説を読むと、スプラッターシーンも売りみたいやな。
S原:うん、これも好きな人には大好物やと思う。この監督はスラッシャーも撮りたかったみたいで、かなり粘着質に描写しています。腕がちぎれたり、眼がつぶれたり、ナイフでお腹をスーッと切ったり、そう内臓がぐちょっと出たり……そういうのがたくさんあります。個人的には、スプラッターにはあんまり興味がないから、僕としては無くてもよかったけど。
Y木:殺人鬼たちに襲われて、一軒家から逃げれるの?
S原:逃げます。最後の方で、主人公が怪我をした女性をおぶって街に行きます。南米特有の自然の多い風景と、女子たちが恐怖でオロオロしている様子が奇妙ですごく良い。炎天下で助けを求めるけど、街の人は無表情に見つめるだけ。ここは不気味やったわ。ぼくはこの場面が一番好きやな。
Y木:町の人は助けてくれるの?
S原:そこからがクライマックスやから、内緒です。これは、機会があれば観てほしいなー。あとは映像特典で、予告編があるねんけど、これがカラー映像やねん。
Y木:へえ。
S原:このカラーの色合いもすごく良い。ちょっと80年代っぽいカラーやねん。いつかカラー版と白黒版の両方を収録したDVDを販売してほしい。
Y木:完全にマニア向けやな。売れへんやろうなー。
S原:ということで、みなさん! どうもキリスト教(邪教?)とか信仰心とか田舎町特有の閉鎖空間とか、隠れたメッセージがありそうですが、そのへんの匂わせ加減も悪くないです。かなり変わった映画ですが、映画好きなら観て損はないはず。一度、ご賞味あれ~!