あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

たぶんマイナーな日本映画をまた10本発掘!「脂肪の塊」(2019)の巻

脂肪の塊 [DVD]

S原:今回は自主映画!しかもホラーです!

Y木:へえ。

(あらすじ)

会社員として働くレズビアンの女性、沢村花子は、連日悪夢にうなされていた。毎晩夢に出てくる青いバケツと真っ赤な血。花子は、友人の伊藤ユキに、悪夢について相談する。花子は、1か月くらい前から、記憶があいまいだという。自分を優しく受け入れてくれるユキを見て、花子は肉体関係を持ってしまう。しかし、なぜか初めてではないような感覚が…。果たして、バケツが意味するものとは何なのか?

 

S原:これは、どの視点から観るかで評価が全く変わると思う。

Y木:んー?いきなりどういうことや?

S原:自主映画として見えれば、ものすごく出来が良い。商業ベースというかプロと並べるとやっぱりチープというか見劣りがする。

Y木:あーそういうことな。

S原:これ、本当に頑張ってるねん。一番良いのは映像。かなり丁寧にきれいに撮っている。印象に残るカットも多いし、独特の陰鬱な雰囲気も悪くない。ちょっとした場面も誤魔化さずにちゃんとロケをしています。(おそらくプロでない)役者たちも存在感がある。監督の好みかもしれんけど、自主映画特有の変なカメラの手ブレショットもない。グロというかスプラッター描写も力が入っていて、好きな人は楽しめると思う。

Y木:へえ。

S原:ただなあ……「面白いか?」と言われると返事はしにくいなあ……

Y木:わかりにくいってこと?

S原:うん。まずはそれやな。人間関係やストーリーが飲み込みにくくて、なかなかこの世界に入っていけない。時系列を変えてるから余計に混乱する。たぶん監督は「説明」をしたくなかったんやと思う。その分、話が単純なようなそうでもないような…ぼくが頭悪いんやと思うけど、どうにも閉塞感が漂っていて観るのが辛い。

Y木:ま、ホラーやから暗いとか閉塞感があるのはOKでしょ。

S原:そうなんやけど、いまいち観ている気持ちが盛り上がらないのよ……でも、さっきも言ったけど自主映画と考えたらものすごく出来が良いよ。ぼくらは、卒業した大学の学祭に行くやん。そこでも現役生の作品を観るけど、これが上映されたらビックリすると思うわ。

Y木:要するにアングラやねんな。

S原:そうそう。監督のやりたいことがハッキリしていて、そこは好感をもった。スプラッターの描写(肉体を切り刻み内臓を食べる等)に目がいきがちやけど、ぼくは普通の場面のほうが上手いと思ったな。「セリフが棒読み」と突っ込んでるレビューもあったけど、あれは監督の演出やと思う。

Y木:ストーリーは?

S原:登場人物の大半は、頭がおかしいねんけどな。映画が始まると、すぐに無精髭の男性・野村邦夫が女性を殺害する場面。ここが粘着質でいきなり気持ち悪い。主人公はOLの沢村花子。彼女は毎晩悪夢を見ています。その夢で青いバケツがでてきます。どうもそこにはみ出る真っ赤な血のようなものがあるようです。でも中身が何かはわかりません。花子は同性愛者の恋人・伊藤ユキに相談をします。ある日、花子にDVDが郵送されます。そのDVDには男が花子の寝ている部屋に侵入する様子が映し出されており、花子は恐怖を感じます。

Y木:うわー…

S原:一方、根岸吾郎という男がいますが、こいつはカトリック信者のくせにストーカー行為の常習犯です。この根岸の部屋にはバラバラになった女性の死体があります。実はDVDを送ったのは根岸であり、彼は花子を呼び出します。そして、消したはずの記憶と「真実」を聞かされて……こういう感じです。

Y木:確かにストーリーはちょっと地味で暗いかな。キャッチ―でないというか。

S原:うん。バケツ(おそらく死体が入っていると思われるバケツ)が象徴的にでてくるねんけど、主人公の心象風景やねん。それはええねんけど、どうも登場人物の内面が上手く表現されてるようなそうでもないような。うーん、上手く言えません(苦笑)

Y木:どっちにせよ観る人を選ぶ映画みたいやな。

S原:その通り。好きな人はハマると思う。個人的にはスプラッターとかに思い入れがないから、まあまあかな。でも、この頑張りは評価したい。これは完成させるのにもかなり苦労したんとちゃうかな。

Y木:今回は自主映画を撮ってる人にエールを送る!って感じやな。

S原:そうねえ。やっぱりみんな撮りたいことを撮るべきやと思うし、そんな作品を観たい。そういう意味では、この映画はバッチグーなんやけどな。あとは、個人の嗜好やろな。さあみなさん。映画製作に興味がある人は観てほしいです。ちょっと暗めのホラー映画ファンもストライクだと思います。なかなか印象に残る映画です。たまにレンタル店でも見かけますので、ぜひ一度トライしてください。