S原:今回はトミー・リー・ジョーンズ!
Y木:80年代の映画みたいなパッケージやな。
(あらすじ)
組織犯罪の重要な証人が何者かに殺された。そして、その現場を地元テキサスの大学でチアリーダーをしているアン、エヴィー、ヘザー、バーブ、テレサの5人の女子大生が目撃していた。5人が口封じのために命を狙われる恐れがあることから、当局はベテランのテキサス・レンジャーのローランド・シャープを護衛につかせることにする。シャープは大学の女子寮で彼女たちと共同生活をすることになるが、そこは厳格な中年男と若くて自由奔放な女子大生、ジェネレーションギャップがあり衝突する日々。そんな中、殺人犯の魔の手が徐々に彼女たちに忍び寄っていた…
S原:まず、最初に読者に対して、ぼくは謝らなければいけない。
Y木:なんやねん、いきなり。
S原:この映画を中古店で見つけた時に「うわ、面白くなさそう~♡」「ネタのなりそうやからゲットしよっと♡」って軽い気持ちでゲットしました。
Y木:あ、そう。
S原:ところが、これをみて自分の先入観と先見の明の無さに恥じ入ったことを正直に告白しなければいけません。
Y木:は?
S原:これはな……普通に面白いねん!!
Y木:それを言いたいんかい! 回りくどい言い方はやめろって。
S原:いやー、本当に期待していなかったから楽しめたわ。あとでネットのレビューをみたら、同じ気持ちの人が多いみたい。
Y木:へー、これがなあ。
S原:超ベタやねんけどな。典型的なポップコーンムービーです。でも、ここまでウェルメイドやったら、もうOKやと思う。「デイブ」(1993)とか「ライアーライアー」(1997)とか「ミセス・ダウト」(1993)とか「僕らのミライへ逆回転」(2008)とか、ああいう感じね。
Y木:ストーリーに凝るとかじゃなくて、キャラ楽しむ感じ?
S原:その通り。起承転結は丸わかり。なんやったら、ラストまで想像がつく(笑) でも、この感じがええのよなあ。
S原:良い意味でステレオタイプのキャラが、ドタバタしていく前半から、ふとしたことでお互いの心の内を知る(意外な性格や出自を知る)後半に行って、殺人犯がチアリーダーたちに迫っていくサスペンス要素もバッチリ。ひさしぶりに、ちゃんとした映画を観たわ。
Y木:それは、おまえが普段からまともな映画をみてないからやろ。
S原:そうかも(笑) 社会問題とか考えさせられる真面目な映画ばっかり観る人もおるやろうけど、やっぱり映画好きな人って色々な種類の映画を楽しめるやん? そういう人にピッタリやと思うで。
Y木:えらい褒めるなあ。でも、ストーリーを読むと設定が強引とちゃう? オジサンとチアリーダー5人組が一緒に住む必要ないやん。一緒に生活しなくても、保護したり警備はできるやろ?
S原:あなたねえ。
Y木:は?
S原:そんなん言ったら、あだち充の「陽あたり良好!」だって、無理がある設定やん!
Y木:あれは少女漫画やろ! おまえ、あだち充で例えるのが好きやなあ。
S原:まあ、「思春期のドキドキ」を楽しむ映画なわけですよ。
Y木:思春期って、相手は枯れたおっさんやがな。
S原:でもトミー・リー・ジョーンズの枯れ具合はよかったよ。若い女性のパンツをみて「ムフ♥」とかも無かったしな。
Y木:だから、それはあだち充やろって!
S原:トミー・リー・ジョーンズは、いつもの演技でとくに驚きはないねんけどな。それをやっつけ仕事と突っ込む人もおると思うけど、今回は、それがハマって安心感につながるねん。例えば、a-haのライブを観に行ったら、「Take On Me」をアレンジを変えずにしたらファンは安心するやん?
Y木:まあな。
S原:「Take On Me」を聞きたい人は、下手にアコースティックバージョンじゃなくて、あのアレンジで聞きたいわけよ。
Y木:つまり決まりきった様式の良さやと言いたいわけやな。チアリーダたちはどうやった?
S原:あー、チアリーダたちも面白かった。犯人を目撃してるから、警察で人相を聞くねんけど、誰一人ちゃんと答えられない。いままでの犯罪歴のある人物の写真をみせたら、「この人はイケメンねえ」「この人はダメだわ」「この人はワイルドでセクシーなのでOK」とか、男性の品定めを始めてしまう(笑)
Y木:それってどうやろ。「十代の女子が男性のことしか考えてない」というネタやろ。バカにしてないか?
S原:え? バカにしてないよ。だって、十代の女子は男性のことしか考えてないやん。
Y木:こらこら。
S原:いろいろあって、必然性のないままトミー・リー・ジョーンズとチアリーダーたちが一緒に住むねんけどな。風呂場に行ったら、派手な下着が干されていたり、露出の多い服を着るのはやめろと説教したり、そういう定番の場面も安定の楽しさです。
Y木:だいたいわかった。印象に残った場面とかあるの?
S原:まず、舞台がテキサスでな。テキサス大が全面協力してて、その大学の雰囲気がすごく良い。ほかにも結構、印象に残る場面もあるで。家に閉じ込められてストレスで爆破しそうなチアリーダーたちを、トミー・リー・ジョーンズが渋々アイススケート場に連れていく。彼はアイススケートは下手なんやけど、大昔に妻をはじめてデートに誘った場所だというねん。
Y木:いろいろあってトミー・リー・ジョーンズは離婚している。「娘がいて連絡をしたいけど、どうやって話せばわからない」という彼に対して、チアリーダーたちが十代の娘の気持ちを教えてあげる。短いしなんてこともない場面やけど、ここはなんかジーンときたわ。
Y木:おまえ、もうオッサンそのものやな。
S原:ふふふ…(含み笑い) 「イケオジ」ってやつかな。
Y木:イケてないやろ、おまえ。職場でも「変なおじさん」とか「猿っぽい人」って言われてるくせに。
S原:サンキューね。で、後半になってトミー・リー・ジョーンズの新しい恋模様も描かれます。彼が気になった女性(大人)を食事に誘うねんけどな。それを知った女子達がキャッキャッと張り切って、彼を小ぎれいにする。耳毛や鼻毛をケアしたり、顔面パックを塗られたり。ここも笑えるで。
Y木:想像がつくなあ。そして想像通りなんやろうな(苦笑)
S原:おじさんのために、デートが上手くいくようにモニターで指示します。「そこで花を渡して」「キレイだ、と褒めて」とか(笑)
Y木:新しい恋愛って、トミー・リー・ジョーンズは警官やろ。犯人を捜せよ。
S原:あー犯人? ラストで捕まえます。
Y木:え、そんなにあっさりと?
S原:うん。ここも良かったで。チアリーダーたちの活躍で人質(トミー・リー・ジョーンズの娘)を救出したり、あと数十メートルでメキシコ国境のギリギリのところで犯人と対峙する場面なんか、定番やけどやっぱり楽しいで。
Y木:分かるけど、なんというか特に普通のハリウッド映画って感じやなあ。
S原:その通り、でもそれでOKよ。イッツ・オンリー・ノーマルムービー、バット・アイ・ライク・イットやな。と言うわけで、皆さん。これは、意外に拾い物です。傑作ではありませんが、ベタに面白い映画を観たときに、ぜひチョイスしてください。特典映像(メイキング)も、短いですが楽しいです。枯れたおじさん好きの人、ガタイの良いアメリカンな女性が好きな人もストライクだと思います。あ! いま思いついたんやけどな。
Y木:なにを?
S原:ぼく、いつか映画好きの女子5人と一緒に住むことになったら、どうしよ?
Y木:……(無言)