Y木:これはコメディやな。
S原:これは他で紹介した「スポーツ映画」とは一味違います。
(あらすじ)
かつて天才卓球少年として騒がれ、オリンピックに出場したランディ。しかしぶざまな敗退後は一転、全米の笑い者へと転落人生をまっしぐら。そんな彼が突如、FBIの依頼で裏社会の卓球世界大会に出場し潜入捜査をすることに。なまりきったメタボボディを鍛えなおすべく、再びカンフー卓球の老師の下で猛特訓に励むランディ。実はその大会は全世界のメダリストが結集、敗者は容赦なく殺害される、恐るべきデスマッチ・トーナメント。しかも主催者は父を殺した宿敵だった!果たしてランディは生き残ることができるのか!?
S原:これは完全にコメディやねん。
Y木:結論から言うと、どうやったの?
S原:わりと面白いです。ジャック・ブラックっておるやろ?
Y木:あー「スクール・オブ・ロック」(2003)の小太りの人。
S原:あの感じのコメディやった。バカバカしいノリのまま、サクサクとすすんでいきます。
Y木:「おバカ映画」ちゅうやつやな。
S原:そうそう。ついていけな人は20分くらいで観るのを止めると思う。全体的にはカンフー映画のパロディになってるねん。とくにブルース・リーとかサモハンとか、あのへんが好きな人にはツボにはまると思う。でも、中国以外にも日本とかのエッセンスもごちゃまぜやねん。力士が卓球したりして(笑)
Y木:なるほど、そういうノリか。
S原:下ネタも適度に混ぜつつ、VFXを使った卓球の試合のバカバカしさを楽しむ映画やな。これ、なんとあのクリストファー・ウォーケンが出てるねん。
Y木:えーあの「ディア・ハンター」の!
S原:うん。アカデミー助演男優賞をとった男やで?たぶんマイケル・チミノに怒られるで。
Y木:いやマイケル・チミノは他人のことを怒れる立場じゃないやろ(笑)
S原:確かにな(笑)でもクリストファー・ウォーケンはやっぱりええよ。あの眠たそうな眼のまま、嬉しそうにバカな敵役を演じてます。あと映画全体としはかなりしっかりと作ってるねん。セットも凝ってるし、ロケもちゃんとしています。
Y木:へえ、意外にお金がかかってるんや。
S原:かかってます。製作費25億円らしい。
Y木:25億!
S原:たしか黒澤の「乱」(1985)の製作費が26億円やったはず。お城を作って燃やして26億円。こっちは小太りの汚いオジサンがはしゃいで25億円(笑)
Y木:時代もあるやろ。お金の価値が違うし。
S原:まあな。この映画の製作陣はマジでヒットを狙ったと思うで。でも、申し訳ないけど、これではヒットはせえへんと思うわ。
Y木:うん?はじめに面白いと言ってなかった?
S原:面白いよ。でも1時間後にはほとんど忘れてる(笑)
Y木:あーそういう映画なんやな。
S原:ストーリーを話すのもバカバカしいから今回は話しません。食べている間はまあ美味しいんやけど、とくに2回目に行こうとは思わない場末の定食屋みたいな感じ。
Y木:よくわからん。
S原:スポ根ものとしても、コメディとしても印象に残らないかな。そのくせ、同性愛(ゲイ)をバカにしたような描写もあるし……どうもスカッと楽しめません。
Y木:こういう映画はポップコーンムービーやろ。それでええんやって。
S原:そうなんやけど、やっぱり1時間後に忘れたらもったいないやん。
Y木:じゃあ頑張って、この映画のことを覚えておけよ。
S原:ノーです。その余裕はありません。
Y木:なんで?
S原:なんでですって?答えは簡単。だって、他のワゴンセール映画(Z級映画)を観ないといけないから!人間にはですねえ、記憶容量に限界があるんですよ。印象に残らない映画はどんどんデリートしないと、次の映画を楽しめないのですよ、あなた!
Y木:……もう映画を観るのをやめたら?