あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

たぶんマイナーな日本映画をまた10本発掘!「タロット探偵ボブ西田」(2016)の巻

タロット探偵 ボブ西田 [DVD]

S原:今回で知られざる日本映画特集はおしまい。最後は、これですよ!

Y木:タロット探偵か。

(あらすじ)
タロットを使っては、浮気調査や子犬捜しに明け暮れているタロット探偵ことボブ西田(高山猛久)。うっかり酔いつぶれてしまった彼が目覚めると、そこには会ったことのないミステリアスな美女(川村ゆきえ)と謎の赤い液体が。自分の陥った状況を自慢のタロットを駆使して調査するボブ西田と仲間たちだったが、いつしか大事件の渦中にのみ込まれていたことを悟る。絶体絶命の状況から抜け出し、事態の真相や美女と液体の正体に近づこうとするが・・・

 

S原:これは、長野県諏訪のご当地映画というのか、諏訪地域で撮影された映画やねん。

Y木:ご当地映画か。最近はそういうのがあるって聞いたことがあるわ。

S原:結論から言うと、これは悪くないです。あらすじは上の通り。

Y木:これって典型的な探偵ものやな。ハードボイルドというか。

S原:うん。さすがにアメリカの探偵小説の雰囲気とは違うけどな。松田優作とか濱マイクとかの雰囲気を少し意識してるかも、です。

Y木:あーそうなんや。せっかくのご当地映画やのに……ベタやな。

S原:いや、ベタはええねんけどな。まず良いところについて話します。最後まで飽きずと観れるし、人間関係も説明台詞を極力使わずにわかりやすい。ここは上手いと思った。それぞれの役者も良い味で、とくに主役、タロットを使う探偵を演じる高山猛久(長野県出身)の声がすごく良い。陰のあるヒロイン役の川村ゆきえも存在感抜群(とくに冷たい表情)です。バーのマスターも探偵に依頼をする若い男性も良いです。

Y木:ほー。タロットはどう使うの?謎解きに使うの?

S原:それがちょっとな。タロットを使う場面はあるんやけど、単にタロットを使って予想(?)するだけで、うまく物語と嚙み合っていないような気がする。探偵がタロットをみて、これから起こることを考える(あるいは他人に話す)…という展開はええねんけど、基本は地味に聞き取り調査をするだけやから。ちょっとヒネリがないかも。

Y木:あー物足りない、と。

S原:うん。もっとタロットが見れると思ってたから。でも各々の場面のロケがすごくしっかりとしてる。ラストの湖もすごく綺麗やねん。ここは感心したわ。ご当地映画だから諏訪の人たちが全面協力したんやろうけど、観光名所を全面に押し出さないところも好感を持ったで。

Y木:なるほどな。良くないところは?

S原:まず主役のキャラが意外に弱い。一番残念だったのは、この探偵がどのような人物なのか?要するに、キャラというか性格が最後までよくわからないのよ。

Y木:なるほど。

S原:さっきも話がでたけど、松田優作とか永瀬正敏とかの探偵ものが製作者の頭にあったと思うねん。でも、あれは観る前から役者を知っているやん?好き嫌いは別としてすごい個性的やし。

Y木:まあな。

S原:でも、この映画ではほぼ知らない俳優たちがたくさん出演するから、ほぼ全員はじめまして、やん。なので、主役だけは長所・短所がハッキリとしてほうが良かったんちゃうかなあ。

Y木:タロット探偵という設定があるやん。

S原:そうなんやけど、タロットはあくまで道具やん。探偵としての「起点」というか「原動力」みたいなのが初めに(観客に)分かったほうが、感情移入しやすいはず。例えば、喧嘩に強いのか、逆にものすごく頭脳派なのか、女性に弱いのか、短気なのか、トラウマがあるのか、いまいち分からないまま話がすすむ。要するに探偵がなにをしたいのかわかりにくいのよ。途中で「情に弱い」と何度か言われる場面はあるけど…うーん、どうなんやろ。

Y木:まあ観てないからわからん。でも悪くない映画なんやろ?

S原:いや良い作品やと思うで。確かに全体としてはあっさりしているけどな。いわゆる東京資本のビッグな企画でなく、ここまで作ったのは立派と思う。実際、撮影日数もかなり厳しかったやろうし、ギリギリまで手を抜かずにちょっとでも良い映画にしてやる!という心意気は感じます。

Y木:ほう。じゃあご当地映画としては成功ちゃうの?

S原:うん。これとキムタク主演の映画と比べるなら、ぼくはこっちの作品を支持したいわ。

Y木:なんか偏見があるよなあ。というかおまえ、キムタクに恨みでもあるんか?(苦笑)

S原:いやモテて、金持ちやから腹立つねん。

Y木:なんて器の小っちゃい男や……

S原:さあ、みなさま。珍しい映画かもしれませんが、まずテレビ放映は期待できないでしょう。探偵ものが好きな人、諏訪地方が好きな人はマストバイです。マイナーでも頑張っている人たちを応援したい!ご当地映画を作っている人、ガンバ~!