あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「光る眼」(1995年)の巻

 

 

S原:今回はこちら!ジョン・カーペンターですよ、あなた!

Y木:おー懐かしい。

 

(あらすじ)

鬼才、ジョン・カーペンター監督が60年製作の『未知空間の恐怖/光る眼』をリメイクしたSFホラー。カリフォルニア州のとある町で住民が意識不明になるという事件が発生。同時に女性全員が妊娠し…。 1995年製作(アマゾンより)

 

S原:ジョン・カーペンターといえば、自作のシンセ音楽を作ることで有名やけど、今回も劇中にちゃっかり使用されています。

Y木:当時から思ってたんやけど、そんなに音楽の才能があるとは思わんねんけどな…

S原:同感です。なんかフニャフニャやしな(笑)たぶん自作のサントラ音楽を使うのが監督を引き受けるときの条件なんやろうけどな。あ、それとも映画会社の偉いさんがゴマするんかな。「いやあ、カーペンターさんのサントラは最高っすよ。また作ってくださいよお」とか。

Y木:なんか昔のTV業界みたいなノリやな。カーペンターといえば、おれにとっては「ダークスター」やわ。

S原:あー、あの映画!学生の時に、あなたに「S原、絶対にあの映画は観たほうがええで!」と言われて、すぐにレンタルで借りたんや。感想は「そういうことか!騙された!」(笑)あれは、ヘロヘロやったなー。最後の宇宙サーフィンとか映画史に残る迷シーンやろ(苦笑)

Y木:でもカーペンターって固定ファンがおるんやろ、たぶん。

S原:おると思う。とくに「遊星からの物体」「ハロウィン」「ニューヨーク1997」あたりは、ファン(マニア)が多いことでも有名やしな。

Y木:「遊星からの物体」は、おれも好きや。ほかは全然覚えてないなー。

S原:個人的ベストは「クリスティーン」やな。

Y木:あーあの赤い車が襲ってくるやつ。

S原:あのB級感がたまらないねん。この前、再見したら意外とちゃんと作ってて驚いた(笑)あと、いまでも観たくて観れていないのが「フォッグ」。霧が襲ってくるねんで。おもしろそうやろ?「フォッグ」は評価が分かれるから、余計に気になるわー。

Y木:また、おまえの好きなワゴンコーナーで見つけたら買えよ(笑)というか、カーペンターの映画って、どれもB級感があるよな。作風なのか予算がないのか、本人が好きなのか…

S原:この「光る眼」は観たことある?

Y木:この映画自体を知らんかった。こんな映画を撮ってたんやな。

S原:これ、リメイクやねん。元のオリジナルは白黒でなかなか雰囲気がよかったで。単純なストーリーやから、不気味な雰囲気を味わう映画やと思う。たまに、そういう雰囲気を味わう映画って観たくなるんよな。

Y木:この映画の雰囲気は、どうやった?

S原:うーん、あんまり不気味じゃなかったなあ…オリジナルよりも製作費はかけてるやろうから、期待したんやけどなー…そうそう、「ボディスナッチャーズ」のリメイク版(1993)を観たときみたいな感じかな。

Y木:あー、そんな映画もあったなー。

S原:この映画は、一斉に田舎の女性が失神 → 同時妊娠 → 産んだ子供がなんか変 → 実は異星人(侵略者?)だった! という単純な話やねん。子供たちが大きくなるにつれ、どうも人の心を読むらしいと分かって不気味さが増す…はずなんやけど、なんとなく怖くなりそうで、怖くないねんな。パンチがないというか、炭酸が弱すぎるコーラというか。その子供たちは、ヘアスタイルがマッシュルームカットやねん。ビートルズの子供時代みたいな。

Y木:ビートルズの子供時代は、マッシュルームカットちゃうやろ。

S原:この映画に限らず、都会じゃなくて田舎を侵略するって、結構面白い題材やと思うんやけど、惜しいなー。あとお決まりの演出やけど、子どもの眼の色がピキーンって変わる。ここは気味が悪い。だから子役たちは頑張っているねん。でも、なんというか「子供なんやけど子供らしくない」とか「妙に違和感を感じる」とか、大人が段々と気付いていく場面が丁寧に演出されていれば、かなり後味も変わると思うんやけど。結構アッサリしているわりに、一部の大人が異常に怖がったりして、いまいち噛み合ってないねんな。

Y木:なるほどな。

S原:実は、最初のオリジナル作品は、子供たちの不気味さは「共産主義」に対する不気味さと通じてたのよ。

Y木:へーそうなんや。

S原:「共産主義者たちは不気味だ」「無表情で何を考えているかわからん」「しかもどんどん浸食してくる」という恐怖を思わせる演出やねん。

Y木:うわー時代を感じるなあ…

S原:そういう時代背景の違いもあるかもしれん。この映画の製作は1995年やから、もう共産主義を恐れてるっていう人は、ほとんどおらんはず。その(共産主義の不気味さの)要素を取り除いたら、単純なSFホラーになるのも仕方がないんかもな。

Y木:でも、おまえは単純なSFホラーって好きやん。

S原:うん。だからいつも期待してワゴンセールでゲットしちゃうのさ。

Y木:学ばんヤツやなー。

S原:サンキュー。はじめにこの映画をあまり褒めなかったけど、なかなか面白いシーンもあるねんで。大人たちが「あの子供たちを殺せ!」と集まって、松明をもっていくのは、ちょっと魔女狩りみたいやし。ま、すぐに子供たちに負けてたけど(笑)子供たちは、他人の心を読めることと、超能力みたいに他人の体の自由を奪うことも出来るねん。だから、銃で子供を殺そうとするオジサンが、自分自身を撃ってしまったりする。

Y木:そのときに、眼が光るねんな。

S原:そうそう。眼を合わせるとあかんねん。他人の心が読めるから、大人たちはどうしたらいいか?そこで主人公が思いついたのは、心に「壁」を作るという作戦。

Y木:壁?

S原:ほんまに「壁」を心に想像するねん。レンガの壁。あとは海が荒れている場面とか。その作戦で、子供に本心を読まれないようにする。じつは、主人公は自爆覚悟で、(子供たちのいる場所に)爆弾を仕掛けていて、それに気付かれないようにするためやねん。

Y木:壁を思い受かべれば、心を読まれないってことか。観てないからなんとも言えんけど、うーん…

S原:だから、子供たちは「壁」を壊そうとする。このやり取りがクライマックス。子供たちのパワーが強くて、レンガの壁がどんどん崩れていく! → 子供の眼が光る! → 壁が崩れる! → 眼だけじゃなくて、顔全体も光る! → あぶない! → 間一髪で爆弾がドカーン! …で、子供たちも主人公もみんな死ぬ。

Y木:ほー。

S原:ひとりだけ人間の気持ち(?)が半分理解できるようになった(らしい)子供(パッケージの右側の男の子)だけが、生き残って母親と去っていく。これでおしまい。

Y木:なるほど。まあ話はちゃんと終わってる感じやな。

S原:いや、ちゃんと作ってるで。ただ、「面白かった?」と言われると「いやあ…まあな…」という感想になっちゃうけどな。

Y木:そういうところも、いつものカーペンター映画かもよ(笑)

S原:さあ、みなさん、子供の眼がピカーと光る映画が好きな人、マッシュルームカットの子供がでているだけで満足な人、なによりもジョン・カーペンターならとりあえずなんでもOK!という人は、マストバイですよ!