あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

ちょっと地味だけど、なかなか味のある日本映画たち「ロマンス・ロード」の巻

ロマンス・ロード [DVD]

S原:今回はこちら!途中でロードムービー風になります。

Y木:ロードムービーか。

 

(あらすじ)

同じ男にもてあそばれたタマミとジュノは、二人でパワースポット巡りの旅に出るはめになる。道中で恋愛小説家の市ノ瀬と出会うが、彼の小説のために始めた恋愛ごっこは、奇妙な三角関係へと発展していく…。

 

S原:あなたと知り合った当時(大学に入ってすぐ)、「どんな映画が好き?」と聞いたら「ロードムービーかな」と返事したのを覚えてるわ。

Y木:当時は、たしかに好きやったな。かなり観てたし。

S原:それで、おススメされたのが「パリ、テキサス」(1984)やった。帰りにレンタル店で借りて観たら「おお、なんか大人っぽいなあ」と。ぼくは高校時代にアクションとかSFとかホラーばっかり見てたからな。

Y木:いまでもやろ。

 

パリ、テキサス

 

S原:前置きが長くなったけど、これは、当時のあなたが好きな感じの映画です。変則のロードムービーと言っていいと思う。結論から言うと、この「ロマンス・ロード」は、かなりイケます。

Y木:へえ。

S原:特に大きなことは起こらないんやけどな。主人公の女性2人の心の微妙な揺れを描いています。

Y木:繊細な感じ?

S原:いやそういう感じじゃなくて、とぼけた味わいって言うんかな。演出や演技が上手いというタイプじゃなくて、役者が「登場人物そのまんま」に見える映画ってあるやろ? あの感じやねん。もし演出や計算でこの味を出してるなら、この監督(まつむら・しんご)はものすごいよ。とにかく、主役の2人が良い。最高に良いよ。

Y木:ふーん。観てないからわからんけど。

S原:ほんまに良いねんって! ただし、途中で観るのを止める人もおると思う。

Y木:どっちやねん。

S原:『人を選ぶ映画』と言うのか、そういう感じやねんって。だって、あらすじは超シンプルで、メインの役者はほぼ3人。それがボソボソと会話しているだけやもん。登場人物に興味が持てないと退屈なだけやと思う。

Y木:あーなんとなくわかる。

 


Y木:ストーリーは?

S原:映画が始まると、中村はるな、太田順子が恋人(男)のアパートに行く。この2人が主役ね。その男のアパートで2人が鉢合わせするねん。話をするうちに、同じ男と付き合っていたことが分かる。要するに二股されてたんやな。そこへ、ほかの女性もやってきて、あっさりと男性には他にも恋人がたくさんいることが分かる。二股どころではないねん。

Y木:へえ。

S原:2人はフリーのライターとカメラマンなんやけどな。ひょんなことから、2人でパワースポットの取材に行くことになる。ここが面白い場面の連続やねん。取材やから、パワースポットに来た人にインタビューするのよ。そこは恋愛成就のパワースポットらしくて、「ここのおかげで~♡」「彼と出会って~♡」と嬉しそうに話す女性を、2人が興味なさそうに見る場面とか最高やで。おもわず巻き戻して2回観たわ(笑) その後こっそりと(もう一方に気付かれないように)恋愛運が上がる大樹に必死でお祈りする場面とか、泊まっている旅館の隣の部屋の声を2人が並んで壁に耳を付けて盗み聞きする場面とかも、面白いねん。

Y木:たしかに面白そうやな。そのまんま、のんびりと話が進むだけ?

S原:取材旅行先で小説家と出会う。結構人気のある若い男性作家みたいなんやけど、実は恋愛経験がないことが分かる。なんとなく交流していくうちに、「疑似恋愛」をすることになる。

Y木:疑似恋愛って?

S原:恋愛とか女性の心を理解するために、小説家がお金を払って2人に「恋人役」を頼むのよ。小説家はいまはスランプで悩んでいる。次の小説のためにも2人は協力することにする。やがて……

Y木:わかった。2人ともその小説家のことを好きになるんやろ?

S原:ここからは観てほしい。かなり引っ張った挙句のラストの後味もすごく良いのよなあ。

 


Y木:話を聞いてると、やっぱり主演の2人が良いみたいやな。

S原:中村はるな、太田順子。この2人の魅力に尽きる。久しぶりに「俳優」に酔ったわ。こういう作品を世に残せて役者冥利に尽きるやろうな。

Y木:そこまで褒めるか。

S原:あ、この2人は顔立ちが綺麗とかスタイルが良いとかじゃないねんで。そもそも、ほぼノーメイクやしな(笑) 

Y木:結局、これはラブストーリーなんか?

S原:いやどうやろ。恋にうまくいかない女性2人の話なんやけど、嘆いているとかじゃなくて、淡々と生きている。でもやっぱり「女子」やからどこかで恋心を持っている。このへんが絶妙です。2人の会話の調子がなんともいえん雰囲気やねん。親友のような全くの他人のような微妙な距離感と、それぞれ生きてきた人生(とくに恋愛では辛い経験をして人生)が見え隠れするのよ。ともかくこの2人のセリフ回しとか会話のかみ合わん感じも独特でで観ていると病みつきになります。

Y木:えらいハマったんやなあ。良くない点は?

S原:これ、115分あるねん。もう少し短くても良いかなあ。たぶん、監督もこの2人のやりとりをカットしたくなかったんと推測してるねんけどな。というわけで、みなさん! これは地味ですが興味深い作品です。映画好きの人、映画作りを目指している人、役者志望の人、そして恋に悩んでいるすべての女子たちにおススメです~!

 

『ロマンス・ロード』予告編 SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2013 <長編コンペティション部門> - YouTube