S原:もしもし、シェイクスピア先輩?
シェイクスピア:おお、S原君か。久しぶりだな。
S原:どうも。なかなか連絡せずにすいません。今日はちょっと相談が。
シェイクスピア:なんだね?
S原:ぼく、中古DVDを買うのが趣味なんですけどね。
シェイクスピア:うむ。
S原:買うかどうか迷ってるDVDがあるんですよ。
シェイクスピア:つまり金貨と交換して、そのDVDとやらを自分のものにする、という行為を行うかどうか悩んでいるんだね。
S原:そうです、はい。
シェイクスピア:いいか、よく聞きなさい。
S原:はい。
シェイクスピア:買うべきか、買わざるべきか。それが問題だ!
S原:いや、それは分かってるんですよ。
シェイクスピア:そ、そうか。わかってるのか。では、そのDVDを手に入れることを、君は望んでいるんだね?
S原:はい。
シェイクスピア:今、望んでいるものを手にして、何の得があろうか!
S原:いや、得でしょ。
シェイクスピア:え?
S原:買い物ってそういうもんじゃないですか?
シェイクスピア:そう……そういわれれば、その通りだな。しかしな、買い物は夢、瞬間の出来事、泡のように消えてしまう束の間の喜びでしかない!
S原:じゃあ、買わないほうがいいってことですか?
シェイクスピア:いやまあ、それは君、自分で決めたまえよ。
S原:どっちなんですか?
シェイクスピア:まあそのう……きみ、ところで、いままでDVDを手にして後悔したことは?
S原:ありますよ、そりゃ。ハズレもありますから。
シェイクスピア:成し遂げんとした志をただ一回の敗北によって捨ててはいけない!
S原:敗北じゃないです。ただ単にその映画が面白くなかっただけです。
シェイクスピア:そうか、では、敗北ではないな……
S原:なんというか、今まで結構DVDを買ってきたんですよ。なので、選択眼には自信があるんですけどね。
シェイクスピア:自信かね。ふふふ。ひとつ言っておこう。慢心は人間の最大の敵だ!
S原:慢心じゃなくて、自信です。
シェイクスピア:うん?
S原:別物ですよね?
シェイクスピア:うーむ、そうだな……たしかに別物だな。
S原:さっきから気になってたんですけど、強引に言いたいことを言っていませんか?
シェイクスピア:いや、そういうわけではないのだが……では、あえて聞こう。きみは、そのDVDがとても価値のあるもの、輝くものとして認識しているのか?
S原:価値のあるもの、輝くもの……まあ、そうですねえ。
シェイクスピア:輝くもの、必ずしも金ならず!
S原:金じゃないですよ、DVDですよ。
シェイクスピア:うん、そうだな、金ではないな、うん……では、こうすればどうだ? 今晩一晩は我慢しなさい。
S原:はあ。
シェイクスピア:そうすれば、この次はこらえるのが楽になる。そして、その次はもっと楽になる!
S原:なるほど~。でも、そのあとにまた欲しくなったらどうすればいいんですか?
シェイクスピア:えーと……知らぬ。
S原:えー……
シェイクスピア:そこから先の格言はわしは残しておらぬ。
S原:はあ。でも、この機会に買わないと後悔する気がするんですよ。
シェイクスピア:後悔する! それこそ卑怯で女々しいことだ!
S原:卑怯ではないでしょ、べつに。
シェイクスピア:い、いや、そうなんだが……
S原:それに女々しいって。 絶対、怒られますよ、田島陽子に。
シェイクスピア:いや、わしの頃は男尊女卑の時代で……
S原:もういいですよ。所詮、買うか買わないかの話ですから。こっちで決めますよ。
シェイクスピア:ということは、買うべきか、買わざるべきか。それが問題だな!
S原:それ、さっき聞きました!
シェイクスピア:そ、そうか。さっき言ったかな。うん、ところで、どんなものが欲しいのか?
S原:あーこれなんですけどね。
シェイクスピア:なんだこれは……?
S原:「ロミオ+ジュリエット」です。
シェイクスピア:わたしの本が元ネタではないか。
S原:そうですね。
シェイクスピア:映画化したことなど知らんぞ。
S原:そりゃ、まあ先輩が死んでから映画化したから、連絡出来なかったんじゃないですか。
シェイクスピア:この男たちはなぜ鉄砲をもっているんだ?
S原:それは……
シェイクスピア:わたしの本に鉄砲などでてこんぞ?
S原:いやーそれはまあ現代的解釈というか。
シェイクスピア:……映画化するのに、わしに挨拶もなしか?
S原:そう言われましても。
シェイクスピア:菓子折りの一つももらっておらんぞ。
S原:はあ。
シェイクスピア:ちなみに、わたしは羊羹(ようかん)が好きだ。
S原:そうなんですか、初耳です。
シェイクスピア:もうこの電話を切ってもいいか?
S原:はあ、どうかしました?
シェイクスピア:せめて印税だけでももらわんとな。弁護士に連絡して裁判の準備をはじめなければ。相手が、ディカプリオならたっぷりと損害賠償請求できるじゃろうて。うひひひひひ!
S原:……キャラ、変わってますよ。