あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

麻雀映画 第1局!「むこうぶち 高レート裏麻雀列伝」(2007)「むこうぶち2  鬼の棲む荒野」の巻

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S原:さあ、今回から麻雀特集ですよ。まずはコレ!

Y木:麻雀か。興味ないなあ。

(part1のあらすじ)

むこうぶち”―それは、一匹狼の真のギャンブラーを意味する。バブルと呼ばれた1980年代、高騰しつづける地価と同様、史上最高レートになった麻雀界に、人鬼と呼ばれる強者“傀”(袴田吉彦)がいた。裏麻雀でも桁外れの強さを誇るプロ雀士“安永萬”(高田延彦)でさえ、傀の強さと捨て台詞に翻弄された。「だから、あなたは一位になれないんです。」 流れを見失い、焦りと欲に飲まれた時、博打師たちの人生は「御無礼」の声とともに深く沈んでゆく・・・

(part2のあらすじ)
バブル全盛の1980年代、不動産販売会社社員、江崎(加勢大周)は地価の高騰を利用して身を立てようと野心を燃やしていた。麻雀好きの顧客に接待麻雀で機嫌を取るかたわら、マンション麻雀では冷静に勝ち続ける江崎だったが、ある時ついに傀と出会ってしまう。安永(高田延彦)も腕を認める江崎は初戦を捨てて傀の癖を見破った・・・

 

Y木:おまえ、麻雀せえへんやん。

S原:まあな。昔少し教えてもらったけど、全然勝てなくてバカバカしくなって止めた。だって、その金でCDとかDVD(当時はLDやVHS)を買ったほうがええやん?

Y木:それがすべての基準か。なんて器の小さい男や。

S原:まあ、昔恋人に「今度の誕生日、何か欲しいものある?」って言われて「中古のレーザーディスク」って答えたら、能面みたいな顔になってたもんな(苦笑)まあそれはええとして、麻雀の点数とかは全然わからんけど、簡単な役(牌のそろえかた)は分かる。まあドンジャラみたいなもんやろ。

Y木:さすがに、あれとはちゃうやろ。そう言えば、むかし「麻雀放浪記」(1984)は観たなあ。あんな感じの映画?

S原:かなり違います。「麻雀放浪記」は時代設定も古いし、白黒の画質とか鹿賀丈史の頭ゴンとかユニークで面白かったやろ。人間模様もあったやん。もちろん、この映画でも人間ドラマはあるんやけど、もっと漫画チックというか麻雀のゲームの面白さをみせるという感じかな。

Y木:なるほどな。で、面白かったの?

S原:結構楽しめた。こういうDVDって初めてやったんやけどな。すごく単純でな。読み切りマンガをそのまま映像化した感じ。実際、原作は同名漫画らしい。

Y木:へえ。そういえば、昔麻雀マンガって流行ったよな。

S原:「哭きの竜」とかな。個人的には「はっぽうやぶれ」(かわぐちかいじ)という作品が好きやねんけどな。かわぐちかいじは人間ドラマが上手いやん。これ、映像化したら面白くなると思うんやけどな。

Y木:へえ。かわぐちかいじって、麻雀マンガまで描いてたんやな。

S原:で、この映画に話を戻すと、話は超単純やねん。袴田吉彦が演じる傀(カイ)が麻雀で勝ちまくるだけという(笑)

Y木:漫画って感じやな。

S原:うん。でも袴田吉彦は良かったで。ちょっと陰のある感じのハンサムやねん。リアルな演技というよりも、あくまで漫画のキャラって感じで、良い役者やと思ったな。この作品はシリーズ化されてて、なんとpart16まで作られてます。なので、今回は主人公がどんなキャラかを見せるだけで十分なんやろうな。あがるときに「御無礼!」って言ったり、負けた相手に「首が落ちましたね…」と言ったり。

Y木:あー、そういう面白さやな。というか負けるときに、相手にそんなこと言われたら逆ギレしそうやけどな。

S原:実際の麻雀では、そういうことを言うのはマナー違反らしい。確かにどの世界でもマナーはあるやん。中古DVDショップでも、「他の店では、このDVDは900円やったのに。なぜ1500円なんだ。ここは値付けが分かっていない!」って、店長にキレてる客っているやん?「ゼイリブなんか、せいぜい300円までやろ!」とか。

Y木:そんなヤツ、おらんやろ。というか、おまえ「ゼイリブ」が好きやなー(苦笑)

S原:まあ、そういうマナーは守らないとな。あと、この主人公は、麻雀に勝って何百万円の札束を紙袋に無造作に入れて帰るんやけどな。さすがに危ないと思うけどな。でもなかなか面白かった。高田延彦の下手な演技も観ているうちに、「そういう人」にみえるから、大丈夫っすよ、みなさん!

Y木:誰に言ってるねん。第一作は、まあ単純に自己紹介やな。で、第2作は?

S原:これも面白かったで。今度は強敵でな。加勢大周が演じる江崎というキャラクターが登場するねんけど、主人公と江崎の戦いがメインやな。

Y木:ほう。

S原:加勢大周は、接待麻雀でわざと相手に勝たすサラリーマンなんやけど、実は麻雀の腕は相当なものでな。とくに相手の「癖」を見抜く能力がある。その加勢大周袴田吉彦と真剣勝負します。要するに、ジャンプみたいなもんやな。強い2人が戦います。主人公が勝ちます。敵役が「まだ負けてねえぜ!」って言います。まだ戦いは続く……おしまい。

Y木:それ、ジャンプの打ち切りのパターンやがな。

S原:あー最後は、空に向かって階段を登ったりな。「オレはようやく のぼりはじめたばかりだからな・・・」で、大きく『未完』ってでたりな。

Y木:……え?

S原:ちょっとちょっと。

Y木:なんやねん。

S原:それは車田正美の「男坂」やろ!ってつっこまなあかんやろ!

Y木:知るか!当時から車田正美なんか大嫌いやったわ!どうでもええ話をせずに、この映画の話をしろよ。

S原:加勢大周は意外に良い。とくにわざと負ける(相手の機嫌をとる)場面は面白い。高田延彦は相変わらずの「そういう人」やな。なんども言うけど、こういう作品はこれで良いと思う。それよりもちょっと悩んでることがあるのよなあ……

Y木:なんやねん。

S原:これpart16まであるんやけどな。どこまで観るのが正解なんやろ?悩むわー。

Y木:一生、悩み続けたら………?

(閑話休題)ミルクボーイ風に語るルチオ・フルチの巻

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S原&Y木:はいどうも~。ワゴンボーイズで~す。

Y木:ありがとうございます。

S原:あーいま、ドクターペッパー6本セットをいただきました~。

Y木:ありがとうございます。

S原:こんなんいくらあっても困らへんからね。コカ・コーラの社長も喜んでるやろうね。

Y木:言うてますけども。

S原:はい。

Y木:ちょっと分からへんことがあるねんけどな。

S原:なんやねん。

Y木:おれのマミーがな。

S原:御母堂様が。

Y木:映画監督の名前を思い出されへんって言うてんるねん。

S原:映画監督の名前かー。じゃ、一緒に考えるから、分かっていることを言ってや。

Y木:イタリア人監督でな。それなりに映画を撮ってるし、DVDにもなってるねんけどな。でもビスコンティフェリーニみたいに、正当な映画ファンからは、評価されてないらしいねん。ホラーとかが得意なんやけど、ダリオ・アルジェントみたいに、リメイクとかされへんらしいわ。

S原:ほうー…それは……ルチオ・フルチやな。

Y木:ルチオ・フルチか。

S原:ルチオ・フルチは、ひとつもまともな映画を作ったことない監督やからな。とにかく、安っぽいホラーとかSFを作り続けたのよ。簡単に言うと、中学生とその精神年齢の大人(だけ)が喜ぶ映画を作り続けたおじさんやねん。だいたいヴィスコンティと会ったときにも「あんたの映画なんか、しょぼいわ」と、ハッタリかましたら、ヴィスコンティが「こいつ、すげえ奴だ!」って(勝手に)勘違いしたという、不良マンガ「カメレオン」みたいなエピソードの持ち主やからね。

Y木:はーそうなんか。でもよく分からんねんなー。

S原:なにがわからんねん。

Y木:マザーが言うにはな。どことなく作品に品位がある、って言うねん。

S原:じゃあ…ルチオ・フルチとちゃうなあ……

Y木:やっぱりちゃうんかな。

S原:誰もフルチの映画に品位なんか求めてないからな。フルチがみせたいのは、スプラッターとかグロとか女体とかゲロとかチョメチョメとか、そういうもんなのよ。けばけばしい直接的な描写で勝負やねん。雑誌で言うと、ananの「SEXで綺麗になる!特集」ではなくて、エロトピアの「若奥様の夢下着!夏だ!不倫だ!SEXだ!特集」に近いのよ。

Y木:若奥様の夢下着…なんやよくわからんけど。

S原:要するに、小説家で言うと、隆慶一郎峰隆一郎とくらい違うねんって。

Y木:それもよくわからん…

S原:ま、どちにしろ、品位があるならルチオ・フルチとはちゃうってことよ。他に何か言ってなかった?

Y木:マザーが言うにはな。ダリオ・アルジェントとともに「マスター・オブ・ホラー」とか褒められてるねんけどな。それはマニアが喜んでるだけで、普通の人から見たら、どっちもどっちらしいねん。

S原:ルチオ・フルチやないか!

Y木:そうなんか。

S原:フルチもアルジェントもホラーマニアでは、偉人扱いやけどな。普通の映画ファンからしたら、ただ下手なだけの映画なのよ!というか、実際にぼくの学生時代に、彼女寸前までいった女友達が一人暮らしの部屋に遊びにきたときに、ルチオ・フルチレーザーディスクがあってな。「これ、いくらで買ったの?」と聞かれたたら正直に「7000円」って答えたら、そのままフラれたんやで。それくらい罪作りな奴やねんって、フルチは!

Y木:はあ。でも、わからへんねんな。

S原:なにがわからへんねん。

Y木:マザーが言うにはな。どの映画もよく似ていて、ストーリーがよくわからんらしいねん。

S原:ルチオ・フルチやないか!「サンゲリア」(1979)「ザ・ビヨンド」(1981)「墓地裏の家」(1981)「地獄の門」(1980)を続けても観てみ?どれも区別がつかへん上に、ストーリーも何もあったもんじゃないから。たぶん編集が入れ替わっててもほとんどの観客は気が付かへんで。エロトピアで多少ページが入れ替わってても気にせえへんやろ?若奥様の夢下着がみれればええやろ?そういうことなのよ。

Y木:ほう。でもわからへんねんな。

S原:なにがわからへんの?

Y木:マザーが言うにはな。西部劇を撮っても、何故か延々とSMショーを見せられるらしいねん。

S原:ルチオ・フルチやないか!「真昼の用心棒」(1960)とか「荒野の処刑」(1975)のことやがな。普通のマカロニ西部劇かと思って観てたら、主人公が延々とムチでたたかれる場面が延々と挿入されるという珍品のことやろって。

Y木:でも、わからへんねんな。

S原:なんでやねん。それはルチオ・フルチで間違いないよ。

Y木:マザーが言うにはな。

S原:うん。

Y木:ルチオ・フルチとは違うっていうねん。

S原:じゃあ、ルチオ・フルチと違うやないか!いままで、昔のエロ本まで引き合いにだして懸命に説明したこっちの姿をみてどう思ってたんや?

Y木:で、マザーが言うにはな。

S原:ほう。

Y木:宮崎駿ちゃうかって。

S原:絶対ちゃうやろ!

S原&Y木:どうもありがとうございました~!

(閑話休題)ミルクボーイ風に語る「メガ・フォース」(1982)の巻

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S原&Y木:はいどうも~。ワゴンボーイズです。ありがとうございます。

S原:あーいま、合体巨艦ヤマトのプラモデルをもらいました~。

Y木:ありがとうございます。

S原:こんなんいくらあっても困らへんからね。合体できるし。

Y木:言うてもますけども。

S原:ほう。

Y木:おれのマミーがな。

S原:御母堂が?

Y木:ある映画の名前を思い出されへんって言うてんるねん。

S原:映画の名前かー。じゃ、一緒に考えるから、分かっていることを言ってや。

Y木:アメリカのアクション映画でな。なぜかゴールデンハーベスト社の香港資本で製作されてるねん。

S原:ほう。

Y木:で、パッケージに描かれてるメカがやたらと巨大やねんけど、実際に観たら小さいらしいいねん。

S原:ほうー。それは……「メガ・フォース」やな。

Y木:「メガ・フォース」?

S原:その特徴は、完全に「メガ・フォース」やな。たしかにパッケージでは、ちょっとした山みたいなメカ(タックコム)が、描かれてるねんけどな。まあ実際は、日和山より小さいのはもちろん、中古のハイエースよりも小さい代物なのよ。これは「メガ・フォース」で間違いないわ。

Y木:いや、おれもそう思ったんやけどな。

S原:ほう。

Y木:マザーが言うにはな、「とにかく主人公たちチームのユニフォームがかっこいい」って。

S原:……じゃあ「メガ・フォース」じゃないか……

Y木:うん。

S原:「メガ・フォース」のユニフォームは、ピタピタのレオタードやからね。しかも、攻撃にはバリバリよわい感じの布製やから。ジャブローに潜入しても、カツ・レツ・キッカの攻撃にも耐えられへんで。そもそもレオタードで戦うスタイルといえば、キャッツアイ、メガフォース、ジェニファー・ビールスフラッシュダンス)が三羽烏ってことになってるからな。

Y木:いやフラッシュダンスは戦ってないような。

S原:いや、あれはダンスで戦っているからギリギリセーフなのよ。

Y木:セーフか。はー、でもよくわからんねんな。

S原:なにがわからへんのよ?「メガ・フォース」で決まりやって。

Y木:マザーが言うにはな。「最後に、時間制限であって画面の右上にデジタル時計がでてるねんけど、いつのまにか無かったことになってる」って。

S原:メガ・フォースやないか!

Y木:あ、そう。

S原:それはメガ・フォースの特徴と完全一致してるわ。最後の「赤い軍団」、またの名を「グエラ戦車隊」、そのまたの名を「M48戦車軍団」と大暴れするときに、なぜかデジタル時計のカウンターがでるのよ。

Y木:デジタル時計?

S原:いや、もう昔すぎて記憶が定かでないんやけどな。間違ってたら謝るしかない。

Y木:あのー、持っているDVDを観返したら?

S原:もうDVD置いてる場所もゴミ庫みたいになって見つからないの!

Y木:あーそう。

S原:記憶がたしかなら、そういうカウントダウンの演出やったけど、いつのまにかどうでもよくなってるっていう。そんな感じやったと思う。

Y木:はーそうなんか。

S原:いやもう、「メガ・フォース」で間違いないよ。

Y木:でもわからへんねんな。

S原:なにが?

Y木:マザーが言うにはな。「バトルトラック」で出てきた主人公と、「メガ・フォース」で出てきた脇役が一致するかどうか悩んでるって。

S原:うーん。それは悩むやろうなあ……

Y木:あの、肯定か否定かどっちかにしてくれる?ミルクボーイ風に漫才にならんから。

S原:いや、漫才のスタイルはともかくとして、「メガ・フォース」と「バトルトラック」をどう位置付けるかか、映画ファンにとって永遠のテーマなのよー。

Y木:あーそう。

S原:他に何か言ってなかった?

Y木:あーそういえば、最後のバイクで空を飛ぶシーンが、最高にしびれるって。

S原:じゃあ「メガ・フォース」とちゃうやろ!最後に仲間から置いてけぼりにされた主人公(エース)が、バイクについているボタンを押したらビューンって飛んで、飛行機に追いつくねん。それは『世界三大しょぼい場面』で認定された迷場面やねんで。しかも、飛行機にたどり着く前に、なぜかサーカスみたいに一回転する意味不明の演出まであるんやで。

Y木:はあ、一回転。

S原:そうや。それは「メガ・フォース」ではないって。

Y木:いや、わからへんねんな。

S原:なにがわからへんのよ。

Y木:マザーが言うにはな。最初のテロップで「自由主義諸国の首脳たちは存在を否定しているが、メガフォースの存在は明らかとなった」とでるらしいねん。

S原:「メガ・フォース」やないか!といいうか、おもいきり「メガ・フォース」と言ってるがな。はじめに言えよ!

Y木:いやそれがな。

S原:うん。

Y木:マザーが言うには「メガ・フォース」ではないって。

S原:じゃあ「メガ・フォース」ちゃうやろ!いままで、嬉しそうに「バトルトラック」の説明までしたのをどういう気持ちで聞いてたんや?「メガフォース」のプラモデルが高価すぎて(9800円)手が出なかった僕の身にもなれって!

Y木:で、マザーが言うにはな。

S原:ほう。

Y木:「キャノンボール3 新しき挑戦者たち」(1989)ちゃうかって。

S原:絶対ちゃうやろ!

S原&Y木:どうもありがとうございました~!

(閑話休題)ミルクボーイ風に語るジョン・カーペンターの巻

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S原&Y木:はいどうも~。ワゴンボーイズです。ありがとうございます。

S原:あーいま、ピンクパンサーのくねくね人形をいただきました~。

Y木:ありがとうございます。

S原:こんなんいくらあっても困らへんからね。クネクネしてオフィス机に引っ掛けて、上司に睨まれたりしますからね。

Y木:言うてますけども。

S原:はい。

Y木:ちょっと分からへんことがあるねんけどな。

S原:ほう。分からないこと?

Y木:おれのマミーがな。

S原:御母堂様が。

Y木:映画監督の名前を思い出されへんって言うてんるねん。

S原:映画監督の名前かー。じゃ、一緒に考えるから、分かっていることを言ってや。

Y木:アメリカ人監督でな。結構、長い間たくさん映画を撮ってるらしいねん。

S原:ほう。

Y木:それなりに有名やしDVDも結構でてるのにな。でもスピルバーグイーストウッドみたいにアカデミー賞とかにも縁がなくて、いつまでも小粒扱いやねん。

S原:ほうー…それは……ジョン・カーペンターやな。

Y木:ジョン・カーペンターか。

S原:そうそう。ジョン・カーペンターは、ファンも多いけど、どちらかと言うとマニア受けしてる監督やねん。試しに、周りの友達に「ジョン・カーペンター DVDコレクターズBOX」を持ってるかどうか聞いてみ?誰も持ってないから。

Y木:はー、でもよくわからんねんな。

S原:なにがわからへんの?

Y木:マザーが言うにはな、「サム・ライミとかブライアン・デ・パルマと同じようなオタクやったのに、いつのまにか天と地ほど引き離されてた」って。

S原:ジョン・カーペンターやないか!サム・ライミは「ダークマン」(1990)とか撮ってたのに、いつのまにか「スパイダーマン」(2002)で出世したし、デ・パルマは「悪魔のシスター」(1972)とか撮ってたのに、いつのまにか「アンタッチャブル」(1987)とか「カリートの道」(1993)で大御所になってるがな。それにひきかえ、カーペンターをみてみ?同じ時期でも「透明人間」(1992)とか「光る眼」(1995)とか、もはやブルーレイディスクが発売されても、7枚くらいしか売れへん映画ばっかりやないか。

Y木:7枚…はあー、でもわからへんねんな。

S原:なにがやねん。その特徴はカーペンターやって。

Y木:マザーが言うにはな。映画にどことなく品位がある、って言うねん。

S原:じゃあ……カーペンターとちゃうなあ……

Y木:やろ?

S原:カーペンターの映画に、誰も品なんか求めてないからな。だいたい100均のグラサンかけたら、人間の振りした宇宙人の姿がみえる映画を喜んで撮ってる奴に品位とか求めてもしゃーないからな。それは、確かにカーペンターとちゃうわ。他に何か言ってなかった?

Y木:マザーが言うにはな。

S原:うん。

Y木:映画本編に関係なくプロレスごっこを見せられて驚いた、って言うねん。

S原:そりゃ、カーペンターやがな!

Y木:そうなんか。

S原:それはカーペンターで間違いない!SFサスペンス・アクションを期待して観に行った観客を、汚いオッサン2人が路地裏でプロレスごっこをしている場面を延々とみせて、(別の意味で)驚かせた男やからな。「シックスセンス」(1999)よりもビックリやで。そんなビックリ映画を作るんは、この世に一人しかいない。カーペンターで間違いない!

Y木:でも、わからへんねんな。

S原:なにがやねん。もうカーペンターで間違いないって。

Y木:マザーが言うにはな。自分自身で音楽も作るんやけど、それがすごくセンスがあるって。

S原:じゃあ、カーペンターとちゃうやないか!

Y木:え?

S原:カーペンターは、シンセで自作のBGMを映画につけるねんけど、なんかもうヘロヘロで、ビヨンビヨンに伸びたパンツのゴムひもみたいな音楽やねん。だから、それはカーペンターではない!あれをサントラで売り出す根性もすごいけど、買う奴もすごい。まあ7枚しか売れんかったらしいけどな。

Y木:7枚…で、マザーが言うにはな。

S原:ほう。

Y木:ジョン・カーペンターじゃないって言うねん。

S原:じゃあ、カーペンターとちゃうがな!おれが延々と嬉しそうに「ゼイリブ」(1988)についてウンチクを披露していたとき、どう思ってたんや?ジョン・カーペンターじゃないって言うんなら、カーペンターじゃない!そりゃそうやろ。

Y木:で、マザーが言うにはな。

S原:ほう。

Y木:岩井俊二とちゃうか?って。

S原:絶対ちゃうやろ。

S原&Y木:どうもありがとうございました~。

「スーパーノヴァ」(2000)の巻

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S原:今回は、タイトルをみただけで「しょぼいなあ…」と思わず言ってしまうようなこの映画ですよ!

Y木:しょぼいなあ…

(あらすじ)

宇宙を飛行する緊急救助船が銀河の彼方から発信されたSOSをキャッチした。救助に赴いた一行だが、発信源は生命の存在しないはずの廃棄惑星と判明する。そこで収容された青年カールは密かに謎の"9次元エネルギー"を船内に持ち込んでいた。それは、人類の想像を超える宇宙の恐怖の幕開けだった――!

 

S原:これ、実は訳あり映画なんだとか。

Y木:訳あり?

S原:SFマニアの間では有名らしい。アマゾンによると、「ハリウッドの重鎮フランシス・F・コッポラやウォルター・ヒルらが製作に加わるも、完成を断念せざるを得なかった究極の問題作」らしい。

Y木:それは、ダメ映画のフラグがたってるなあ(笑)

S原:「監督“トーマス・リー”は、監督がもはや特定できないがための偽名クレジットである」とのこと。

Y木:アラン・スミシー方式やな。やっぱりダメ映画やん。こういうゴタゴタがあって、面白かったためしがないからなあ。で、どうやったの?

S原:変な映画やった……

Y木:まあ、そうなるわな。

S原:凝ってるとも言えるんやけどな。まずVFXというのか特撮は結構よかった。なんというかSF的な設定と演出が嚙み合っていないというか。たぶん製作者は苦労して、つじつまを合わせるだけで精一杯やったんとちゃうかな。

Y木:一応、つじつまは合ってるんや。

S原:微妙やけどな(苦笑)。あらすじは上の通り。ある星から謎の救命信号をキャッチする。そこは距離が離れているので、次元ジャンプ(ワープ?)をしないといけない。久しぶりのジャンプで、ある船員(おじいさん)の具合がおかしくなるけど、顔からびよーんと何かが出ている。なんとか助けようとする間に、宇宙船はコントロールを失い小惑星にぶつかる可能性があるとコンピューターが警告する。おじいさんも助けないといけないし、衝突も避けないといけない。でも、2つの危機ともいつのまにか解決している。まずそこが良く分からない。

Y木:たしかに、よくわからんな。

S原:そのあと、まるで危機がなかったかのように、チェスしたり、梨のブランデーの説明があったり普通に生活する場面が続く。

Y木:梨のブランデー……要る?

S原:で、さっきのトラブルで宇宙船がやばいことになっているとコンピューターに言われる。『トラブルで燃料を失った。あらためて充電するけど、そのあいだにどこかの惑星に衝突する可能性がある。充電完了と軌道変更のタイミングはギリギリで、11分間しか余裕がないのです』という説明がある。簡単に言うとかなりヤバイ状況で、失敗したら全員死ぬらしい。「おいおいちょっと待てよ」とキムタクみたいに船員たちが突っ込んでいるあいだに、小型の宇宙船がやってきます。最初にキャッチした遭難信号を発した船だと思って、回収をします。ところが、まったく関係のない男でした。訳を知っているらしい女性乗組員が、「じつは……」という感じで意味深に説明しますが、これまたよく分からない。このあたりから観ている人は置いてけぼりになります。

Y木:で、どうなるの?

S原:救出された男はしばらく眠っています。でも、すぐに目が覚めて全裸でウロウロして、さっそく女性乗組員に自分のチョメチョメをみせつけます。「わお!」と驚く女性乗組員。

Y木:ラブコメか。

S原:船長は、救出された男に改めて説明を求めます。「自分は置き去りにされた」と言いますが、船長はなにか隠しているのでは?と疑います。そのあいだに、救出された男は、他の女性乗組員に「眼がキレイだね」とか声をかけて、自分のチョメチョメをみせようとします(実際はみせない)。とにかく、この男は女好きでな。隙あらばチョメチョメのムードにもっていこうとします。「おれのことどう思う?」とか「おれのチョメチョメをみたいんだろ?」とか「ムフ♡」とか。

Y木:あだち充か。

S原:さて、ある技術者が、脱出してきた男が乗っていた小型宇宙船を調べると、なにかピカピカした物体をみつけます。そうです!これが、あの「9次元エネルギー」ですよ、あなた!

Y木:9次元エネルギーか。それは、結局なんやねん?

S原:わかりません。

Y木:おいおい。

S原:「これを持って帰れば、大金持ちだぜ!」とか「宇宙に捨てたほうがいいぞ!」とか「宇宙人の大人の玩具じゃないのか?」とか、中学生みたいな会話が続きます。やがて、このピカピカを触ったら、すごいことになるという話になります。

Y木:なんで?

S原:わかりません。

Y木:だから説明しろって。

S原:ほんまにわからへんねんって!で、9次元エネルギーは、体が若返るらしいということが分かる

Y木:若返るって?

S原:腕立て伏せが出来るようになるねん。

Y木:うそつけ。

S原:ほんまやねんって。腕立て伏せをして「すごい!」と感心する場面があるねんって。あと、手からビームがでてたわ。

Y木:ビーム……

S原:もう面倒やから省略します。結局、「9次元エネルギー」が「全宇宙が消滅する」くらいのパワーを持っている(らしい)ねん。いろいろ説明してくれるけど、全然わからんかった。要するに「すごい」ってことやな。

Y木:一応、大人なんやから中学生みたいな表現やめろ。

S原:すごいとしかいいようがないねんって。だって宇宙を消して再創造するくらいの物体やで?でも、映画を観ていると全然すごいようにみえません。

Y木:ふーん。

S原:どういえばええんやろ。とにかく登場人物がどういう人間なのか、なにを目的に行動しているのかが、ぼんやりと霞がかかったようにわかりにくい。というか誰が主役なのか、最後まで観ても分からんかった。一応、船長が主人公やと思うけど……そのくせ、無駄なヌードシーンがあるという(苦笑)やたらと、チョメチョメが好きなカップルもでてくるしな。宇宙船のコンピューターに「あの2人はずっとチョメチョメをしていますねえ」と告げ口されるくらいやから。

Y木:よくわからん。

S原:別にお互いに愛し合う設定はええけど、わざわざ描写する必要もないやろ?べつに観ているこっちも「うわ!ヌードや~!」って興奮するわけでもないし。「おやび~ん!」とか。

Y木:それは「やる気まんまん」やろ。で、ラストは?

S原:宇宙船のコンピューターと人間が禅問答をしたり、9次元エネルギーでパワーアップした男がうろうろしてセクハラしたりしているうちに、喧嘩がはじまります。宇宙の滅亡をかけた殴り合いがはじまります。気分は、「私立極道高校」ですよ!「表にでろい!」

Y木:宮下あきらか。というか宇宙やから表に出られへんがな。

S原:まあ、ドタバタしてるうちに、ピカーと光って宇宙はセーフ!船長たちも脱出してセーフ!思わず口ずさんでしまうわ。ドタバタしている変な映画さ~♪

Y木:RCサクセションか。というか、今回は例えが80年代やな。

S原:これ、特典映像で未公開場面が13もあるねん。

Y木:やっぱり製作過程で迷走したんやろうな。

S原:そういうことやろうな。別のエンディングも収録されていて、こっちは宇宙も地球も救えないことを示唆して終わる。こっちを採用してると、かなり印象は変わったはず。もしかすると、「カルトSF」になったかも……いやいや、一緒ですなあ、旦那。

Y木:自分で突っ込むなよ。

S原:というわけで、みなさん。よほどのSFマニア以外にはおススメ出来ません。ちょっと変わった映画好きなら楽しめるかも、ですが、うーんやっぱり変な映画です。どうしても観たい!という人のみレンタル、プリーズ!

Y木:…というかレンタル店にも置いてないんちゃう、こんな映画。

スポーツ映画祭り!第17試合「タナトス」(2011)の巻

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S原:スポーツ映画特集は、今回で最後!

Y木:ボクシングか。

(あらすじ)

WBA世界ミドル級チャンピオンの竹原慎二が原案の人気ボクシングコミック「タナトス むしけらの拳」を実写映画化。孤独な不良少年のリクは、ある日、将来を有望視されながらも脳に障害があることから日本ではプロボクサーになれない棚夫木と出会う。棚夫木にパンチ一発で倒されてしまったリクは、棚夫木が所属する「西田ボクシングジム」の門を叩き、ボクサーとしての才能を開花させていく。一方、棚夫木は再起をかけてメキシコに渡りプロデビューを目指すが……。

 

S原:これは、面白い!今回紹介したスポーツ映画のなかで一番好き!

Y木:へえ。

S原:実は、映画の出来具合としては、そんなに良くない。実際、SNSではかなり厳しいレビューが大半やねん。でも全く期待せずに観たからかもしれんけど、すぐに引き込まれてあっという間に最後まで観てしまったわ。

Y木:具体的には、どういう点が気に入ったの?

S原:やっぱり俳優やな。主役は徳山秀典。僕にとっては、はじめましての俳優やったけど、もう圧倒された。ナイフみたいにギラギラして危ない感じと、ガラス細工みたいに脆い感じが両方あって、この役にピッタリ。もしかして根っからヤバい奴かと思ってたけど、メイキングでは普通に笑ってて安心したわ(笑)

Y木:ほんまにヤバい奴に、映画の主演をさせへんやろ。

S原:いや、「そのまま」に見えるねんって!これが監督(城定秀夫)の演出やったら、脱帽するわ。この城定監督のフィルモグラフィーをみると、エロ系も含めて変化球の作品が多いけど、こういう人にちゃんとした大きな予算の映画を任せてみたらええのに。絶対に「化ける」と思う。

Y木:えらい褒めるなあ。

S原:ほんまに、この映画での俳優たちは輝いてる。ほかの俳優もすごいねん。ボクシングのきっかけとなったアマチュア・ボクサー・棚夫木を演じた佐藤祐基の精悍さ、主人公にボクシングの道を歩むべく背中を押す渋川清彦の飄々とした存在感、この2人は本当に出色の出来やと思う。男くさい中で清涼感のある平愛梨は映画のペースチェンジになってるし、大嶋宏成(本当のボクサーらしい)のトレーナー役も「多少のことでは動じないような心構え」が見え隠れしてすごい。最後に戦うことになる大口兼悟の凛とした立ち姿、不良役の斉藤一平のヤバい感じの眼つき、他にもたくさん出てくるキャストたちに魅了されたわ。これは俳優たちを観る映画やと思うなあ。

Y木:俳優がええのはわかった。ボクシングのシーンはどうなん?

S原:すごい迫力やった。俳優たちが真剣にボクシングのトレーニングを積んでいるのがよくわかります。同じボクシング映画で評価の高い「百円の恋」(2014)の安藤サクラもすごいと思ったけど、徳山秀典はそれ以上。本物のボクサーもたくさんでてるけど、まったく違和感ないよ。リング上での撮り方も上手い。凝ったことをせずに、正面からボクシングを描こうとしているのも好きやな。

Y木:へえ。ストーリーは?

S原:上のあらすじの通りで、結構単純やねん。でも、なんというか変なリアリティがあってゴツゴツしてるのよ。「居心地が悪い」のが、魅力になっていると言えばええんかな。

Y木:主人公が成長する話なんやろ?ボクシングに出会って、大人になるっていう。

S原:そうそう。ちゃんと起承転結になってるけどな。でもストーリー展開でみせるんじゃなくて、キャストの力でグイグイ話を引っ張っていくタイプの映画やねん。ほかに、佐藤祐基が脳の病気でボクシングを諦めかけるけどメキシコ行きを考えるエピソードとか、渋川清彦がボクサー引退後、ラーメン屋を始めるエピソードとか、不良の抗争とかがが主人公に絡んでいく。これも、うまく伏線を回収するという作りじゃなくて、主人公が(本人の意図とは関係なく)それぞれの糸を手繰っていく……まるで、それが運命みたいな感じでな。

Y木:そこまで上手く描写してれば、ええ映画やろ。

S原:ええ映画やで。でも、はじめに言ったけど「ウェルメイドな映画」ではない。そのへんに理解のある人なら、絶対に楽しめるはず。これはなあ、あんまり知られてない映画やねん。でももっとたくさんの人の届いてほしいわ。「面白くない」という意見があるのも承知の上で、それでも観る価値のある作品やと思うねんけどなあ。

Y木:まあ、なんとなく言いたいことはわかった。今回は、おススメなんやな。

S原:はい。おススメです。さあ、みなさん。ボクシングと聞くだけで敬遠する人もいると思いますが、まずはこの独特の世界に飛び込んでください。ここまで「役者」に酔う映画もなかなかありませんよ。テレビ放映は難しいかもしれませんが、配信でもレンタルでもいいので、少しでも多く人に観る機会が多くなってほしい。観れば好きになる人が絶対にいるはずなんですよ。というわけで、スポーツ映画特集の最後に、良い映画に出会えました!

スポーツ映画祭り!第16試合「棒たおし!」(2003)の巻

棒たおし! [DVD]

S原:今回は棒たおし!

Y木:棒たおしの映画かあ。

(あらすじ)

運動会などでも危険視されて次々と廃止されている競技“棒たおし”。この競技が大好きな普通科の高校生・勇は、棒を登るのが得意な次雄を棒たおしに誘う。実は勇はなんとかこの競技で工業科の連中にひと泡吹かせたかったのだ。最初は興味を持たなかった次雄だが、両親への不満や幼なじみへの初恋のモヤモヤ感を次第にこの競技にぶつけていく…。

 

S原:うーん、これはちょっとなあ。

Y木:面白くないんやな。

S原:そうやな。なんというか、こういう映画を観る人が期待するポイントをすべて外してるねん。それが狙いなのか、単に下手なのかはちょっとわからんけど。

Y木:期待するポイントって、男優とか?

S原:まずは、それやな。男優たちはアイドルでLeadとFLAMEというグループのメンバーです。大半はLeadのメンバーみたいやけど、この映画ではとにかくキャラがよくわからない。顔の区別がつきにくいのは、オッサンやから仕方ないとは思うねんけどな。やっぱり、棒たおしという競技に熱くチャレンジする姿をみたいわけやん。それが青春映画やし。

Y木:「変化球」を狙ったんちゃうの?

S原:そうなんかなあ。よくわかりません。舞台は宮崎です。ファーストシーンでは、高校の屋上で寝ころんだ男子生徒、高山次雄がいます。そこへ意味深に紺野という女生徒がやってきて、一緒に寝ころびます。彼女は幼馴染みのようです。彼女は「どうして人間は死ぬと分かっているのに生きるのか?」と聞きます。そして、ランボーの詩集『地獄の季節』を渡して、どこかへ去っていきます。

Y木:うわーいきなり、頭でっかちなオープニングやな。

S原:次の場面では、普通科に通う須藤が、工業科の鴨志田からイジメを受けています。そして学生ズボンを校旗掲揚台のポールに引っ掛けられ、ズボンがないまま授業を受けます。それをみた高山はポールをさっさと登り、ズボンを取ってやります。それを見ていた同級生の久永勇が、「一緒に体育祭の棒たおしに出場し、工業科を倒そうぜ!」と盛り上がります。どうもこの高校では工業科のほうがヒエラルキーが上のようで、普通科はコンプレックスを持ってるみたいやねん。体育祭では、棒たおしがメイン競技で、工業科は9年連続で普通科に勝っています。高山は全然乗ってこず「工業科に勝つなんて無理だろ…」と言います。

Y木:ほう。

S原:このへんはまあ定番の展開です。学校では危険だから(毎年生徒が怪我をしている)という理由で棒たおし競技を体育祭から外すと決定します。そんななか、高山と久永は、ある教師(石垣)が女生徒とラブホテルに入るところを撮影します。彼らは石垣を脅して、棒たおしを強引に復活させます。それはええねんけど、そのあとで2人はケンカするねん。

Y木:なんで?

S原:よくわからん。それも引き気味のカメラで、周りの子供は公園で遊んでいる横で延々と殴りあう。これが長いのよ。桜庭VSホイス戦かよ!

Y木:格闘技は知らん。

S原:で、棒たおしを無事にすることになりましたが、今度はメンバーが集まりません。そこで、高山と久永が「大勢の女子マネージャーがいる」とウソの校内放送をして、強引に男子生徒たちを集めます。

Y木:なるほど。

S原:ところが、じつはマネージャーがいないとウソがばれても、集まった連中はそのまま練習を続けます。

Y木:どういうこと?

S原:わかりません。そして練習中に、久永が「ううう…」と胸を押さえてうずくります。

Y木:まさか……

S原:そのまさか、です。久永は心臓病を持っていました。日本映画の定番、難病ものです。お涙頂戴です。で、今度はオープニングにでてきた女子(紺野)が高山と運動場で話しています。いろいろと小難しい感じの意味深な会話をしたあと、「今度の体育祭で工業科に勝ったら、チューしてあげる」と言います。

Y木:よくわからん展開やな。

S原:青春映画やから、こういう思春期要素はアリなんやけど、撮り方がなあ…

Y木:撮り方?

S原:監督(前田哲)の好みなんやろうけど、斜に構えている。ハツラツとした男子生徒をみせないといけないのに、引き気味のカメラや、遠景が多い。小声でセリフを言うから、若さも元気もない。顔色も悪い。映画としてスタイリッシュでもなく、コメディでもない。感情の爆発もないし(ちょっとだけある)、10代特有のモヤモヤした悩みもない。ただただ田舎の高校生が、ぼそぼそ話しているだけ……

Y木:まあ監督は、自分のやりたい演出があるやろ。それが個性なんやし。

S原:これ、アイドル主演の青春映画やで?もっと、わかりやすく撮らないとあかんやろ。「だから、おまえはどんなキャラクター設定やねん!」「おまえとあいつはどういう関係やねん!」ってイライラする(笑)

Y木:で、どうなるの?

S原:ほかにも家庭が崩壊寸前とか、工業科にバッティングセンターで出会ってボコボコにされるとか、ちいさな場面が続きます。そのあいだに、妹に「お母さんの気持ちをわかってあげて。お母さんだって女なのよ!」という意味不明なセリフもでてきます。工業科にいかに勝つのか作戦も立てるけど、それもよくわかりません……

Y木:なんか、どうしようもな感じやな。

S原:これを観た人がほぼ全員つっこむのは、棒演技・技棒読みやと思う。ぼくは、個人的に棒読みは気にならないほうなんやけど、この映画では、Leadのメンバーだけが棒読みなのよな。ほかの俳優たちは、普通やから余計に沈んでみえてしまう。

Y木:棒たおしの場面がクライマックスやろ?

S原:そうです。でも、そこもなんだかなあ……(ため息)みんなガリガリの上半身を晒して、ケンカをしてるように見えます。ファンが一番観たい場面やろうし、もっと格好よく撮ってほしかった。よくわからんのが、棒たおしが一旦中断したあと、観客が興奮して「棒たおし!」「棒たおし!」「棒たおし!」「棒たおし!」って、みんなで叫ぶねん。

Y木:なんで?

S原:よくわかりません。X-JAPANのライブで、Xジャンプするのと同じちゃう?

Y木:X-JAPANは知らんから、よくわからん。最後は勝っておしまいやろ?

S原:負けます。

Y木:へえ、意外な展開やな。

S原:努力・友情・勝利のジャンプ編集部なら、絶対に許可しない展開やな。

Y木:「勝ったらキスしてあげる」っていうのは、どうなるの?

S原:負けたから接吻してくれません。

Y木:あーそう。でも、そのあと、恋人になるとかあるんやろ?

S原:なりません。女子は主人公たちを置いて東京に行きます。放置プレイです。

Y木:ふーん。ほろ苦い青春ってやつか。あ!そういえば、心臓病の生徒はどうなるの?

S原:治りません。死にます。

Y木:えー……なんか……カタルシスがないな。

S原:あーその表現がぴったり!そうやねん、全然スカッとしないのよなあ。青春映画なのに、ヤングな俳優たちが魅力的でない。工業科の生徒が悪役なのに、どんな悪い奴らなのか分からない。スポーツ映画なのに、競技の面白さが伝わってこない。伏線っぽいのがあるけど回収されない。何度も言うけど、登場人物たちをちゃんと理解できないから、全然感情移入できないのよ。もっと、普通に作ってほしかった。

Y木:いや、おまえは普通の映画やったら、「ベタや」とか「個性がない」とか「どこにでもある映画やん」とか突っ込むやん。後出しじゃんけんやろって。

S原:まあそうかもなあ。でも、この映画はちょっとな……さあ、みなさん。誰を対象にした映画なのかちょっとわかりませんが、LeadとFLAMEのファンならほんの少し楽しめる…かも?申し訳ないですが、失敗作としか言いようがありません。残念!