S原:今回は、タイトルをみただけで「しょぼいなあ…」と思わず言ってしまうようなこの映画ですよ!
Y木:しょぼいなあ…
(あらすじ)
宇宙を飛行する緊急救助船が銀河の彼方から発信されたSOSをキャッチした。救助に赴いた一行だが、発信源は生命の存在しないはずの廃棄惑星と判明する。そこで収容された青年カールは密かに謎の"9次元エネルギー"を船内に持ち込んでいた。それは、人類の想像を超える宇宙の恐怖の幕開けだった――!
S原:これ、実は訳あり映画なんだとか。
Y木:訳あり?
S原:SFマニアの間では有名らしい。アマゾンによると、「ハリウッドの重鎮フランシス・F・コッポラやウォルター・ヒルらが製作に加わるも、完成を断念せざるを得なかった究極の問題作」らしい。
Y木:それは、ダメ映画のフラグがたってるなあ(笑)
S原:「監督“トーマス・リー”は、監督がもはや特定できないがための偽名クレジットである」とのこと。
Y木:アラン・スミシー方式やな。やっぱりダメ映画やん。こういうゴタゴタがあって、面白かったためしがないからなあ。で、どうやったの?
S原:変な映画やった……
Y木:まあ、そうなるわな。
S原:凝ってるとも言えるんやけどな。まずVFXというのか特撮は結構よかった。なんというかSF的な設定と演出が嚙み合っていないというか。たぶん製作者は苦労して、つじつまを合わせるだけで精一杯やったんとちゃうかな。
Y木:一応、つじつまは合ってるんや。
S原:微妙やけどな(苦笑)。あらすじは上の通り。ある星から謎の救命信号をキャッチする。そこは距離が離れているので、次元ジャンプ(ワープ?)をしないといけない。久しぶりのジャンプで、ある船員(おじいさん)の具合がおかしくなるけど、顔からびよーんと何かが出ている。なんとか助けようとする間に、宇宙船はコントロールを失い小惑星にぶつかる可能性があるとコンピューターが警告する。おじいさんも助けないといけないし、衝突も避けないといけない。でも、2つの危機ともいつのまにか解決している。まずそこが良く分からない。
Y木:たしかに、よくわからんな。
S原:そのあと、まるで危機がなかったかのように、チェスしたり、梨のブランデーの説明があったり普通に生活する場面が続く。
Y木:梨のブランデー……要る?
S原:で、さっきのトラブルで宇宙船がやばいことになっているとコンピューターに言われる。『トラブルで燃料を失った。あらためて充電するけど、そのあいだにどこかの惑星に衝突する可能性がある。充電完了と軌道変更のタイミングはギリギリで、11分間しか余裕がないのです』という説明がある。簡単に言うとかなりヤバイ状況で、失敗したら全員死ぬらしい。「おいおいちょっと待てよ」とキムタクみたいに船員たちが突っ込んでいるあいだに、小型の宇宙船がやってきます。最初にキャッチした遭難信号を発した船だと思って、回収をします。ところが、まったく関係のない男でした。訳を知っているらしい女性乗組員が、「じつは……」という感じで意味深に説明しますが、これまたよく分からない。このあたりから観ている人は置いてけぼりになります。
Y木:で、どうなるの?
S原:救出された男はしばらく眠っています。でも、すぐに目が覚めて全裸でウロウロして、さっそく女性乗組員に自分のチョメチョメをみせつけます。「わお!」と驚く女性乗組員。
Y木:ラブコメか。
S原:船長は、救出された男に改めて説明を求めます。「自分は置き去りにされた」と言いますが、船長はなにか隠しているのでは?と疑います。そのあいだに、救出された男は、他の女性乗組員に「眼がキレイだね」とか声をかけて、自分のチョメチョメをみせようとします(実際はみせない)。とにかく、この男は女好きでな。隙あらばチョメチョメのムードにもっていこうとします。「おれのことどう思う?」とか「おれのチョメチョメをみたいんだろ?」とか「ムフ♡」とか。
Y木:あだち充か。
S原:さて、ある技術者が、脱出してきた男が乗っていた小型宇宙船を調べると、なにかピカピカした物体をみつけます。そうです!これが、あの「9次元エネルギー」ですよ、あなた!
Y木:9次元エネルギーか。それは、結局なんやねん?
S原:わかりません。
Y木:おいおい。
S原:「これを持って帰れば、大金持ちだぜ!」とか「宇宙に捨てたほうがいいぞ!」とか「宇宙人の大人の玩具じゃないのか?」とか、中学生みたいな会話が続きます。やがて、このピカピカを触ったら、すごいことになるという話になります。
Y木:なんで?
S原:わかりません。
Y木:だから説明しろって。
S原:ほんまにわからへんねんって!で、9次元エネルギーは、体が若返るらしいということが分かる
Y木:若返るって?
S原:腕立て伏せが出来るようになるねん。
Y木:うそつけ。
S原:ほんまやねんって。腕立て伏せをして「すごい!」と感心する場面があるねんって。あと、手からビームがでてたわ。
Y木:ビーム……
S原:もう面倒やから省略します。結局、「9次元エネルギー」が「全宇宙が消滅する」くらいのパワーを持っている(らしい)ねん。いろいろ説明してくれるけど、全然わからんかった。要するに「すごい」ってことやな。
Y木:一応、大人なんやから中学生みたいな表現やめろ。
S原:すごいとしかいいようがないねんって。だって宇宙を消して再創造するくらいの物体やで?でも、映画を観ていると全然すごいようにみえません。
Y木:ふーん。
S原:どういえばええんやろ。とにかく登場人物がどういう人間なのか、なにを目的に行動しているのかが、ぼんやりと霞がかかったようにわかりにくい。というか誰が主役なのか、最後まで観ても分からんかった。一応、船長が主人公やと思うけど……そのくせ、無駄なヌードシーンがあるという(苦笑)やたらと、チョメチョメが好きなカップルもでてくるしな。宇宙船のコンピューターに「あの2人はずっとチョメチョメをしていますねえ」と告げ口されるくらいやから。
Y木:よくわからん。
S原:別にお互いに愛し合う設定はええけど、わざわざ描写する必要もないやろ?べつに観ているこっちも「うわ!ヌードや~!」って興奮するわけでもないし。「おやび~ん!」とか。
Y木:それは「やる気まんまん」やろ。で、ラストは?
S原:宇宙船のコンピューターと人間が禅問答をしたり、9次元エネルギーでパワーアップした男がうろうろしてセクハラしたりしているうちに、喧嘩がはじまります。宇宙の滅亡をかけた殴り合いがはじまります。気分は、「私立極道高校」ですよ!「表にでろい!」
Y木:宮下あきらか。というか宇宙やから表に出られへんがな。
S原:まあ、ドタバタしてるうちに、ピカーと光って宇宙はセーフ!船長たちも脱出してセーフ!思わず口ずさんでしまうわ。ドタバタしている変な映画さ~♪
Y木:RCサクセションか。というか、今回は例えが80年代やな。
S原:これ、特典映像で未公開場面が13もあるねん。
Y木:やっぱり製作過程で迷走したんやろうな。
S原:そういうことやろうな。別のエンディングも収録されていて、こっちは宇宙も地球も救えないことを示唆して終わる。こっちを採用してると、かなり印象は変わったはず。もしかすると、「カルトSF」になったかも……いやいや、一緒ですなあ、旦那。
Y木:自分で突っ込むなよ。
S原:というわけで、みなさん。よほどのSFマニア以外にはおススメ出来ません。ちょっと変わった映画好きなら楽しめるかも、ですが、うーんやっぱり変な映画です。どうしても観たい!という人のみレンタル、プリーズ!
Y木:…というかレンタル店にも置いてないんちゃう、こんな映画。