Y木:おお、デビット・リンチ3本立てか。
S原:今回、見逃していた3本をまとめて観たんやけどな。ほんまに同じ監督の映画かいな、と突っ込みたくなるくらい振り幅が大きいねん。
Y木:まあリンチやからな。でも、レビューでも「難解」とか「映画として穴がある」と突っ込む人がおるやろ。あれってどうなんやろ。リンチに関しては「ああいう映画」「そういう監督」として捉えるのがええと思うで。
S原:「そういう監督」……(苦笑)確かにそうかもな。あの「DUNE 砂の惑星」(1984)も撮ってるくらいやし。
Y木:あーあれはなあー……(冬の空を見る)
S原:スタッフも気を遣って打ち上げの飲み会でも、あの映画の話題だけはしないらしいで。
Y木:うそつけ。で、今回の3本の映画はどうやった?
S原:そうやな。当時評判が良かった「ワイルド・アット・ハート」は、期待しすぎたかな。破天荒な男女の変形ラブストーリーやけど、そんなに面白いかな?というのが本音やな。ニコラス・ケイジと肌が合わないというのもあるけど…
Y木:昔観たけど、面白かったけどな。ウィレム・デフォーの変な顔しか覚えてないけど。あれは強烈やった。
S原:たしかにあの場面だけ異様やもんな(笑)。昔、結構周りの友達が「すっごい刺激的やで」とか「究極のラブストーリーやわ」とか言っていて、どれどれと思って観たんやけどな。ただ単にオツムの悪い汚い男女がダラダラしているだけにしか見えんかったなー。おっさんになってしまうと、こういうセンスにはついていけないんかもな。もっと自分がヤングの時に観たら印象が変わったかも……いやーやっぱりニコラス・ケイジはあかん。だって、眉毛の形が情けないもん。
Y木:ほっといたれ。「ロスト・ハイウェイ」はどうやった?
S原:これはなあ。難解なサスペンスというかなんというか……まったく分かりませんでした。
Y木:理解不能系というかシュールというか、やっぱり「そういう映画」なんやろ。
S原:ちょっとだけ観る分には面白いねんけど、ずっと見るのは辛い。それこそがまさにリンチの真骨頂なんかもしれんけどな。でも、これ、観た後にネットで詳しくストーリーを読んだら、すっごく面白そうやねん(笑)
Y木:もう一回観たら?
S原:うーん、さすがに躊躇するなー……
Y木:リンチ独特のセンスと映像美を楽しむんとちゃうの?
S原:そうやろうな。で最後は「ストレイト・ストーリー」。老人がトラクターで弟に会いに行くだけのロードムービーです。これがなあ、すっごくええねん。
Y木:おまえも年をとったってことやろ。
S原:たぶんな。ラストもすごくあっさりしていて、かえって余韻が残る。昔の松竹なら感動的なBGMで10分は引っ張るはず(笑)でも、こういう映画が良いと思えるんなら、年を取るのも悪くないと思ったな。
Y木:今回は、おじさん臭いレビューやな。ぶっとんだ系の映画についていなくなったおっさん映画ファンの哀愁を感じるぞ。
S原:はい、その通りです。でも最近のヤングは、あんまりデビット・リンチを知らないらしいわ。
Y木:へえ、そうなんや。
S原:ヤングな映画好きは、ちょっと変わった映画を観たいときはぜひ観てほしい。「ブルーベルベット」(1976)と「イレイザーヘッド」(1986)もかなり変な映画です。ほとんど訳が分からないのに、なんだかスゲエ!って思える稀有な個性ですよ。ぜひお試しあれ~!