あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

皆はこう呼んだ。なんで、こんな映画作ったん…?「秘密のアッコちゃん」(2012)の巻

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S原:今回は赤塚不二夫原作!

Y木:秘密のアッコちゃん!えー、えらい垢抜けた感じになったなあ。

(あらすじ)

鏡の精(香川照之)から魔法のコンパクトをもらい、10歳の小学生から22歳の大学生に変身をとげた加賀美あつ子(綾瀬はるか)。 大好きなメイクやおしゃれを楽しみ浮かれる中、遊園地で出会った化粧品会社に勤める早瀬尚人(岡田将生)にひとめぼれする。その翌日、再会を機に、アイデアを次々と披露するあつ子を気に入った尚人は、自分の会社に彼女をアルバイトとして招き入れることを決める。個性的なメンバーの中で、失敗しつつも楽しみながら毎日を過ごしていたあつ子だったが……。

 

S原:結論から言うと、これはまあまあやねん。わりとちゃんと出来ています。

Y木:ほんまいかいな。

S原:普通に観れます。でもなあ……

Y木:なに?

S原:観た後に、猛烈に空しくなるねん。

Y木:なんで?

S原:ああ、これじゃ、日本の映画は韓国に負けるわって……

Y木:それは、こういう映画を引き合いに出すからやろ。ちゃんとした日本の映画もあるがな。

S原:ちょっと聞きたいんやけどな。そもそも、この映画は誰向けに作ったんやと思う?

Y木:ターゲット層のことか?さあ知らんけど。やっぱり小学生(女子)向けちゃうの?

S原:普通はそう思うやろ?でも、なんか作りがちょっと大人向けやねん。

Y木:ちょいエロってこと?

S原:エロではないかな。一応、いろんな「変身」をするねんけど、フィギュアスケートの衣装やったり、ミニスカートやったり、黒いパンストの足(それも、わざわざ伝線したパンスト…)をローアングルで写したりとか、ちょっとセクシーなところはあります。もちろん健康的なセクシーさなんやけど、よく考えてみてよ。そんなん、小学生女児が喜ぶと思う?娘を持つ立場として言いたいんやけど、こういうのを見せないとあかんのやろか?

Y木:え、おまえ、これを娘と一緒に観たの?

S原:いや観てない。

Y木:なんやねん。

S原:一緒に観ようと誘ったら、「面白くなさそうやから、ええわ」と言われた。

Y木:正直な娘やな。

S原:めっちゃ可愛いんやけどな。

Y木:親バカか。

S原:まあ、なんにせよ「ちょいセクシー」(黒パンストの伝線含む)は要らんかったってことです。

Y木:それで客を呼ぼうとしたんちゃうの?

S原:では反対にお聞きします。「綾瀬はるかの生足がたまんねえええ!」っていう気持ちで、劇場に行くやつが何人いるのですか?それは誰ですか?

Y木:おれに聞くなよ。知らんがな。

S原:恐ろしいのは、この映画で劇場にほんまに客が来ると思っているセンスやな。これは2012年の映画やけど、こういう安易な企画といい、綾瀬はるかのコスプレといい、何十年前から変わってないやろ。

Y木:テレビ的な発想なんやろ。

S原:そう思ってクレジットをみたら日本テレビが製作してたわ。あとは、電通様。電通様なら、こういうセンスも納得できるよな(笑)

Y木:また電通かい(笑)でも、おれに言わせれば、これこそが「日本映画」やけどな。要するにテレビの企画と一緒なんやろ。『綾瀬はるかありきの企画』でしょうよ。

S原:たぶんそうやろうな。たしかに、綾瀬はるかはそれなりに魅力的やし、岡田将生も良い演技をしている。でも、どうしようもなく感じるこの空虚な気持ち……

Y木:おまえの気持ちはええから、あらすじを話して。

S原:これは会社の内紛と言うかゴタゴタを、綾瀬はるかが別人に変身して解決していく、という話やねん。映画の始まりは、お約束通り、主人公(子役)がコンパクトの鏡で変身できるようになる場面です。で、大人になって(もちろんこれが綾瀬はるか)、化粧品に興味を持って化粧をしてもらう。そこへ岡田将生が通りかかって、感想を聞く。小学生やから大人の感想とは違って斬新な感想を言います。岡田は、赤塚化粧品の企画開発部のエリートやねんけどな。そのまま気に入られて、冬休みだけ働くことになります。

Y木:ほう。

S原:でも、会社の上層部がゴタゴタしていて、会社は他の悪徳企業(?)に乗っ取られようとしている。岡田将生のために、綾瀬はるかが奮闘して(変身して)数々のトラブルや障害を解決していく、という話です。

Y木:べつに普通やん。

S原:さっきも言ったけど、こんな話で小学生が喜ぶか?いや「理解」できると思う?株主総会で評決してドキドキ……とか、そんな小学生にとってはどうでもええやん。

Y木:そうやけど。じゃあ、どうすればええの?

S原:そんな会社組織やサラリーマンの話じゃなくてよかったと思う。

Y木:えー小学生の女の子が、大人の世界に興味を持つから面白いんやろ。

S原:だったら、もっと「大人の世界」に戸惑う(ついていけない)場面が要るって。元が小学生なんやったら、居酒屋も言ったことないしお酒も初めてやん。そういう場面を作らなあかんって。もしも綾瀬はるかみたいな美人がいたら、男性は食事に誘うやろ?男性には下心があるやん。でも綾瀬はるかは小学生やから、そういうのが分からない、とかいくらでも面白く作れるやん。

Y木:それもどうやろ。あんまり面白くないけど(苦笑)

S原:いや、まあ例えばね、例えばの話ね。どっちにせよ、小学生が観るのは興味が持てない題材やし、大人が観るのには子供っぽい。綾瀬はるかのコスプレだけで本気でヒットさせるつもりやったんかな。中学生や高校生がデータで観るわけでもないやろうし。

Y木:中途半端と言いたいんやな。

S原:その通り。それにストーリーは起承転結なんやけど、どうにもスカッとしない。というのは、せっかく綾瀬はるかの「変身」が上手く生かされていないのよ。変身 →→ 話がまとまる(トラブルが片付く)という展開が多い。ここは反対に、変身 →→ 逆にメチャクチャになってしまう(岡田将生がピンチになる)という展開も欲しかったな。

Y木:なるほどな。でも、ストーリーがどうこうじゃなくて、おまえの話を聞くと、そもそもこういう企画では映画館に誰も来ないって言いたいんやろ。

S原:うん。だって、ええ年した大人がこれを劇場に観に行くと思う?白髪交じりのおじさんが「秘密のアッコちゃん、大人一枚」ってチケットを買えると思うかい?

Y木:買えるよ。チケット下さい、と言えば。

S原:でも、受付の女性に「え、マジで観るんですか?きもー……」と言われるねんで。

Y木:何も言われへんわ。どんな受付やねん。

S原:はあー(ため息)これ、綾瀬はるかファンとか岡田将生ファンは観に行ったんかなあ。

Y木:映画の出来としては普通なんやろ。それでええやん。

S原:そうなんやけど、これってかなりの製作費をかけてるねんで。たくさんのマンパワーや大金を使って出来たのが「秘密のアッコちゃん」。劇場にはほとんどの人は行かず、いまでは誰に記憶にも残っていないという不憫な映画……いまや、レンタル店の片隅でホコリをかぶっているだけ……あとは地球が破滅するまで、そこで鎮座するのみ……喜ぶのは電通のみ……

Y木:今回は悪意があるなー。

S原:さあ、みなさん。これは普通です。最後まで観れます。でも、鑑賞後にどうしようもなく徒労感が残ります。テレビの2時間スペシャルとどう違うのか?と言われれば、同じです、としか言いようがないこの気持ち……そんな気持ちになるのは、ぼくだけで十分です。みなさんには、こんな気持ちになってほしくない。少なくともこの記事を読んでいる人には幸せになってほしい……というわけで、よほど興味がある人のみ観てくださいませ~。